解説記事2020年10月19日 税制改正解説 令和2年度における連結納税制度の見直し関係の改正について(2020年10月19日号・№854)
税制改正解説
令和2年度における連結納税制度の見直し関係の改正について
千々松佳保
はじめに
令和2年度税制改正においては、持続的な経済成長の実現に向けた特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例の創設、投資及び賃上げを促すための法人税額から控除される特別控除額の特例等の見直し並びに連結納税制度の見直しを行うとともに、経済社会の構造変化を踏まえた未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し並びに非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税制度の見直し並びに消費税の申告期限を延長する特例の創設等を行うこととされた。
このうち連結納税制度の見直し関係については、連結納税制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、損益通算の基本的な枠組みは維持しつつ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行うこととされた。
これらの改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」は、去る3月27日に参議院本会議で可決・成立し、同月31日に令和2年法律第8号として公布されている。また、次の関係政省令についても、それぞれ次のとおり公布されている。
・法人税法施行令等の一部を改正する政令(令2.6.26政令第207号)
・法人税法施行規則等の一部を改正する省令(令2.6.30財務省令第56号)
連結納税制度の見直し
1 見直しの概要
(1)見直しの概要
連結納税制度が見直され、法人格を有する各法人を納税単位として、課税所得金額及び法人税額の計算並びに申告は各法人がそれぞれ行うこととし、同時に企業グループの一体性に着目し、課税所得金額及び法人税額の計算上、企業グループをあたかも一つの法人であるかのように捉え、損益通算等の調整を行う仕組み(グループ通算制度)とされた。これに伴い、連結納税義務者及び各連結事業年度の連結所得に対する法人税に関する規定(旧法人税法第1編第2章の2及び第2編第1章の2)は削除された。
グループ通算制度の適用は、連結納税制度と同様に、納税者の選択によることとされ、損益通算等の適用を受けるための承認すなわち法人税法第64条の9第1項の規定による承認(通算承認)を受けることが必要とされている。
また、修更正事由が生じた場合についても、企業グループ内の一法人の事後的な課税所得金額又は法人税額の修正が、その企業グループ内の他の法人の課税所得金額又は法人税額の計算に波及しない仕組みとされるなど、事務負担の軽減を図るための簡素化がされた。
さらに、時価評価課税及び欠損金の切捨て等について、組織再編税制と整合性がとれた制度とし、課税の中立性の確保が図られた。
(2)適用関係及び経過措置
① 原則
上記(1)の連結納税制度の廃止及びグループ通算制度への移行に関する改正は、原則として、法人の令和4年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税及び同日以後に開始する課税事業年度の基準法人税額に対する地方法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税及び連結法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した連結事業年度の連結所得に対する法人税並びに法人の同日前に開始した課税事業年度の基準法人税額に対する地方法人税については、従来どおり適用することとされた(改正法附則14、令和2年6月改正法令等附則2、令和2年6月改正法規等附則2)。
② 連結納税の承認に関する経過措置
イ 令和4年4月1日前にされた連結納税の承認の申請であって、改正法(連結納税の見直しに係る部分に限る。)の施行の際、承認又は却下の処分がされていないものは、次のロの適用がある場合を除き、通算承認の申請とみなすこととされた(改正法附則15①)。
ロ 連結親法人となる内国法人の連結申請特例年度が令和4年4月1日前に開始した事業年度である場合におけるその内国法人及び他の内国法人(時価評価法人及び関連法人を除く。)、他の内国法人の連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった日(加入時期の特例の適用を受ける場合には、同日の属する月次決算期間の末日の翌日)が同月1日前に開始した連結親法人事業年度の期間内の日である場合における当該他の内国法人並びに他の内国法人(時価評価法人及び関連法人を除く。)の親法人との間に完全支配関係を有することとなった日(加入時期の特例の適用を受ける場合には、同日の属する月次決算期間の末日の翌日)が同月1日前に開始した連結申請特例年度の期間内の日である場合における当該他の内国法人に対する連結納税の承認については、従前どおりとされた(改正法附則15②)。
この場合において、これらの他の内国法人のその承認の効力が生ずる日の前日の属する事業年度(令和4年4月1日以後に開始するものに限る。)は、上記①の旧事業年度とみなして、旧法人税法第61条の12その他政令で定める規定を適用することとされた(改正法附則15②後段、令和2年6月改正法令等附則5)。
③ 連結納税の承認の取消し等に関する経過措置
イ 令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結法人につき旧法人税法第4条の5第1項各号に掲げる事実がある場合におけるその連結法人に対する国税庁長官の職権による連結納税の承認の取消しについては、従前どおりとされた(改正法附則16①)。
ロ 次の事実が生じた場合における連結納税の承認の取消し(みなし取消し)については、従前どおりとされた(改正法附則16②)。
(イ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結親法人と内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)との間にその内国法人による完全支配関係(連結除外法人及び外国法人が介在しない関係に限る。)が生じたこと。
(ロ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結親法人に連結子法人がなくなったことにより、連結法人が当該連結親法人のみとなったこと。
(ハ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結親法人の解散
(ニ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結子法人の解散(合併又は破産手続開始の決定による解散に限る。)又は残余財産の確定
(ホ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結子法人が連結親法人との間に当該連結親法人による連結完全支配関係を有しなくなったこと((イ)、(ハ)、(ニ)、(へ)又は(ト)の事実に基因するものを除く。)。
(へ)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結親法人が公益法人等に該当することとなったこと。
(ト)令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結親法人と内国法人(公益法人等に限る。)との間にその内国法人による完全支配関係(連結除外法人及び外国法人が介在しない関係に限る。)がある場合において、その内国法人が普通法人又は協同組合等に該当することとなったこと。
ハ 令和4年4月1日前に開始した連結親法人事業年度が終了していない連結法人に対する連結納税の取りやめの承認については、従前どおりとされた(改正法附則16③)。
④ 連結納税に関する規定の削除に伴う経過措置
単体納税制度の条項において、その法人が過去において連結納税制度を適用していた場合又は取引の相手方において連結納税制度を適用している場合にこれらの連結納税制度の適用上生じた金額や事象を用いている規定は、各連結事業年度の連結所得に対する法人税に関する規定の削除に伴い削除されているが、令和4年4月1日以後に開始する事業年度においても過去において又は取引の相手方において連結納税制度の適用上生じた金額や事象を考慮する必要があるものについては、原則として、従来どおり適用することとされた(改正法附則21、23、24、25①⑤、26①⑤等)。
また、連結親法人が連結法人である内国法人について届出をしていた場合又は指定、承認若しくは認定を受けていた場合には、その内国法人のその届出の日以後に終了する事業年度又はその指定、承認若しくは認定の効力が生ずる日以後に終了する事業年度においては、その届出はその内国法人がしていたものと、その指定、承認又は認定はその内国法人が受けていたものと、それぞれみなすこととされた(令和2年6月改正法令等附則39①)。
2 損益通算
(1)損益通算制度の内容
① 原則
通算法人の通算前所得金額の生ずる事業年度(所得事業年度)終了の日において通算完全支配関係がある他の通算法人の同日に終了する事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合には、通算前欠損金額の合計額を各通算法人の通算前所得金額の比で按分した金額(通算対象欠損金額)をその通算法人のその所得事業年度の損金の額に算入し、通算法人の通算前欠損金額の生ずる事業年度(欠損事業年度)終了の日において通算完全支配関係がある他の通算法人の同日に終了する事業年度において通算前所得金額が生ずる場合には、通算前所得金額の合計額を各通算法人の通算前欠損金額の比で按分した金額(通算対象所得金額)をその通算法人のその欠損事業年度の益金の額に算入することとされた(法法64の5①〜④)。
② 遮断措置
通算法人の通算前所得金額又は通算前欠損金額が期限内申告書に添付された書類に通算前所得金額又は通算前欠損金額として記載された金額と異なる場合には、その記載された通算前所得金額又は通算前欠損金額を上記①の通算前所得金額又は通算前欠損金額とみなして①の計算をすることとされた(法法64の5⑤)。
③ 欠損事業年度の全体再計算
通算事業年度(期限内申告書を提出した事業年度に限る。)のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、期限内申告における所得の金額が0又は欠損金額がある等の要件に該当するときは、上記②は、適用しないこととされた(法法64の5⑥、法令131の7①)。
④ 法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合の全体再計算
税務署長は、通算法人の各事業年度の所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算につき遮断に関する規定を適用したならば一定の事実が生じ、その通算法人又は他の通算法人の当該各事業年度終了の日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税の負担を不当に減少させる結果となると認めるときは、当該各事業年度及び他の通算法人の当該各事業年度終了の日に終了する事業年度については、上記②を適用しないことができることとされた(法法64の5⑧)。
(2)共同事業性がない場合等の損益通算の対象となる欠損金額の特例
通算法人で時価評価除外法人に該当するものが、通算承認の効力が生じた日の5年前の日からその通算承認の効力が生じた日まで継続してその通算法人に係る通算親法人との間に支配関係がある場合に該当しない場合において、その通算承認の効力が生じた後にその通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合に該当しないときは、次の事業年度の区分に応じそれぞれ次の金額は、上記(1)の適用については、ないものとすることとされた(法法64の6①〜③)。
① 下記②の事業年度以外の事業年度……その通算法人の当該事業年度(下記5(3)の適用がある事業年度を除く。)において生ずる通算前欠損金額のうち当該事業年度の適用期間において生ずる特定資産譲渡等損失額に達するまでの金額
② 多額の償却費の額が生ずる事業年度……その通算法人の適用期間内の日の属する多額の償却費の額が生ずる事業年度において生ずる通算前欠損金額
3 欠損金の通算等
(1)通算法人の繰越控除の対象とならない欠損金額等
① 時価評価法人の通算開始・加入前の欠損金額の切捨て
通算法人が時価評価除外法人に該当しない場合には、その通算法人の通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においては、同日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額は、ないものとすることとされた(法法57⑥)。
② 共同事業性がない場合等の欠損金額の切捨て
通算法人で時価評価除外法人に該当するものが通算承認の効力が生じた日の5年前の日等からその通算承認の効力が生じた日まで継続してその通算法人に係る通算親法人との間に支配関係がある場合に該当しない場合で、かつ、その通算法人について通算承認の効力が生じた後にその通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合に該当しない場合において、支配関係発生日以後に新たな事業を開始した場合には、その通算法人のその通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度(同日の属する事業年度終了の日後にその新たな事業を開始した場合には、その開始した日以後に終了する各事業年度)においては、支配関係事業年度前の事業年度において生じた欠損金額及び支配関係事業年度以後の事業年度において生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額は、ないものとすることとされた(法法57⑧)。
(2)欠損金の通算
通算法人の欠損金の繰越控除の適用を受ける事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額はその通算法人の特定欠損金額と各通算法人の欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額(非特定欠損金額)の合計額を各通算法人の特定欠損金の繰越控除後の損金算入限度額の比で配分した金額との合計額とし、繰越控除はそれぞれ次の金額を限度とすることとされた(法法64の7①②)。
① 特定欠損金額……各通算法人の損金算入限度額の合計額を各通算法人の特定欠損金額のうち欠損金の繰越控除前の所得の金額に達するまでの金額の比で配分した金額
② 非特定欠損金額……各通算法人の特定欠損金の繰越控除後の損金算入限度額の合計額を各通算法人の配分後の非特定欠損金額の比で配分した金額
(3)遮断措置
① 他の通算法人の当該事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に添付された書類に当該事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額として記載された金額と異なる場合には、その記載された金額を当該事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額とみなすこととされた(法法64の7④)。
② 通算法人の当該事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に添付された書類に当該事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額として記載された金額と異なる場合には、欠損金額及び損金算入限度額で期限内申告において他の通算法人との間で授受した金額を固定する調整をした上で、その通算法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算することとされた(法法64の7⑤)。
(4)全体再計算
通算法人の適用事業年度又は他の事業年度のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、次の場合のいずれかに該当するときは、適用事業年度については、上記(3)は適用しないこととされた(法法64の7⑧)。
① 上記2(1)③の適用がある場合
② 上記2(1)④の適用がある場合
4 損益通算及び欠損金の通算のための承認
(1)通算制度の承認を受けることができる法人については、次の法人を除外するほか、連結納税制度と同様とされた(法法64の9①)。
① 青色申告の承認の取消しの通知を受けた法人でその通知を受けた日から同日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
② 青色申告の取りやめの届出書の提出をした法人でその提出日から同日以後1年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
(2)通算制度の承認の手続及び要件並びに承認の失効及び適用の取りやめについて、次の見直しを行うほか、連結納税制度と同様とされた(法法64の9②〜⑨、64の10)。
① 親法人の設立事業年度の翌事業年度から通算制度を適用しようとする場合の承認申請期限の特例について、親法人がその資産の時価評価による評価損益を計上する必要がある場合及び設立事業年度が3月以上の場合には適用できないこととされた。
② 承認の却下事由に、備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があることが追加された。
③ 青色申告の承認の取消しの通知を受けた場合には、その通知を受けた日から通算承認は効力を失うものとし、通算制度固有の取消事由を設けないこととされた。
5 通算制度の開始又は通算制度への加入に伴う資産の時価評価等
(1)通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益
通算承認を受ける内国法人(時価評価の対象とならない一定の法人を除く。)が通算開始直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、その通算開始直前事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法法64の11①)。
(2)通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益
通算グループに加入する内国法人(時価評価の対象とならない一定の法人を除く。)が通算加入直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、その通算加入直前事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法法64の12①)。
(3)特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
通算法人で時価評価除外法人に該当するものが通算承認の効力が生じた日の5年前の日等からその通算承認の効力が生じた日まで継続してその通算法人に係る通算親法人との間に支配関係がある場合に該当しない場合で、かつ、その通算承認の効力が生じた後にその通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合に該当しない場合において、支配関係発生日以後に新たな事業を開始したときには、その通算法人のその通算承認の効力発生日等からその効力発生日以後3年を経過する日と支配関係発生日以後5年を経過する日とのいずれか早い日までの間に生ずる特定資産譲渡等損失額を損金不算入とすることとされた(法法64の14①)。
6 通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価等
通算法人が通算承認の効力を失う場合において、一定の要件に該当するときは、その通算法人の通算終了直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、その通算終了直前事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法法64の13①)。
7 通算子法人株式の取扱い
(1)通算法人が有する他の通算法人(通算親法人を除く。)の株式又は出資の評価損益及び他の通算法人(通算親法人を除く。)の株式又は出資の当該他の通算法人以外の通算法人に対する譲渡損益は、計上しないこととされた(法法25④、33⑤、61の11⑧)。
(2)通算制度の開始又は通算制度への加入をする法人(親法人を除く。)で親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれていないものの株式又は出資を通算制度の開始直前又は通算制度への加入時に有する内国法人は、その株式又は出資について、時価評価により評価損益を計上することとされた(法法64の11②、64の12②)。
(3)内国法人の有する株式を発行した他の通算法人について通算終了事由が生じた場合には、その株式のその通算終了事由が生じた時の直後の移動平均法により算出した1単位当たりの帳簿価額は、その通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額に簿価純資産不足額を加算し、又はその通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額から簿価純資産超過額を減算した金額をその株式の数で除して計算した金額とされた(法令119の3⑤)。
8 事業年度
通算子法人の事業年度については、次の見直しを行うほか、通算親法人の事業年度開始の時にその通算親法人との間に通算完全支配関係がある通算子法人の事業年度はその開始の日に開始するものとし、通算親法人の事業年度終了の時にその通算親法人との間に通算完全支配関係がある通算子法人の事業年度はその終了の日に終了するものとする等、連結納税制度と同様に、通算親法人の事業年度に合わせた事業年度とされた(法法14)。
(1)加入時期の特例について、改正前の措置との選択で、その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する会計期間の末日の翌日を承認の効力発生日及び事業年度開始の日とすることができる措置が追加された。
(2)離脱法人の離脱日に開始する事業年度終了の日を親法人の事業年度終了の日とする措置が廃止された。
9 税効果相当額の授受
内国法人が他の内国法人との間で通算税効果額を授受する場合には、その授受する金額は、損金の額及び益金の額に算入しないこととされた(法法26④、38③)。
10 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入
(1)通算法人である内国法人が民事再生による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入の適用を受ける場合において、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けるときは、損金算入額の上限となる「その事業年度の所得の金額」は、次の金額のうちいずれか少ない金額とされた(法法59⑤)。
① その内国法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額
② 各通算法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額の合計額
(2)通算法人の会社更生による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入又は民事再生による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入により損金算入の対象となる債務免除益等の金額について、一定の債権を有する者及び株主等から除かれる者は、その適用を受ける事業年度終了の日がその内国法人に係る通算親法人の事業年度終了の日である場合における他の通算法人でその適用を受ける事業年度終了の日にその事業年度が終了するものとされた(法法59①一・二②一・二③一・二)。
11 法人税率
(1)通算法人の適用税率
通算法人の法人税率は、通算法人ごとにそれぞれの税率を適用することとされた(法法66、措法67の2、68)。
(2)中小通算法人の軽減対象所得金額
中小通算法人(大通算法人以外の普通法人である通算法人をいう。以下同じ。)の各事業年度の所得の金額のうち軽減対象所得金額は、800万円を通算グループ内の各中小通算法人の所得の金額の比で按分した金額とされた(法法66⑦)。
(3)遮断措置
上記(2)を適用する場合において、所得の金額が中小通算法人の事業年度又は他の中小通算法人の事業年度(通算事業年度)の期限内申告書にその通算事業年度の所得の金額として記載された金額(当初申告所得金額)と異なるときは、当初申告所得金額を所得の金額とみなして軽減対象所得金額を計算することとされた(法法66⑧)。
(4)全体再計算
通算事業年度のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、上記(3)を適用しないものとした場合における通算グループ内の所得の金額の合計額が800万円以下である場合等に該当するときは、中小通算法人の各事業年度については、上記(3)は、適用しないこととされた(法法66⑨)。
12 特定同族会社の特別税率(留保金課税)
特定同族会社の特別税率について、所得基準の基礎となる所得の金額は各通算法人の損益通算前の所得の金額とし、通算法人の配当等として留保金額から控除される金額は通算グループ外の者に対する配当等の額をその原資を負担した通算法人に配賦した金額とする等の調整を行うこととされた(法法67、法令139の8)。
13 中小企業向け措置が適用されない通算法人
大通算法人については、次の制度における中小企業向け措置を適用しないこととされた(法法52①一、57⑪一、66⑥、67①、措法57の9)。
(1)貸倒引当金制度
(2)欠損金の繰越控除制度
(3)各事業年度の所得に対する法人税の税率
(4)特定同族会社の特別税率(留保金課税)
14 所得税額控除
元本を保有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額における簡便な方法による計算については通算法人ごとに計算することとされ、配当等の元本を通算法人への他の通算法人からの移転(一定の事由によるものを除く。)により取得した場合には、移転をした通算法人の元本を所有していた期間を、移転を受けた通算法人の元本を所有していた期間とみなすこととされた(法令140の2④⑤)。
15 申告
(1)予定申告
清算中の通算子法人を対象とすることとし、通算子法人にあっては、通算親法人事業年度が6月を超え、かつ、通算親法人事業年度開始の日以後6月を経過した日において通算完全支配関係がある場合に中間申告をしなければならないこととした上、通算親法人である協同組合等との間に通算完全支配関係がある通算子法人は中間申告を要しないこととされた(法法71①)。
(2)仮決算による中間申告
通算子法人の中間期間は当該事業年度開始の日から通算親法人事業年度開始の日以後6月を経過した日の前日までの期間とし、他の通算法人のいずれかが仮決算による中間申告を行わなかった場合には、中間申告をすべき法人であるかどうかに応じて、前期実績額による中間申告を行った、又は中間申告を行わなかったものとみなすこととされた(法法72①⑤)。
(3)確定申告書の提出期限の延長
通算法人に係る災害等により決算が確定しない場合等の申告書の提出期限の延長及び確定申告書の提出期限の延長の特例の申請は通算親法人が行うものとし、確定申告書の提出期限の延長の特例について、連結納税制度と同様に、延長月数を原則2月とすることとされたほか、通算親法人に延長処分があった場合における通算子法人及び延長の特例を受けている通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなった内国法人は、延長の特例により申告書の提出期限が延長されたものとみなすこととされた(法法75⑧、75の2⑪)。
(4)通算法人の災害等による申告書の提出期限の延長
国税通則法の災害等による期限延長制度により通算法人の法人税の申告書の提出期限が延長された場合には、他の通算法人についても、その延長された申告書に係る提出期限まで、申告書の提出期限が延長されたものとみなすこととされた(法法75の3、法令150の3②)。
(5)電子情報処理組織による申告
通算法人の法人税の申告については、申告書記載事項又は添付書類記載事項を電子情報処理組織を使用する方法により提供すること等により行わなければならないこととされた(法法75の4)。
16 欠損金の繰戻しによる還付
(1)通算法人の繰戻しの対象となる欠損金額は、その通算法人及び他の通算法人の欠損金額の合計額を、各通算法人の還付所得事業年度の所得の金額の比で配分した金額とされた(法法80⑦⑧)。
(2)通算法人の欠損金額のうち繰戻還付の対象としたことにより翌期以後繰越控除の対象外とされる金額は、欠損事業年度の欠損金額に各通算法人の還付を受けるべき金額の計算の基礎となった金額の合計額が各通算法人の欠損金額の合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とすることとされた(法法80⑫⑬)。
17 青色申告
(1)青色申告の承認を受けていない内国法人が通算承認を受けた場合には、通算承認の効力が生じた日において青色申告の承認があったものとみなすこととされた(法法125②)。
(2)通算法人に対する青色申告の承認の取消しは、その取消しの処分に係る通知を受けた日の前日の属する事業年度以後の各事業年度についてその承認の効力を失うこと等とされた(法法127③④)。
(3)通算法人は、青色申告の取りやめの届出ができないこととされた(法法128)。
18 推計による更正又は決定
税務署長は、通算法人(通算法人であった内国法人を含む。)の青色申告書に係る法人税のうち、青色申告の承認の取消事由に該当する事業年度から当該事業年度後の事業年度のうち最初に青色申告書以外の申告書を提出する事業年度の前事業年度までの各事業年度に係る法人税については、推計課税をすることができることとされた(法法131)。
19 行為又は計算の否認
税務署長は、通算法人又は他の通算法人の行為又は計算で法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その通算法人に係る課税標準、税額等を計算すること等ができることとされた(法法132の3)。
20 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う税額の還付の特例
本制度は各通算法人について適用することとされた(法法135)。
21 連帯納付の責任
通算法人は、他の通算法人の各事業年度の所得に対する法人税でその通算法人と他の通算法人との間に通算完全支配関係がある期間内に納税義務が成立したものについて、連帯納付の責めに任ずることとされた(法法152①)。
22 罰則
通算法人の法人税のほ脱犯・不正受還付犯については、他の通算法人の代表者等が違反行為を行った場合のこれらの者も、ほ脱犯・不正受還付犯とすることとされた(法法159①)。
連結納税制度の見直しに伴うグループ法人税制等の見直し
1 受取配当等の益金不算入
(1)株式等の区分の判定方法の見直し
関連法人株式等及び非支配目的株式等の判定について、内国法人との間に完全支配関係(改正前:連結完全支配関係)がある法人が有する株式又は出資の数又は金額を含めて行うこととされた(法法23④⑥、法令22①、22の3①)。
(2)負債利子控除額の見直し
① 原則
関連法人株式等に係る配当等の額の益金不算入額から控除される負債の利子の額は、その配当等の額の4%相当額とされた(法法23①、法令19①)。
② 特例
その適用事業年度に係る支払利子等の額の合計額の10%相当額がその適用事業年度において受ける関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の4%相当額以下である場合は、関連法人株式等に係る配当等の額の益金不算入額から控除される負債の利子の額はその適用事業年度に係る支払利子等の額の合計額の10%相当額を配当等の額の比で配分した金額とすることができることとされた(法令19②)。
③ 通算法人の支払利子等の額のグループ調整計算
上記②の適用を受ける法人が通算法人である場合には、その適用事業年度に係る支払利子等の額の合計額は、各通算法人の支払利子等の額(他の通算法人に対するものを除く。)の合計額(支払利子合計額)を合計した金額を各通算法人の適用関連法人配当等の額の合計額の比で配賦した金額とされた(法令19④)。
④ 通算法人の支払利子等の額のグループ調整計算の遮断措置
通算事業年度に係る支払利子合計額又はその通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額が当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額と異なる場合には、その通算法人に対する上記②及び③の適用については、当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額をその通算事業年度に係る支払利子合計額又はその通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額とみなすこととされた(法令19⑤)。
⑤ 通算法人の支払利子等の額のグループ調整計算の全体再計算
通算事業年度のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、各通算法人の支払利子合計額を合計した金額の10%相当額が各通算法人の適用関連法人配当等の額の合計額を合計した金額の4%相当額を超える場合等に該当するときは、通算法人の通算事業年度については、上記④は、適用しないこととされた(法令19⑦)。
2 寄附金の損金不算入
一般の寄附金の損金算入限度額及び特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額の計算の基礎となる資本金等の額について資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額とすることとされるとともに、これらの損金算入限度額の計算上の所得の金額について損益通算等の一定の規定を適用しないで計算することとされた(法法37①④、法令73①一イ②、77の2①一イ)。
3 貸倒引当金
貸倒引当金の対象となる個別評価金銭債権及び一括評価金銭債権に含まないものとされる金銭債権が、内国法人がその内国法人との間に完全支配関係(改正前:連結完全支配関係)がある他の法人に対して有する金銭債権とされた(法法52⑨二)。
4 資産の譲渡に係る特別控除額の特例
法人及び完全支配関係法人の資産の譲渡につき、その法人及び完全支配関係法人が資産の譲渡に係る特別控除制度により損金算入する金額の合計額は、完全支配関係があるグループ全体で5,000万円を限度とすることとされた(措法65の6)。
連結納税制度の見直しに伴う租税特別措置法の改正
1 改正の概要
前述のとおり、連結納税制度が見直され、グループ通算制度の創設及び修更正事由が生じた場合の事務の簡素化が行われるとともに、組織再編税制との整合性がより一層図られたことに合わせて、租税特別措置法及び東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律に規定する各特例措置(措置法等特例措置)についても、グループ通算制度を前提とした仕組みへと改正することとされた。
(1)令和2年度改正に係る基本的考え方
措置法等特例措置には、それぞれにおいて適用期限が定められているものが存在することを踏まえ、今般の改正についても一律に行うのではなく、措置法等特例措置のうち、通算制度の施行日(令和4年4月1日)以後に適用のない規定、すなわち、同日前に適用期限が到来する措置法等特例措置については、令和2年度改正においては、規定の整備を含めて基本的に改正を行わないこととされた。ただし、改正を要する措置法等特例措置における定義語の引用等に必要な改正は、例外的に行われている(措法42の12の5③九、措令27の6①等)。
(2)改正の概要
法人税法における連結納税制度の廃止及びグループ通算制度への移行に関する改正に伴い、上記(1)の措置法等特例措置の改正のほか、連結法人の措置法等特例措置の規定が削除されるとともに、用語の意義が整備された(措法2②、旧措法第3章第9節〜第25節、震災税特法2③、旧震災税特法23〜30の2)。
(3)中小企業者の判定
連結法人の措置法等特例措置のうち中小連結法人の投資促進税制などのいわゆる中小企業特例の対象とされる中小連結法人は、連結親法人が中小企業者である場合のその連結親法人又はその連結子法人(資本金の額又は出資金の額が1億円以下のものに限る。)とされていた(旧措令39の41①)。
グループ通算制度における中小企業者の判定(いわゆる中小企業特例の適用を受けることができるか否かの判定)は、通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が中小企業者に該当しない場合には、その通算グループ内の法人の全てが中小企業者に該当しないものとして、いわゆる中小企業特例の適用ができないこととされた。
また、連結納税制度において適用除外事業者の判定は、連結所得の金額を基準として行うこととされ、実質、連結グループ全体で判定していたところだが、グループ通算制度においては、これまでの単体制度と同様に、通算グループ内の法人ごとにその所得の金額を基準として行うこととされた上、その通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、中小企業者の判定と親和的となるように、原則としてその通算グループ内の法人の全てが適用除外事業者に該当するものとされた(措法42の4④、43の3②等)。これにより、通算グループ内に適用除外事業者が1法人でもあれば、その通算グループ全体について、いわゆる中小企業特例の適用ができないこととなる。
なお、グループ通算制度における中小企業者及び適用除外事業者は、グループ通算制度を選択していない法人と基本的に変わりがなく、具体的には、改正前と同様に、いわゆる中小企業特例である各措置法等特例措置において規定されており、その各措置法等特例措置に応じた基準が定められているが、各措置法等特例措置の政策目的や仕組みなどに応じて、通算グループ全体の判定についての調整が設けられている場合がある。
(4)適用関係及び経過措置
① 原則
上記(1)の措置法等特例措置の改正のほか、連結法人の措置法等特例措置の規定の削除等の改正は、原則として、法人の令和4年4月1日以後に開始する事業年度(連結子法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した事業年度(旧事業年度。)を除く。)の所得に対する法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度(旧事業年度を含む。)の所得に対する法人税及び連結法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した連結事業年度の連結所得に対する法人税については、従来どおり適用することとされた(改正法附則14、令和2年6月改正法令等附則2、令和2年6月改正法規等附則2)。
② 連結納税に関する規定の削除に伴う経過措置
措置法等特例措置の条項において、その法人が過去において連結法人の措置法等特例措置を適用していた場合又は取引の相手方において連結法人の措置法等特例措置を適用している場合にこれらの連結法人の措置法等特例措置の適用上生じた金額や事象を用いている規定は、連結法人の措置法等特例措置の規定の削除に伴い削除されているが、令和4年4月1日以後に開始する事業年度においても過去において又は取引の相手方において連結法人の措置法等特例措置の適用上生じた金額や事象を考慮する必要があるものについては、原則として、従来どおり適用することとされた(改正法附則113①、114〜116、118〜122、123①〜③⑦〜⑳〜
等)。
2 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(研究開発税制)
(1)通算法人の税額控除限度額の計算等
① 税額控除限度額の計算
通算法人について本制度を適用する場合には、その通算法人の適用対象事業年度における税額控除限度額は、税額控除可能額(通算グループを一体として計算した通算グループ全体で本制度により法人税額から控除できる税額控除限度額)にその通算法人の調整前法人税額がその通算法人及び他の通算法人の調整前法人税額の合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額(税額控除可能分配額)とされた(措法42の4⑧三)。
② 通算法人の研究開発を行うベンチャー企業の税額控除額の上限の特例の適用
適用年度の税額控除額の上限が調整前法人税額の40%相当額(原則:25%)とされる「研究開発を行うベンチャー企業の税額控除額の上限の特例」における通算法人の特例の要件については、イの場合を除くこととされ、ロの場合を含むこととされた(措法42の4②)。
イ 他の通算法人のいずれかの適用年度終了の日を含む事業年度が当該他の通算法人の設立日からその設立日以後10年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度に該当しない場合
ロ 他の通算法人のいずれかの適用年度終了の日に終了する事業年度終了の時において翌期繰越欠損金額(特定欠損金額を除く。)がある場合
③ 遮断措置等
他の通算法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額又は他の通算法人の他の事業年度の所得に対する調整前法人税額が他の通算法人の他の事業年度の確定申告書等に記載された金額と異なる場合には、その記載された金額をそれぞれ他の通算法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額又は他の通算法人の他の事業年度の所得に対する調整前法人税額とみなすこととされたほか、自己の当初申告の数値に誤りがあった場合等には、法人税額の調整等を行うこととされた(措法42の4⑧四)。
④ 進行年度における税額控除額の上限の上乗せ
通算法人等が対象事業年度において、過去適用事業年度における欠損金増加合計額がある場合には、その通算法人等のその対象事業年度において税額控除額の上限の上乗せを行うこととされた。この場合において、通算法人等の対象事業年度における過去事業年度等に係る各欠損金増加額が既確定各欠損金増加額と異なるときは、既確定各欠損金増加額をその過去事業年度等に係る各欠損金増加額とみなすこととされた(措法42の4⑪、租令27の4⑤)。
⑤ 調整対象金額が当初申告税額控除可能額を超える場合の税額控除
青色申告書を提出する内国法人の各対象事業年度終了の時において、過去適用事業年度等における遮断措置を前提とした法人税額の調整等の適用があった場合において、調整対象金額が当初申告税額控除可能額を超えるときは、その内国法人のその各対象事業年度の所得に対する調整前法人税額から、その調整対象金額から当初申告税額控除可能額を控除した金額にその内国法人のその過去適用事業年度に係る控除分配割合を乗じて計算した金額に相当する金額を控除することとされた。この場合において、内国法人の各対象事業年度に係る調整対象基礎額又は控除分配割合が当初申告調整対象基礎額又は当初申告控除分配割合と異なるときは、当初申告調整対象基礎額又は当初申告控除分配割合を各対象事業年度に係る調整対象基礎額又は控除分配割合とみなすこととされた(措法42の4⑬⑭)。
⑥ 法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合の全体再計算の適用がある場合
通算法人の適用対象事業年度において法人税法第64条の5第8項の適用がある場合には、上記③の遮断措置等は適用しないこととされた。この場合において、その適用対象事業年度を過去適用事業年度とする通算法人等の対象事業年度又はその適用対象事業年度を過去適用事業年度とする内国法人の各対象事業年度については、上記④及び⑤の措置の適用は、ないものとすることとされた(措法42の4⑯)。
(2)通算法人の中小企業技術基盤強化税制の適用
中小企業技術基盤強化税制の対象となる通算法人は、中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)又は農業協同組合等(中小通算農業協同組合等に限る。)とされ、通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が中小企業者に該当しない場合には、その通算グループ内の法人の全てが中小企業者に該当しないものとされるとともに、適用除外事業者に該当するものには、通算法人の各事業年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合におけるその通算法人を含むこととされたほか、通算加入適用除外事業年度に係る通算加入適用除外事業者を含まないこととされた(措法42の4④)。
(3)その他の改正
① 試験研究費の範囲等
この制度における試験研究費とされる「他の者に委託をして試験研究を行うその法人のその試験研究のためにその委託を受けた者に対して支払う費用」における当該他の者及びこの制度の対象となる試験研究費の額から控除することとされているその試験研究費に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合における当該他の者について、その法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人をその範囲に含めることとされていたが、グループ通算制度においては、通算グループ内の法人であっても他の者に該当することに疑義がないこと等から規定が削除された。なお、実態は改正前と同じである(措法42の4①⑲一、措令27の4⑦一ロ・二ロ⑧)。
② 調整前法人税額
調整前法人税額となる法人税の額の計算における適用しないで計算する規定に租税特別措置法第42条の14第1項(通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額)が追加された(措法42の4⑲二イ)。
③ 適用除外事業者の判定における調整事由及びその調整事由に該当する場合の所得の金額の年平均額の調整計算の整備
イ 削除
適用除外事業者に該当するか否かの判定をしようとする法人(判定法人)が基準日から中小企業向け租税特別措置の適用を受けようとする事業年度(判定対象年度)開始の日の前日までのいずれかの時において連結法人に該当していたこととの調整事由が削除された(措令27の4⑱)。これに伴い、判定法人が基準日から判定対象年度開始の日の前日までのいずれかの時において連結法人であった場合における所得の金額の年平均額の調整計算の規定も削除されている(措令27の4⑲)。なお、グループ通算制度においては、適用除外事業者に該当するか否かの判定は各通算法人ごとにその所得の金額により行うこととなるため、同様の調整は設けられていない。
ロ 追加(特定合併等の範囲)
判定法人が特定合併等に係る合併法人等に該当するものであることとの調整事由の対象となる特定合併等に、調整対象法人を被合併法人とする合併で、判定法人に係る通算親法人の事業年度開始の日の翌日から判定対象年度(その通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。以下同じ。)終了の日までの間に行われたものが追加された(措令27の4⑳一ニ)。
ハ 所要の整備
上記イの改正に伴い、判定法人が基準日から判定対象年度開始の日の前日までのいずれかの時において公益法人等又は内国法人である人格のない社団等に該当していたこととの調整事由に該当する場合における所得の金額の年平均額の計算について、所要の整備が行われた(措令27の4⑲四)。
④ 特別試験研究費の額の範囲
特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除制度の対象となる特別試験研究のうち新事業開拓事業者等と共同して行う試験研究でその新事業開拓事業者等との契約又は協定に基づいて行われるものについて、その新事業開拓事業者等から除かれる関係法人等が、グループ通算制度への移行に伴い、次の法人とされた(措法42の4⑲十、措令27の4三)。連結納税制度と同様である。
イ その法人が発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。以下同じ。)の総数又は総額の25%以上を有している他の法人(当該他の法人が通算親法人である場合には、他の通算法人を含む。)
ロ その法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の25%以上を有している他の者(当該他の者が通算法人である場合には、他の通算法人を含む。)
ハ その法人との間に法人税法第2条第12号の7の5に規定する支配関係がある他の者
3 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度及び地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(地方拠点強化税制)
(1)地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度
特定建物等とされる資産の最低取得価額が1,000万円以上とされる中小企業者から除かれる適用除外事業者に該当する法人には、通算法人の各事業年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかが適用除外事業者に該当する場合におけるその通算法人を含むこととされたほか、当該他の通算法人には通算加入適用除外事業年度に係る通算加入適用除外事業者を含まないこととされた(措令27の11の3①二②)。
(2)地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度
① 通算法人の税額控除限度額の計算
通算法人の適用年度に係る税額控除限度額の計算については、各通算法人の基準雇用者数の合計を各通算法人の税額控除の対象となる雇用者数の上限とすることとされた(措法42の12⑤一・二)。
② 通算法人の適用要件
通算法人の対象年度については、その対象年度及びその対象年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度において、その通算法人に離職者がいないことにつき証明がされた場合で、かつ、その対象年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人の同日に終了する事業年度及びその事業年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度において当該他の通算法人に離職者がいないことにつき証明がされた場合に限り、適用できることとされた(措法42の12⑧)。
(3)その他の改正
① 他の通算法人の他の事業年度において組織再編成が行われた場合における基準雇用者数の調整計算
本制度の適用を受ける法人についての適用年度に組織再編成が行われた場合における基準雇用者数の調整計算の規定(措令27の12⑬)は、通算法人の適用年度(その通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうち同日に終了する事業年度において本制度の適用を受けないもの(他の非適用通算法人)が当該他の非適用通算法人の同日に終了する事業年度(他の事業年度)において行われた合併に係る合併法人又は当該他の非適用通算法人の他の事業年度において行われた分割等に係る分割法人等若しくは分割承継法人等に該当する場合の当該他の非適用通算法人の他の事業年度の基準雇用者数の計算について準用することとされた(措令27の12⑭)。
② 他の通算法人の他の事業年度において組織再編成が行われた場合における離職者がいないかどうかの判定
本制度の適用を受けようとする法人のその適用を受けようとする事業年度に組織再編成が行われた場合における離職者がいないかどうかの判定の規定(措令27の12⑰)は、通算法人の本制度の適用を受けようとする事業年度(その通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人が当該他の通算法人の同日に終了する事業年度(他の事業年度)開始の日の1年前の日から当該他の通算法人の他の事業年度終了の日までの間に行われた合併、分割、現物出資又は現物分配(現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、他の事業年度開始の日の1年前の日の前日から他の事業年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとされている。)に係る合併法人又は分割承継法人等に該当する場合における離職者がいないかどうかの判定について準用することとされた(措令27の12⑱)。
③ 通算法人の適用要件等に係る雇用者の数の証明に係る書類の整備
通算法人の本制度の適用を受けようとする事業年度(その通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)における適用要件等に係る雇用者の数の証明に係る書類について、所要の整備が行われている(措法42の12①二イロ六八九十、措令27の12③④⑤⑦⑧⑨⑩、措規20の7②〜④)。
4 通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の特例(創設)
(1)通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の特例
内国法人の調整事業年度終了の時において、過大申告の場合又は期限後欠損金額の場合において、要加算調整額があるときは、その調整事業年度の法人税額は、他の税額計算規定等により計算した法人税額に、その要加算調整額を加算した金額とすることとされた。この場合において、事由該当通算法人の他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額が既確定通算前欠損金額と異なる場合には、その既確定通算前欠損金額を当該他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額とみなすこととされた(措法42の14①②)。
(2)通算承認の失効の場合の法人税額の特例
通算法人について、通算承認が効力を失う場合において、その通算法人が失効日前5年以内に開始した各事業年度において特別税額控除規定の適用を受けたときは、その通算法人の失効事業年度の法人税額は、他の税額計算規定等により計算した法人税額に、特別税額控除規定によりその各事業年度の法人税額から控除された金額相当額を加算した金額とすることとされた(措法42の14④)。
5 被災代替資産等の特別償却制度
本制度における特別償却率の割増しの対象となる中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)について、通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が中小企業者に該当しない場合には、その通算グループ内の法人の全てが中小企業者に該当しないものとされるとともに、適用除外事業者に該当するものには、通算法人の各事業年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合におけるその通算法人を含むこととされた(措法43の3②、措令1の2③、27の6①)。
6 準備金等制度
(1)各準備金制度における準備金を積み立てている法人が、青色申告の承認を取り消され、又は青色申告書の取りやめの届出書を提出した場合には、その承認の取消しの基因となった事実のあった日又はその届出書の提出をした日におけるその準備金の金額を益金の額に算入することとされている措置等について、所要の整備が行われた(措法55⑤、56④、57の4⑥、57の4の2④、57の5⑨、57の7⑥、57の7の2⑤、57の8⑥、58⑥、61の2④)。
(2)保険会社等の異常危険準備金制度における準備金を積立後10年を経過した場合(期末残高が洗替保証限度額以下である場合を除く。)に取り崩すこととされる措置における洗替保証限度額の計算における当年度保険料等について、法人税法のみなし事業年度の見直しに伴う所要の整備が行われた(措令33の2⑮)。
(3)中小企業者等の貸倒引当金の特例について、大通算法人は制度の適用ができないこととされたほか、法定繰入率を乗ずる一括評価金銭債権に含まないものとされる金銭債権が、法人がその法人との間に完全支配関係(改正前:連結完全支配関係)がある他の法人に対して有する金銭債権とされた(措法57の9①)。
7 新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除制度
探鉱準備金の金額又は海外探鉱準備金の金額を有する通算法人の各事業年度について本制度の適用を受ける場合には、所得の金額を基礎とする控除限度額の計算におけるその通算法人の所得の金額は、その通算法人及び他の通算法人の通算前所得金額及び通算前欠損金額を基礎として法人税法第64条の5及び第64条の7の規定により計算したその通算法人の所得の金額とされた(措法59③、措令35②〜⑥)。
8 沖縄の認定法人の課税の特例
(1)下記(2)の整備に対応するため、用語の整備が行われた(措法60①②)。
(2)対象内国法人である通算法人について他の対象通算法人の他の事業年度において特定事業等に係る通算前欠損金額が生ずる場合又は他の通算法人の他の事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合には、その通算法人の特定対象事業年度の軽減対象所得金額は、特定事業等欠損控除前所得金額に相当する金額(欠損控除前所得金額が上限とされている。)とされた(措法60④一)。
(3)特例対象内国法人である通算法人について他の通算法人の他の事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合又は他の対象通算法人の他の事業年度において特定事業等に係る通算前欠損金額が生ずる場合に該当する場合には、その通算法人の特例対象事業年度の損金算入額の計算の基礎となる所得の金額は、特例事業者欠損控除前所得金額に相当する金額(欠損控除前所得金額が上限とされている。)とされた(措法60④二)。
(4)内国法人の調整事業年度終了の時において、過大申告の場合又は期限後欠損金額の場合において、要加算調整額があるときは、その要加算調整額は、その調整事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされた(措法60⑥、措令36⑫⑬)。この場合において、事由該当通算法人の他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額が既確定通算前欠損金額と異なる場合には、その既確定通算前欠損金額を当該他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額とみなすこととされた(措法60⑦)。
9 国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例
(1)下記(2)の整備に対応するため、本制度の適用を受ける法人を「対象内国法人」と、その各事業年度を「対象事業年度」と、特定事業にその国家戦略特別区域以外の地域において行われるその特定事業に関連する事業を含めて「特定事業等」とする用語の整備が行われた(措法61①)。
(2)対象内国法人である通算法人について他の対象通算法人の他の事業年度において特定事業等に係る通算前欠損金額が生ずる場合又は他の通算法人の他の事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合に該当する場合には、その通算法人の対象事業年度の軽減対象所得金額は、特定事業等欠損控除前所得金額に相当する金額(欠損控除前所得金額が上限とされている。)とされた(措法61③④)。
(3)内国法人の調整事業年度終了の時において、過大申告の場合又は期限後欠損金額の場合において、要加算調整額があるときは、その要加算調整額は、その調整事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされた。この場合において、事由該当通算法人の他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額が既確定通算前欠損金額と異なる場合には、その既確定通算前欠損金額を当該他の適用事業年度において生じた通算前欠損金額とみなすこととされた(措法61⑤⑥)。
10 土地の譲渡等がある場合の特別税率及び短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率
土地の譲渡等に係る譲渡利益金額の計算の基礎となる収益の額について、その土地の譲渡等に係る土地等又は株式若しくは出資につき通算制度の開始、通算制度への加入又は通算制度からの離脱等に伴う時価評価の適用を受けた土地等又は株式若しくは出資について連結納税制度における連結納税の開始又は連結納税への加入に伴う時価評価の適用を受けた土地等又は株式若しくは出資と同様の調整を行うこととされたほか、所要の整備が行われた(措法62の3②一イ(2)、措令38の4③一④)。
11 特別勘定の取崩し事由の整備等
特別勘定を設けている法人が通算制度の開始、通算制度への加入又は通算制度からの離脱等に伴う時価評価の対象となる法人に該当する場合には、連結納税制度における連結納税の開始又は連結納税への加入に伴う時価評価の対象となる法人と同様に特別勘定を取り崩して益金の額に算入することとされた(措法64の2⑪、65の8⑪、66の13⑧、震災税特法20⑪、平成29年改正法附則69⑪⑬)。
12 認定特定非営利活動法人に対する寄附金の損金算入等の特例
法人税法におけるみなし事業年度の見直しに伴い、その認定の取消しの日において新たに収益事業を開始したものとみなされた法人がその取消しの日からその取消しの日を含む事業年度終了の日までの間に新たに収益事業を開始したときは、その取消しの日からその開始した日の前日までの期間及びその開始した日からその事業年度終了の日までの期間をそれぞれその法人の事業年度とみなすこととする規定が削除された(旧措法66の11の2)。
13 特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例
本制度の特別勘定を設けている法人が、青色申告の承認を取り消され、又は青色申告書の取りやめの届出書を提出した場合には、その承認の取消しの基因となった事実のあった日又はその届出書の提出をした日におけるその特別勘定の金額を益金の額に算入することとされている措置等について、所要の整備が行われた(措法66の13⑥⑧、措令39の24の2⑥⑦⑭)。
14 特定の医療法人の法人税率の特例
本制度の適用がある場合における法人税法の規定の適用について、グループ通算制度に対応するための外国税額控除制度の改正に伴い、所要の整備が行われた(措法67の2①④)。
15 その他
(1)中間期間を基礎とする制度の整備
中間期間を基礎とする制度について、通算子法人については「その事業年度開始の日から同日の属する通算親法人事業年度開始の日以後6月を経過する日までの期間」とする整備が行われた(措法42の4二、42の12の5③九、42の14⑥、61の3①、62⑦一、措令38②、39の10の3②一ロ)。
(2)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例における買換資産の範囲
特定の資産の買換えの場合の課税の特例の適用を受けた法人が、買換資産の取得をした日から1年以内に、その買換資産を対象地域内にある事業の用に供しない場合又は供しなくなった場合にその買換資産につき損金算入した金額相当額を益金算入する措置について、対象となる買換資産から法人税法第64条の11第1項、第64条の12第1項又は第64条の13第1項の規定の適用を受けたこれらの規定に規定する時価評価資産に該当するものが除外された(措法65の7④、震災税特法19④)。また、適格合併等によりその適格合併等に係る合併法人等が本制度の適用を受けた買換資産の移転を受けた場合についても同様である(措法65の7⑫、震災税特法19⑪)。なお、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例においてこの措置を準用する場合も同様である(措法65の8⑭⑮、震災税特法20⑭⑯)。
(3)特定の公共施設等運営権の設定に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例
特定の公共施設等運営権の設定に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(措法67の5の2)の規定によりその公共施設等運営権の設定を法人税法第63条第1項のリース譲渡とみなして同条の規定を適用することとされた場合には、そのみなされた場合における同項のリース譲渡に係る契約を設立事業年度等の承認申請特例における時価評価資産等の範囲に含めることとされた(措令39の29)。時価評価資産等の範囲に含める点については、連結納税制度と同様である。
(4)組合事業等による損失がある場合の課税の特例
① 組合等損金額及び組合等益金額並びに組合損金額及び組合益金額の整備
組合事業等による損失がある場合の課税の特例制度における組合等損金額及び組合等益金額並びに組合損金額及び組合益金額について、連結納税制度の見直しに伴う所要の整備が行われた(措令39の31④、39の32①)。
② 調整出資等金額及び調整出資金額の整備
組合事業等による損失がある場合の課税の特例における調整出資等金額及び調整出資金額について、法人税法施行令第9条の改正に伴う規定の整備が行われた(措令39の31⑤二、39の32②二)。
(5)連結法人に使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例に関する経過措置
令和4年4月1日を含む連結事業年度において旧租税特別措置法第68条の67第1項の規定(経過税額加算規定)の適用がある場合における法人税法の規定等との調整については、次のとおりとされた(令和2年6月改正法令等附則61)。
① 改正法附則第33条(予定申告に関する経過措置)の規定により前期実績基準額を計算する場合において、予定申告の計算の基礎となる前期の連結確定申告書に記載される法人税額は、当該法人税額から当該法人税額に含まれる経過税額加算規定により加算された金額を控除することとされた(令和2年6月改正法令等附則61一)。
② 改正法附則第35条(欠損金の繰戻しによる還付に関する経過措置)の規定により欠損金の繰戻しによる還付の請求をする場合において、繰戻還付の対象となる前2年内事業年度の連結所得に対する法人税額は、当該法人税額から当該法人税額に含まれる経過税額加算規定により加算された金額を控除した金額とすることとされた(令和2年6月改正法令等附則61二)。
③ 改正法附則第38条(地方法人税の予定申告に関する経過措置)の規定により前期実績基準額を計算する場合において、予定申告の計算の基礎となる前期の地方法人税確定申告書に記載される地方法人税額は、当該地方法人税額から当該地方法人税額に係る基準法人税額に含まれる経過税額加算規定により加算された金額の10.3%相当額を控除した金額とすることとされた(令和2年6月改正法令等附則61三)。
④ 改正法附則第39条(欠損金の繰戻しによる法人税の還付があった場合の還付に関する経過措置)の規定の適用がある場合において、繰戻還付の対象となる前2年内課税事業年度の基準法人税額に対する地方法人税額は、当該地方法人税額から当該地方法人税額に係る基準法人税額に含まれる経過税額加算規定により加算された金額の10.3%相当額を控除した金額とすることとされた(令和2年6月改正法令等附則61四)。
16 震災税特法関係
(1)被災法人について債務免除等がある場合の評価損益等の特例
法人税法第59条第2項について、同法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合を新第2項とし、同法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けない場合を新第3項とする規定の整備が行われた(法法59②③、法令117〜117の4)ことに伴い、本制度についても規定の整備が行われた(震災税特法17、震災税特令17)。
また、本制度の規定により法人税法第59条第3項の規定を読み替えて適用する場合において、法人税法施行令第112条の2第8項(通算法人の民事再生等による債務免除等があった場合(一定の評定を行わない場合)の欠損金の損金算入制度との調整)の規定の適用がある場合における同項に規定する損金算入額は、本制度の規定により法人税法第59条第3項の規定を読み替えて適用する場合を含めて計算することとされた(震災税特令17②)。
(2)調整前法人税額
震災税特法の調整前法人税額となる法人税の額の計算について、連結納税の承認を取り消された場合の取戻し課税の規定(旧措法42の6⑤、42の9④、42の12の3⑤、42の12の4⑤)と同様に、上記4(2)の通算承認の失効の場合の法人税額の特例の規定(措法42の14④)を適用しないで計算することとされた(震災税特法17の2②)。
(3)中間期間を基礎とする制度の整備
通算法人の仮決算による中間申告について、通算子法人は、その事業年度開始の日から同日の属する通算親法人の事業年度開始の日以後6月を経過する日までの期間を1事業年度とみなして当該期間に係る課税標準である所得の金額又は欠損金額を計算した場合に、仮決算による法人税の中間申告書を提出することができることとされた(法法72⑤一)ことに伴い、中間期間を基礎とする制度について、通算子法人については「事業年度開始の日から同日の属する通算親法人事業年度開始の日以後6月を経過する日までの期間」とする整備が行われた(震災税特法17の2⑫二、18の3①、19①)。
(4)給与等の額の範囲
次の制度の対象となる給与等の額から控除することとされている他の者から支払を受ける金額がある場合におけるその他の者について、その法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人をその範囲に含めることとされていたが、グループ通算制度においては、通算グループ内の法人であっても他の者に該当することに疑義がないこと等から規定が削除された。なお、実態は改正前と同じである(震災税特法17の3①、17の3の2①、17の3の3①)。
① 復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の法人税額の特別控除制度(震災税特法17の3)
② 企業立地促進区域において避難対象雇用者等を雇用した場合の法人税額の特別控除制度(震災税特法17の3の2)
③ 避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の法人税額の特別控除制度(震災税特法17の3の3)
(5)通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の特例(創設)
内国法人の適用事業年度について過大申告の場合又は期限後欠損金額の場合には、損益通算の遮断措置の適用があることを前提に、その過大申告の場合又は期限後欠損金額の場合に該当することが判明した事業年度の法人税額に、過大申告等により増加した適用事業年度における税額控除額相当額を、租税特別措置法第42条の14第1項に規定する要加算調整額に含めて加算することとされた(震災税特法17の4の2①により読み替えて適用する措法42の14①)。
(6)再投資等準備金制度
本制度における所得基準額は、欠損金の繰越控除等を適用した後に算出するものとされていることから、損益通算制度及び欠損金の通算制度における所得金額を基礎とする基準額等については、本制度を適用しないものとして計算することとされたほか、法人税法等の規定を読み替えて適用する調整方法について、調整を要する法人税法の規定の増加に対応するため、調整方法の簡素化が行われた(震災税特令18の3③)。
(7)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
本制度についても、上記11及び15(2)と同様の整備が行われた(震災税特法20、震災税特令19、改正法附則136、令和2年6月改正法令等附則46)。
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