税務ニュース2013年09月16日 遺産分割やり直しなら贈与税課税も(2013年9月16日号・№515) 非嫡出子相続分に関する違憲判決、非摘出子は錯誤無効主張の可能性

遺産分割やり直しなら贈与税課税も
非嫡出子相続分に関する違憲判決、非摘出子は錯誤無効主張の可能性

非嫡出子の相続分に関する違憲判決は、判決以降開始相続と、判決時点で未分割の相続にのみ影響。
ただし、非嫡出子側は、違憲無効状態の民法に基づく遺産分割に対し錯誤無効を主張する可能性。遺産分割やり直しなら贈与税課税も。
 非嫡出子に対する相続分を嫡出子の1/2とする現行民法(900条四号ただし書)を巡っては、これまで憲法14条に規定する「法の下の平等」に違反するか否かを争点に複数の訴訟が提起されてきたが、最高裁はこれまでそのすべてに対して「合憲」との判断を示してきた。この判断を変えたことについて最高裁は、嫡出子と非嫡出子の法定相続分をどのように定めるかは「婚姻ないし親子関係に対する規律、国民の意識等」を踏まえる必要があるとしたうえで、「これらの事項は時代と共に変遷する」と説明している。
 この最高裁判決を受け注目されるのが、本判決の前に行われた遺産分割への影響だ。この点、最高裁は、過去の最高裁判決でも本規定の合理性を疑問視する補足意見が繰り返し述べられていたことなどから、「本件規定は、遅くとも(本件相続が開始した)平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していた」との判断を示しつつも、平成13年7月から約12年が経過していることや、法的安定性の観点から、「本決定の違憲判断は、Aの相続開始時(平成13年7月)から本決定までの間に開始した相続で既に分割されたものには影響しない」とした。
 ただ、非嫡出子側の立場からは、違憲無効状態の民法をベースにした遺産分割協議に対し「錯誤無効」が主張される可能性はある。仮にそれにより遺産分割の見直しが行われれば、相続財産が減った相続人は「更正請求」、相続財産が増えた相続人は「修正申告」を行うのが原則となる(ただし、相続税の実務では、遺産分割のやり直しとなっても、相続税の総額が変わらない場合(嫡出子と非嫡出子の間での相続分の見直しは原則これに該当)には、修正申告や更正請求をしない場合が多い)。ただ、相続税法上、遺産分割のやり直しは「贈与」と認定される恐れがある(相基通19の2-8)。
 また、最高裁は「平成13年7月前」に開始した相続をどう取り扱うかには言及していないため、「平成13年7月前」に開始した相続は、これまで通り非嫡出子に対する相続分を1/2をせざるを得ないだろう。もしこうした事案についても訴訟が提起され、再び違憲判断が示された場合には、違憲状態となった時点(本件では平成13年7月)がさらに過去に遡る可能性がある。

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