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解説記事2021年08月30日 ニュース特集 当局作成の通則法Q&A、重加算税関係を確認(2021年8月30日号・№895)

ニュース特集
虚偽記載の収支内訳書、調査通知直後の修正申告etc.
当局作成の通則法Q&A、重加算税関係を確認


 本特集では、課税当局が個人課税職員向けに作成している国税通則法関係Q&Aから重加算税部分の一部を紹介する。調査審理等でも活用される重加算税Q&Aでは、「調査時に虚偽答弁が行われた場合」「虚偽の内容を記載し作成した収支内訳書に基づき申告した場合」「調査通知直後に提出された修正申告書に対する重加算税賦課の適否」などが取り上げられている。

過少申告についての認識の要否
Q

 正当な理由もなく借名口座(一般口座)により株取引をし、得た利益を申告していなかった納税者が、具体的な損益の金額を認識しておらず、結果として過少申告となった旨の主張をした場合であっても、重加算税を課すことができるか。
A
 重加算税を課すことができる。
解説
 国税通則法68条1項の文理からすれば、重加算税を課すためには、納税者が故意に課税要件事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その行為を原因として過少申告の結果が発生すれば足り、過少申告を行うことの認識を有していたことまでは要しないと解されている。
 この点、「過少申告を行うことの認識を要するもの」として、脱税犯に対する刑罰があるところ、当該刑罰は、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目して科するものであり、その脱税犯が成立するために「税を免れる」ことについての認識が必要とされるものであることに対し、重加算税は、これを課することにより納税義務違反の発生を防止し、もって徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり、これを課するために「納税者が故意に課税要件事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装」したことが必要とされるものであって、上記刑罰とその趣旨や要件を異にするものである。
 設問の場合、損益金額の認識(過少申告の認識)を有していなくても、正当な理由なく借名口座(一般口座)による株取引を行うという隠蔽又は仮装の事実が認められることから、過少申告の認識を有していないとの主張をしたとしても、重加算税を課すこととなる。
《判決事例》最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決

相続人に対する重加算税の賦課
Q

 被相続人は、自らの所得計算の基礎となるべき事実を「隠蔽又は仮装」したところに基づき期限内申告書を提出し、死亡した。その後の調査により、被相続人が行った「隠蔽又は仮装」の事実が明らかになったため相続人が修正申告書を提出する場合、当該相続人がその「隠蔽又は仮装」の事実を知らなかったときには、当該修正申告書により納付すべき税額に対して重加算税を課すことができるか。
A
 重加算税を課すことができる。
解説
 加算税の納税義務の成立時期は法定申告期限の経過の時であり(通法15②十四)、相続人は、被相続人の加算税の納付義務を承継する(通法5)。
 設問の場合、被相続人は、自身が提出した期限内申告書の法定申告期限経過の時において、重加算税に係る納付義務を負うこととなり、相続人は、これを承継することとなる。したがって、相続人が「隠蔽又は仮装」の事実を知らない場合でも、重加算税を課すこととなる。
 なお、自らの所得計算を適正に行っていた被相続人が確定申告書を提出せずに法定申告期限前に死亡し、相続人が、被相続人の所得につき「隠蔽又は仮装」を行い、それに基づき準確定申告書を提出していた場合において、調査により当該相続人が修正申告書を提出するときにも、当該修正申告書による納付すべき税額に対して重加算税を課すこととなる。

調査時に虚偽答弁が行われた場合
Q

 過少申告をした納税者が、調査時における具体的事実に関する質問に対し、虚偽の答弁を行った場合、そのことのみをもって重加算税を課すことができるか。
A
 虚偽の答弁が行われたことのみをもって、重加算税を課すことはできない。
解説
 重加算税は、隠蔽又は仮装の行為に基づき、申告書を提出した場合又は申告書を提出しなかった場合に課すものであることから、調査時における具体的事実に関する質問に対し、虚偽の答弁が行われたことのみをもって、重加算税を課すことはできない。
 なお、過少申告をした納税者が調査時に虚偽答弁をしたという事実は、申告前に隠蔽又は仮装が行われたことを合理的に推認し得る事実の一つとなり得るから、その他の事実関係を総合的に判断し、申告前における隠蔽又は仮装が合理的に推認される場合には、重加算税を課すこととなる(平成12年7月3日付「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」第1−1(8)。
《判決事例》最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決

無申告の場合
Q

 個人住民税の申告のみを行い、所得税の申告をしていなかった納税者について調査を行った結果、所得税の申告が不要となるように、あえて過少な所得金額の計算の基礎となる申告資料等を作成し、地方税当局の申告相談へ出向き、そこで所得税の申告は不要であるとの指導を受けた上で、個人住民税の申告のみを行っていたことが判明した。この場合、無申告加算税に代えて重加算税を課すことができるか。
A
 重加算税を課すこととなる。
解説
 課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽又は仮装の行為に基づき所得金額等を計算した結果、確定申告を要しない場合に該当するとして確定申告をしなかった場合は、無申告加算税に代えて重加算税を課すこととなる(通法68②)。
 設問の場合のように、納税者が、あらかじめ過少な所得金額が計算されるような申告資料等を作成し、確定申告を要しない場合に該当するように装って、確定申告をしなかったことは、国税通則法68条《重加算税》2項にいう「隠蔽又は仮装」と評価し得る行為に該当することから、無申告加算税に代えて重加算税を課すこととなる。

虚偽の内容を記載し作成した収支内訳書に基づき申告した場合
Q

 令和X1年分ないしX3年分の所得税等の調査において、次に掲げるような場合、隠蔽又は仮装の行為があったといえるか。
1 家電修理業を営むAは、保存していた売上げに係る請求書控えにより容易に適正な事業所得の金額を計算できたにもかかわらず、収支内訳書を作成するに当たり、これに基づき集計した売上先別の売上金額から、10万円、20万円といったラウンドの金額をそれぞれ除外し、併せて元請との間で売上金額と相殺した仕入金額も圧縮した金額を直接記載していた(質問応答記録書を作成済み)。
2 建具等の修理業を営むBは、収入金額をパソコンで管理していたことから、これによれば正確に事業所得の金額を計算できることについて十分認識していたにもかかわらず、X銀行B名義の普通預金口座に入金されている収入金額のみを集計することにより、過少な収入金額を算出し、当該金額を事業所得の収入金額として収支内訳書に直接記載していた(質問応答記録書を作成済み)。
3 翻訳業を営むCは、支払調書を作成・交付しない取引先がいるにもかかわらず、交付を受けた支払調書のみを集計し、収支内訳書を作成して申告していた。Cは、単なる収入計上漏れであると主張しているが、調査担当者は、次の事実を把握した。
 ① Cは、「受注管理表」に、支払調書のない取引先についても記載していること。
 ② 上記①の支払調書のない取引先からの入金は、全て銀行振込みであり、預金通帳によりその金額が確認できること。
 ③ 取引先の全体の件数に対して申告している件数は20%にも満たないこと。
A
 いずれの場合についても、隠蔽又は仮装の行為があったとの認定が可能である。
解説
 事業所得や不動産所得を有する納税者が、事業所得や不動産所得の正当な収入金額及び必要経費を把握していながら、その所得金額を過少に申告する意図をもって収入金額を除外し、又は必要経費の金額を上乗せするなどして真実の所得金額よりも少ない額の所得金額を算出するための独自の計算を行い、その計算結果に基づく過少な所得金額を記載した内容虚偽の決算書等を作成の上、申告している事案がある。このような事案については、納税者の内容虚偽の決算書等を作成するに至るまでの一連の行為を認定することにより、隠蔽又は仮装に該当する行為があったと評価できる場合がある。
 具体的には、決算書等に記載された所得金額が過少であることが単なる計算誤りや転記ミスによるものではなく、納税者が故意に(意図的に)正当でない金額を決算書等に記載したこと及び申告に至るまでの行為を明らかにすることで、隠蔽又は仮装の行為の認定が可能となる。
 なお、上記行為については、調査年分ごとに明らかにする必要がある。

土地建物等の譲渡所得等における具体的な隠蔽又は仮装の行為
Q

 納税者が帳簿や決算書類を備え付けていない土地建物等の譲渡所得等における隠蔽又は仮装の行為とは、具体的にはどのような事実が該当するのか。
A
 土地建物等の譲渡所得等についても、隠蔽又は仮装の行為に該当するかは、平成12年7月3日付「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」第1−1に掲げる事実があるかどうかにより判定することになるが、具体的には、次の解説に記載した事実などが該当する。
解説
1 譲渡に関する契約書等を破棄し又は隠匿したこと(同指針第1−1(2)①)。
2 真実と異なる譲渡価額若しくは譲渡時期又は取得価額若しくは取得時期を記載した契約書その他の書類を作成したこと(同指針第1−1(2)②)。
3 虚偽の支払立退料その他真実と異なる譲渡費用を記載した領収書その他の書類を作成したこと又は第三者に作成させたこと(同指針第1−1(2)②)。
4 本人以外の名義又は架空名義により取引したこと(本人以外の名義又は架空名義を使用して取引したことが、他の事情からやむなく行ったものであることが明らかな場合を除く)(同指針第1−1(3))。
5 譲渡代金を秘匿するため、その全部又は一部を本人以外の名義、架空名義若しくは無記名の預貯金その他の資産としていること(同指針第1−1(5))。
6 居住用財産の買換えその他各種の課税の特例を受けるため、その適用要件を欠いていることを知りながら、住民票の住所を居住の用に供していない家屋の所在地に移し、その住民票の写しを作成させるなど、適用要件を満たす事実があるように装ったこと(同指針第1−1(6))。
《判決事例》最高裁昭和62年7月7日第三小法廷判決(広島高裁昭和61年11月21日判決、広島地裁昭和59年12月20日判決)
 「前記二1の各認定事実からすると、原告は、その生活の本拠として本件家屋を居住の用に供するものでないにかかわらず、措置法35条1項の適用を受けるために、昭和56年3月31日本件物件所在地に住民票の住所を移して右居住の外形を作出したものと認められ、そして、前掲乙第一号証によれば、原告は、昭和56年分の所得税の確定申告書に右住民票の写しを添付して、本件確定申告に及んでいることが認められる。原告の行為は国税通則法68条1項所定の税額等の計算の基礎となる事実を仮装したものと認めるに十分で、同条項を適用して原告に対してなした被告の本件重加算税の賦課決定処分は適法なものといえる。」

株式等の譲渡所得等における具体的な隠蔽又は仮装の行為
Q

 納税者が帳簿や決算書類の保存を要しない株式等の譲渡所得等における隠蔽又は仮装の行為とは、具体的にどのような事実が該当するのか。
A
 株式等の譲渡所得等についても、隠蔽又は仮装の行為に該当するかは、平成12年7月3日付「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」第1−1に掲げる事実があるかどうかにより判定することになるが、具体的には、次の解説に記載した事実などが該当する。
解説
1 譲渡に関する契約書、金融商品取引業者等から交付を受けた取引報告書、特定口座年間取引報告書その他の書類又はデータ等を破棄し又は隠匿したこと(同指針第1−1(2)①)。
2 金融商品取引業者等から交付を受けた取引報告書、特定口座年間取引報告書その他の書類の記載事項を改ざんしたこと(同指針第1−1(2)②)。
3 真実と異なる売買契約書、取得価額を証する書類その他の書類を作成したこと(同指針第1−1(2)②)。
4 パソコンやメモ等の手控えにより真実の譲渡損益を計算していた場合において、当該譲渡損益の金額と異なる金額により申告していたこと(同指針第1−1(2)②)。
5 本人以外の名義又は架空名義により取引したこと(ただし、本人以外の名義又は架空名義を使用して取引をしたことが、他の事情からやむなく行ったものであることが明らかな場合を除く)(同指針第1−1(3))。
6 譲渡代金を秘匿するため、その全部又は一部を他人名義、架空名義又は無記名の預貯金その他の資産としていること(同指針第1−1(5))。
7 株式等に係る譲渡所得等の課税の特例を受けるため、その適用要件に係る虚偽の証明書その他の書類を作成したこと又は第三者に作成させたこと(同指針第1−1(6))。

推計により所得金額を算定した場合の重加算税の賦課
Q

 調査等において推計により所得金額を算定した場合であっても、納税者(白色申告者)が領収書等を破棄するなどして売上代金等を秘匿し過少申告していた場合には、重加算税を課すのか。
A
 重加算税を課す。
解説
 重加算税は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し又は仮装したことに基づき過少申告された場合に課されるものであることから、推計(資産負債増減法、同業者率等)により所得金額を算定した場合であっても、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し又は仮装している場合には、上記「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し又は仮装」したことに基づく所得金額であるとして重加算税を課すことになる。
 設問の場合、領収書等の破棄により実額で所得金額が算定できず、推計により所得金額を算定しているところ、これは、上記「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し又は仮装」したことになるから、重加算税を課すこととなる。

調査通知直後に提出された修正申告書に対する重加算税賦課の適否
Q

 調査通知直後(事前通知前)に納税者から修正申告書の提出があり、その内容を調査した結果、当初申告において「隠蔽又は仮装」の事実に基づく申告漏れがあったことが判明した。この場合、重加算税を賦課することはできるか。
A
 原則として、重加算税を課すことはできない。
解説
 期限内申告書が提出された場合において、調査通知後に修正申告書の提出があったときは、当該提出が、調査があったことにより更正があるべきことを予知されたものでない場合であっても、過少申告加算税(5%)を課すこととされている(通法65①⑤)。
 一方、重加算税は、国税通則法68条《重加算税》1項の規定のとおり、同法65条《過少申告加算税》1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税に代えて課すこととされているが、その括弧書において、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知されたものでない場合は除かれている。
 設問の場合、たとえ、修正申告の内容に「隠蔽又は仮装」の事実に基づく申告漏れがあったとしても、その修正申告書の提出が、調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知されたものであると認められる事実がない限り、重加算税を課すことはできない。
 なお、上記修正申告書の提出が、例えば、自身が秘匿する所得について国税当局による帰属を解明するための調査が行われていることを察知したと認められる場合など、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知されたものに該当すると認められる場合には、重加算税を課すこととなる。

課税売上げ及び課税仕入れを除外していた場合の加算税の取扱い
Q

 調査において、事業者が課税売上げ1,100,000円(税込金額)及び課税仕入れ770,000円(税込金額)を帳簿に記載せず除外していた事実並びに当該課税仕入れに係る請求書等を保存していない事実を確認した。
 当該課税仕入れに係る税額70,000円は、消費税法30条《仕入れに係る消費税額の控除》7項に規定する仕入税額控除の適用要件を満たさないことから、仕入税額控除の対象とならない。
 その結果、修正申告又は更正に基づき納付すべき税額は100,000円となるが、次のいずれの方法によって加算税を賦課決定することとなるか。
① 納付すべき税額100,000円の全額を基礎として重加算税を賦課決定する。
② 課税売上げに係る税額100,000円から課税仕入れに係る税額70,000円を控除して計算した税額30,000円を基礎として重加算税を賦課決定し、仕入税額控除の適用要件を満たさないことに基づく税額である70,000円を基礎として過少申告加算税を賦課決定する。
A
 上記①の方法(納付すべき税額100,000円の全額を基礎として重加算税を賦課決定)によることとなる。
解説
 課税仕入れに係る税額70,000円は、確定申告において仕入税額控除の対象としていないものであり、修正申告又は更正においても仕入税額控除の対象とはならないものであるから、修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に影響を与えるものではなく、納付すべき税額100,000円の全額が、課税売上げの除外という「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽したこと」に基づくものとなる。
 したがって、設問の①のとおり、納付すべき税額100,000円の全額を基礎として重加算税を賦課決定することとなる。
(注)消費税の場合、所得税のように隠蔽仮装に基づき除外した収入から、それを得るために必要な経費を差し引いた金額を重加算税対象とする設問の②のような処理にはならない。

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