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解説記事2022年01月31日 SCOPE 地裁、納税者が立証できない簿外経費の損金算入を否定(2022年1月31日号・№916)

簿外経費を厳格化する令和4年改正と整合
地裁、納税者が立証できない簿外経費の損金算入を否定


 建設会社T社が支払ったコンサルタント料の損金算入の可否が争われた事案で、東京地裁民事2部は令和3年12月23日、当該金員を契約書に記載された相手方ではなく不動産ブローカーY氏に支払ったとする原告の主張を「帳簿書類の記載と異なる、簿外経費の主張にほかならない」とした上で、原告において当該金員につき必要経費としての具体的事実、業務との関連性などが立証されていないとして、損金算入を否定した。

令和4年改正、明文上も簿外経費の立証責任を課税庁から納税者に転換

 本件は、建設会社T社が、D社から建築工事を請け負うにあたり第三者に支払ったコンサルタント料の一部について、コンサル業務が行われた事実はなく架空の経費であるとして処分行政庁に否認されたことから訴訟に至った事案である。
 東京地裁はまず、法人税法22条3項1号及び2号に規定する損金の額に算入することができる支出について、「当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならず、法人の支出のうち、その支出内容、支出の相手方、支出の時期等を確認することができず、そのために当該法人の業務との関連性の有無が明らかでないものについては、法人税法22条3項各号の損金の額に算入することができない」との解釈を示した。
 その上で、本件各コンサル契約の相手方について、一社は法人としての実在が確認できない上、いずれの代表者も当該契約の締結、当該契約に基づく業務遂行、コンサルタント料の受領を否定していることなどから、本件各コンサル契約書及び本件各領収証は、記載内容そのものに対応する事実が存在せず、その意味で架空のものというべきと指摘した。
 この指摘についてT社は、本件各金員は本件各工事の受注に必要不可欠であったいわゆる不動産ブローカーであるY氏に委託したコンサルタント業務の対価であって、本件各工事の必要経費に該当すると主張した。原告のこの主張に対し東京地裁は、「帳簿書類と異なる必要経費の主張、すなわち簿外経費の主張に他ならない。」とした上で、「必要経費の存否及び額についての立証責任は、原則として課税庁側にあると解すべきであるものの、必要経費の支出は、納税義務者の直接支配する領域内であり、納税義務者は当該具体的事実を熟知していることが通常である。」「青色申告の納税義務者が、簿外経費の存在を主張する場合には、納税義務者において、必要経費として支出した金額、支払年月日、支払先、支払内容等の事実につき、具体的に特定して主張立証をし、業務との関連性についても主張立証すべきであり、そのような主張立証がされない限り、当該経費を当該業務の経費として損金に算入することはできないというべきである。」と判示した。
 そして、各認定事実から、①本件各コンサル契約書及び本件各領収証の形式は、名義や陰影が不自然であり、原告とY氏との間の本件各コンサル契約の成立及び同各契約に基づくコンサルタント料の支払を裏付けるものとは言い難いこと、②本件各コンサル契約に先立ち、原告が本件各工事を受注した場合には請負代金の3%程度をY氏に支払う合意(本件基本合意)の成立が認められないこと、③D社から受注をしたことがなかった原告が、Y氏の紹介を契機としてD社の指名入札業者となったことを除き、Y氏が行った具体的業務は認められないこと、④本件各金員の流れが本件全証拠によっても確定できないことなどの事情を総合すると、原告主張の基本合意に従ってY氏が行った具体的業務の内容は明らかでなく、本件各金員の支出先ないし相手方についても不明であるから、本件各金員の支出は、その使途を確認することができず、原告の業務との関連性の有無が明らかではないとの判断を下し、原告において立証がされていないことを理由として、本件各金員の損金算入を否定した。
相次ぐ簿外経費の“後出し”への対応を厳格化
 周知の通り、令和4年度税制改正では、証拠書類のない簿外経費への対応策が講じられる。具体的には、税務調査において、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者や、証拠書類を仮装して簿外経費を主張する納税者に対しては、①間接経費の額が生じたことを明らかにする帳簿書類等を保存する場合(災害その他やむを得ない場合を除く)、②保存する帳簿書類等により間接経費の額に係る取引の相手先が明らかである場合やその取引が行われたことが推測される場合であって、反面調査等により税務署長がその取引が行われたと認める場合を除き、必要経費不算入・損金不算入とされる(令和5年から適用)。
この改正の背景には、税務調査で収入が把握されると簿外経費を主張する納税者が多く、上記判決にもあるように、原則として簿外経費がないことの立証責任は課税庁側にあるため、課税庁が不誠実な納税者のために時間・労力を割くことを余儀なくされているという問題があった。本判決のように、最終的には納税者側で簿外経費があることを立証できなければ損金算入が否認されるという判決が積み上げられてきてはいるものの、今回の改正は明文上も立証責任の転換を図るものと言えよう。

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