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解説記事2021年02月22日 ニュース特集 消費税における総額表示義務化の実務上のポイント(2021年2月22日号・№871)

ニュース特集
個々の商品は税抜でも店内表示等で税込価格が分かればOK
消費税における総額表示義務化の実務上のポイント


 消費税における総額表示義務の特例だが、適用期限通り令和3年3月31日で廃止される。このため、4月1日からは消費者に対して価格を表示する場合には、税込価格を表示することが必要になる。ただし、現在のコロナ禍での状況や事務負担等を考慮し、個々の商品の価格が税抜価格であっても、店内表示等を総額表示にすることによってその商品の「税込価格」が分かるようになっていれば、総額表示義務との関係では問題ないことが明らかとなっている。本特集では財務省や内閣府の資料及び取材に基づき総額表示を行う際の実務上の留意点を解説する。

4月1日以降も税抜価格は税込価格との併記であれば可

 消費税の総額表示義務は、事業者が不特定多数かつ多数の者に、あらかじめ販売する商品等の価格を表示する場合に税込価格を表示することを義務付けるもの。ただし、消費税率の引上げに伴い、事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮し、消費税転嫁対策特別措置法では、現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば税込価格を表示することを要しないとされている。これが消費税の総額表示義務の特例だが、同法は令和3年3月31日で失効するため、令和3年4月1日以降に消費者に対して商品の販売をする場合、その価格表示については、税込価格での総額表示が義務付けられることになる。
 具体的には図表1の表示が総額表示として認められる。「10,000円(税抜)」「10,000円(本体価格)」「10,000円+税」といった表示は、令和3年3月末までは総額表示義務の特例として認められているが、4月1日以降は認められなくなるので留意したい。コロナ禍においては、4月1日を境とした厳格な切り替えまでは求められていないが(本誌866号8頁参照)、消費者の利便性に配慮するという総額表示義務の趣旨を踏まえ、切り替えの準備を行っていく必要があろう。

【図表1】総額表示(税込価格11,000円(消費税率10%)の商品の場合)

(1)11,000円
(2)11,000円(税込)
(3)11,000円(税抜価格10,000円)
(4)11,000円(うち消費税額等1,000円)
(5)11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
(6)11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10%)
(7)10,000円(税込価格11,000円)

消費者が誤認する表示方法はアウト
 とはいっても税抜価格が全く排除されるわけではない。令和3年4月1日以降も税込価格が明瞭に表示されていれば税抜価格を併記することは認められている。
 税込価格が明瞭に表示されているか否かの判断に当たっては、①税込価格表示の文字の大きさ、②文字間余白、行間余白、③背景の色との対照性の各要素が総合的に勘案されることになる。例えば、税込価格と税抜価格の両方を表示する場合(税抜価格を本書きとする表示方法)であっても、表示媒体における表示全体からみて、税込価格が一般消費者にとって見やすく、かつ、税抜価格が税込価格であると一般消費者に誤解されるおそれがないといえる価格表示であれば、税込価格が明瞭に表示されていると認められる(図表2参照)。

 一方、税抜価格が大きく表示されている場合であって、そこに併記されている税込価格の文字の大きさが著しく小さいために消費者が税抜価格を税込価格と誤認するような表示である場合などは、税込価格が明瞭に表示されているとはいえず、景品表示法の有利誤認表示として問題となる可能性がある(図表3参照)。

4月1日以降も店内表示等で税込価格が分かれば問題なし

 令和3年4月1日まで約1か月と迫る中、スーパーやアパレルなどでは急ピッチで総額表示への変更を行っていることだろう。しかし、現在のコロナ禍での状況や事務負担等との関係からすべての個々の商品の価格について総額表示に変更することは難しいことも十分に考えられる。このような場合には、4月1日以降であっても、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等へ総額表示することによってその商品の「税込価格」がひと目で分かるようになっていれば、総額表示義務との関係では問題ないとされている。総額表示の義務付けは、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が行う価格表示を対象とする者であり、それがどのような表示媒体によるものであるかは問われていないからだ。
 また、例えば、メーカー希望小売価格が「〇〇円(税抜)」と税抜価格で印字されている商品を自らの販売価格にする場合も同様だ。4月1日以降であっても、商品陳列棚や店内表示等で税込価格がひと目で分かるようになっていれば問題はない。
ネット販売での商品タグは総額表示の対象外
 そのほか、ネット販売についてはどうか。例えば、自社のホームページの価格を「税込価格」で表示していれば、仮に送付する商品のタグが「税抜価格」であっても問題はない。ホームページ上の価格表示については、不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ取引価格を表示するものであるため、総額表示義務の対象となるが、購入者に送付する商品についてはタグが付いていたとしても、不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ取引価格を表示するものではないため、総額表示義務の対象とはならないからだ。したがって、総額表示義務の観点から考えると、令和3年4月1日以降もタグの貼替えなどの対応は不要となる。

個別事例Q&A~総額表示義務の対象になるか

 以下、総額表示義務の対象になるか否か、個別事例を基にQ&Aで解説する。

Q1 レストランなどのサービス料は?
A 取引金額の一定割合をサービス料として受け取る場合、その表示は、最終的な取引価格そのものではないが、事実上、その取引価格を表示しているものになるため、「総額表示義務」の対象となる。取引金額の一定割合をサービス料として受け取る事業者にあっては、その基礎となる取引金額が「税込価格」であれば、サービス料の割合を変更する必要はない。店頭、ディスプレイ、メニュー全ての価格表示を総額表示とした場合であれば、メニュー表には、例えば、ディナー 3,300円(税込価格)「※上記税込価格にサービス料として別途10%を頂戴いたします。」と表示する方法などが考えられる。

Q2 ネット販売を行う際のポイント付与(「100円→1ポイント」(税抜き100円の購入につき1ポイント付与))や取引条件(「2,000円以上購入の場合には送料無料」(税抜き2,000円以上の購入につき送料無料とする場合))に関する表示は?
A 総額表示の義務付けは、課税事業者がサービスの提供や商品の販売等の取引を行う際に、不特定かつ多数の者に対する値札や広告等において、あらかじめ取引価格を表示する場合を対象としている。このため、ポイント付与率などの取引条件の表記については、「商品の販売を行う際の取引価格の表示」に該当しないことから、総額表示義務の対象とはならない。
  なお、商品の価格表示や取引条件の表記によっては、消費者に誤認を与えることも想定される。仮に取引条件の表記を税抜きで行う場合には、その旨を明瞭に表示し、消費者に誤認を与えないよう十分な配慮が必要だ。このような観点からは、取引条件の表記を税込みにすることも1つの方法となる。

Q3 通信販売の送料は?
A 送料についても、その表示が消費者に対するものであれば、商品の価格と同様に総額表示義務の対象となる。

Q4 小売店や業務用ユーザー向けに作成した商品カタログ(業務用商品カタログ)の表示は?
A 一般的な事業者間取引における価格表示は、総額表示義務の対象にはならない。製造業者や卸売業者が小売店や業務用ユーザーとの間で行う取引は事業者間取引に該当するため、業務用商品カタログも総額表示義務の対象にはならない。

Q5 会員向けのサービスの価格をホームページ上で表示する場合は?
A 会員のみを対象として商品やサービスの提供を行っている場合であっても、その会員の募集が広く一般を対象に行われている場合には、「総額表示義務」の対象となる。

Q6 クーポン等の「100円引き」や「50%オフ」などの表示は?
A 値引販売の際に行われる価格表示の「○割引」あるいは「○円引き」とする表示自体は「総額表示義務」の対象とはならない(値引後の価格を表示する場合には、総額表示義務の対象となる)。
  なお、事業者が行う値引き方法について、税込価格から値引きするのか税抜価格から値引きするのかは事業者の判断に委ねられている。しかし、どちらの方法を採るかによって消費者が最終的に支払う金額に違いが出てくることから、事業者は、税込価格又は税抜価格のどちらから値引きするのかについて、あらかじめ消費者に対して明らかにしておくことが適切であるとされている。取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると消費者に誤認される表示は、景品表示法上、問題となる可能性がある。

買いたたきなど、消費税転嫁対策特別措置法失効後は独禁法や下請法で判断
 令和3年4月1日以降、これまで税抜価格を表示していた小売店が税抜価格の表示価格を税込価格として消費者に商品を販売するため、納入業者に対して納入価格の値引きを要請することが懸念されている。消費税転嫁対策特別措置法が令和3年3月31日で失効されるため、小売店側の値引き要求が4月1日以降であれば「買いたたき」とはならないのではないかということだ。しかし、消費税転嫁対策特別措置法は失効するものの、このようなケースは独占禁止法や下請法に照らして「買いたたき」かどうか判断されることになるため留意したい。

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