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解説記事2022年02月28日 税務マエストロ 日本型インボイス制度(6)(2022年2月28日号・№920)

税務マエストロ
日本型インボイス制度(6)
#270
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 今月は、インボイス制度が導入された後の売上税額(課税標準額に対する消費税額)と仕入控除税額の計算方法について確認する。

1 税額の計算方法

(1)売上税額の計算
○原則(総額割戻し方式)

 課税標準額に対する消費税額は、税率の異なるごとに区分した税込課税売上高を割り戻して課税標準額を計算し、それぞれに税率を乗じて課税標準額に対する消費税額を計算する(消法45①)。
○特例(適格請求書等積上げ方式)
 適格請求書発行事業者が、交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを保存している場合には、これらの書類に記載した消費税額等を積み上げて課税標準額に対する消費税額を計算することができる(消法45⑤、消令62)。
 なお、上記の「総額割戻し方式」と「適格請求書等積上げ方式」は、取引先単位または事業単位で併用することもできる(インボイス通達3−13)。
(注)旧規則22条1項の経過措置(積上特例計算)は令和5年10月1日より廃止される。
(2)仕入税額の計算
○原則(請求書等積上げ方式)

 課税仕入れに係る消費税額は、適格請求書等に記載された消費税額等を積み上げて計算する(消法30①、消令46①一〜五)。
 ただし、税込金額の記載だけで消費税額等の記載がない簡易インボイス、帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められる旅費や中古建物の取得などについては、支払金額を割り戻して消費税額等を計算する必要がある(消令46①二かっこ書、六)。
(注)簡易インボイスの端数処理は任意なので切上げ処理ができる。
 ただし、旅費や中古建物などについては、1円未満の端数を切捨て又は四捨五入により計算する(切上げ処理はできない)。

○特例1(帳簿積上げ方式)
 取引の都度、税込課税仕入高を割り戻し、1円未満の端数を切捨て又は四捨五入した消費税額等を帳簿に記載している場合には、帳簿に記載した消費税額等の合計額を基に仕入税額を計算することができる(消令46②)。
 この「帳簿積上げ方式」は、上記の「請求書等積上げ方式」と併用することができる(インボイス通達4−3・4−4)。

○特例2(総額割戻し方式)
 売上税額の計算で「総額割戻し方式」を採用している事業者は、税込課税仕入高を割り戻して仕入税額を計算することができる(消令46③)。
 この「総額割戻し方式」は、売上税額の計算で「総額割戻し方式」を採用している場合に限り認められる。したがって、売上税額の計算で「適格請求書等積上げ方式」を採用した場合はもちろんのこと、「適格請求書等積上げ方式」と「総額割戻し方式」を併用した場合であっても、仕入税額の計算で「総額割戻し方式」を採用することはできない。
 また、「総額割戻し方式」は、「請求書等積上げ方式」や「帳簿積上げ方式」と併用することはできない(インボイス通達3−13(注)2・4−3)。
(3)月の中途が締め日となる売上請求書
 売上税額の積上計算は、課税期間中の課税売上高につき、インボイスに記載された消費税額等の合計額に78/100を乗じて計算することとされている(消法45⑤)。よって、決算日をまたぐ取引につき発行されたインボイスに記載された消費税額等を基に、積上計算を適用することはできない。
 ただし、下記のように期首を含む「4月1日〜4月20日」と期末を含む「3月21日〜3月31日」について割戻計算を適用することにより、積上計算と併用することができる。

 なお、インボイスの内訳を「3月21日〜3月31日」と「4月1日〜4月20日」に区分した上で、それぞれの期間ごとに売上税額を表示することにより、事業年度(課税期間)中の売上高のすべてについて積上計算を適用することもできる(インボイスQ&A問93)。

(4)月の中途が締め日となる仕入請求書
 仕入税額の積上計算は、インボイスに記載された消費税額等の合計額に78/100を乗じて計算することとされている(消法30①、消令46①)。よって、決算日をまたぐ取引につき発行されたインボイスに記載された消費税額等を基に、積上計算を適用する場合には、下記のような方法で、当事業年度(課税期間)の消費税額を算出する必要がある(インボイスQ&A問96)。

2 適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに対する経過措置の取扱い

 免税事業者や消費者のほか、課税事業者でも登録を受けなければインボイスを発行することはできない。そこで、インボイスがない課税取引については、期間の経過に応じて一定の金額を仕入税額として控除することができることとされている。
 この場合には、区分記載請求書等保存方式の適用期間において要件とされていた「法定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存」が必要になると共に、帳簿には「80%控除対象」など、この経過措置の適用を受けたものである旨を、あわせて記載することとされている(平成28年改正法附則52、53・インボイスQ&A問86)。

 この経過措置の適用を受ける場合の仕入控除税額の計算であるが、そもそもがインボイスのない課税仕入れであるから、請求書等積上げ方式(インボイスに記載された消費税額等に78/100を乗じて課税仕入れ等の税額を計算する方法)による税額計算はできないように思えなくもない。しかし、この経過措置の適用を受ける課税仕入れ等の税額については、「帳簿積上げ方式」や「総額割戻し方式」は無論のこと、「請求書等積上げ方式」を採用する場合であっても、下記のような方法で仕入税額を計算することが認められている(平成30年改正法施行令附則22)。

3 委託販売

 委託販売については、委託者は受託者の手数料を控除する前の総額を売上高に計上し、手数料を仕入高に計上する方法(総額処理)が原則とされている。
 ただし、課税期間中の委託販売取引のすべてについて、手数料控除後の金額を売上高に計上することも認められている(純額処理)。
 また、受託者は原則として受託販売手数料を売上計上することになるが、受託商品が課税資産であることを条件に、受託商品の販売金額を課税売上高に計上し、委託者への送金額を課税仕入高に計上する方法も認められている(総額処理)。

【計算例】商品の売上高が10,000で、受託者の手数料が2,000の場合
○委託者の処理

 売上高10,000と仕入高(手数料)2,000を両建計上する方法(総額処理)と、手数料控除後の8,000だけを売上計上する方法(純額処理)とのいずれかを選択することができるのであるが、いずれの方法による場合であっても、受託者が交付するインボイス(2,000)の保存が必要となる(インボイスQ&A問91)。
○受託者の処理
 原則として手数料収入2,000を売上計上することになるが、受託商品が課税資産であることを条件に、売上高10,000と仕入高8,000を両建計上する方法(総額処理)も認められる。この場合における委託者への支払金額8,000について、インボイスを保存する必要はない(インボイスQ&A問92)。

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