税務ニュース2018年07月30日 債務超過も債権の相続税ゼロ評価を否定(2018年7月30日号・№749) 裁判所、貸付債権の回収が著しく困難であることが確実とは認められず
債務超過も債権の相続税ゼロ評価を否定
裁判所、貸付債権の回収が著しく困難であることが確実とは認められず
中小企業の代表者が会社に資金を貸し付けることが少なくないなか、代表者が貸付金を有したまま死亡したときには、その貸付金について相続税の課税問題が発生する場合がある。本件は、納税者の亡父が代表取締役を務めていたA社(中小企業)に対する貸付債権(以下「本件債権」)の相続税評価額が問題となった税務訴訟である。
納税者は平成24年3月、本件債権を存在しないものとして納付税額をゼロ円とする相続税の申告書を税務署に提出した。これに対し税務署は、A社への照会により債権者を亡父とする借入金残高が約5,700万円存在する旨の回答をA社から受けたことから、本件債権を相続財産とする課税処分を行った。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、債務者であるA社の財務内容(平成19年以降現在まで常に債務超過であること)、収支状況(営業損失が継続して発生する状況で改善の見込みがないこと、事業が継続しても本件債権の返済原資を得ることは困難で回収見込みがないこと)などを踏まえれば、A社から本件債権約5,700万円を回収する可能性がないことは明らかであると指摘し、評価通達205によりゼロ円で評価すべきである旨を主張した。
裁判所はまず、原則として貸付金元本と利息の合計額で貸付金債権を評価すると定めた評価通達204と貸付金債権の評価の例外を定めた評価通達205は合理的であると指摘。そして評価通達205にいう「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」とは、評価通達205(1)ないし(3)の事由と同程度に、債務者が経済的に破綻していることが客観的に明白であり、そのため債権の回収の見込みがないか又は著しく困難であると確実に認められるときをいうものと解すべきとした。本件について裁判所は、A社は毎期債務超過の状態が続いていたものの、相続開始時に営業を継続していたうえ、債権者への返済が遅滞等していた事実が認められないことから、A社が経済的に破綻していることが客観的に明白で本件債権の回収が著しく困難であることが確実とは認められないなどと指摘。本件債権は「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当しないとして、納税者の請求を斥けた。
裁判所、貸付債権の回収が著しく困難であることが確実とは認められず
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納税者は平成24年3月、本件債権を存在しないものとして納付税額をゼロ円とする相続税の申告書を税務署に提出した。これに対し税務署は、A社への照会により債権者を亡父とする借入金残高が約5,700万円存在する旨の回答をA社から受けたことから、本件債権を相続財産とする課税処分を行った。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、債務者であるA社の財務内容(平成19年以降現在まで常に債務超過であること)、収支状況(営業損失が継続して発生する状況で改善の見込みがないこと、事業が継続しても本件債権の返済原資を得ることは困難で回収見込みがないこと)などを踏まえれば、A社から本件債権約5,700万円を回収する可能性がないことは明らかであると指摘し、評価通達205によりゼロ円で評価すべきである旨を主張した。
裁判所はまず、原則として貸付金元本と利息の合計額で貸付金債権を評価すると定めた評価通達204と貸付金債権の評価の例外を定めた評価通達205は合理的であると指摘。そして評価通達205にいう「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」とは、評価通達205(1)ないし(3)の事由と同程度に、債務者が経済的に破綻していることが客観的に明白であり、そのため債権の回収の見込みがないか又は著しく困難であると確実に認められるときをいうものと解すべきとした。本件について裁判所は、A社は毎期債務超過の状態が続いていたものの、相続開始時に営業を継続していたうえ、債権者への返済が遅滞等していた事実が認められないことから、A社が経済的に破綻していることが客観的に明白で本件債権の回収が著しく困難であることが確実とは認められないなどと指摘。本件債権は「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当しないとして、納税者の請求を斥けた。
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