税務ニュース2022年03月25日 国外転出時はみなし配当考慮不要(2022年3月28日号・№924) 非上場株式を有する個人に対する国外転出時課税の適用上問題に
周知の通り、平成27年度税制改正において創設された国外転出時課税は、国外に転出する居住者が、国外転出時に時価ベースで1億円以上の有価証券等を有する場合に、国外転出時にその有価証券等の譲渡等があったものとみなして課税を行うことを主目的とした制度だが(所得税法60条の2)、その仕組みは複雑である上、未実現の譲渡益に対し“みなし”で課税するという特殊な規定でもあるため、未だに実務家の間でも様々な疑問や懸念が生じている。
国外転出時課税の対象となる有価証券等には、上場株式だけではなく非上場株式も含まれ、また、内国法人・外国法人株式の別なく適用の対象とされているが、この税制の対象となる非上場株式は流動性が低いのが一般的であり、株式の発行体である法人が買い取る以外には実質的に処分できないケースもあるようだ。所得税法上、発行体による非上場株式の買取は自己株買いに該当するため、売却側の個人には総合課税によるみなし配当課税と分離課税による株式の譲渡益課税(一般株式等)の二本立ての課税が行われるが、実務家の間では、流動性が低く自己株買いをするしかない非上場株式を有する個人が国外に転出する場合、国外転出時課税の計算においてまでみなし配当を考慮しなければならないのではないかとの懸念が生じていた。
しかし、本誌が課税当局に取材したところ、国外転出時のみなし譲渡益課税の計算上、みなし配当課税の考慮は不要であることが確認された。国外転出時課税に関して定める所得税法60条の2第1項本文では、「その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額により、当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。」と規定され、株式等の譲渡に関して定める措置法37条の10(又は37条の11)と同じく、分離課税とされる有価証券等の譲渡に係る事業所得、譲渡所得又は雑所得の金額としてのみなし譲渡益課税を念頭に置いており、配当所得については言及していない。要するに、実際に自己株買いが発生しているわけではないため、未実現のキャピタルゲインに対する課税を目的とする国外転出時課税の趣旨からしても、国外転出時にみなし配当まで考慮する必要はないということだ。
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