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解説記事2021年07月12日 SCOPE 総会決議取消し判決確定前の株主の訴えは不法行為とならず(2021年7月12日号・№890)

東京地裁、会社が株主に損害賠償請求も棄却
総会決議取消し判決確定前の株主の訴えは不法行為とならず


 スクイーズアウトにより株主の地位を失ったにも関わらず16件の計算書類閲覧謄写請求事件などを提起したとして、会社が被告に対して弁護士費用等の支払いを求めた損害賠償請求事件で東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は原告である会社の請求をすべて棄却する判決を下した(令和3年2月24日)。東京地裁は、16件の被告の訴えの提起等は株主総会決議の不存在確認等を求める被告の訴えを棄却する判決がすべて確定した前であると指摘。被告が原告の株主であることを前提に訴えを提起等しても、法律的根拠を欠くものと評価できないとした。

被告は株主確認等の訴訟中に16件の訴えを提起

 原告(会社)が株主であった被告に対し、被告が株主の地位を喪失したことを知りながら原告に計算書類閲覧謄写請求事件等の訴えや会社非訟事件及び仮処分の申立てを行ったことにより損害を被ったとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき弁護士費用など約2,000万円の支払いを求めた事案である。
 原告はかつてJASDAQに上場していたアムスク(現在はフォンス(株))。同社は平成25年6月28日、スクイーズアウト(少数株主の排除)を目的として定時株主総会及び種類株主総会を開催。すべての普通株式に全部取得条項を付する定款変更をする旨の決議のほか、原告が全部取得条項付種類株式をすべて取得し対価として株式1株につきA種種類株式101万分の1株を株主に交付する旨の決議を行った。しかし、被告を含む一部の株主は、原告に対し種類株主総会決議の取消しを求める訴えを提起。裁判では、株主総会の議決権行使に係る基準日を設定する旨の公告をしなかったことが会社法124条3項に違反するとして同決議を取り消す判決が下された(平成28年4月7日に最高裁で確定)。
 その後、原告は再びスクイーズアウトを目的として臨時株主総会を開催し、平成28年7月26日を効力発生日とする株式併合を行う旨を決議。これに対し被告の株主は、株主総会決議は不存在であるから株式併合は効力を生じないとして、被告が原告株式を有する株主であることを確認する訴えを提起。東京地裁は、株式併合は効力を生じており、被告は全ての原告株式を喪失したとして被告の請求を棄却する判決を下した(平成30年4月26日に最高裁で確定)。また、被告は原告に対し各決議が存在しないことの確認等を求める訴えを提起したが、すべて棄却された(令和2年10月29日に最高裁で確定)。
 被告は、平成28年10月11日から平成29年8月24日にかけて原告に対し、被告が原告の株主であることを前提として3件の訴えの提起並びに5件の会社非訟事件及び8件の仮処分事件の申立てを行った(参照)。

すべての判決の確定は被告の訴えの提起の後
 東京地裁は、最高裁判決(昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁)を引用し、訴えの提起が違法となるのは、訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当であるとした。また、非訟事件もしくは仮処分の申立てが違法となる場合も同様であるとした。
 その上で本件については、株主総会決議の不存在確認等を求める被告の訴えを棄却する判決がすべて確定したのは令和2年10月29日であり、被告の訴えの提起等はいずれも判決の確定日よりも前にされたものであると指摘。被告は、株主総会決議の取消しが認められれば原告の株主の地位を有することになるのであり、判決が確定するより前の時点においては、被告が原告の株主であることを前提に訴訟を提起し、非訟事件若しくは仮処分事件を申立て、これらの手続を遂行し又は不服申立てをしても、事実的、法律的根拠を欠くものであると評価することはできないと判断し、原告に対する不法行為を構成するものとは認められないとして原告の請求を棄却した。
会社に損害を与える意図があると主張するも
 また、原告は、被告が株主名簿閲覧謄写仮処分命令申立て(表の9)を却下された後に再び同じ申立て(表の11)をするなど、原告に損害を与える意図をもって重複する申立てを行っていると主張するが、この点について東京地裁は、対象の株主名簿の時期が異なるなど、閲覧の対象が同一であるとはいえず、同種の申立てをしたことが不法行為を構成するということはできないとした。

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