カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年06月03日 【ニュース特集】 図解「みなし大企業」の範囲(2019年6月3日号・№789)

ニュース特集
資本金1億円以下のひ孫会社が中小租特の対象外、判定条文が変更も
図解「みなし大企業」の範囲

 平成31年度税制改正では、中小企業技術基盤強化税制など法人税関係の中小企業向けの租税特別措置等(以下、中小租特)における「みなし大企業」の範囲が見直されている。
 この改正により「大法人の100%子法人」や「100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人」が大規模法人に加えられた結果、グループ内の孫会社・ひ孫会社で資本金1億円以下の法人であっても、大規模法人に株式を所有されるもののうち一定のものは中小租特の適用を受けられなくなるケースや、みなし大企業に該当するかどうかの判定条文が変わり(措令27条の4第12項一号→二号)、中小租特が使用できなくなるケースなどが生じる。
 本特集では、みなし大企業の判定に際し注意が必要な事例を図解とともに解説する。

「みなし大企業」の範囲見直しの概要
 平成31年度税制改正で実施された法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置等(以下、中小租特)における「みなし大企業」の範囲の見直しは、要するに「みなし大企業」の範囲の拡大であり、逆に言えば、中小租特の適用範囲は従来より狭められたことになる。具体的には、みなし大企業の判定上、大規模法人に次の2つの法人が加えられている。
・大法人の100%子法人
・100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人
(注)「大法人」とは資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人をいう。
 ここでいう中小租特とは、中小企業投資促進税制等の投資減税、中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)、所得拡大促進税制(中小向け部分)等を指す。これらの中小租特は文字通り中小企業の脆弱な財務基盤に配慮した優遇税制であり、従来も、例えば資本金1億円以下の法人であっても発行済株式等(※平成31年度税制改正により、自己株式等を除外)の50%以上が同一の大規模法人(資本金の額等が1億円を超える法人など)に保有されている法人(子会社)は適用対象外とされていたが、その子会社の子会社(孫会社)は中小租特が使用できる状態だった。こうした孫会社を優遇措置の対象とするのは不適当との判断から、今回、みなし大企業の範囲の更なる拡大(厳格化)が行われたという経緯がある。
 今回の改正は、中小企業技術基盤強化税制の対象となる「中小企業者」の意義について定めた措置法施行令第27条の4第12項を見直すことにより行われている(他の中小租特における中小企業者の定義は、中小企業技術基盤強化税制における中小企業者の定義を引用)。改正後の条文は下記の通り。
 なお、中小企業者等の法人税率の特例(中小軽減税率)は既に同様の措置が導入済みであることから、今回の改正の対象とはなっていない。

租税特別措置法施行令27条の4 ※赤字が改正部分
12 法第四十二条の四第八項第号(編注:中小企業者に該当する法人として政令で定めるもの)に規定する政令で定める中小企業者ものは、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人とする。
 一 その発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。次号において同じ。)の総数又は総額の二分の一以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が一億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人を超える法人又は次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。次号において同じ。)の所有に属している法人
  イ 大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係(法人税法第二条第十二号の七の六に規定する完全支配関係をいう。ロにおいて同じ。)がある普通法人
  (1)資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人
  (2)略
  (3)略
  ロ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式(略)及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれかの一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(イに掲げる法人を除く)
 二 前号に掲げるもののほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人

グループの下位層の法人に対する適用の可否判定は慎重に
 みなし大企業の範囲の拡大を受け、今後慎重を期す必要があるのが、持分関係が何階層にも及ぶ企業グループの下位層の法人に対する中小租特の適用の可否判定だ。従来は中小租特の適用を受けることができた資本金1億円以下の法人が、今回の改正により中小租特の適用対象外となるケースが出て来る。
 まずは最もシンプルな事例から見てみよう。従来、発行済株式等の50%以上が資本金1億円を超える法人等に保有されている法人は、中小租特の適用対象外とされていた。このため、図1のケースでは、資本金が1億円を超える親会社の100%子会社である「普通法人A(資本金1億円以下)」は今回の改正前から中小企業者に該当せず、中小租特の適用対象外だった。これに対し、孫会社である法人Bは、資本金1億円以下の「普通法人A」の子会社であることから、改正前は中小租特の適用対象とされていた。

 しかし今回の改正により、大法人との間に当該大法人「による」完全支配関係がある普通法人Aは、上記一号イ(1)より大規模法人に該当することとなった。その結果、大規模法人たる普通法人Aにより50%以上の株式を保有されている法人Bは、(今回の改正前から存在している)一号により、中小租特の適用対象外となる。
 より難解なのが、持分関係が何階層にも及ぶ企業グループに属し、企業グループの頂点にある法人や、自社及び自社の株式を直接保有する法人の資本金がともに1億円以下である場合における中小租特の適用の有無の判定だ。図2のケースでは、資本金1億円以下の中小法人のひ孫会社に当たる法人Dは従来は中小租特の適用対象となっていたが、改正後は中小租特の適用対象外となる。

 普通法人Cは、大法人との間に当該大法人「による」完全支配関係がない(企業グループの頂点にある資本金1億円以下の法人「による」完全支配関係はあるが、当該法人は大法人ではない。また、AやBは大法人だが、それぞれCに対する持株割合は50%であり、A「による」完全支配関係、B「による」完全支配関係はない)ことから、上記一号イ(1)上は大規模法人に該当しないこととなる。しかし、一号ロに当てはめてみると、普通法人Cは「普通法人(C)との間に完全支配関係がある全ての大法人(AとB)が有する株式の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人(例えばA)が有するものとみなした場合において、当該いずれかの一の法人(A)による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(C)」に該当するため、大規模法人となる。その結果、法人D(資本金1億円以下)は、大規模法人たる普通法人Cにより50%以上の株式を保有されていることとなり、一号により中小企業者に該当せず、中小租特の適用対象外となる。

二分の一以上が「同一の」大規模法人の所有に属さず適用対象外
 上述のとおり、「みなし大企業」の範囲の見直し(拡大)は、中小企業技術基盤強化税制の対象となる「中小企業者」の意義について定めた措置法施行令第27条の4第12項を見直すことにより行われているが、今回は二号は改正されていない(5頁の条文参照)。ところが、一号の改正の影響を間接的に受け、これまで二号上は中小租特の適用を受けられていた法人が適用を受けられなくなるケースが出て来る。これに該当するのが図3のようなケースだ。

 図3において、普通法人AとBは、一号イにより大規模法人に当たる(大法人「による」完全支配関係があるため)。このケースでは、大規模法人は大法人、A、Bの3社となるが、いずれも1社でCの株式を2分の1以上保有していないことから、一号は判定に使えない(一号では、発行済株式又は出資の総数又は総額の二分の一以上が「同一の」大規模法人の所有に属している、とあるため)。そこで、資本金1億円以下である法人Cは二号により「みなし大企業」に該当するかどうかを判定にすることとなる。
 二号上、「その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人」はみなし大企業に該当することになるが、法人Cは、いずれも大規模法人に該当することとなる「大法人」「普通法人A」「普通法人B」により全ての株式を保有されていることから「みなし大企業」に該当し、中小租特の適用は受けられないことになる。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索