税務ニュース2006年07月31日 SO訴訟、過少申告加算税を争点に最高裁で口頭弁論開催へ(2006年7月31日号・№173) 過少申告加算税を賦課しない「正当な理由」はどこまで?

SO訴訟、過少申告加算税を争点に最高裁で口頭弁論開催へ
過少申告加算税を賦課しない「正当な理由」はどこまで?


最高裁判所第三小法廷は7月18日、SO(ストック・オプション)訴訟の上告受理申立てに対して、国税通則法65条4項の解釈適用を争点に限定して上告審として受理する決定を行った。併せて口頭弁論期日が9月26日に指定された。
 控訴審において納税者の請求がいずれも棄却された事件について口頭弁論が行われることから、控訴審判決の見直し(過少申告加算税を賦課しない「正当な理由」の容認)が行われる可能性が高い。SO訴訟で「正当な理由」が認められる場合には、どの時点の申告まで認められることになるのか、最高裁の判断が注目される。
 最高裁第一小法廷においてもSO訴訟の上告受理申立てに同様の決定が行われ、口頭弁論期日が10月19日に指定された。

上告申立理由を過少申告加算税に限定
 平成17年1月25日に「SOの権利行使利益は給与所得」とする判決を言い渡した最高裁第三小法廷は、別件SO訴訟の上告および上告受理申立てに対して、7月18日、上告を棄却するとともに、上告申立ての理由を国税通則法65条4項の解釈適用の誤りをいう部分に限定し、上告審として受理する決定を行い、口頭弁論期日を9月26日に指定し、関係者に通知した。
 第三小法廷に配点され、7月18日の決定を受けた事件の一つでは、平成8年分から平成11年分の所得税の更正処分・平成11年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定の取消しが請求されていた。平成9年分以降のものについて、当初過少申告加算税が賦課されていたが、最初の更正(平成12年3月9日付)の対象となった平成10年分までの所得税に係る過少申告加算税の賦課決定は課税庁が取り消していた。
 最高裁の決定により、口頭弁論では平成11年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定についてのみ争われることになる。

控訴審完敗後、訴訟代理人はこまめに上申
 上記上告受理事件では、本税・過少申告加算税の主張が斥けられた控訴審判決時点(平成16年8月4日)では最上級審の判断が示されていなかったため、主として本税部分の取消しを求める上告・上告受理申立てが行われていた(上告理由書・上告受理申立書の提出日付は平成16年10月4日)。訴訟代理人は、最高裁第三小法廷の「給与所得」の判断が示された(平成17年1月25日)後、(判例の変更に必要な)大法廷審理を求める上申のほか、過少申告加算税の取消しを求める上申書を提出し、東京高裁など下級審における同種の事件において過少申告加算税の取消判決が出されるごとに、当該判決を参考資料として最高裁判所に上申していた。
 上告件数は多いもののSO訴訟の本税に関する争点は共通であるため、本税部分の判例変更は事実上困難であり、平成17年1月25日判決後もいくつもの下級審から下された過少申告加算税取消判決をよりどころとして、最高裁において過少申告加算税賦課決定の取消しを求めてきたものである。

「給与所得」とする通達明記は平成14年6月
 口頭弁論が開かれることから、過少申告加算税について原判決の見直しが行われる可能性が高いが、第三小法廷では少なくとも6名の上告申立てが受理され、第一小法廷では少なくとも3名の上告申立てが受理されている。各上告人の申告等の状況はさまざまであり、過少申告加算税を賦課しない「正当な理由」があると認められる場合であっても、どの時点までの申告について「正当な理由」があると認められるのかについては判示を注目すべきであろう。
 課税庁の職員が質疑問答集で「一時所得」と説明したり、税務署で「一時所得」としての申告を指導したりしたことがあったようだが、課税庁は「一時所得」とする取扱いを公的見解とは認めていない。したがって、「給与所得」と明言する必要もないということで、通達への記載がなされたのは、平成14年6月になってからである。所得税基本通達23~35共-6の(注)に「発行法人が外国法人である場合にも同様であることに留意する。」と記載された。もちろん、通達への記載以前に課税処分が行われていることもあり、税務情報誌などに課税庁職員による「給与所得」とする解説などが掲載されていた。
 上記上告受理事件の原判決では、「平成10年以降正当な取扱いへの統一がされた」との判示があるが、それを裏付けるものも明らかではない。
 平成11年の中ごろから過去に遡って「給与所得」としての課税が行われるようになったのであるから、更正処分を受けた段階で当該納税者は、課税庁の見解を知っていたことにもなる。
 また、本件SOについては、当初類似事案で納税者の勝訴が続いていた。下級審で納税者が勝訴している段階もまた「正当な理由」があると認められるのであろうか。納税者が最初に敗訴した平成16年1月21日横浜地裁判決までは「やむを得ない事情」を認めるべきという主張もあれば,最上級審の判断が示された平成17年1月25日最高裁判決までは「正当な理由」があるとする主張もある。
 平成17年11月8日最高裁第三小法廷判決などから類推すれば、やはり、課税庁が通達などに明らかにした時点(平成14年6月)が「正当な理由」が認められるタイムリミットとして有力ではないだろうか。

影響の大きな注目すべき口頭弁論
 口頭弁論においては、課税庁から答弁書が用意され、納税者から追加の弁論が行われることになる。下級審で審理中のものも含め多数の事件に影響を及ぼすことが予想される。さらに、過少申告加算税を賦課しない「正当な理由」の有無に上告理由が限定されているとはいえ、SO訴訟だけでなく、課税庁の公式見解のあり方や税務訴訟と実務との調整にも影響を及ぼすことが考えられよう。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索