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解説記事2021年02月08日 第2特集 新型コロナの影響を踏まえたウェブ開示の対象拡大(2021年2月8日号・№869)

第2特集
Q&Aで簡単解説
新型コロナの影響を踏まえたウェブ開示の対象拡大


 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和3年9月30日までウェブ開示の対象を拡大する旨を盛り込んだ「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和3年法務省令第1号)」が1月29日に公布された(一部を除き公布の日から施行)。また、企業会計審議会が令和2年11月6日に公表した「その他の記載内容」等に関する監査基準の改訂を踏まえた見直しも行われている。
 本特集では、改正法務省令の概要とともに、法務省令案に寄せられた意見に対する法務省の考え方などをQ&A形式で解説する。

令和3年9月30日までの時限措置
Q

 今回の法務省令の改正では、ウェブ開示の対象が拡大されるとのことですが、令和2年5月の改正と比べて何か異なる点はありますか。また、今回も時限措置ということになりますか。
A
 今回の法務省令の改正は、事業報告に表示すべき事項の一部並びに貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項をいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象とするもの。6か月間の時限措置であった令和2年5月15日公布の会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)と同様の見直しとなっている(本誌834号10頁参照)。
 具体的には、①事業報告の記載事項のうち、「当該事業年度における事業の経過及びその成果」(会社法施行規則120条1項4号)及び「対処すべき課題」(同項8号)、②貸借対照表及び損益計算書が対象となる。適用は公布の日(令和3年1月29日)からとされている(会社法施行規則1条第2表に係る改正は令和3年3月1日施行)。なお、この場合に取締役は、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないとされている。
 ただし、今回の措置も前回と同様、令和3年9月30日までの時限措置とされているので留意したい。なお、同日前に招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供についてはなおその効力を有するものとされている。

株主の利益を不当に害することのないように配慮する点は
Q

 ウェブ開示を行う場合には、株主の利益を不当に害することのないよう特に配慮しなければならないこととされています。具体的にはどのような配慮をする必要がありますか。
A
 今回の法務省令は、改正前の会社法施行規則及び会社計算規則においてはウェブ開示によるみなし提供制度の対象とされていなかった事項を同制度の対象とするものであることから、当該事項についてウェブ開示をする場合には、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないこととされている(会社法施行規則133条の2第4項、会社計算規則133条の2第4項)。どのように株主の利益に配慮するかについては、各社が置かれた個別具体的な事情を踏まえた各社の判断によることになるが、例えば、下記のような方法をとることが想定されている。
① 当該事項について、できる限り早期にウェブ開示を開始すること。
② できる限り株主総会までに当該事項を記載した書面を株主に交付することができるように、ウェブ開示の開始後、準備ができ次第速やかに、当該事項を記載した書面を株主に送付すること。あるいは、株式会社に対して当該事項を記載した書面の送付を希望することができる旨を招集通知に記載して株主に通知し、送付を希望した株主に、準備ができ次第速やかに、当該事項を記載した書面を送付すること。
③ 株主総会の会場に来場した株主に対して当該事項を記載した書面を交付すること。

なぜ恒久措置ではないのか
Q

 今回の措置も令和3年9月30日までの時限措置とされていますが、恒久化はできないのでしょうか。
A
 ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正は、新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の決算・監査業務に遅延が生じるおそれがあるとの指摘があることから、緊急措置として行うという趣旨のものである。
 今回の改正は、改正会社法(令和元年法律第70号)で創設された株主総会資料の電子提供制度(株主総会の資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知した場合には、株主に対し株主総会資料を適法に提供したものとする制度。施行日は未定)の一部を法務省令の改正によって前倒しで実施するものとなっているが、緊急措置であるため、電子提供制度とも内容が異なっている。特に、株主保護の観点から、電子提供制度においては、書面の交付を希望する株主には書面交付請求権を保障することとしているが(会社法325条の5)、本法務省令においては、株主の利益を不当に害することがないよう配慮しなければならないとのみ定め(会社法施行規則133条の2第4項、会社計算規則133条の2第4項)、その具体的な方法は各社の判断に委ねることとしており、書面の交付を希望する株主に対し、事前に書面で株主総会資料が提供されることが必ずしも保障されているわけではない。
 このため、日本で多く株主総会が開催される3月及び6月の定時株主総会においても本法務省令によって拡充されたウェブ開示によるみなし提供制度を利用することができるようにするものであり、令和3年9月30日まで効力を有することとしているものである。

「その他の記載内容」等に関する監査基準の改訂を踏まえた見直し
Q

 「その他の記載内容」等に関する監査基準の改訂を踏まえた見直しはどのようになっていますか。
A
 企業会計審議会が令和2年11月6日に公表した「その他の記載内容」等に関する監査基準の改訂を踏まえた見直しでは、計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは、「事業報告及びその附属明細書の内容と計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無及び報告すべき事項があるときはその内容」を会計監査報告の内容とすることが追加された。
 同改正は、令和4年3月31日以後に終了する事業年度に係る計算関係書類についての会計監査報告について適用される。ただし、令和3年3月31日以後終了事業年度からの早期適用も認められている。

臨時計算書類での記載方法は
Q

 臨時計算書類には「その他の記載内容」と考えられる事業報告及びその附属明細書がありません。臨時計算書類に係る会計監査報告には「その他の記載内容」がない旨を記載するとの理解でよいでしょうか。
A
 臨時計算書類に係る会計監査報告における会社計算規則126条1項5号に掲げる事項の記載については、同項2号の意見がある場合であっても、報告すべき事項がない旨を記載すれば足りると考えられる。

重要な相違等とは
Q
 会社計算規則126条1項5号では、「第二号の意見があるときは、事業報告及びその附属明細書の内容と計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無及び報告すべき事項があるときはその内容」とされていますが、「重要な相違等」の「等」には何が含まれますか。
A
 会社計算規則126条1項は、会計監査報告の内容とすべき最低限の事項を定めるものであり、監査基準における「その他の記載内容」に関する定めに相当する内容を網羅的に規定することとはなっていない。
 もっとも、会社計算規則126条1項は、監査基準の定めを踏まえて会計監査報告の内容とすべき事項を規定しており、同項5号も、監査基準の改訂を受けて新たに設けることとしたものであること等を踏まえれば、同号が、監査基準における「その他の記載内容に関して……報告すべき事項の有無並びに報告すべき事項がある場合はその内容」に相当する事項の記載を求めていることは明らかであると考えられる。

監査意見の対象外
Q

 従来と同様、「その他の記載内容」は監査意見の対象に含まれないため、会計監査人は、これについて意見を表明するものではなく、表明する予定もないとの理解でよいでしょうか。
A
 会計監査人の監査の対象となるのは、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類であり、事業報告及びその附属明細書はその対象とはされておらず(会社法396条1項、436条2項)、今回の法務省令はこれを変更するものではない。

(参考)
会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和3年法務省令第1号)について

1 本省令の概要

 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、計算書類等を提供しなければならないこととされていますが(会社法第437条)、事業報告及び計算書類に表示すべき事項の一部については、当該事項に係る情報を定時株主総会に係る招集通知を発出する時から株主総会の日から3か月が経過する日までの間、継続してインターネット上のウェブサイトに掲載し、当該ウェブサイトのURL等を株主に対して通知することにより、当該事項が株主に提供されたものとみなす制度(いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度)があります(会社法施行規則第133条第3項、会社計算規則第133条第4項等)。
 本省令(注1)においては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、本省令の施行の日から令和3年9月30日までに招集の手続が開始される定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供に限り(4参照)、同制度の対象となる事項の範囲を拡大することとしています(本省令による改正後の会社法施行規則第133条の2、会社計算規則第133条の2)(注2)(注3)。
(注1)令和3年法務省令第1号においては、監査基準の改訂を受けた会社計算規則の改正も行うこととしていますが、以下では、同省令のうち当該改正に関する部分を除いた部分を「本省令」として説明をしています。
(注2)令和2年5月15日に本省令と同様の改正をした会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)を公布・施行しましたが、同省令による改正は同年11月15日の経過により効力を失っており、今般、改めて同様の改正を行うものです。なお、令和元年の会社法の改正に伴う会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号)が令和3年3月1日から施行されるため、これに伴う所要の変更をしています。
(注3)本省令による改正前の会社法施行規則及び会社計算規則においてもウェブ開示によるみなし提供制度の対象とされていた事項について、ウェブ開示をするための要件等を変更するものではありません。
2 本省令による改正によりウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項
 本省令による改正により、次に掲げる事項がウェブ開示によるみなし提供制度の対象となります(注4)(注5)。
(1)株式会社が事業年度の末日に公開会社である場合において事業報告に表示すべき事項のうち「当該事業年度における事業の経過及びその成果」(会社法施行規則第120条第1項第4号)及び「対処すべき課題」(同項第8号)
(2)貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項(注6)(注7)
(注4)ウェブ開示をする旨の定款の定めが必要です。ただし、本省令による改正前の会社法施行規則又は会社計算規則に基づきウェブ開示をする旨の定款の定めが既にある場合には、本省令を受けて定款の定めを新たに設けたり、変更したりする必要はありません。
(注5)令和元年の会社法改正に伴う令和2年法務省令第52号が令和3年3月1日から施行されます。同省令により、会社法施行規則第133条第3項が改正され、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項が変更されます。したがって、令和3年3月1日以後は、令和2年法務省令第52号による改正後の会社法施行規則においてウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項に加えて、上記(1)及び(2)の事項が同制度の対象となることとなります。
(注6)監査役等による監査報告及び会計監査人による会計監査報告も含まれます(会社計算規則第133条第1項参照)。
(注7)貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項については、会計監査報告に無限定適正意見が付されていることなどの一定の条件を満たす場合にのみ、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象となります(本省令による改正後の会社計算規則第133条の2第1項各号。計算書類について株主総会の承認(会社法第438条第2項)を要することとなる場合には、貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項は同制度の対象となりません。)
3 株主の利益への配慮
 本省令は、改正前の会社法施行規則及び会社計算規則においてはウェブ開示によるみなし提供制度の対象とされていなかった2の事項を同制度の対象とするものであることから、2の事項についてウェブ開示をする場合には、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないこととしています。
 どのように株主の利益に配慮するかについては、各社が置かれた個別具体的な事情を踏まえた各社の判断によることとなりますが、例えば、次に掲げるような方法をとることが考えられます。
(1)2の事項について、できる限り早期にウェブ開示を開始すること。
(2)できる限り株主総会までに2の事項を記載した書面を株主(会社法第299条第3項の承諾をした株主を除く。以下(2)において同じ。)に交付することができるように、ウェブ開示の開始後、準備ができ次第速やかに、2の事項を記載した書面を株主に送付すること。あるいは、株式会社に対して2の事項を記載した書面の送付を希望することができる旨を招集通知に記載して株主に通知し、送付を希望した株主に、準備ができ次第速やかに、2の事項を記載した書面を送付すること。
(3)株主総会の会場に来場した株主に対して2の事項を記載した書面を交付すること。
4 施行期日・失効
 本省令は、公布の日から施行されます(附則第1条)。
 本省令による改正に係る会社法施行規則及び会社計算規則の規定は、令和3年9月30日が経過した時に、その効力を失うこととしています(注8)。ただし、同日までに招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供については、なおその効力を有することとしています。(附則第2条)
(注8)本省令による改正に係る会社法施行規則及び会社計算規則の規定がその効力を失ったときは、2の事項はウェブ開示によるみなし提供制度の対象ではなくなります。

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