会社法ニュース2015年03月16日 節税で株クロス取引、課徴金命令は適法(2015年3月16日号・№586) 裁判所、多数回に及ぶ仮装売買等を認定したうえで個人投資家の請求棄却
節税で株クロス取引、課徴金命令は適法
裁判所、多数回に及ぶ仮装売買等を認定したうえで個人投資家の請求棄却
金商法159条1項1号では、有価証券の売買等について、「繁盛等誤解目的」(取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる目的で行う取引)をもって、「仮装売買」(権利の移転を目的としない取引)をすることを禁止している。この規定に違反した者は、金商法の規定により、課徴金の納付が命じられることになる(金商法174①)。
今回紹介する裁判事案で問題となったのは、個人投資家が“節税目的”で多数回行っていた株式クロス取引が、繁盛等誤解目的をもって行われた仮装売買に該当するか否かという点だ。株式クロス取引とは、同一の者が同一銘柄の売り注文と買い注文とを発注し、同一時刻に同一値段で約定させる取引のこと。個人投資家は、特定口座内での株式の取得単価の計算では小数点以下が切り上げられるため、この切り上げ分だけ簿価(取得単価)が高くなる場合があることを利用して、本件クロス取引を多数回行い、実際の利益を圧縮するというメリットを享受していた。具体的には、本件クロス取引を行うことで、平成22年分は約108万円、平成23年分は約154万円の株式譲渡損失を発生させていた。この点に関し個人投資家は、本件クロス取引は節税を主たる目的とする経済的合理性のある取引であるため、仮装売買および繁盛等誤解目的には当たらないと主張した。
しかし、この主張に対し裁判所は、仮装売買に当たるか否かの判断は取引の主観的目的等に左右されないため、仮に節税目的で本件クロス取引が行われたとしても、そのことを理由に仮装売買に当たらないとすることはできないと指摘。また、仮装売買を行う何らかの合理的な理由があるとしても、繁盛等誤解目的がないことになるということはできないと指摘した。そのうえで裁判所は、本件クロス取引は売りと買いを同時に約定させるものであるため、仮装売買に当たると認定。また、裁判所は、①仮装売買が多数回行われていたこと(54営業日中29営業日で36回)、②市場占有率が相対的に高いものであったこと(54営業日中29営業日で16.88%等)などを指摘したうえで、個人投資家は本件クロス取引に関し繁盛等誤解目的を有していたと判断。課徴金納付命令は適法であると結論付けた。
裁判所、多数回に及ぶ仮装売買等を認定したうえで個人投資家の請求棄却
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今回紹介する裁判事案で問題となったのは、個人投資家が“節税目的”で多数回行っていた株式クロス取引が、繁盛等誤解目的をもって行われた仮装売買に該当するか否かという点だ。株式クロス取引とは、同一の者が同一銘柄の売り注文と買い注文とを発注し、同一時刻に同一値段で約定させる取引のこと。個人投資家は、特定口座内での株式の取得単価の計算では小数点以下が切り上げられるため、この切り上げ分だけ簿価(取得単価)が高くなる場合があることを利用して、本件クロス取引を多数回行い、実際の利益を圧縮するというメリットを享受していた。具体的には、本件クロス取引を行うことで、平成22年分は約108万円、平成23年分は約154万円の株式譲渡損失を発生させていた。この点に関し個人投資家は、本件クロス取引は節税を主たる目的とする経済的合理性のある取引であるため、仮装売買および繁盛等誤解目的には当たらないと主張した。
しかし、この主張に対し裁判所は、仮装売買に当たるか否かの判断は取引の主観的目的等に左右されないため、仮に節税目的で本件クロス取引が行われたとしても、そのことを理由に仮装売買に当たらないとすることはできないと指摘。また、仮装売買を行う何らかの合理的な理由があるとしても、繁盛等誤解目的がないことになるということはできないと指摘した。そのうえで裁判所は、本件クロス取引は売りと買いを同時に約定させるものであるため、仮装売買に当たると認定。また、裁判所は、①仮装売買が多数回行われていたこと(54営業日中29営業日で36回)、②市場占有率が相対的に高いものであったこと(54営業日中29営業日で16.88%等)などを指摘したうえで、個人投資家は本件クロス取引に関し繁盛等誤解目的を有していたと判断。課徴金納付命令は適法であると結論付けた。
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