カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2020年12月07日 ニュース特集 実務に直結する令和3年度の納税環境整備(2020年12月7日号・№861)

ニュース特集
国際的な徴収逃れをシャットアウト
実務に直結する令和3年度の納税環境整備


 与党の税制調査会は12月10日にも令和3年度税制改正大綱を取りまとめる予定だが、実務に直結する見直しである納税環境整備の概要が明らかとなった。電子帳簿等保存制度の見直しなどのデジタル化(今号40頁参照)や押印義務の見直し(本誌859号10頁参照)などが行われる。また、課税環境の整備・適正化の観点からは、財務省が問題視していた国際的な徴収逃れについても対応が図られる(本誌859号17頁参照)。具体的には、滞納処分免脱罪の対象に徴収共助を対象に加えるとともに、無償譲渡の譲受人等に対して、徴収共助要請後に第二次納税義務を賦課できるようにする。また、国外に居住する納税者に対して税務調査を行う必要が生じた場合には、課税当局から納税者に対して納税管理人の選定・届出を要請することができるよう、納税管理人制度を見直すこととしている。

国外財産の隠ぺい等も滞納処分免脱罪の対象に

 令和3年度税制改正では、現行法で不備が指摘されている徴収共助逃れについて見直しが行われる。徴収共助とは、ある国の税務当局が他国の税務当局からの要請に基づき、当該他国の租税債権をその国にある当該他国の納税者の財産から徴収するというもの。徴収共助が可能な国と地域は、英国、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国、ドイツ、米国など、69となっている。
 しかし、滞納処分は執行管轄権のある国内財産にのみ可能であるため、国外財産の隠ぺい等については、徴収共助を免れる目的で行われたとしても滞納処分免脱罪を適用することができない。このため、徴収共助の要請による徴収を逃れる目的で国外財産を隠ぺい等した者を対象に加えることで、法制度上の不備に対応する(図表1参照)。

国外財産の無償譲渡等の場合も第二次納税義務の対象に

 また、第二次納税義務についても法制上の不備がある。第二次納税義務の場合は、滞納国税に徴収不足が生じている必要があるが、この場合の徴収不足は、現行制度上、滞納処分が可能な国内財産のみで判断することになっている。したがって、滞納者の財産が国外財産の場合には、これが第三者に贈与され、徴収不足になったとしても第二次納税義務を課すことができない。最近では、滞納者の国外財産を配偶者(受贈者)などに贈与することによって第二次納税義務を回避するような行為が見受けられている。
 このため、徴収共助を要請した滞納国税につき、滞納処分や徴収共助をしてもなお徴収不足となる場合に、その不足が国外財産の無償譲渡等に基因する場合には、その譲受人等に対して第二次納税義務を賦課することができるようにする(図表2参照)。無償譲渡等については、法定納期限の1年前の日以後に行われたものとされている。

納税管理人の選定できない場合は当局が親族等を納税管理人に指定

 国際的な取引が活発化する中で、外国法人や非居住者に対する税務調査が課題となっている。これらの者に対しては、租税条約に基づいた情報交換要請等のほか、国内に所在する納税管理人を通じた接触によって対応しているのが現状だ。国内に拠点のない納税者が納税申告書の提出、その他国税に関する事項を処理する必要があるときは納税管理人の設置が義務付けられているが(国税通則法117条)、設置しなかったとしても罰則等はない。このため、納税管理人を定めた納税者と定めていない納税者との間で公正性が確保できないとの問題点が指摘されており、何らかの立法措置を講じる必要があるとされていた。
60日以内に納税管理人選定を要請
 令和3年度税制改正では、国外に居住・所在する納税者に対して税務調査を行う必要が生じた場合、課税当局からその納税者に対して、納税管理人を必要とする業務、具体的には、課税当局による質問検査・照会文書等の内容について納税者への伝達、納税者から寄せられた回答の当局への伝達、課税当局と納税者との間の書類の取次ぎを明示した上で、60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して指定する日(指定期限)までに納税管理人の選定・届出をすることを要請できるようにする(図表3参照)。

 また、納税者が課税当局の要請に応じず、指定期限までに納税管理人の届出を行わない場合には、課税当局が親族や子会社等の国内に所在する関連者を納税管理人として指定することができることとする。
 なお、この指定については、納税者及び納税管理人として指定される国内関連者の手続保証の観点から、両者に対して指定の通知を行った上で、両者による不服申立て又は訴訟を可能とする仕組みを講じることとしている。

旧納税地の税務職員による質問検査権の行使が可能

 国際的な徴収逃れ以外にも課税関係の整備・適正化等がいくつか見直されることになっている。
 1点目は納税地の異動があった場合の質問検査権の管轄の整備だ。具体的には、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について、調査通知後に納税地の異動があった場合において、旧納税地の所轄国税局長又は所轄税務署長が必要と認めるときは、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員が、質問検査権を行使することができるようにする。現行の質問検査権の行使は、法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員に限られているため、調査着手後に納税地の異動を繰り返すことで、法人税等の調査忌避を行う事例が見受けられるという。

同族会社の株主が支払を受ける社債利子の範囲を見直し

 2点目は総合課税の対象となる社債利子等の範囲の整備だ。社債の利子は原則、利子所得として分離課税とされているが、同族会社の株主が支払を受ける社債の利子は総合課税(最高55%)の対象とされている。同族会社は少数株主による会社支配が可能であり、本来総合課税となる役員報酬等について、社債利子の形で受領することで分離課税の対象となる利子所得に転換して税負担を軽減する事例が見受けられたことから、平成25年度税制改正で措置されたものである。
 しかし、抜け穴的に個人が同族会社との間に法人を介在させる場合であっても、総合課税の対象となる所得の分離課税への転換が容易にできるため、このようなケースも総合課税の対象に見直すこととしている。また、個人が同族会社から支払を受ける社債の償還差益についても同様に総合課税の対象とする(図表4参照)。

出資業務目的の寄附は対象外
 寄附金制度関係では、特定公益増進法人等に対する寄附金の範囲の見直しが行われる。現行、特定公益増進法人に対する寄附金で、その特定公益法人の主たる目的である業務に関連する寄附金を支出した個人又は法人については、①その寄附金につき寄附金控除若しくは所得税額控除の適用を受けることができる、又は②通常の損金算入限度額とは別枠でその寄附金の額の合計額を損金算入することができるが、この対象となる寄附金から「出資に関する業務に充てることが明らかな寄附金」を除外する。
 出資業務に充当することを目的とした寄附は、その出資先の関係者により行われることが多く、その寄附金を原資とした出資が行われることにより、その寄附者が利益を受ける可能性があり、税制の公正性を損ねるおそれがあるというのが理由だ。例えば、寄附金の使途を出資業務に限定して募集された寄附金や、出資業務に使途を指定して行われた寄附金が該当する。
不正経理の場合はみなし寄附金を不適用
 また、みなし寄附金制度の適正化では、不正経理など、隠ぺい又は仮装して経理することにより、収益事業に係る収入を過少に申告するなどして非収益事業のためにした支出については、みなし寄附金制度を不適用とする見直しが行われる。
 現行、収益事業に係る収入を非収益事業に係る収入に仮装等した場合でも、申告漏れ収入がみなし寄附金として取り扱われるため、一定割合が損金の額に算入され、課税所得が減少するという問題点が指摘されていた。
割賦販売小売業、法定繰入率を1,000分の7
 中小企業者等の貸倒引当金の特例における法定繰入率については、割賦販売小売業並びに包括信用購入あっせん業及び個別信用購入あっせん業に係る法定繰入率を1,000分の7(現行:1,000分の13)に見直す。
 会計検査院が平成30年11月30日に公表した「租税特別措置(中小企業等の貸倒引当金の特例)の適用状況及び検証状況について」では、全事業において法定繰入率が貸倒損失発生率を大幅に上回っていたと指摘されていた。割賦販売小売業等の貸倒損失発生率は1,000分の0.2にすぎなかった。
金地金、本人確認書類から在留カードを除外
 税務調査において、密輸者と買取り事業者が通謀していると想定される事案が見受けられるため、金地金の仕入税額控除に係る本人確認書類の見直しが行われる。
 金地金の仕入税額控除を行う場合、仕入れの相手方の本人確認書類の保存が求められているが、本人確認書類のうち、密輸した金地金の買取りが強く疑われる事案で利用されている「在留カードの写し」や、国内に住所を有しない者の「旅券の写し」「その他これらに類するもの」(外国政府発行の本人確認書類)については、対象から除外することとしている。
郵便による輸出免税、発送伝票の控えが必要
 また、簡易手続により輸出が可能になっている20万円以下の郵便による資産の輸出について輸出免税の適用を受けるためには、その輸出を証明するものとして、一定事項が記載された「帳簿」又は受取人から交付された「物品受領書等の書類」の保存が要件となっている(消規5①二)。このため、実際には輸出者の作成する「帳簿」の保存のみで輸出免税の適用が可能になっている。
 今回の改正では、輸出免税制度の適正化を図る観点から、20万円以下の郵便による資産の輸出の場合には、輸出の事実を証する書類として、発送伝票の控え等の保存を輸出免税の適用要件とするように見直すとしている。
外国子会社配当に係る外国源泉税を見直し
 その他、外国子会社配当に係る外国源泉税の損金算入及び外国税額控除の見直しを行う。具体的には、①外国子会社(持株割合25%以上かつ6月以上保有)から受ける外国源泉税の損金算入について、外国子会社合算税制等との二重課税調整の対象とされる配当の額に対応する部分に限定することとする、②①以外の外国子会社から受ける配当に係る外国源泉税の外国税額控除について、外国子会社合算税制等との二重課税調整の対象外とされている配当の額に対応する部分につきその適用を認めることとする。
ファイナンスリースは金銭債権から見直し
 また、投資法人等に係る課税の特例の要件については、事業年度終了時において有する資産のうち一定の資産(有価証券、不動産、金銭債権等)の帳簿価額がその時において有する資産の総額の2分の1超であることとされているが、現行、投資法人がファイナンスリースの貸手である場合はリースの対象資産がいかなる資産であってもファイナンスリース取引に係る金銭債権として一定の資産に含まれることになる。
 このため、一定の資産の判定上、ファイナンスリース取引に係る金銭債権は、金銭債権ではなくリース対象資産として判定する(特定投資信託も同様)。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索