会計ニュース2003年09月16日 年度決算との比較を図解 ここまで簡便な手続でもOK!!(2003年9月8日号・№034) ニュース特集 四半期財務情報の手引きが公表
ニュース特集
四半期財務情報の手引きが公表
年度決算との比較を図解
ここまで簡便な手続でもOK!!
東京証券取引所やジャスダック等が今年の1月に設置した「四半期財務情報の作成及び開示に関する検討委員会」(座長:首藤惠中央大学経済学部教授)は8月11日に、「四半期財務情報の作成及び開示に関する検討委員会報告書」(以下、「報告書」)並びに「四半期財務情報の作成・開示に関する手引き」(以下、「手引き」)を公表しました。手引きには、年度決算と異なる簡便な手続が四半期財務情報の作成・開示にあたり許容し得る手続として例示されています。今回は、「手引き」で認められている簡便な手続に焦点をあて特集してみました。
スケジュールは?
各証券取引所では、平成16年3月期第1四半期(平成15年4月~6月)から四半期業績の概況を開示しています(マザーズにおいてはすでに導入済み)。そこでは、売上高又はこれに相当する事項の開示が最低限求められています。(要約)B/S等まで開示している積極的な会社はまだまだ少ない状況です。
そのような中、東京証券取引所は8月11日、「『四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム』の推進に向けた今後の取組みについて」を公表しました(以下、「今後の取組み」)。これによると、平成16年4月以後開始する事業年度から、現行の「四半期業績の概況」の開示にかえて、「四半期財務・業績の概況」(売上高、営業利益、経常利益、四半期(当期)純利益、総資産及び株主資本の各項目の開示ならびに要約B/S・要約P/Lの添付)の開示が必要となります(今秋に適時開示規則改正の予定)。もっとも、「四半期財務・業績の概況」の開示にあたって、セグメント情報やキャッシュフローに関する情報、業績予想については任意とされています。なお、システム対応や子会社における対応等の必要がある上場会社についての実務的な準備期間を考慮し、3年程度の経過措置が設けられる予定です。その間の「四半期財務・業績の概況」の開示は任意となります。
現在のところ、四半期財務情報に係る要約B/S・要約P/Lを作成する具体的・明確な会計処理基準はありません。そこで、中間(連結)財務諸表等の作成基準をベースとしつつ、一部簡便な方法により四半期財務情報を作成・開示する場合にあっては、「手引き」を参考にして作成することとなります。
手引きの基本的考え方
「手引き」と同時に公表された報告書によると、基本的な考え方は以下の通りです。
・四半期財務情報については、法定開示としてではなく、証券取引所等における適時開示の拡充という考え方に沿って柔軟に開示されるものである。
・四半期財務情報の作成・開示にあたっては、開示の迅速性を重視し、かつ、上場会社に過重な実務負担を強いることのないよう、中間、年度決算と比べ、一定の簡便な手続を採用することが許容されると考えている。なお、簡便な手続は、投資者等の利害関係者の投資判断を大きく誤らせないと考えられる範囲とすることが適当。
・四半期財務情報において開示する内容は、要約(連結)B/S、要約(連結)P/Lを基本とし、要約(連結)キャッシュ・フロー計算書及び法定開示に係る注記事項の開示は任意でよい。ただし、四半期財務情報の作成・開示にあたり、年度財務諸表又は中間財務諸表と異なる会計処理の方法を採用し、その差異に重要性がある場合には、その旨開示することが適当。
この基本的な考え方に従い、「手引き」では簡便な手続の具体例が示されています。
なお、同様の内容の「手引き」・「報告書」が日本証券業協会のHP等でも公表されています。
貸借対照表項目に関する簡便な手続の具体例
四半期財務情報における要約(連結)B/Sの作成にあたり「手引き」で許容されている簡便な手続を例示してみました。なお、下記の要約(連結)B/Sは説明の便宜の観点から作成したものであり、実際は重要なものを区分し、その他はまとめて記載してもよいとされています(「手引き」Q2より)。
損益計算書項目に関する簡便な手続の具体例
要約(連結)P/Lの作成にあたり「手引き」で許容されている簡便な手続は以下の通り(引当金繰入額や売上原価については前ページを参照下さい)。
減価償却費:年間償却予定額の月割り額を計上するだけでよい。また、定率法を採用している場合、年間償却予定額につき四半期の月数に応じて按分する方法でよい。
税金費用:四半期P/Lの税引前当期純利益に年間予測税率を乗じて算定してもよい。なお、年間予測税率は中間決算時の簡便法での見積実効税率よりも簡便な方法で算出してよい。
原則として年度決算と同様の手続が求められているもの
- もっとも、すべての科目につき簡便な手続が許容されているわけではありません。有価証券の時価評価(*)やデリバティブの時価評価、特別損益の計上等は、その重要性や性質上、原則として年度決算と同様の手続が必要となります。
* なお、「その他有価証券」のうち、理論価格を求める必要がある等の理由により時価評価に時間を要するため、開示の時期がそれによって遅延する恐れがあるものについては時価評価を省略できます。
課題
金融審議会において四半期開示のルール整備に関する検討が始まろうとしています。四半期開示を法制化するのか、レビューはどうするのか、半期報告書との兼ね合いをどうするのか…下掲した課題は山積している課題のほんの一部といえます。
<第3四半期の扱いをどうするのか>
「手引き」では、第3四半期の開示対象期間について、システムの都合により9ヶ月間の累計を算定することが困難な一部の企業からの要請を取り入れ、第3四半期のみの3ヶ月間の数値に基づいて記載することも可能としています(なお、9ヶ月間の累計に3ヶ月間の数値を併記する方法も可)。しかし、他社との比較という観点から、第3四半期のみの3ヶ月間の数値しか開示しない会社と、9ヶ月間の累計しか開示していない会社とでは比較が困難になることから、疑問の声もあがっています。
<迅速な決算体制の整備>
「開示の時期が遅れても良いから、情報量をふやしてもらいたい」という投資家(19.5%)よりも、「情報量を減らしても良いから、開示の時期を早くしてもらいたい」という投資家(42.1%)の方が多いという調査結果があります(「『情報開示に関するアンケート調査』の調査結果について」東証取引参加者協会調べ)。そのような投資家の期待に応えるため、公開会社としては「手引き」等を参考に簡便な処理を適宜利用して、迅速に開示する体制を整備する必要があります。30日以内に四半期開示をした会社の割合は、四半期開示が根付いているアメリカでは8割以上であるのに対し、我が国では3割程度。公開会社においては連結ベースで迅速に決算しうる体制を早急に整備することが必要といえます。
<公認会計士又は監査法人のレビュー>
「今後の取組み」によると、「四半期財務・業績の概況」は、現行の「四半期業績の概況」と同様に、証券取引所の適時開示の一環とされているため、公認会計士又は監査法人の関与は「形式的には」求められていません。もっとも、適時開示の一環とはいえ、B/SやP/Lの形式により開示される以上、公認会計士又は監査法人による何らかの関与を望む投資家が多いものと思われます。
一方、公認会計士側としては、四半期財務諸表に関する「一般に公正妥当と認められる作成基準」や「一般に公正妥当と認められる監査基準」が整備されない限り、レビュー意見を表明することは困難な面があります。ルール整備を急ぐ必要があります。
四半期財務情報の手引きが公表
年度決算との比較を図解
ここまで簡便な手続でもOK!!
東京証券取引所やジャスダック等が今年の1月に設置した「四半期財務情報の作成及び開示に関する検討委員会」(座長:首藤惠中央大学経済学部教授)は8月11日に、「四半期財務情報の作成及び開示に関する検討委員会報告書」(以下、「報告書」)並びに「四半期財務情報の作成・開示に関する手引き」(以下、「手引き」)を公表しました。手引きには、年度決算と異なる簡便な手続が四半期財務情報の作成・開示にあたり許容し得る手続として例示されています。今回は、「手引き」で認められている簡便な手続に焦点をあて特集してみました。
スケジュールは?
各証券取引所では、平成16年3月期第1四半期(平成15年4月~6月)から四半期業績の概況を開示しています(マザーズにおいてはすでに導入済み)。そこでは、売上高又はこれに相当する事項の開示が最低限求められています。(要約)B/S等まで開示している積極的な会社はまだまだ少ない状況です。
そのような中、東京証券取引所は8月11日、「『四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム』の推進に向けた今後の取組みについて」を公表しました(以下、「今後の取組み」)。これによると、平成16年4月以後開始する事業年度から、現行の「四半期業績の概況」の開示にかえて、「四半期財務・業績の概況」(売上高、営業利益、経常利益、四半期(当期)純利益、総資産及び株主資本の各項目の開示ならびに要約B/S・要約P/Lの添付)の開示が必要となります(今秋に適時開示規則改正の予定)。もっとも、「四半期財務・業績の概況」の開示にあたって、セグメント情報やキャッシュフローに関する情報、業績予想については任意とされています。なお、システム対応や子会社における対応等の必要がある上場会社についての実務的な準備期間を考慮し、3年程度の経過措置が設けられる予定です。その間の「四半期財務・業績の概況」の開示は任意となります。
現在のところ、四半期財務情報に係る要約B/S・要約P/Lを作成する具体的・明確な会計処理基準はありません。そこで、中間(連結)財務諸表等の作成基準をベースとしつつ、一部簡便な方法により四半期財務情報を作成・開示する場合にあっては、「手引き」を参考にして作成することとなります。
手引きの基本的考え方
「手引き」と同時に公表された報告書によると、基本的な考え方は以下の通りです。
・四半期財務情報については、法定開示としてではなく、証券取引所等における適時開示の拡充という考え方に沿って柔軟に開示されるものである。
・四半期財務情報の作成・開示にあたっては、開示の迅速性を重視し、かつ、上場会社に過重な実務負担を強いることのないよう、中間、年度決算と比べ、一定の簡便な手続を採用することが許容されると考えている。なお、簡便な手続は、投資者等の利害関係者の投資判断を大きく誤らせないと考えられる範囲とすることが適当。
・四半期財務情報において開示する内容は、要約(連結)B/S、要約(連結)P/Lを基本とし、要約(連結)キャッシュ・フロー計算書及び法定開示に係る注記事項の開示は任意でよい。ただし、四半期財務情報の作成・開示にあたり、年度財務諸表又は中間財務諸表と異なる会計処理の方法を採用し、その差異に重要性がある場合には、その旨開示することが適当。
この基本的な考え方に従い、「手引き」では簡便な手続の具体例が示されています。
なお、同様の内容の「手引き」・「報告書」が日本証券業協会のHP等でも公表されています。
東京証券取引所:http://www.tse.or.jp/news/200308/030811_a.html 日本証券業協会:http://www.jsda.or.jp/html/oshirase/sihankizaimu/iinkai.html |
貸借対照表項目に関する簡便な手続の具体例
四半期財務情報における要約(連結)B/Sの作成にあたり「手引き」で許容されている簡便な手続を例示してみました。なお、下記の要約(連結)B/Sは説明の便宜の観点から作成したものであり、実際は重要なものを区分し、その他はまとめて記載してもよいとされています(「手引き」Q2より)。
損益計算書項目に関する簡便な手続の具体例
要約(連結)P/Lの作成にあたり「手引き」で許容されている簡便な手続は以下の通り(引当金繰入額や売上原価については前ページを参照下さい)。
減価償却費:年間償却予定額の月割り額を計上するだけでよい。また、定率法を採用している場合、年間償却予定額につき四半期の月数に応じて按分する方法でよい。
税金費用:四半期P/Lの税引前当期純利益に年間予測税率を乗じて算定してもよい。なお、年間予測税率は中間決算時の簡便法での見積実効税率よりも簡便な方法で算出してよい。
原則として年度決算と同様の手続が求められているもの
- もっとも、すべての科目につき簡便な手続が許容されているわけではありません。有価証券の時価評価(*)やデリバティブの時価評価、特別損益の計上等は、その重要性や性質上、原則として年度決算と同様の手続が必要となります。
* なお、「その他有価証券」のうち、理論価格を求める必要がある等の理由により時価評価に時間を要するため、開示の時期がそれによって遅延する恐れがあるものについては時価評価を省略できます。
課題
金融審議会において四半期開示のルール整備に関する検討が始まろうとしています。四半期開示を法制化するのか、レビューはどうするのか、半期報告書との兼ね合いをどうするのか…下掲した課題は山積している課題のほんの一部といえます。
<第3四半期の扱いをどうするのか>
「手引き」では、第3四半期の開示対象期間について、システムの都合により9ヶ月間の累計を算定することが困難な一部の企業からの要請を取り入れ、第3四半期のみの3ヶ月間の数値に基づいて記載することも可能としています(なお、9ヶ月間の累計に3ヶ月間の数値を併記する方法も可)。しかし、他社との比較という観点から、第3四半期のみの3ヶ月間の数値しか開示しない会社と、9ヶ月間の累計しか開示していない会社とでは比較が困難になることから、疑問の声もあがっています。
<迅速な決算体制の整備>
「開示の時期が遅れても良いから、情報量をふやしてもらいたい」という投資家(19.5%)よりも、「情報量を減らしても良いから、開示の時期を早くしてもらいたい」という投資家(42.1%)の方が多いという調査結果があります(「『情報開示に関するアンケート調査』の調査結果について」東証取引参加者協会調べ)。そのような投資家の期待に応えるため、公開会社としては「手引き」等を参考に簡便な処理を適宜利用して、迅速に開示する体制を整備する必要があります。30日以内に四半期開示をした会社の割合は、四半期開示が根付いているアメリカでは8割以上であるのに対し、我が国では3割程度。公開会社においては連結ベースで迅速に決算しうる体制を早急に整備することが必要といえます。
<公認会計士又は監査法人のレビュー>
「今後の取組み」によると、「四半期財務・業績の概況」は、現行の「四半期業績の概況」と同様に、証券取引所の適時開示の一環とされているため、公認会計士又は監査法人の関与は「形式的には」求められていません。もっとも、適時開示の一環とはいえ、B/SやP/Lの形式により開示される以上、公認会計士又は監査法人による何らかの関与を望む投資家が多いものと思われます。
一方、公認会計士側としては、四半期財務諸表に関する「一般に公正妥当と認められる作成基準」や「一般に公正妥当と認められる監査基準」が整備されない限り、レビュー意見を表明することは困難な面があります。ルール整備を急ぐ必要があります。
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