税務ニュース2003年06月23日 結局こうなったタンス株!(2003年6月23日号・№024) ニュース特集 すべての上場株式が特定口座に?! 売却方法によって税率が違う?!
ニュース特集
すべての上場株式が特定口座に?!
売却方法によって税率が違う?!
結局こうなったタンス株!
平成15年5月9日、日本証券業協会からタンス株の特定口座への入庫の具体的な取り扱い(「いわゆるタンス株の特定口座への受入れに係るQ&A」)が公表されました。(http://www.jsda.or.jp/html/oshirase/030506.html)
一連の証券税制改正は一段落しましたが、タンス株の取り扱いは平成14年度改正時に想定していたものとは大きく異なる内容となりました。今回の特集では証券税制に詳しい宝田税理士の協力のもと、タンス株の取り扱いを整理していきます。
1 タンス株と特定口座
いわゆる「タンス株」とは、個人投資家が本券を手元に保管している株式をいいます。株式の取得方法を問わず、相続・贈与を受けた株式から、個人間売買で購入した株式、証券会社で購入した後に本券を引き出した株式も含まれます。
一方、特定口座とは、証券会社が投資家に代わって売買損益を計算するしくみを持つ口座です。証券会社が売買損益の計算のみを行う「源泉徴収なしの特定口座」と、売却のつど証券会社が源泉徴収をして国に納付してくれる「源泉徴収ありの特定口座」があります(特定口座の詳細につきましては、3月24日号(12号)4ページ以下、及び、「新証券税制のすべて」(プレ創刊1号から1月27日号(4号)までの連載)をご参照下さい)。
従来、特定口座へ入庫できる株式は、原則として特定口座を通じて購入した上場株式等に限定されており、タンス株については対象外とされてきましたが、今回の改正により平成15年4月1日~平成16年12月末日までの期間限定で、特定口座への入庫ができるようになりました(上場株式等に限る)。
また、現在一般口座に保有している上場株式等についても、いったん一般口座から引き出した後、タンス株として再入庫する方法により、実質的に平成16年12月末日まで特定口座に入庫することができるようになりました(従来は平成15年12月末日までの期間限定で特定口座に振替入庫が認められていました)。なお、実務的には本券の引き出し~再入庫の手続きに代えて、証券会社に「特例上場株式等保管委託依頼書兼特例上場株式等にするための保護預かり上場株式等に係る出庫依頼書」を提出することにより、本券を引き出すことなくタンス株として特定口座への振替が可能です。また、同様に現在特定口座に入庫している株式についても、引き出し~再入庫の手続きにより、改めてタンス株として特定口座に再入庫することができます。
以上のように平成16年12月末までは、このタンス株の制度を利用することにより、すべての上場株式等を特定口座に入庫することができるようになりました。
2 タンス株の特定口座への入庫時の取り扱い
タンス株を特定口座に入庫する際には、入庫する本券の他に「特例上場株式等保管委託依頼書」及び所定の確認書類の提出が必要となります。確認書類には以下の2種類があります。
① 取得に要した金額及び取得の日が確認できる書類
② 取得の日が確認できる書類
①の確認書類を提出した場合、その確認書類に記載された「取得日」及び「取得価額」で特定口座に入庫されます。
②の確認書類を提出した場合、その確認書類に記載された「取得日」及び「その取得日における取引相場の最終価額(市場価格の終値)」で特定口座に入庫されます。
①②のいずれの確認書類も提出しなかった場合には、「平成13年9月30日」を取得日、「平成13年10月1日の市場価格の終値の80%相当」を取得価額として、特定口座に入庫されます。
いずれの確認書類を提出するか又は提出しないかは投資家の任意となっており、例えば取得日と取得価額が分かる場合であっても、確認書類を提出せずに平成13年9月30日を取得日として、平成13年10月1日の市場価格の終値の80%を取得価額として特定口座に入庫することも可能です。
①②の確認書類として具体的に認められているものには、以下のものがあります。
3 タンス株の課税
タンス株を譲渡した場合、その譲渡の方法によって課税方法や税率が異なります。
① そのまま譲渡
タンス株を証券会社等経由せずに個人又は法人(発行法人を除く)に譲渡した場合、当該株式が上場株式か非上場株式かを問わず、譲渡益に対して一律26%(内住民税6%)の税率で課税されます。譲渡益が発生した場合には、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要がありますが、この場合、「譲渡損失の繰越控除」「元本1000万円までの譲渡益非課税」の適用が受けられないので注意が必要です。
② 一般口座に入庫して譲渡
タンス株(上場株式等に限る)を証券会社の一般口座に入庫して譲渡した場合(証券会社に対して譲渡した場合を含む)、譲渡益に対して10%(内住民税3%)の税率で課税されます(平成20年以降は所得税15%、住民税5%です)。譲渡益が発生した場合には、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。この場合、証券会社では取得日と取得価額を把握していませんので、自ら譲渡益を計算して確定申告する必要があります。また、税制上の特例措置(「譲渡損失の繰越控除」「元本1000万円までの譲渡益非課税」「みなし取得費の特例」)は購入・売却期間などの要件を満たせば、いずれも適用することができます。
③ 特定口座へ入庫して譲渡
タンス株(上場株式等に限る)を特定口座に入庫して譲渡した場合、譲渡益に対して10%(内住民税3%)の税率で課税されます(平成20年以降は所得税15%、住民税5%)。源泉徴収ありの特定口座を選択している場合には、売却時に源泉徴収が行われ、確定申告をする必要はありません(平成15年分の住民税は翌年に別途納付が必要です)。源泉徴収なしの特定口座を選択している場合、年間通算で譲渡益が発生したときは、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。また、税制上の特例措置は、「譲渡損失の繰越控除」、「元本1000万円までの譲渡益非課税(源泉徴収なしの特定口座の場合のみ)」を適用することができます。

Profile

宝田 健太郎(たからだけんたろう)
税理士(東京税理士会)
宝田税務会計事務所
金融資産税務を専門分野とし、税務会計・資産管理業務を中心に取り扱う。
(著書)
「決定版 これ以上やさしく書けない!新証券税制」
(ダイヤモンド社)
(監修・寄稿)
ダイヤモンドザイ(ZAi)、週刊ダイヤモンド
すべての上場株式が特定口座に?!
売却方法によって税率が違う?!
結局こうなったタンス株!
平成15年5月9日、日本証券業協会からタンス株の特定口座への入庫の具体的な取り扱い(「いわゆるタンス株の特定口座への受入れに係るQ&A」)が公表されました。(http://www.jsda.or.jp/html/oshirase/030506.html)
一連の証券税制改正は一段落しましたが、タンス株の取り扱いは平成14年度改正時に想定していたものとは大きく異なる内容となりました。今回の特集では証券税制に詳しい宝田税理士の協力のもと、タンス株の取り扱いを整理していきます。
1 タンス株と特定口座
いわゆる「タンス株」とは、個人投資家が本券を手元に保管している株式をいいます。株式の取得方法を問わず、相続・贈与を受けた株式から、個人間売買で購入した株式、証券会社で購入した後に本券を引き出した株式も含まれます。
一方、特定口座とは、証券会社が投資家に代わって売買損益を計算するしくみを持つ口座です。証券会社が売買損益の計算のみを行う「源泉徴収なしの特定口座」と、売却のつど証券会社が源泉徴収をして国に納付してくれる「源泉徴収ありの特定口座」があります(特定口座の詳細につきましては、3月24日号(12号)4ページ以下、及び、「新証券税制のすべて」(プレ創刊1号から1月27日号(4号)までの連載)をご参照下さい)。
従来、特定口座へ入庫できる株式は、原則として特定口座を通じて購入した上場株式等に限定されており、タンス株については対象外とされてきましたが、今回の改正により平成15年4月1日~平成16年12月末日までの期間限定で、特定口座への入庫ができるようになりました(上場株式等に限る)。
また、現在一般口座に保有している上場株式等についても、いったん一般口座から引き出した後、タンス株として再入庫する方法により、実質的に平成16年12月末日まで特定口座に入庫することができるようになりました(従来は平成15年12月末日までの期間限定で特定口座に振替入庫が認められていました)。なお、実務的には本券の引き出し~再入庫の手続きに代えて、証券会社に「特例上場株式等保管委託依頼書兼特例上場株式等にするための保護預かり上場株式等に係る出庫依頼書」を提出することにより、本券を引き出すことなくタンス株として特定口座への振替が可能です。また、同様に現在特定口座に入庫している株式についても、引き出し~再入庫の手続きにより、改めてタンス株として特定口座に再入庫することができます。
以上のように平成16年12月末までは、このタンス株の制度を利用することにより、すべての上場株式等を特定口座に入庫することができるようになりました。
POINT
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2 タンス株の特定口座への入庫時の取り扱い
タンス株を特定口座に入庫する際には、入庫する本券の他に「特例上場株式等保管委託依頼書」及び所定の確認書類の提出が必要となります。確認書類には以下の2種類があります。
① 取得に要した金額及び取得の日が確認できる書類
② 取得の日が確認できる書類
①の確認書類を提出した場合、その確認書類に記載された「取得日」及び「取得価額」で特定口座に入庫されます。
②の確認書類を提出した場合、その確認書類に記載された「取得日」及び「その取得日における取引相場の最終価額(市場価格の終値)」で特定口座に入庫されます。
①②のいずれの確認書類も提出しなかった場合には、「平成13年9月30日」を取得日、「平成13年10月1日の市場価格の終値の80%相当」を取得価額として、特定口座に入庫されます。
いずれの確認書類を提出するか又は提出しないかは投資家の任意となっており、例えば取得日と取得価額が分かる場合であっても、確認書類を提出せずに平成13年9月30日を取得日として、平成13年10月1日の市場価格の終値の80%を取得価額として特定口座に入庫することも可能です。
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①②の確認書類として具体的に認められているものには、以下のものがあります。
①取得に要した金額及び取得の日が確認できる書類 | |
| 取引報告書、取引残高報告書、受渡計算書、その他これらに相当する書類 |
| 顧客勘定元帳等の写し |
| 発行法人又は名義書換代理人若しくは名義書換事務受託者が作成した払込による取得に要した金額及び取得の日を証する書類 |
| 証券業者、登録金融機関、銀行等が作成した取得に要した金額及び取得の日を証する書類 |
| 取得に係る売買契約書の写し |
| 取得に要した金額、取得年月日、銘柄、数などを記載した書類(提出をする者の住所及び氏名の記載並びに押印があるものに限る。) |
②取得の日が確認できる書類 | |
| 株券(平成15年3月31日までにその取得者への名義書換がされているものに限る。)の写し |
| 上場株式等償還特約付社債の償還に関する事務の取り扱いをした証券業者が作成した取得の日を証する書類 |
| 発行法人又は名義書換代理人若しくは名義書換事務受託者が作成した取得の日を証する書類 |
POINT
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3 タンス株の課税
タンス株を譲渡した場合、その譲渡の方法によって課税方法や税率が異なります。
① そのまま譲渡
タンス株を証券会社等経由せずに個人又は法人(発行法人を除く)に譲渡した場合、当該株式が上場株式か非上場株式かを問わず、譲渡益に対して一律26%(内住民税6%)の税率で課税されます。譲渡益が発生した場合には、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要がありますが、この場合、「譲渡損失の繰越控除」「元本1000万円までの譲渡益非課税」の適用が受けられないので注意が必要です。
② 一般口座に入庫して譲渡
タンス株(上場株式等に限る)を証券会社の一般口座に入庫して譲渡した場合(証券会社に対して譲渡した場合を含む)、譲渡益に対して10%(内住民税3%)の税率で課税されます(平成20年以降は所得税15%、住民税5%です)。譲渡益が発生した場合には、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。この場合、証券会社では取得日と取得価額を把握していませんので、自ら譲渡益を計算して確定申告する必要があります。また、税制上の特例措置(「譲渡損失の繰越控除」「元本1000万円までの譲渡益非課税」「みなし取得費の特例」)は購入・売却期間などの要件を満たせば、いずれも適用することができます。
③ 特定口座へ入庫して譲渡
タンス株(上場株式等に限る)を特定口座に入庫して譲渡した場合、譲渡益に対して10%(内住民税3%)の税率で課税されます(平成20年以降は所得税15%、住民税5%)。源泉徴収ありの特定口座を選択している場合には、売却時に源泉徴収が行われ、確定申告をする必要はありません(平成15年分の住民税は翌年に別途納付が必要です)。源泉徴収なしの特定口座を選択している場合、年間通算で譲渡益が発生したときは、原則として譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。また、税制上の特例措置は、「譲渡損失の繰越控除」、「元本1000万円までの譲渡益非課税(源泉徴収なしの特定口座の場合のみ)」を適用することができます。

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Profile

宝田 健太郎(たからだけんたろう)
税理士(東京税理士会)
宝田税務会計事務所
金融資産税務を専門分野とし、税務会計・資産管理業務を中心に取り扱う。
(著書)
「決定版 これ以上やさしく書けない!新証券税制」
(ダイヤモンド社)
(監修・寄稿)
ダイヤモンドザイ(ZAi)、週刊ダイヤモンド
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