会計ニュース2003年11月03日 ASB・固定資産の減損に係る会計基準の適用指針が決定!(2003年11月 3日号・№041) ニュース特集 導入迫る固定資産の減損会計
ニュース特集 導入迫る固定資産の減損会計
平成16年3月期からの早期適用も可能
ASB・固定資産の減損に係る会計基準の適用指針が決定!
企業会計基準委員会(ASB)は10月24日、企業会計基準適用指針第6号となる「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を決定した。固定資産の減損会計は平成18年3月期から全面適用されることになりますが、平成16年3月期からの早期適用が認められているため、これに併せて今回の適用指針が公表されたものです。固定資産の減損会計は、企業にとっては大きな影響を与えることも予想されるため、早めの対応が必要な事項といえます。今回の特集では、8月に公表されていた公開草案からの変更点などを中心にご紹介します(本誌3月17日号、8月11日号参照)。
固定資産の減損会計とは何?
固定資産の減損会計は、すでに米国会計基準や国際会計基準では導入されているもの。今回の導入により、日本の会計基準も国際的に見て遜色のないものになったといえます。
固定資産の減損会計は、時価会計とは異なり、資産又は資産グループの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるよう帳簿価額を減額する会計処理のことです。固定資産の減損会計の全面適用は、平成18年3月期からとなりますが、平成16年3月期からの早期適用も認められています。
固定資産の減損会計の対象となる資産は、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産が対象になりますが、金融商品会計基準における金融資産、税効果会基準における繰延税金資産、研究開発会計基準における市場販売目的のソフトウェアなど、他の基準に減損処理に関する定めがある資産については対象から除かれています。
なお、今回の適用指針では、冒頭の第2項において、固定資産の減損会計における適用指針の基本スタンスが明記されることになりました。
基本的スタンス
固定資産の減損会計は、多種多様な事業を営むそれぞれの企業が、当該企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて将来キャッシュ・フローを見積もることとするなど、その程度や判断を一律に示すことは困難な場合が多い。その中で、本適用指針は、減損の兆候をはじめとして、必要と考えられる範囲において一定の目安や例示を示している。企業は、減損会計基準及び本適用指針の定めに従って減損処理を行うものとするが、これらに定めがないため状況に応じ個々の実態を考慮して適用する場合には、減損会計基準及び本適用指針の趣旨を適切に斟酌する必要がある。
特定の業種は明記せず
固定資産の減損会計を適用する前に行う手順の最初は資産のグルーピング及び減損の有無の検討(減損の兆候)を行うことです。資産のグルーピングでは、資産グループ等のキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位(管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の最小単位)をグルーピングし、この資産グループを単位として減損の有無があるかどうかを検討することになります(図1参照)。
なお、事業全体でのグルーピングを認めるという点について、鉄道事業や電力事業など、特定の業種を適用指針に明記してほしいとのコメントが公開草案に対して寄せられていましたが、最終的には明記されないこととなりました。
定性的な例を追加
資産のグルーピングと同時にそれぞれの資産グループで減損の有無(減損の兆候)を検討することになりますが、適用指針では、減損損失を認識する必要がある資産グループかどうかの例示が盛り込まれており(右記のCheck Point参照)、この例示によって判別していく作業を行います。
今回のポイントとしては、「市場価格の著しい下落の場合」の数値基準です。公開草案には、「例えば、30%程度以上下落したとき」といった下限基準を設けるべきとのコメントが日本公認会計士協会などから寄せられていました。
しかし、数字基準が2つ適用指針に入ると、実務上混乱が予想されるとして、最終的には、市場価格が帳簿価額より50%程度以上下落した場合で決着しています。
ただし、50%程度以上下落していない場合でも、減損の兆候に該当することもありうるため、「例えば、処分が予定されている資産で、市場価格の下落により、減損が生じている可能性が高いと見込まれるときのように、状況に応じ個々の企業において判断することが必要な場合がある」との定性的な例が追加されることになりました。
割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較
なお、減損の兆候を検討した後には、実際に減損損失を認識するかどうかの判定を行います。具体的には、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することになります。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識することになります。
グルーピングの方法の開示
注記については、重要な減損損失を認識した場合に、損益計算書に記載することになります。
具体的には、①減損損失を認識した資産又は資産グループについては、その用途、種類、場所などの概要、②減損損失の認識に至った経緯、③減損損失の金額については、特別損失に計上した金額と主な固定資産の種類ごとの減損損失の内訳、④資産グループについて減損損失を認識した場合には、当該資産グループの概要と資産をグルーピングした方法、⑤回収可能価額が正味売却価額の場合には、その旨及び時価の算定方法、回収可能価額が使用価値の場合にはその旨及び割引率を開示する必要があります。 ⑤の割引率については、「対外競争上の企業秘密を開示することにつながる」といった反対意見が公開草案に寄せられていますが、委員会では許容範囲であるという理由から最終的には開示することになっています。
また、公開草案から追加された項目としては、減損会計基準を適用した初年度において、減損損失を計上しなくても、全般的な資産のグルーピングの方針について、注記することは妨げないとする文言が入ることになりました(図2参照)。
固定資産の減損会計基準では、「重要な減損損失を認識した場合」に注記することになっているため、厳密にいえば、減損損失を計上しなければ、注記する必要はありませんが、透明性の観点から注記することも認めるというものです。
その他の変更点は?
その他、公開草案からの主な変更点をみると、遊休資産の減価償却費について、原則として営業外費用として処理することが明記されています。
また、持分法が適用されている会社の取扱いが新たに追加されています。
具体的には、個別財務諸表上は、資産のグルーピングが当該企業を超えて他の全部または一部とされることはありませんが、連結財務諸表においては、連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が見直される場合がある(減損会計基準意見書四2.(6)①参照)とされています。
しかし、この場合、持分法が適用されている非連結子会社や関連会社は含まれない旨が明らかにされています。
平成16年3月期からの早期適用も可能
ASB・固定資産の減損に係る会計基準の適用指針が決定!
企業会計基準委員会(ASB)は10月24日、企業会計基準適用指針第6号となる「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を決定した。固定資産の減損会計は平成18年3月期から全面適用されることになりますが、平成16年3月期からの早期適用が認められているため、これに併せて今回の適用指針が公表されたものです。固定資産の減損会計は、企業にとっては大きな影響を与えることも予想されるため、早めの対応が必要な事項といえます。今回の特集では、8月に公表されていた公開草案からの変更点などを中心にご紹介します(本誌3月17日号、8月11日号参照)。
固定資産の減損会計とは何?
固定資産の減損会計は、すでに米国会計基準や国際会計基準では導入されているもの。今回の導入により、日本の会計基準も国際的に見て遜色のないものになったといえます。
固定資産の減損会計は、時価会計とは異なり、資産又は資産グループの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるよう帳簿価額を減額する会計処理のことです。固定資産の減損会計の全面適用は、平成18年3月期からとなりますが、平成16年3月期からの早期適用も認められています。
固定資産の減損会計の対象となる資産は、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産が対象になりますが、金融商品会計基準における金融資産、税効果会基準における繰延税金資産、研究開発会計基準における市場販売目的のソフトウェアなど、他の基準に減損処理に関する定めがある資産については対象から除かれています。
なお、今回の適用指針では、冒頭の第2項において、固定資産の減損会計における適用指針の基本スタンスが明記されることになりました。
基本的スタンス
固定資産の減損会計は、多種多様な事業を営むそれぞれの企業が、当該企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて将来キャッシュ・フローを見積もることとするなど、その程度や判断を一律に示すことは困難な場合が多い。その中で、本適用指針は、減損の兆候をはじめとして、必要と考えられる範囲において一定の目安や例示を示している。企業は、減損会計基準及び本適用指針の定めに従って減損処理を行うものとするが、これらに定めがないため状況に応じ個々の実態を考慮して適用する場合には、減損会計基準及び本適用指針の趣旨を適切に斟酌する必要がある。
特定の業種は明記せず
固定資産の減損会計を適用する前に行う手順の最初は資産のグルーピング及び減損の有無の検討(減損の兆候)を行うことです。資産のグルーピングでは、資産グループ等のキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位(管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の最小単位)をグルーピングし、この資産グループを単位として減損の有無があるかどうかを検討することになります(図1参照)。
なお、事業全体でのグルーピングを認めるという点について、鉄道事業や電力事業など、特定の業種を適用指針に明記してほしいとのコメントが公開草案に対して寄せられていましたが、最終的には明記されないこととなりました。
定性的な例を追加
資産のグルーピングと同時にそれぞれの資産グループで減損の有無(減損の兆候)を検討することになりますが、適用指針では、減損損失を認識する必要がある資産グループかどうかの例示が盛り込まれており(右記のCheck Point参照)、この例示によって判別していく作業を行います。
今回のポイントとしては、「市場価格の著しい下落の場合」の数値基準です。公開草案には、「例えば、30%程度以上下落したとき」といった下限基準を設けるべきとのコメントが日本公認会計士協会などから寄せられていました。
しかし、数字基準が2つ適用指針に入ると、実務上混乱が予想されるとして、最終的には、市場価格が帳簿価額より50%程度以上下落した場合で決着しています。
ただし、50%程度以上下落していない場合でも、減損の兆候に該当することもありうるため、「例えば、処分が予定されている資産で、市場価格の下落により、減損が生じている可能性が高いと見込まれるときのように、状況に応じ個々の企業において判断することが必要な場合がある」との定性的な例が追加されることになりました。
割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較
なお、減損の兆候を検討した後には、実際に減損損失を認識するかどうかの判定を行います。具体的には、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することになります。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識することになります。
減損の兆候 ①営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合 おおむね過去2期(ただし、当期の見込みが明らかにプラスの場合は減損の兆候に該当せず) ②使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合 事業を廃止又は再編成、当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを処分など ③経営環境の著しい悪化の場合 材料価格の高騰や商品販売量の著しい減少、技術革新による著しい陳腐化、重要な法律改正や規制緩和や規制強化などの法律的環境の著しい悪化 ④市場価格の著しい下落の場合 市場価格が帳簿価額よりも50%程度以上下落 |
グルーピングの方法の開示
注記については、重要な減損損失を認識した場合に、損益計算書に記載することになります。
具体的には、①減損損失を認識した資産又は資産グループについては、その用途、種類、場所などの概要、②減損損失の認識に至った経緯、③減損損失の金額については、特別損失に計上した金額と主な固定資産の種類ごとの減損損失の内訳、④資産グループについて減損損失を認識した場合には、当該資産グループの概要と資産をグルーピングした方法、⑤回収可能価額が正味売却価額の場合には、その旨及び時価の算定方法、回収可能価額が使用価値の場合にはその旨及び割引率を開示する必要があります。 ⑤の割引率については、「対外競争上の企業秘密を開示することにつながる」といった反対意見が公開草案に寄せられていますが、委員会では許容範囲であるという理由から最終的には開示することになっています。
また、公開草案から追加された項目としては、減損会計基準を適用した初年度において、減損損失を計上しなくても、全般的な資産のグルーピングの方針について、注記することは妨げないとする文言が入ることになりました(図2参照)。
固定資産の減損会計基準では、「重要な減損損失を認識した場合」に注記することになっているため、厳密にいえば、減損損失を計上しなければ、注記する必要はありませんが、透明性の観点から注記することも認めるというものです。
その他の変更点は?
その他、公開草案からの主な変更点をみると、遊休資産の減価償却費について、原則として営業外費用として処理することが明記されています。
また、持分法が適用されている会社の取扱いが新たに追加されています。
具体的には、個別財務諸表上は、資産のグルーピングが当該企業を超えて他の全部または一部とされることはありませんが、連結財務諸表においては、連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が見直される場合がある(減損会計基準意見書四2.(6)①参照)とされています。
しかし、この場合、持分法が適用されている非連結子会社や関連会社は含まれない旨が明らかにされています。
column | 減損会計専門委員会のその後は? 10月24日の企業会計基準委員会において、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」が決定されたため、約1年にわたる同委員会に設置された減損会計専門委員会の役割も終えたことになります。 減損会計専門委員会では、固定資産の減損会計に係るQ&Aなどは作成しないことを明らかにしていますが、実際の適用は早くても来年の3月期からということになるため、今後、何らかの実務上の問題が出てくることも十分考えられます。日本公認会計士協会からは、固定資産の減損会計に係る監査上の取扱いを作成することが想定されますが、監査上の取扱いだけでなく、会計処理上の統一的な見解を明らかにする必要がある場面も想定されるため、減損会計専門委員会は解散せずに、当面の間、存続させることになっています。 |
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