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解説記事2019年09月30日 SCOPE 財産評価基本通達における“非経常的な利益”とは?(2019年9月30日号・№805)

事業内容や利益の発生原因等を実質的に判断
財産評価基本通達における“非経常的な利益”とは?


 財産評価基本通達183(2)では、類似業種比準価額における評価会社の「1株当たりの利益金額」の算定に当たり、「固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く」と定められているが、今回の事件は、相続等した会社の株式の評価においてクレーン車の売却益が「非経常的な利益」に該当するか否か争われたものである。
 東京地方裁判所(森英明裁判長)は5月14日、非経常的な利益に該当するかどうかは固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断すべきものではなく、評価会社の事業の内容、利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮した上で、実質的に判断するのが相当であると指摘。本件クレーン車の売却益については評価会社の経常的収益力を構成するものと認められると判断し、納税者の請求を棄却する判決を下した。

裁判所、固定資産売却益や保険差益は例示

 本件は、相続により取得した会社の株式の評価においてクレーン車の売却益を反映していないなどとして相続税の更正処分等が行われたことから、その処分の取消しを求める事案である。同社は、主に倉庫等の賃貸に係る不動産貸付業を営んでいる同族法人であるが、取引先からの発注に基づき、同社所有の移動式クレーン車を貸し出し、同社所得のオペレーターが揚重作業を行う事業(クレーン事業)や運送業等も営んでいた。
納税者、クレーン車は固定資産に該当
 財産評価基本通達183(2)では、「「1株当たりの利益金額」の算定は直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く。)に……」と定めている。このため納税者は、評価会社の保有するクレーン車は「固定資産」に該当することから、同社に関して同通達183(2)の「1株当たりの利益金額」を算定する上で、クレーン車の売却益である本件売却益は控除されなければならないなどと主張していた(参照)。

【表】当事者の主張

国(被告)の主張
納税者(原告)の主張
 評価通達183(2)は、類似業種比準価額における評価会社の「1株当たりの利益金額」の算定に当たり、「非経常的な利益の金額を除く。」と定めるところ、これは、類似業種の利益金額と比較した評価会社の経常的収益力を適切に株価に反映させるために偶発的な利益を除外することとしているものであり、固定資産売却益や保険差益が挙げられているのは、これらが通常は偶発的な取引であることから例示されているにすぎない。これに対し、固定資産売却益であっても、毎期継続的に売買が繰り返されるような固定資産売却益の場合には、その利益は当然会社の経常的収益力を構成するのであるから、非経常的な利益であるとはいえない。
 したがって、評価会社の「1株当たりの利益金額」の計算に際し、ある利益が除外されるべき非経常的な利益に該当するか否かは、その利益が、形式的に固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって決せられるものではなく、①評価会社の事業の内容、②その利益の発生原因、③その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮して判断するのが相当である。
 評価通達183(2)は、「『1株当たりの利益金額』は、直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く。)に……」と定めている。そして、評価会社は建設機械類のリース業を目的とし、クレーン車のオペレーティングリース業を実際に営んでいるのであるから、同社の保有するクレーン車は「固定資産」に該当する。
 したがって、同社に関して同通達183(2)の「1株当たりの利益金額」を算定する上で、クレーン車の売却益である本件売却益は控除されなければならない。

売却益は事業収益の相当程度を占める
 裁判所は、評価通達183(2)は、類似業種の利益金額と比較した評価会社の経常的収益力を適切に株価に反映させるために、偶発的な利益を除外することを定めたものというべきであると指摘。同通達183(2)が評価会社の「1株当たりの利益金額」の算定に際して除外される「非経常的利益」として固定資産売却益や保険差益を挙げているのも、これらの利益が通常は偶発的な取引によるものであることからその例として示したものにすぎず、これらの利益は、あくまでも偶発的な取引による非経常的な利益に当たる場合に除外されるものと解すべきであるとした。
 加えて、ある利益が評価会社の「1株当たりの利益金額」の計算に際して除外される非経常的な利益に当たるか否かは、その利益が固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断すべきものではなく、評価会社の事業の内容、当該利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮した上で、実質的に判断するのが相当であるとの見解を示した。
 その上で本件についてみると、評価会社が平成21年3月期から平成26年3月期までの各事業年度においてクレーン事業に使用していたクレーン車を売却することによって得た利益は、1億5,265万円から16億2,168万円であり、同社の各期における営業利益の約23%から約341%をそれぞれ占めており、同社が行っていた事業の収益の相当程度を示すものであったということできると判断。また、クレーン事業は同社が不動産賃貸業や運送業と並んで営んでいたものであるところ、この事業はクレーン車を毎期継続的に売却することによってはじめて利益を生じる仕組みとなっていたものであることなどから、本件売却益は評価会社の経常的収益力を構成するものと認められ、評価通達183(2)において1株当たりの利益金額の計算に際し法人税の課税所得金額から除くこととされている「非経常的な利益」に該当しないとの判断を示している。

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