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コラム2019年09月23日 SCOPE 所得税と相続税の納税猶予では「譲渡」の解釈は別物(2019年9月23日号・№804)




長男への使用貸借は「譲渡等」に該当

所得税と相続税の納税猶予では「譲渡」の解釈は別物




 札幌地裁民事2部は平成31年3月27日、共有物分割の結果、「特例農地等」の納税猶予の対象とされていた農地が農業相続人以外の相続人に移転したことが「譲渡等」に該当すると判断し納税猶予の期限を確定した国に対して、納付税額の返還等が求められていた事案について、「所得税33条1項の『資産の譲渡』と相続税の納税猶予制度の『譲渡』の解釈を全く同一にしなければならないものではない。」などと判示し、納税者の請求を棄却した。






転用と交換(共有物の分割)で「譲渡等」の該当性が争点に




 本件では、特例農地等の納税猶予の特例を受けていた農業相続人である原告が、①当該特例農地上に長男が農業関連施設を建てていたものの賃料の収受がなかったこと、②他の相続人から遺留分減殺請求が行われたため納税猶予の対象となっていた特例農地等の一部を、共有物の分割により所有権を移転させたことが、「特例農地等の納税猶予期限」の確定事由である「譲渡等」に該当するか否かが主たる争点として争われた。


【表1】事実関係








①原告は法定相続人4人の中でただ一人農業を営んでおり、亡Pは遺産の全部を原告に相続させる旨の公正証書遺言(「本件遺言」)をした。

②原告は亡Pを相続したことによって納付すべき相続税額が4778万円と算定されたものの、被相続人であるPの農業相続人であったことから、所轄税務署長に対し、「納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書」を添付した上で、別紙2「特例農地等目録」記載の農地について納付すべき相続税額及び納税猶予税額を4778万円と記載した相続税の申告書を提出し、相続税の納税を猶予された。

③原告は、本件遺言に基づき、亡Pの遺産の全部を相続したところ、原告以外の相続人らは、原告を相手方とする遺留分減殺請求訴訟を提起し、旧本件各農地について、遺留分減殺を原因とする持分8分の1(原告以外の相続人3人で持分8分の3)の所有権移転登記が行われた。所轄税務署長は、遺留分減殺の結果を受けて、原告に対し、原告の相続税額を4237万4400円とし、納税猶予額を4134万4800円とする更正処分をした。

④原告は、農地の一部について、営農規模拡大等を理由とし、土地造成の上、牛舎及び堆肥盤(「本件施設」)を建築する目的で転用することの許可申請を行い、道知事の転用許可を受け、原告の長男であるTの所有名義に係る本件施設が建築された。原告が所轄税務署長に対して提出した各継続届出書には、当該農地は措置法施行令に規定する「譲渡等」から除外される転用の態様として挙げられている施設に供されている農地として記載されている。原告はTから賃料を得ていない。

⑤原告は、原告以外の相続人らとの間で、訴訟上の和解をした。その内容は、共有持分の放棄を相互に行うことにより、民法255条に基づき、大半の農地を原告の単独所有とし、一定の農地を原告以外の相続人らの共有とした。






土地の使用貸借、共有物の分割も「譲渡」に該当




 両当事者の主張及び裁判所の判断は上記表2のとおりだが、国は、「譲渡」の解釈は農業の継続を目的とする相続税の納税猶予という観点から考えるべきで、所得税法における「資産の譲渡」の解釈とは異なると主張した。札幌地裁は、この解釈を前提に①「特例農地等」に使用貸借権を設定することは、相続税の納税猶予の対象とならない、②共有物分割は、その法的性質は、共有者相互間における共有持分の交換又は売買であると解される、と主張する国側の主張を受け入れた。なお、本件は札幌高等裁判所に控訴されている。


【表2】主要な争点に関する当事者の主張と判示























原告(納税者)の主張 被告(国)の主張 札幌地裁の判示
④転用について  本件施設の名義人を原告の後継者であるTとしたのは、T名義でなければ建築資金の融資を受けられなかったためで、本件施設は、実質的には原告の所有に属するものである。原告が当該農地を使用貸借に供したとしても、そのことによって農地の宅地期待益が実現するような利得が発生したわけでもないから、この点からも、「特例農地等」に係る相続税の納税猶予制度の目的に外れるものではない。  所得税の申告・固定資産税の負担状況から、本件施設はTが取得、所有しているものである。原告は、本件施設の敷地である当該農地について、Tから賃料収入を得ていないから、Tに対し、使用貸借権を設定したということができる。使用貸借権を設定することは、「特例農地等」の範囲において、農業相続人である原告の農業の用に供されていないことになるから、相続税の納税猶予の対象とはならない。  本件施設は、原告ではなく、Tが所有していると認められる。そうすると、本件施設は原告が所有する当該農地の上に存在するものの、Tは原告に対し、本件施設に係る賃料等を支払っていないので、原告は、Tに対し、「特例農地等」について、「使用貸借による権利の設定をし」たといえ、本件転用は「譲渡等」に該当する。当該農地等に使用貸借権を設定した以上、宅地期待益の実現があったか否かを問題とするまでもなく改正前措置法70条の6第1項の文言上、本件転用が「譲渡等」に該当することは明らかである。
⑤交換について  本件交換は和解における調書上、交換の形式を採用しているものの、その実質は、共有物の分割というべきものであり、所得税基本通達33-1の6も、その分割による譲渡はなかったものとして扱う。本件交換は、「譲渡」には該当しないというべきである。  和解における文言が「交換」という文言を用いていることからすれば、本件交換は、民法上の交換契約の履行によるものであって「譲渡」に該当する。仮に、本件交換が共有物分割であるとしても、「譲渡」の解釈は、農業の継続を目的とする相続税の納税猶予という観点から考えるべきで、所得税における「資産の譲渡」の解釈とは異なる。  一般に、資産を移転させる行為を(資産の)譲渡というところ、たとえ同時に「特例農地等」に該当しない農地を取得したとしても「特例農地等」の所有権を第三者に移転させる行為は、「特例農地等」を減少させるものであって、「特例農地等」の譲渡に当たると解するのが文理解釈にかなう。所得税の「資産の譲渡」と「特例農地等」に係る相続税の納税猶予制度は、その制度趣旨を異にしているから、「譲渡」の解釈を全く同一にしなければならないものではない。





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