税務ニュース2018年11月19日 消費税課税選択の説明不足で税理士敗訴(2018年11月19日号・№764) 納税者に説明を尽くさずに簡易課税を選択した税理士に損害賠償命じる

消費税課税選択の説明不足で税理士敗訴
納税者に説明を尽くさずに簡易課税を選択した税理士に損害賠償命じる

消費税の簡易課税を選択した税理士に対して、納税者が本則課税を選択した場合との差額(2期分約140万円)の損害賠償を求めた税賠事件で、税理士敗訴(東京地裁平成30年5月25日判決)。
簡易課税の場合と本則課税の場合の各計算式と納付税額を記載した書面の送付をもって、納税者に説明を尽くしたとは認められず。
 法人である納税者(原告)と業務委託契約を締結した税理士(被告)は、税務署から納税者宛てに「消費税の課税売上高のお尋ね」と題する書面が納税者から転送されてきたことから、簡易課税制度選択届出書、課税事業者届出書及び課税売上高の回答を作成した。そして税理士は、これらの書類について納税者の押印をもらったうえで税務署に提出した。簡易課税制度を選択したことにより納税者は、約162万円の消費税等の納税義務を負担したものの、仮に本則課税を選択していれば消費税等の納税義務は約22万円となるはずであった。そこで納税者は、税理士が消費税課税選択制度における善管注意義務に違反して簡易課税制度を選択したために実際に支払義務を負った税額と簡易課税制度を選択しなかった場合の税額との差額(約140万円)に相当する損害を被ったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償を税理士に対して求めた。これに対し税理士は、納税者に対して「消費税の簡易課税と一般課税との比較仮計算書」と題する書面(以下「本件書面」)を送付して納税者に理解を求めたとして、債務不履行責任は負わないと反論した。
 裁判所は、仮に税理士が本件書面を納税者に送付していたとしても、本件書面には単に簡易課税選択の場合と一般課税(本則課税)選択の場合の各計算式と納付税額が記載されているだけであり、そもそも簡易課税制度と本則課税制度とはいかなる制度であるのか、簡易課税制度を選択した場合には2年間は変更できないことについて何らの説明がない点を指摘。本件書面の送付をもって、消費税課税制度の選択について納税者に説明を尽くしたとは到底認められないとした。
 以上の点を踏まえ裁判所は、税理士は納税者に対して説明を尽くすことなく簡易課税制度選択届出書を提出したものというべきであるから、消費税課税制度の選択における善管注意義務違反があったと認定した。そのうえで裁判所は、納税者は税理士の債務不履行により約140万円の損害を被ったとして、税理士に対して損害賠償を命じる判決を下した。

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