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解説記事2021年05月31日 税務マエストロ 令和2年度消費税改正(高額特定資産に該当する棚卸資産の取扱い)(2021年5月31日号・№884)

税務マエストロ
令和2年度消費税改正(高額特定資産に該当する棚卸資産の取扱い)
#261
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 消費税法第12条の4(高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例)では、「……簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行つた場合……」と規定している。つまり、本則課税の適用期間中に高額特定資産を取得した場合に限り、3年縛りの規定が適用されることになるのである。
 これに対し、消費税法第36条(納税義務の免除を受けないこととなつた場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整)では、「棚卸資産に係る調整税額を、課税事業者となった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなす……」と規定しており、「課税事業者となった課税期間において課税仕入れを行ったものとみなす」といったような規定ぶりにはなっていない。
 したがって、税額調整の対象となる期首棚卸資産が高額特定資産に該当したとしても、旧法の下では3年縛りの規定は適用されないことになるのである。
 そこで、令和2年度改正により、高額特定資産に該当する棚卸資産について、免税事業者が課税事業者となった場合の税額調整措置を適用する場合には、当該棚卸資産に係る課税仕入れについても3年縛りの規定を適用することとしたものである(改消法12の4②、37③四)。
 今月は、令和2年度消費税改正のうち、「高額特定資産に該当する棚卸資産に対する3年縛りの適用規定の創設」について確認する。

1 適用時期

 本改正は、令和2年4月1日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合について適用することとされている(令和2年改正法附則42)。したがって、令和2年3月31日までに税額調整の対象とした棚卸資産については3年縛りの制約はない。

 上図のように、高額特定資産について「免税→課税」の税額調整をした翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができる。 

2 調整対象自己建設高額資産の取扱い

 免税期間中に自己建設した棚卸資産については、建設等に要した費用の額《原材料費や経費となる課税仕入高(税抜)》の累計額が1,000万円以上となったもの(調整対象自己建設高額資産)についてだけ、3年縛りの規定を適用することとしている。
 したがって、免税期間中の課税仕入高が1,000万円未満の仕掛工事や完成工事などの棚卸資産について「免税→課税」の税額調整措置を適用する場合には、3年縛りの規定は適用されない(消基通1−5−29)。
(注)調整対象自己建設高額資産の建設等に要した費用の額には、原材料として使用する調整対象固定資産や自己保有の建設資材等も含まれる(消基通1−5−31)。
(1)拘束期間
 調整対象自己建設高額資産については、「免税→課税」の税額調整措置を適用した課税期間の翌課税期間から、次の期間までの各課税期間について、本則課税が強制適用となる(下表参照)。

(2)3年縛りとの関係
 免税期間中の課税仕入高が1,000万円未満の仕掛工事などに「免税→課税」の税額調整措置を適用する場合には、3年縛りの規定は適用されないが、課税事業者となった後の課税期間において、本則課税の適用期間における課税仕入高の累計が1,000万円以上となった場合には、ここで「自己建設高額特定資産」の仕入れを行ったこととなる。
 よって、この課税期間から3年縛りの規定が適用されることとなることに注意する必要がある(消基通1−5−29(注))。
○3年縛りとなるケース(□課税仕入高の累計≧1,000万円)
 税額調整をした②の翌期(③)から完成日の属する課税期間(④)の初日以後3年を経過する日の属する課税期間(⑥)まで、本則課税が強制適用となる。

○3年縛りが適用されないケース(□課税仕入高の累計<1,000万円)
 免税期間中に発生した仕掛工事は1,000万円未満であり、調整対象自己建設高額資産には該当しない。また、課税事業者となってからの課税仕入高の累計も1,000万円未満(900万円)であり、自己建設高額特定資産に該当しないため、3年縛りの適用はない。

○3年縛りとなるケース(□課税仕入高の累計≧1,000万円)
 免税期間中に発生した仕掛工事は1,000万円未満であり、調整対象自己建設高額資産には該当しない。ただし、課税事業者となってからの課税仕入高の累計額が1,000万円以上(②+③=1,200万円)となるため、③期において、仕掛工事は自己建設高額特定資産に該当することになる。
 結果、③の翌期(④)から完成日の属する課税期間(④)の初日以後3年を経過する日の属する課税期間(⑥)まで、本則課税が強制適用となる。

3 居住用賃貸建物との関係

 居住用賃貸建物に該当する棚卸資産について「免税→課税」の税額調整措置を適用する場合には、次の日を仕入日として調整税額を計算することになる(改消令53の3)。

 居住用賃貸建物に該当する棚卸資産については、「免税→課税」の税額調整措置を適用したとしても、結果として仕入税額控除はできない。ただし、調整期間中に課税賃貸用に供した場合又は売却した場合には、課税賃貸割合又は課税譲渡等割合により調整税額を計算し、取り戻し控除が認められることになる。

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