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会社法ニュース2003年05月26日 法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点 ニュース特集 発行会社側編―下

ニュース特集

商法改正でぐーんと使いやすくなった
法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点
発行会社側編―下


 前号では、法定準備金の取崩に際しての概要並びに表示の注意点について特集しました。今号では、法定準備金の取崩による配当・払戻・自己株式買受けについてそれぞれの法務・会計・税務処理における注意点をまとめてみました。なお、今後、株主側編の特集も予定しています。

289条2項による取崩額の使われ方

 289条2項により取り崩した法定準備金は、内部留保、払戻、資本の欠損の填補といった使われ方が考えられることは前号で述べました。内部留保した場合には、翌期以降に「配当」に回すこともできますし、自己株式の取得財源とすることもできます。
 以下、1:内部留保(1-1:翌期以降の「配当」、1-2:自己株式買受け)と2:「払戻」の3つに焦点を当て、それぞれの法務・会計・税務処理について解説します。

1:内部留保

 取り崩した法定準備金を内部留保した場合、実際に「配当」することができるのは、債権者保護手続終了後の翌期の株主総会における利益処分からですが、取崩直後から自己株式取得の原資とすることもできます。タイミングの違いには注意が必要です。

<1-1:法定準備金の取崩による「配当」>
 配当可能利益算定上、法定準備金を配当することはできません。もっとも、法定準備金を取り崩すことで、配当可能利益を増やすことができます。

法務:前号で述べたとおり、株主総会で承認された取崩額につき実際に配当できるのは翌期の株主総会における利益処分からです(中間配当も同様です)。

会計:(1)準備金取崩時の会計上の処理
    ×1期の定時株主総会で資本準備金500、利益準備金500を取崩す案が承認されたとします。×2期中に債権者保護手続が終了した場合、取崩に関する仕訳は次のとおりです。
資本準備金500/資本金及び資本準備金減少差益(*1)500
利益準備金500/利益準備金取崩額(*2)500

 なお、*1はP/Lを通さず単にB/Sの数字が置き換わるだけです。一方、*2は×2期のP/L末尾に表示されます(前号6頁のケースC参照)。
(2)配当時の会計上の処理
 ×2期の定時株主総会の利益処分による配当時は次の仕訳となります(取崩額を全額配当にまわしたと仮定)。みなし配当に基づく預り源泉税は200とします(税務の項を参照ください)。
資本金及び資本準備金減少差益500
現金及び預金800
未処分利益500預り金 200

 その他資本剰余金(資本金及び資本準備金減少差益)を原資とした配当は、資本取引(資本の払戻し)であり、利益の配当ではない(資本取引・損益取引区分の原則)と考えられます。もっとも、税務上の取扱いは「配当」とされることに注意が必要です(3月17日号の8ページ参照)。
 なお、利益処分案では、その他資本剰余金を原資として配当がなされる旨表示する必要があることに留意しなければなりません。
税務:(1)準備金取崩時の税務上の処理
 資本準備金を取崩した場合、税務上は資本積立金額(資本準備金)から資本積立金額(資本金及び資本準備金減少差益)に振替えられます。資本積立金額であることは変わりませんので、×2期の資本積立金額の計算に関する明細書上に、「資本準備金 当期減 500」、「資本金及び資本準備金減少差益 当期増 500」と記載します。
 利益準備金を取崩した場合、税務上は利益積立金額(利益準備金)から利益積立金額(繰越損益金)に振替えられます。×2期の利益積立金額の計算に関する明細書上に、「利益準備金 利益処分減 500」を記載しますが、繰越損益金の記載は、未処分利益がP/L末尾で利益準備金取崩により増額されているため、増額後の次期繰越利益の金額を繰越損益金の欄に記載することで、調整済となります。
<×2期の利益積立金額の計算に関する明細書:別表五(一)>
区 分
期首現在利益
積立金額
当期中の増減
当期利益金処分
等による増減
差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③+④
利益準備金
1
 
 
 
△500
 
繰越損益金
26
 
 
 
(+500)
(+500)

 

<×2期の資本積立金額の計算に関する明細書:別表五(一)>
区 分
期首現在利益
積立金額
当期中の増減
差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③
利益準備金
32
 
500
 
 
資本金及び資本準備金減少差益
 
 
 
500
500

(2)配当時の税務上の処理
 税務上、株主に分配した「配当」の原資が資本剰余金(資本金及び資本準備金減少差益)であっても利益剰余金(未処分利益)であっても、利益積立金額から流出したものとして取扱われることになります。別表四上で社外流出(配当)として記載します。
 税務上減額されない資本積立金額の一項目である資本金及び資本剰余金減少差益の残高が500減少されていて、1,000減少されるべき利益積立金額が、未処分利益500の減少しかされていないため、税務上の資本積立金額と利益積立金額の調整をしなければなりません。
 資本積立金額の明細に「利益積立金額 当期増 500」、利益積立金額の明細に「資本積立金額 利益処分減 500」と記載します。
 税務上の取扱いは「配当」ですから源泉徴収(1,000×20%)をしなければなりません。

<1―2:法定準備金取崩による自己株式買受け>
 自己株式を買受け、消却することで一株あたりの価値を高めたり、消却せずに金庫株とすることでストック・オプションの行使に備えることも可能となります。もっとも、自己株式取得財源は210条3項により一定の額に制限されています。そこで、法定準備金を取崩し内部留保することにより、自己株式取得財源を増やすことができます。
法務:289条2項による法定準備金取崩額のうち株主への払戻額と資本の欠損に充てた額の両者を控除した額は自己株式取得財源に加算されます(210条4項)。なお、210条による自己株式の買受けについては別途、定時総会の決議が必要となります。
会計:(1)準備金取崩時の会計上の処理
 ×1期の定時株主総会で資本準備金500、利益準備金500を取崩す案並びに自己株式取得に関する授権決議が承認されたとします。×2期中に債権者保護手続が終了した場合、取崩に関する仕訳は法定準備金取崩による「配当」と同じです。
(2)自己株式取得時の会計上の処理
 その後、自己株式1,000を取得した場合、仕訳は次のようになります。みなし配当に基づく預り源泉税は60とします(税務の項を参照ください)。
自己株式1,000/現金及び預金 940
預り金 60

税務:(1)準備金取崩時の税務上の処理
 取崩に関する税務上の処理は法定準備金取崩による「配当」と同じです。
(2)自己株式取得時の税務上の処理
 証券市場での購入等による取得の場合を除き、自己株式を取得した場合には、株主に交付した金銭等の額(1,000)がその株式に対応する取得時の資本等の額(ここでは、説明上700とします)を超える場合には、その超える金額(1,000-700=300)を利益積立金額から控除することになります(配当として取扱うことになります)。
 したがって、利益積立金額の明細に「自己株式 当期増 △300」と記載するとともに、別表四(所得の明細)上で、社外流出させることになります。
 別表四上に「自己株式(みなし配当)(加算・社外流出)300」「自己株式(認定損)(減算・留保)300」と記載します。
 みなし配当となる金額については、源泉徴収(300×20%=60)しなければなりません。

2:法定準備金取崩による「払戻」

 法定準備金を取り崩して、株主に払い戻すことができます。前号で述べたとおり、配当可能限度額を増やした後配当するより、早いタイミングで払い戻しできます。
法務:臨時株主総会による決議でもOK!債権者保護手続完了後に払い戻しを行います。
会計:×1期の定時株主総会で資本準備金500、利益準備金500を「払戻」のために取崩す案が承認されたとします。×2期中に債権者保護手続が終了した場合、取崩に関する仕訳は次のとおりです。みなし配当に基づく預り源泉税は60とします(税務の項を参照ください)。
資本準備金500
現金及び預金 940
利益準備金500預り金 60

税務:法定準備金を取崩して株主に払い戻した場合、法人税法に明文規定は見られません。法人税法の資本の減少(法法2条17号ツ、法法2条18号ヲ)の規定を類推適用することになりそうです。
 すなわち、交付金銭等の額(1,000)のうち、資本等に相当する部分(700と仮定)については、資本積立金額の減額を、資本等に相当する部分を超える部分(1,000-700=300)については、利益積立金額の減額を行うことになります。
 会計上の処理と調整を行うため、資本積立金額の明細に「利益積立金額 当期増 △200」、利益積立金額の明細に「資本積立金額 当期増 200」と記載します。
 利益積立金額から減額された部分(300)の税務上の取扱いは「配当」ですから源泉徴収(300×20%=60)をしなければなりません。
 これは利益処分ではありませんから×2期の取引として記載します。
<×2期の利益積立金額の計算に関する明細書:別表五(一)>
区 分
期首現在利益
積立金額
当期中の増減
当期利益金処分
等による増減
差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③+④
利益準備金
1
 
500
 
 
 
資本積立金額
3
 
 
200
 
 

 

<×2期の資本積立金額の計算に関する明細書:別表五(一)>
区 分
期首現在利益
積立金額
当期中の増減
差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③
資本準備金
32
 
500
 
 
利益積立金額
33
 
 
△200
 

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