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解説記事2019年06月24日 【SCOPE】 相続財産の仮装隠蔽をめぐり重加算税の取り消しが相次ぐ(2019年6月24日号・№792)

家族名義預金の申告漏れが問題となった事例も
相続財産の仮装隠蔽をめぐり重加算税の取り消しが相次ぐ

 相続税調査で相続財産の申告漏れが発覚した場合に、その申告漏れが重加算税の対象となる「隠蔽又は仮装」(通則法68①)に該当するか否かが問題となる。課税当局が重加算税の対象となる隠蔽又は仮装に該当すると判断しても、その重加算税が審査請求により取り消されるケースは少なくない。そこでスコープでは、重加算税が取り消された最近の裁決事例を2件紹介する。1つは、請求人が相続財産である「共済契約に係る権利」を申告しなかったことが隠蔽又は仮装に該当するか否かが争われたもの(平成30年10月2日裁決)。もう1つは、請求人が「請求人名義の定期預金」を相続財産として申告しなかったことが隠蔽又は仮装に該当するか否かが争われたものである(平成30年11月12日裁決)。

税理士に共済契約に係る関係資料不提示も、過少申告の意図は認められず
 最初に紹介する裁決事例は、請求人(相続人)が相続財産である建物更生共済契約(以下「共済契約」)に係る権利を申告しなかったことが重加算税の対象となる「隠蔽又は仮装」に該当するか否かが争われたものである。
 事実関係をみると、請求人は、被相続人が生前に契約を締結していた被相続人自らを共済契約者及び被共済者とする農協の共済契約について、満期到来による満期共済金を農協の請求人名義の口座に入金するとともに、継続する共済契約の共済契約者及び被共済者を請求人に変更する手続きを行った。請求人は、相続税の申告手続きを依頼した税理士に共済契約の存在を告げなかったことから、共済契約に係る権利は相続財産のなかに含まれていなかった。税務調査を受けた請求人は、調査担当者から共済契約に係る権利が申告漏れとなっている旨の指摘を受けたことから、修正申告書を提出した。これに対し原処分庁は、申告漏れに隠蔽の行為が認められるとして重加算税を賦課した。これを不服とした請求人は、審査請求により、隠蔽の行為はないと主張して重加算税の取り消しを求めた。これに対し原処分庁は、請求人は共済契約に係る権利が相続財産と認識していたものの、税理士にその存在を伝えず、共済契約に関する資料を税理士に提示しなかったことなどが、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たるため、重加算税の賦課要件である「隠蔽又は仮装」があったと主張した。
税理士にあえて告げなかったとは認められず  審判所は、税理士が請求人に対して相続税の申告手続きの説明の際に共済契約に関する具体的な説明を行っていなかったと認めたうえで、請求人が税理士に共済契約の存在を告げなかったとしても、直ちに共済契約の存在が念頭にあったにもかかわらず、あえてこれを告げなかったとまでは認めることができないから、請求人に過少申告の意図があったと認めることはできないし、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動であるということもできないと指摘した。また、請求人が満期共済金を原処分庁が容易に把握し得ないような他の金融機関や請求人名義以外の口座などに入金したのではなく、共済契約の締結先である農協の請求人名義の口座に入金していることからしても、原処分庁による満期共済金の発見を困難とさせるような意図や行動をしていない点を指摘した。
 以上を踏まえ審判所は、請求人が共済契約に係る権利の財産的価値を認識した上でその存在を税理士に告げなかったとしても、これをもって過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動であるということはできないと判断したうえで、重加算税を取り消した。

請求人は名義預金を相続財産と認識せず、過少申告の意図はなかったと判断
 次に紹介する裁決事例は、請求人(相続人)が請求人名義の定期預金を相続財産として申告しなかったことが重加算税の対象となる「隠蔽又は仮装」に該当するか否かが争われたものである。
 事実関係をみると、請求人は、相続税の当初申告の際に請求人名義の定期預金を相続財産として申告していなかった。税務調査を受けた請求人は、調査担当者の指摘を踏まえ、当初申告から漏れていた請求人名義の定期預金を相続財産に含める修正申告を行った。これに対し原処分庁は、申告漏れは隠蔽に基づくものと認定して重加算税を賦課した。これを不服とした請求人は、審査請求のなかで、請求人名義の定期預金が相続財産に含まれることを認識していなかったから、過少申告の意図はなかったと主張した。これに対し原処分庁は、請求人は相続財産であると知りながら当初から過少に申告することを意図し、税務代理人である税理士に請求人名義の定期預金の存在を秘匿し、過少な相続税額が記載された当初申告書を作成させ、これを提出したものと認められるとしたうえで、請求人の当初申告書の提出には「隠蔽又は仮装」があったと主張した。
請求人に名義預金の存在を秘匿する意思なし  審判所はまず、請求人が当初申告の当時、請求人名義の定期預金が被相続人に係る相続財産に含まれると認識していたか否かを検討。本件について審判所は、請求人は当時高齢であり、長年にわたり被相続人と2人で農業に従事した上、その所得の全部が被相続人に帰属するという法的知識を有していたものとは認め難いから、請求人名義の定期預金を請求人の固有の財産と理解していたとしても不自然とまで言うことはできないと指摘。また、請求人は税務調査直後に定期預金の通帳を税理士に提示し、税理士を介して調査担当者に提示したことから、請求人は税理士や調査担当者に請求人名義の定期預金の存在を隠匿する意思はなかったと認められるとした。
 以上を踏まえ審判所は、請求人が請求人名義の定期預金を相続財産に含まれると認識していたと認めることはできないから、請求人に過少申告の意図は認められないと判断した。また、請求人が税理士や調査担当者に請求人名義の定期預金の存在を告げなかったとしても、それが過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と認めることもできないと判断して、重加算税を取り消した。

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