解説記事2021年12月20日 ニュース特集 Q&Aで読み解く令和4年度税制改正大綱(2021年12月20日号・№911)
ニュース特集
金融所得課税の一体化や相続税・贈与税の一体改革は先送り
Q&Aで読み解く令和4年度税制改正大綱
与党の税制調査会は12月10日、令和4年度税制改正大綱を取りまとめ、公表した(今号21頁参照)。今年は衆議院選挙の関係で約2週間でのスピード決着となった。金融所得課税の一体改革や炭素税などは早々と検討が先送りとなったこともあり、目玉ともいえる税制改正項目は賃上げ促進税制と住宅ローン控除等の見直しの2つにとどまる。税制改正大綱自体も例年に比べて小粒な印象だが、インボイス制度における免税事業者の取扱いなど、実務上注目すべき改正もある。本特集では令和4年度税制改正大綱のポイントをQ&A形式で解説する。
法人課税関係
上乗せの賃上げ・教育訓練要件のいずれかを満たしても控除率アップ
Q
令和3年度に引き続き賃上げ促進税制が改正されるとのことですが、現行制度と比べどのような点が変更となりますか。
A
本誌910号の特集でもお伝えしているとおり、大企業向け賃上げ促進税制は継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大30%(現行20%)を税額控除できる制度となっている。現行制度からは、給与総額の増加率について、「新規雇用者の給与総額が対前年度増加率2%以上」であることの要件が「継続雇用者の給与総額が対前年度増加率3%以上」に変更となる(図表1参照)。また、資本金10億円以上、かつ、常時使用従業員数1,000人以上の大企業に関しては、マルチステークホルダーに配慮した経営方針を宣言することが要件となる。
最大の変更点は税額控除率だ。控除率は20%から最大で30%となる。継続雇用者の給与総額を3%以上引き上げた場合には15%の税額控除となり、さらに上乗せ措置として4%引上げで10%がプラスされる。加えて現行制度と同じだが、教育訓練費の対前年度増加率20%以上で5%がプラスされる。例えば、3%引上げと教育訓練費の増加要件をクリアすれば合計で20%の税額控除となる。
なお、教育訓練費の増加要件については確定申告書に教育訓練費の明細書の添付をしなければならないとされているが、明細書の保存でよいこととする。
また、中小企業向け賃上げ促進税制(所得拡大促進税制)の変更点は図表2の通りだ。控除率が最大40%に引き上げられるほか、控除率の上乗せについては、賃上げ要件と教育訓練要件の2つをクリアする必要があったが、1つの要件でもクリアすれば上乗せ措置が講じられることになる。
なお、賃上げ促進税制については控除率が大幅に引き上げられたものの、控除上限額は現行制度と同様に当期の法人税額の20%のままとされている。留意しておきたい点だ。
宣言に準拠しなくても賃上げ税制の適用取消しはなし
Q
大企業の場合、マルチステークホルダー宣言が賃上げ税制の要件になっています。宣言を守れなかった場合は税制の適用が取り消されることもありますか。
A
資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言することが賃上げ税制の要件となっている。給与等の支給額の引上げの方針や取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項を自社のホームページ等により公表したことを経済産業大臣に届け出る必要がある。
公表する細目は経済産業省の告示により明らかにされる予定だが、財務省によると数値目標などは求められないとしている。また、仮にマルチステークホルダー宣言に沿った経営をしていなかったからといっても税制の適用が取り消されるものではない。
オープンイノベーション税制、株式保有期間が3年に短縮
Q
オープンイノベーション税制の変更点について教えてください。
A
オープンイノベーション税制とは、事業会社が令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込みにより取得した場合には、その株式の取得価額の25%の所得控除を認めるというもの(特別勘定として経理した金額を限度)。払込金額は1億円以上、中小企業の場合は1,000万円以上とし、外国法人への払込みは5億円以上としている。株式は5年間保有することが要件となる(仮に当該株式を譲渡した場合や配当の支払いを受けた場合には、特別勘定のうち対応する部分を取崩し、益金に算入することになる)。
令和4年度税制改正では、これまで5年とされていた特別勘定の取崩しが不要となる株式保有期間が3年に短縮される。また、対象となるベンチャー企業については、売上高に占める研究開発費が10%以上の赤字会社であれば「設立後10年未満」の要件が「設立後15年未満」に緩和される。適用期限についても令和6年3月31日まで2年間延長される。
5G導入促進税制、最高レベルの控除率は引下げも特償率は現行のまま
Q
5G導入促進税制の税額控除率が段階的に引き下がるとのことですが、特別償却率の変更はありますか。
A
5G(第5世代移動通信システム)設備の導入を促す観点から導入された5G導入促進税制とは、5G設備の取得等をした場合、30%の特別償却又は15%の税額控除を認めるというもの。税額控除の15%はこれまでの設備投資減税では最高レベルの控除率となっているが、適用期限を令和7年3月31日まで延長されるものの、下表のとおり段階的に控除率が引き下げられることになる。ただし、特別償却率は現行と同じく30%のままとなっている。
異常危険準備金の積立率の特例は3年延長も一部減額
Q
異常危険準備金の積立率の特例については、与党の税制調査会の検討過程では廃止されるのではないかとの話も浮上していたようですが、最終的にはどのようになったのでしょうか。
A
財務省としては、異常危険準備金の積立率の特例は適用期限である令和4年3月31日で廃止したかったようだが、最終的には令和7年3月31日まで3年間延長されることになった。ただし、単純延長ではなく、強弱のついた見直しとなっている。
現行制度では、保険の種類に関係なく、特例として6%の積立率が認められているが、改正後は①火災保険、風水害保険は10%に引上げ、②動産総合保険、貨物保険、運送保険、建設工事保険は6%に据え置き、③賠償責任保険の特例は廃止されることになっている。なお、火災等共済組合等が行う共済については、特例の4%のまま3年間延長される。
資本の払戻しに係るみなし配当の計算、最高裁判決を踏まえて政令改正
Q
令和3年3月11日の最高裁判決では、国の資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算方法について違法であるとの判決がなされていますが、令和4年度税制改正ではどのような見直しが行われますか。
A
令和3年3月11日の最高裁判決に沿った内容の政令に見直されることになる。最高裁判決では、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当(混合配当)の全体が「資本の払戻し」とされ、株式対応部分とみなし配当部分のプロラタ計算方法を定めた法人税法施行令23条1項3号(現行4号)の規定を一定の限度において違法・無効とする判決がなされている(本誌875号4頁、図表4参照)。これを踏まえ、国税庁は10月27日、「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」を公表。同取扱いでは、最高裁判決に従い、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限として取り扱うとしており、改めて令和4年度税制改正で政令改正を行うこととしている。
事後交付でも圧縮記帳が可能
Q
国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度などは、法人が固定資産の取得等に充てるための補助金等の交付を受け、その交付の目的に適合した固定資産等を取得した場合、つまり事前交付の場合に制度の適用があるとされていますが、事後交付でも認められますか。
A
下記の圧縮記帳制度については、補助金等を事前交付された場合に適用を受けることができるが、最近の実務では補助金等の交付主体が、法人が固定資産の取得等をした後に確認して補助金等を交付する事後交付が一般的になっているという。現在では事後交付でも運用上容認している状況だが、法令上も事後交付であっても圧縮記帳を認めることを明確化するとしている。
① 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度(※所得税は国庫補助金等の総収入金額不算入制度)
② 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
③ 非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
④ 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
⑤ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
所得課税関係
住宅ローン減税の見直しは脱炭素化がポイント
Q
住宅ローン減税については、会計検査院から指摘を受けた控除率の見直しだけでなく、省エネ住宅に対する減税など大幅な見直しが行われています。なぜですか。
A
住宅ローン減税については、適用期限を令和7年12月31日まで4年間延長されるほか、控除率が現行の1%から0.7%に引き下げられる。これは、会計検査院による平成30年度決算検査報告では、控除率1%を下回る金利で住宅ローンを借り入れている者の割合が78.1%と多く、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回っているため、住宅ローンを組む必要がないのに住宅ローンを組む動機づけになっているなどの問題点が指摘されていたことを踏まえた見直しである。
また、令和4年度税制改正では、住宅・建築分野における脱炭素化を強力に推進するため、2025年度までに住宅や小規模建築物を含めたすべての建築物を省エネルギー基準の適合義務の対象とすることを踏まえ、省エネ性能等の高い認定住宅等につき、新築・既存住宅ともに借入限度額を上乗せすることとしたものである(図表5参照)。
住宅ローン控除に係る申告手続き等の見直し
Q
住宅ローンに係る年末残高証明書の提出等が不要になるとのことですが、毎年のローン残高はどのようにしたら分かるのですか。
A
現行、確定申告・年末調整で住宅ローン控除の適用を受けるためには、納税者は申告の際、銀行等から交付された住宅ローンに係る年末残高証明書を提出又は提示しなければならない。令和4年度税制改正では、納税者の残高証明書の提出又は提示を不要とする。居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に確定申告・年末調整で適用を受ける場合について適用される。銀行等は税務署に年末残高の情報等を記載した調書を提出すればよく、納税者への残高証明書の交付は不要になる。
納税者は、銀行等から残高証明書が交付されなければどのように年末の住宅ローン残高を調べればよいのか疑問に思うところもあろうが、今後は税務署から年末残高の情報等の交付が行われることになる。
上場株式等の配当所得、所得税と住民税の課税方式を統一
Q
平成29年度税制改正では、上場株式等の配当所得等に係る課税方式については所得税と個人住民税で異なる方式を採用することができることが明確化されていますが、再び改正が行われるのですか。
A
現行制度では、所得税と個人住民税において異なる課税方式の選択が可能となっている。例えば、上場株式等の譲渡所得等や配当所得等について確定申告をした場合には国民健康保険税の課税の対象になることから、個人住民税の課税方式として申告不要制度を選択することにより国民健康保険税の対象から除外する動きが見受けられる。
このため、令和4年度税制改正では、公平性の観点から所得税と個人住民税の課税方式を一致させるように見直すとしている。個人住民税を申告不要とする場合には所得税においても申告不要であることが求められる。令和6年1月1日から適用される。
転出届出を提出すれば異動前の税務署への異動届出書が不要に
Q
所得税の納税地の異動があった場合の異動届出書が不要になるとのことですが、どのような理由によるものですか。
A
所得税の納税地に異動があった場合には、異動前の納税地の所轄税務署長にその旨を記載した異動届出書を提出することとされている。また、所得税の納税地を住所地から居住地や事業場の所在地等に変更する場合には、その変更前の納税地の所轄税務署長にその旨を記載した変更届出書を提出することが義務付けられている。
この点、従来どおりに市役所等に転出届を提出すれば、転居については住民票の異動情報で、転居以外については確定申告書の記載内容で確認することができるため、申請等の簡素化の観点から異動前の税務署所長への異動届出書等の提出を不要とする見直しが行われる。個人事業者における消費税の納税地についても同様だ。令和5年1月1日以後の納税地の異動等について適用される。
非居住者の給与課税、累進税率の導入可否等を検討へ
Q
非居住者の給与課税のあり方が検討課題に挙がっていると聞きました。どのような見直しが行われるのでしょうか。
A
非居住者が国内において行う勤務に対する給与は、金額の多寡にかかわらず、支払金額の20%(復興特別所得税を含め20.42%)を源泉徴収することとされている。給与所得控除や各種所得控除の適用はない。
コロナ後においては再び非居住者がビジネスで来日する機会が増えることが予想される。このため、今後、累進税率や各種控除の導入の可否、導入する場合の水準・範囲等について検討することとしている。
資産課税関係
法人版事業承継税制
Q
事業承継税制について、特例承継計画の提出期限が1年延長されるとのことですが、個人版事業承継税制についても同様ですか。
A
平成30年度税制改正では、法人版事業承継税制の特例制度が10年間の期間限定措置として導入されているが、特例の適用を受けるには令和5年3月31日までに「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出しなければならないとされている。この特例承継計画の提出が期限内になければ、その後相続が発生したり、贈与を実施しようと思っても特例制度の適用はできない。しかし、コロナ禍にあって中小企業の事業承継を行うことが困難になっている状況を踏まえ、令和4年度税制改正では、特例承継計画の確認申請の期限を「令和6年3月31日」まで延長することとしている。
個人版事業承継税制に関しては承継計画の確認申請が令和6年3月31日とされていることもあり、今回の見直しの対象とはなっていない。
固定資産税の負担調整措置は1年限りも
Q
昨年に引き続き固定資産税の負担調整措置が採られるとのことですが、1年限りの措置になりますか。
A
令和3年度税制改正では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、土地の評価替えを行った結果、住宅地を含め税額が上昇するすべての土地について、令和2年度税額に据え置く措置が講じられている。据置措置については、自民党が固定資産税は地方公共団体の基幹税であるとの意見に配慮し令和3年度限りとすべきと主張する一方、公明党は据置措置を廃止した場合には約1,100億円の増税になるとし、新型コロナウイルス感染症の影響が完全に脱し切れていない状況の中、据置措置の継続又は新たな軽減措置を講じるべきと主張していた。最終的には商業地(負担水準が60%未満の土地)のみを対象(住宅地等は対象外)として令和4年度の課税標準額について、令和3年度の課税標準額に令和4年度の評価額の2.5%(現行5%)を加算した額にすることになった。令和4年度に限った措置となる。
ただし、固定資産税の負担調整措置については、主要論点とはなっていない項目を公明党税制調査会が取り上げて改正につなげたもの。公明党の西田実仁税制調査会会長は令和5年度についても経済状況や地価を踏まえて改めて議論する可能性に言及しており、新型コロナウイルス感染症の影響によっては令和5年度税制改正で再び議論に挙がる可能性もありそうだ。
登録免許税の納付方法、クレジットカードも可能
Q
現金納付とされる登録免許税の納付方法が拡充されると聞きました。書面でもインターネットバンキングで納付することができますか。
A
登録免許税法では、現金納付を原則としつつ、オンライン申請の場合に限ってインターネットバンキング等による納付が可能とされている。令和4年度税制改正では、規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定)を踏まえ、書面申請の場合にもインターネットバンキング等による納付を認めるほか、クレジットカード等による納付もできるようにする。令和4年4月1日から施行される予定だ。
相続税・贈与税の一体改革は今後本格的な検討に
Q
昨年から検討課題として浮上していた相続税・贈与税の一体改革は今回も見送りになりましたか。
A
令和4年度税制改正では特に議論は行われていないが、税制改正大綱には、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と明記されている。近い将来には暦年課税が廃止される可能性も高そうだ。
信託財産の価額、算定が困難な場合も記載が必要
Q
「信託に関する受益者別(委託者別)調書」を提出する場合、相続税評価額の算定が困難な場合であっても、信託財産の価額を記載することが求められるのでしょうか。この場合、どのように算定すればよいですか。
A
「信託に関する受益者別(委託者別)調書」には、原則として課税時期の信託財産の価額(相続税評価額)を記載することとされているが、相続税評価額の算定が困難な場合には、空欄でよいとの取扱いがなされている。現状では、「信託財産の価額」の欄が空欄の者が多く、国税当局からすると、申告審理や調査に活用できないという問題点があった。このため、令和4年度税制改正では、国外財産調書制度や財産債務調書制度と同じく、相続税評価額の算定が困難な場合であっても、見積価額を記載することに改められる。
見積価額については、土地の場合であれば直近の固定資産税評価額、非上場株式であれば直近の計算書類を用いて算定した簿価純資産価額等によることになる。令和5年1月1日以後に提出すべき事由が生ずる調書について適用される。
消費課税関係
電子区分記載請求書による仕入税額控除の経過措置適用
Q
令和4年度税制改正では、適格請求書等保存方式が令和5年10月1日から導入されることを踏まえ、免税事業者が登録の必要性を見極めながら柔軟なタイミングで適格請求書発行事業者となることができるよう、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間においても、課税期間の途中からの登録をできるとの見直しが行われる予定ですが(本誌909号参照)、そのほかに免税事業者向けの改正があれば教えてください。
A
令和5年10月1日から導入される適格請求書等保存方式では、円滑に移行を進めるため、免税事業者から仕入れを行った場合であっても、令和8年9月末までの3年間は仕入額相当額の80%、その後の令和11年9月末までは仕入税額相当額の50%を控除することができるという経過措置が設けられている。
例えば、この経過措置については、現在は紙の区分記載請求書によることとされているため、電子区分記載請求書を保存する場合にも適用を認めることとしている(令和5年10月1日施行)。
また、経過措置期間における棚卸資産に係る消費税額の調整規定の見直しが行われる。現行、免税事業者が課税事業者になるタイミングで棚卸資産を有し、かつ棚卸資産の明細を保存している場合、当該棚卸資産に係る消費税額について仕入税額控除が可能とされている。一方、インボイス制度への移行に伴う経過措置期間においては、免税事業者等からの仕入に係る棚卸資産について、その消費税額の8割又は5割の額で控除することとされている。このため、令和4年度税制改正では、免税事業者である期間において行った課税仕入れについて、適格請求書発行事業者から行ったものであるか否かに関わらず、当該棚卸資産に係る消費税額の全額を仕入税額控除可能とする見直しが行われる(令和5年10月1日施行)。
仕入明細書による仕入税額控除は売り手が課税資産の譲渡等の場合に限定
Q
仕入明細書による仕入税額控除の適用要件が見直されると聞きました。どのような見直しになるのですか。
A
現行、適格請求書発行事業者である個人が家事用資産の売却等(不課税売上)を行った場合、売り手は適格請求書を交付することができないため、買い手は仕入税額控除をすることができない。一方、買い手が事業として資産の譲渡等を受けた場合、家事用資産か否かにかかわらず、課税仕入れに該当することになるため、買い手が仕入明細書を作成することで、仕入税額控除が可能となっている。このため、仕入れ明細書による仕入税額控除は、売り手(課税仕入れの相手方)において課税資産の譲渡等に該当するものに限り、仕入明細書の保存で仕入税額控除することができる制度にすることとしている(令和5年10月1日施行)。
免税事業者との取引に関する独占禁止法等の取扱いQ&Aを公表へ
Q
税制改正大綱では、適格請求書等保存方式に移行する際に免税事業者が不当な取扱いを受けないよう、免税事業者等との取引に関する独占禁止法、下請法等の取扱いを明確化して周知することとされています。具体的にはどのような取組みが行われるのですか。
A
免税事業者の場合、6年間は経過措置があるものの、取引先は仕入税額控除ができなくなるため、消費税相当額の一部又は全部が支払われないなどの懸念が生じている。このため、政府は、今後、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表する予定。例えば、Q&Aでは、免税事業者である仕入先に対して、一方的に免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しい取引価格を設定し、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題になるとしている。
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