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解説記事2019年07月29日 【ニュース特集】 飲食料品のリベートの軽減税率適用の可否(2019年7月29日号・№797)

ニュース特集
リベートの性格を契約書に明記
飲食料品のリベートの軽減税率適用の可否

 令和元年10月1日より消費税率が10%に引き上げられるとともに、飲食料品等を対象とした軽減税率制度が導入される。複数税率になることでその取扱いの整理に困る取引の1つがいわゆるリベート(販売奨励金)だ。事業者が販売促進の目的で、課税資産の販売数量、販売高等に応じて飲食料品の取引先に対して金銭により支払うリベートは売上に係る対価の返還等に該当し、軽減税率となる。一方、リベートといっても役務の提供の対価として支払われるものであれば、対象とされる課税資産の譲渡等が軽減税率の対象であっても標準税率となる。しかし、対象となるリベートが「売上に係る対価の返還等」か「役務の提供の対価」のどちらに該当するかは難しい問題だ。まずは当事者の間で“なぜそのリベートを支払う(受け取る)のか”ということの認識を一致させることが実務でのポイントになる。この点、出来る限り契約書で明記することが必要になろう。本特集では飲食料品におけるリベートの軽減税率の適用可否について、実務上の留意点を解説する。

販売数量等に応じたリベートは軽減税率、役務提供の対価なら標準税率
 軽減税率制度が導入された場合、その判断に迷う取引の1つがリベートの取扱いだ。販売奨励金、キックバック、謝礼金など、名称はさまざまだが、リベートについても飲食料品に係るものであれば軽減税率、それ以外のものであれば標準税率となる。
 飲食料品の販売先に支払うリベートの基本的な考え方としては、事業者が販売促進の目的で、課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先に支払うものは、「売上に係る対価の返還」に該当し、対象となった取引が飲食料品の譲渡であれば、軽減税率が適用される。一方、リベートといっても実質的に役務の提供の対価として支払われるものであれば、対象となる課税資産の譲渡等が軽減税率の対象であったとしても、標準税率となる。
支払う(受け取る)理由により税率が異なる  では、具体的に飲食料品の販売を前提とした取引について一般的な考え方をみてみることにしよう(参照)。まず、①の販売数量等に応じて支払われる奨励金としてのリベートについては軽減税率になる。例えば、卸売業者から小売店に支払うリベートについては、卸売業者は売上割戻し、小売店側は仕入値引きで処理することになろう。これは製造業者から卸売業者又は小売店に支払うリベートについても同様である。

 次は②の卸売業者から製造業者に支払われる奨励金だ。奨励金といっても、その内容は契約等によって異なる。例えば、対価の増額として支払われるものであれば軽減税率が適用され、製造業者は売上加算(食品価額に係る値増金)、卸売業者は仕入加算(食品価額に係る値増金)との処理をすることになろう。
 逆に奨励金が支払われる理由が早期に生産したことに対する対価として支払うものであれば、役務の提供の対価として標準税率が適用されることになる。製造業者は売上、卸売業者は仕入ということになろう。
 ③のケースは販売促進キャンペーンなど、販売拡大等の対価として支払われる奨励金だ。この場合は、役務の提供の対価に該当し標準税率となる。卸売業者は仕入、小売店は売上ということになろう。また、④の委託販売数量等に応じて委託手数料の増額として支払われる奨励金については、委託手数料に係る値増金として標準税率が適用となる。卸売業者は仕入加算、小売店は売上加算といった処理を行うことになろう。
 現状は単一税率であるため問題は生じないが、軽減税率が導入された後はリベートを支払う理由によって適用税率が変わってくる。このため、リベートを支払う理由又はリベートを受け取る理由を十分に考えた上で会計処理することが必要になる。その理由が明確になれば自ずと適用税率は定まることになる。

Column センターフィーは標準税率
 物流センターの利用料であるセンターフィーも、リベートとともに取引先に返還することがある。このセンターフィーについては飲食料品にひも付けであっても、その実質は物流センターの利用に対する対価であるため、役務の提供の対価として標準税率が適用されることになる。EOS(オンライン受発注システム)手数料なども同様だ。

契約書で当事者間の適用税率の認識を整理
 ただ、リベートにおける問題はこれだけにとどまらない。取引先との間で適用税率の認識を合わせておくことが必要となる。同じ取引で適用税率が異なるわけにはいかないからだ。当事者間で「なぜそのリベートを支払う(受け取る)のか」の認識を整理し共有しておくことが肝心。この場合、リベートに関する契約書等でその旨を明らかにしておくことが最も適切な対策になる。
 具体的には、リベートの変更契約書等を作成することが考えられるが、消費税の適用税率を明らかにする観点から支払リベートの性格を追記することが必要。例えば、「○○商品の仕入高に応じた対価の返還及び物流の補助費用としてリベートを支払うものとする。」との旨を記載することが考えられる。また、これまで商品の仕入高に5%を乗じて算出していたリベートの計算方法を変更する場合には、例えば、「リベートのうち、対価の返還分は○○商品の仕入高に3%を乗じて算出するものとし、物流の補助費用分は○○商品の仕入高に2%を乗じて算出するものとする。」と追記することが考えられよう。
印紙税の課税対象外に  ここで気になるのは印紙税が課されるかどうかだ。リベートの契約書の場合は、第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」に該当し、税率は1通につき4,000円となる。
 しかし、前述の支払リベートの性格やリベートの計算方法を定めること自体は第7号文書の重要事項(目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法など)に該当しないため、印紙税の課税対象外となる。
 なお、リベートの計算方法を定めるに際し、併せて具体的な取扱目標数量(金額)を定めるものは、第7号文書の重要事項の1つである「取扱数量」に該当するため、印紙税が課税される。この点は注意したい。

役務の提供に該当するリベートなら税抜価格から計算を
 最後に留意しておきたい点は、軽減税率導入後のリベートの算出方法だ。問題となるのは役務の提供に該当するリベートである。この場合の適用税率は前述の通り、標準税率が適用されることになるが、税込の販売金額からリベート額(税込)を算出している場合には、軽減税率対象品目を販売した際のリベート額(税抜)が圧縮されてしまうからだ。税込価格からリベート額を算定している一部の業界は要注意である。
 例えば、現在108万円(税込)の取引があった場合、仮に5%のリベートを算出すると54,000円(1,080,000×0.05)となる(内訳:50,000円(本体価格)+4,000円(消費税額))。
 では、軽減税率導入後ではどうなるか。同じ取引の場合、108万円(税込)に5%のリベートを算出すると54,000円と同じリベート額となるが、その内訳は、消費税額は4,909円(54,000×10/110≒4,909)となり、本体価格が49,091円(54,000-4,909=49,091)と圧縮されてしまう。つまり、受け取るリベートの額が減ってしまう。
 一方、同じ取引でも、税抜価格であれば、リベート額は55,000円(1,000,000×0.05=50,000、50,000×0.1=5,000、50,000+5,000=55,000)となる。その内訳は、本体価格が50,000円、消費税額が5,000円となり、本体価格は軽減税率導入前と同じになる。この点、消費税額は増えることになるが、支払う側から見れば仕入税額が増えただけにすぎない(キャッシュアウトは増えるが、税負担が増えるわけではない)。
 軽減税率導入後のトラブルを避ける意味でも、リベートの算出方法を税込で行っている企業は税抜で算出するよう変更することが必要になろう。

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