税務ニュース2021年06月04日 処分取消判決の拘束力巡り最高裁で弁論(2021年6月7日号・№885) 相続財産評価の取消判決は、遺産分割成立後の更正を拘束するか
納税者は、母の死亡に伴う相続について、遺産分割未了の段階で法定相続分により申告をした。しかし、遺産に含まれる株式の一部の価額が過少であるとして増額更正処分を受けたため、同処分の取消しを求めて提訴したところ、申告に係る税額を超える部分の取消判決(前件判決)が確定し、争点となった株式について、申告における価額を下回る価額が認定された。
その後、遺産分割が成立したため、納税者は、株式の価額を前件判決が認定した価額として課税価格を計算し、税額が過大となったとして相続税法32条1号に基づく更正の請求を行った。これに対し、処分行政庁は、本件申告における株式の評価の誤りに係る是正は、相続税法32条1項に基づく更正の請求によっては是正し得ないことなどを理由として、更正すべき理由がない旨の通知処分等を行ったため、納税者はこれらの取消しを求めて提訴した。
原判決(東京高裁)は、「相続税法32条1号に基づく更正の請求においては、相続税に固有の後発的事由(遺産分割)以外の事由(個々の財産の価額の評価の誤りがあったこと等)を主張することはできない」として納税者の主張を認めなかったものの、「税務署長は、本件更正処分等をするに当たり、取消判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により、前件判決における上記株式の価額や評価方法を基礎として税額等を計算しなければならない」として、納税者の請求を一部認容していた(本誌836号)。
これを不服として上告した国は、弁論で、「本件各株式の評価の誤りは、相続税法32条1号の更正事由に該当せず、国税通則法23条の更正事由に該当するものの除斥期間を徒過している」として、「取消判決の拘束力は、相続税法32条1号等の法体系の元で認められていない権限行使を課税庁に義務付けるものではない」点を強調した。
本件では、前件判決の確定時に通則法23条による更正の請求の除斥期間がすでに経過していたという事情があり、「いわば除斥期間内に課税庁の更正の権限が適正に行使されていなかったといえるにもかかわらず、除斥期間等を理由に権限も義務もないとして前件判決の判断の拘束力に従った対応を拒むのは、先行する取消訴訟の実効性を確保して行政の適性を図ろうとする拘束力の趣旨に反する。」との東京高裁の判断が最高裁で覆されるのか、注目される。
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