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解説記事2019年09月30日 ニュース特集 「外形要件の優先」vs.「消費税の実質判定」(2019年9月30日号・№805)

ニュース特集
課税仕入れへの該当性争う事案の控訴審で納税者が主張変更
「外形要件の優先」vs.「消費税の実質判定」


 商品売買仲介をめぐり消費税の課税仕入に該当するか否かが争点となっている税務訴訟(本誌799号8頁参照)で、一審で敗訴した原告が東京高裁に控訴した。
 一審判決では、契約書の有無を含めた仕入取引の実態判断により「A(商品売買仲介業者)の課税仕入ではない。」との判断が示されたが、控訴人は、控訴審においては取引の実態判断については争わないとしたうえで、「多種多様な取引を課税対象とする消費税は、法執行の安定運用のために外形要件が優先されるべき」との主張を展開している。
 確かに消費税の実務においては、「取引の実態判断」などは通常行われない。例えば輸出免税・還付では、輸出許可書等の記載により取引の当事者が判断され、輸出免税の適用者となる。これはインボイス方式が導入されればより明確になろう。インボイスを集計するにあたって、インボイス1枚1枚について取引の実態判断を行うことは想定し難い。インボイスに記載された事項(外形)が正しいものとして集計され、取引の当事者がインボイスの記載を信頼することで消費税額の適正な転嫁が行われるというのがインボイス形式の基本的な仕組みであろう。
 一方、課税庁としても、輸出許可書、インボイスなどの書類への記載(外形)が実務上の判断基準となっている実態は理解していると思われるが、取引の実態判断は放棄できないだろう。今後インボイス方式が導入され、より外形が優先されるようになるとしても、租税回避や不正還付を防止するためには、実態判断の余地を確保しておかなければならないからだ。
 取引の実態判断が争われた一審に比べ、消費税の仕組みとして外形を優先すべきなのか、あるいは消費税法13条に規定する実質判定を堅持するのかというシンプルな問いに対し東京高裁がどのような判断を下すのか注目される。

一審では消費税法基本通達10-1-12(2)なお書きが争点に

 一審での原告の主張は、「Aは『委託販売等に係る受託者』に該当し、消費税法基本通達10-1-12(2)なお書きの適用によって、『本件各取引の商品代金額を受託者であるAの課税仕入れに係る金額とすることができる。』」というものであった。原告はさらに、「このように解さなければ、本件各取引についての課税仕入れに係る消費税額の控除による還付を、Aが受けられないのみならず、輸出の証明書を保持しない香港等事業者も受けられないこととなるが、このような結果は、累積課税を排除するという課税仕入れに係る消費税額の控除の趣旨に反する。」と主張した。
 これに対し国は、「Aと香港等事業者との間には、仕入れに伴って受託者が仕入先に金銭を支払い、委託者からその金銭等を収受するという形態の委託買い付けの関係は認められず、かかる取扱いをする前提を欠くから、本件各取引に関し、Aに上記通達の規定を適用することはできない。」と反論した。
 第一審で裁判所は、Aの取引の実態を審理した上で、「Aと本件各国内事業者との間に売買契約があったと認めることはできない。」と判示した。また、「原告は、本件各取引についての課税仕入れに係る消費税額の控除による還付をAも香港等事業者も受けられなくなることの不当性を主張するが、そのような不利益は、取引の実態に則した帳簿及び請求書等を保存せず適正な還付申告をしてこなかったA及び香港等事業者の行為に基因するものであり、A及び香港等事業者自身において甘受すべきものである。」とも判示している。

(委託販売等に係る手数料)
10-1-12
 委託販売その他業務代行等(以下10-1-12において「委託販売等」という。)に係る資産の譲渡等を行った場合の取扱いは、次による。(平23課消1-35により改正)
(1)委託販売等に係る委託者については、受託者が委託商品を譲渡等したことに伴い収受した又は収受すべき金額が委託者における資産の譲渡等の金額となるのであるが、その課税期間中に行った委託販売等の全てについて、当該資産の譲渡等の金額から当該受託者に支払う委託販売手数料を控除した残額を委託者における資産の譲渡等の金額としているときは、これを認める。
(2)委託販売等に係る受託者については、委託者から受ける委託販売手数料が役務の提供の対価となる。
  なお、委託者から課税資産の譲渡等のみを行うことを委託されている場合の委託販売等に係る受託者については、委託された商品の譲渡等に伴い収受した又は収受すべき金額を課税資産の譲渡等の金額とし、委託者に支払う金額を課税仕入れに係る金額としても差し支えないものとする。

控訴審ではタックスアンサーNo.6551(輸出取引の免税)が争点に

 控訴人は控訴理由書において、「控訴審において取引の実態判断について争うものではない。」とし、「多種多様な取引を課税対象とする消費税は、法執行の安定運用のために、取引の実態に基づく実質判断よりも外形要件が優先されることは、既に定着した法解釈で過去の判例等からも明らかであり、外形要件の充足性から判断を行うのではなく、実質要件で判断したこと自体が誤りである。」と主張している。国税庁が公表するタックスアンサーNo.6551(輸出取引の免税)には「輸出免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることについて、その輸出取引等の区分に応じて一定の証明が必要です。」との記述があり、事業者の氏名など一定の事項を記載した輸出許可書が示されている。控訴人は「国税庁は、輸出免税適用者と実際の仕入をした者が異なる場合等の輸出免税適用者の当該輸出に対応する仕入控除は認められるとする取扱いをタックスアンサーNo.6551として公表している。」とタックスアンサーの記載を援用した上で、輸出許可書に事業者として記載のあるAが輸出免税の適用者であると主張する。
 これに対し国は、「Aが取引の当事者でない以上、本件取引についてAの課税仕入れと認められる余地はない。」「消費税法においてもいわゆる実質課税の原則が要請される(消費税法13条)。」「『輸出証明書に記載された当該資産を輸出した事業者』に輸出免税の適用がある旨を規定するものではない。」としたほか、タックスアンサーNo.6551(輸出取引の免税)の回答については、「事業者が輸出取引に当たる資産の譲渡等を行った場合の消費税の免税について証明が必要である旨の説明をしたものであって、当該資産の譲渡等を行っていない事業者のことや『輸出名義人側の救済』のことなどは何ら記載されていない。自己に都合よく曲解して自らの主張の根拠とするものにすぎない。」と反論している。
 控訴審は令和元年8月28日、東京高裁第5民事部において控訴理由書及び国側の答弁書のやり取りをもって結審した。消費税実務により近い「外形要件の優先」という納税者の主張に対する司法の判断(11月6日判決言渡し予定)が注目される。

No.6551 輸出取引の免税
[平成31年4月1日現在法令等]

 事業者が国内で商品などを販売する場合には、原則として消費税がかかります。
 しかし、販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。
 この場合の輸出取引とは、商品の輸出や国際輸送、国際電話、国際郵便などをいいます。
 なお、輸出免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることについて、その輸出取引等の区分に応じて一定の証明が必要です。
 例えば、物品の輸出のうち輸出の許可を受けるものの場合には輸出許可書が、サービスの提供などの場合にはその契約書などで一定の事項(資産の譲渡等を行った①事業者の氏名又は名称及びその契約に係る住所等、②年月日、③資産又は役務の内容、④対価の額、⑤相手方の氏名又は名称及びその取引に係る住所等)が記載されたものが、輸出取引等の証明として必要です。
 このように、輸出取引は消費税が免除されますが、それに対応する課税仕入れには消費税及び地方消費税の額が含まれていることになります。この課税仕入れの金額には、商品などの棚卸資産の購入代金のほか、その輸出取引を行うのに必要な事務用品の購入や交際費、広告宣伝費などの経費なども含まれます。
 そのため、輸出の場合には、課税仕入れに含まれる消費税及び地方消費税の額は申告の際に仕入税額の控除をすることができます。
(消法7、30、消令17、消規5)

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