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解説記事2020年10月26日 SCOPE 株式の非公開化をめぐる裁判、手続の公正な担保措置が決め手(2020年10月26日号・№855)

東京地裁、株主総会決議の取消し請求を棄却
株式の非公開化をめぐる裁判、手続の公正な担保措置が決め手


 株主(原告)が上場会社であった被告の株式を非公開化するための株主総会決議の取消しを求めた裁判で、東京地方裁判所(吉岡正豊裁判官)は令和2年6月22日、株主の請求を斥ける判決を下した。株主らは創業家取締役らが被告の立場において特別利害関係人として株式併合に係る株主らとの協議等に参加したことを前提として株主総会書類に虚偽の事実を記載したと主張するが、東京地裁は、被告においては株式併合に係る意思決定手続の公正性を担保する措置が取られており、創業家取締役らの協議等への関与の事実を認めるには足りないと判断した。

被告の代表取締役等が被告の主要株主の企業の取締役も兼任

 本件は、平成31年2月12日まで東京証券取引所のJASDAQスタンダード市場に株式を上場していた光製作所(被告)の株式の非公開化の手続をめぐって争われた事件である。
 当時、被告の株式の約93%を保有する主要株主らは、被告の経営状況を踏まえて非上場化及び非公開化につき検討を始め、被告に対し主要株主ら以外の株主が保有する株式数を1株に満たない端数とする併合比率により被告の普通株式を併合する株式併合の実施に向けた協議を申し入れ、その後、臨時株主総会を招集し、株式併合の承認議案及び単元株式数の定めを廃止する定款変更の議案がそれぞれ可決された。その結果、被告の株主は主要株主及び原告の1人のみとなり、それ以外の株主は1株に満たない端数株式の保有者となり、被告の株式は上場廃止となった。
 今回の事件の背景にあるのは、被告の代表取締役のほか、6人の取締役のうち5人(代表取締役及び取締役の5人を「創業家取締役」)が主要株主である会社の取締役を兼任していたことだ。このため、原告の株主らは、被告は創業家取締役らが特別の利害関係を有しつつ、被告の立場において株式併合に関する株主らとの協議ないし交渉に参加したにもかかわらず、株主総会参考書類に、創業家取締役らが株主らとの協議等に被告の立場において一切参加していないとの虚偽の事実を記載したなどと主張し(参照)、株主総会決議の取消しを求めていた。

【表】当事者の主な主張

原告(株主) 被告(会社)
・被告は、創業家取締役らが特別の利害関係を有しつつ、被告の立場において株式併合に関する株主らとの協議ないし交渉に参加したにもかかわらず、株主総会参考書類に、創業家取締役らが株主らとの協議等に被告の立場において一切参加していないとの虚偽の事実を記載した。

・取締役会決議は、X取締役1人によって可決されたものであるところ、X取締役は平成14年6月に被告の取締役に就任して以来、社長室兼総務部長に就任しており、株式併合の承認等に係る臨時株主総会の招集決議について特別の利害関係を有する者に当たるというべきであるから、その決議には瑕疵がある。

・取締役会決議は、被告の取締役の過半数が出席していない取締役会において決議されたものであり、被告定款22条及び会社法369条に違反したものである。
・株式併合を行うに際し、株式併合の手続的公正性を担保する上で、創業家取締役らが株式併合等に関する被告内部における検討及び被告・株主ら間の協議・交渉の過程から排除されることは、重要な要素になると被告において認識されていた。そのため、創業家取締役らは株式併合に係る協議・交渉及び取締役会における審議及び決議に一切関与することはなかった。
・会社法369条2項所定の「特別の利害関係」とは、当該決議について、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないし会社外の利害関係を意味するところ、株式併合は、被告の株主を本件株主らのみとして被告を非公開化することを目的とするものであるから、取締役決議について、X取締役は特別の利害関係を有していない。

・仮に創業家取締役らが特別の利害関係を有すると解しても、創業家取締役らを除く唯一の取締役であるX取締役によって可決された本件取締役会決議は、定足数を満たしているから、各株主総会決議の招集手続に、法令・定款違反は認められない。

弁護士事務所の選任や第三者委員会の意見を踏まえて決議

 裁判所は、被告は株式併合の実施及び条件等の決定手続における公正性を担保するため、リーガル・アドバイザーとして弁護士事務所を選任して被告の取締役会の意思決定の方法及び過程等について法的助言を受けつつ、株主らとの協議等に臨んでいること、及び外部の独立した有識者を構成員とする第三者委員会を設置して、創業家取締役らが株式併合について利害関係を有することを前提として同委員会に対し意見陳述のみならず株主らとの交渉する権限をも付与し、第三者委員会答申書記載の意見を受けて取締役会において株式併合を株主総会に付議することを決議していることに照らせば、被告においては、株式併合に係る意思決定手続の公正性を担保するための措置が取られているというべきであるとの判断を示した。
取締役1名でも定足数に法令違反はなし
 また、原告らは、創業家取締役らが株式併合に関し特別の利害関係を有することを前提として、X取締役(※創業家取締役でない)1人の賛成により臨時株主総会の招集決議が行われたことについて、取締役会決議の定足数の法令・定款違反を問題としているが、裁判所は、会社法369条1項は株式会社の取締役会の定足数として、「議決に加わることができる取締役の過半数」と定め、同条2項は「特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。」旨定めているのであるから、株式会社の取締役会においては、特別の利害関係を有する取締役を除いた残りの取締役会の総数の過半数の者が出席している以上、特別の利害関係を有しない取締役1名のみを定足数算定の基礎として、特別の利害関係を有しない取締役1名のみにより有効に決議をなし得るとの法の定めがされているものと解されると指摘し、当該決議が被告の定款及び会社法369条に違反するということはできないとした。

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