会計ニュース2022年03月18日 見直しは既定路線 四半期開示の行方(2022年3月21日号・№923) DWGでは四半期報告書の廃止を前提としたアジェンダ設定も
岸田総理が就任時の所信表明演説(2021年10月8日)で四半期開示の見直しを表明したことを受け、金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)では四半期開示の見直しについて議論が進められているが、四半期開示を巡る大きな論点の一つが、四半期決算短信と四半期報告書の重複の問題だ。「投資家との対話で用いられるのは決算説明資料であり、四半期報告書は不要」といった意見は以前から聞かれるが、これに対するDWGのメンバーの意見は、「四半期報告書は法定開示書類であり、監査人のレビューを受けているため信頼性が非常に高く、維持すべき」というものが今のところ主流となっている。「四半期報告書と四半期決算短信の重複を解消すべき」との意見はあるが、四半期報告書の信頼性の高さを強調する意見が多く聞かれることを踏まえると、DWGの議論は、四半期報告書を維持したまま、四半期報告書と四半期決算短信の開示の重複の解消、すなわち「四半期開示の効率化」という方向に向かっているようにも見える。
ただ、DWGに提出された事務局(金融庁)説明資料からは、下記のとおり四半期報告書の廃止も有力な検討課題となっていることがうかがえる。
ご議論いただきたい事項②
●仮に金融商品取引法に基づく四半期報告書を廃止する場合、取引所規則に基づく四半期決算短信に関し、
A)開示内容についてどう考えるか。見直すべき点はないか。
B)開示内容の正確性を担保するための措置についてどのように考えるか。例えば、監査人のレビュー(現在、金融商品取引法に基づく四半期報告書に求められている)についてどう考えるか。
上記アジェンダは、投資家やメディアが注目しているのは四半期決算短信であり、一部のアナリスト等を除き、四半期報告書はほとんど見られていないという実態を受けたものであろう。また、企業の事務負担や近年の監査法人における人手不足といった事情も考慮されているものと思われる。
“信頼性”の問題については、確かに四半期報告書は法定開示書類であり、監査人のレビューを受けている上、虚偽記載があれば罰則(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科あり)、会社に対しては5億円以下の罰金)が科される。しかし、四半期決算短信の虚偽記載に罰則はないとは言っても、有価証券上場規程により①特設注意市場銘柄に指定され、改善報告書等の提出が求められるほか、②公表措置や③上場契約違約金の対象となる可能性があり、特設注意市場銘柄指定後1年以内に上場会社の内部管理体制等について改善がなされなかったと東証が認める場合などにおいては上場が廃止される。これは上場会社にとって十分に重いペナルティとの見方もできる。
また、上記「ご議論いただきたい事項」にあるとおり、仮に四半期報告書が廃止され四半期決算短信が残った場合には、四半期決算短信の内容の見直し、具体的には簡素化が検討される可能性がある。欧州の四半期開示では財務諸表が添付されず、P/Lの一部のみの情報やKPIの進捗状況を掲載するにとどまっている事例も多い。
DWGでは4月に再び四半期開示が議論される。そこでは四半期報告書の廃止と四半期決算短信の簡素化が最大のテーマとなる可能性もあろう。
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