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解説記事2022年05月02日 SCOPE ユニバーサルミュージック事件、最高裁でも国が敗訴(2022年5月2日号・№929)

一連の取引に税負担の減少以外の合理的な目的
ユニバーサルミュージック事件、最高裁でも国が敗訴


 同族会社の行為計算否認規定(法人税法132条)の適用の是非を争点とするユニバーサルミュージック事件では、一審及び二審で敗訴した国が上告していたが(本誌843号、841号参照)、令和4年4月21日、最高裁で上告が棄却され、国の敗訴が確定した。
 最高裁判所第一小法廷(岡正晶裁判長)は、法人税法132条1項の不当性要件の判断枠組みについて、高裁判決とほぼ同様の解釈を示し、本件借入れを含む組織再編成等の一連の取引について「合理的な目的がある」と判断した。

最高裁、高裁判決とほぼ同様の不当性要件の判断枠組み示す

 本件は、日本法人である被上告人(ユニバーサルミュージック合同会社(UMGK))が、同じ企業グループに属するフランス法人(UMIF)からの金銭の借入れに係る支払利息を損金の額に算入したところ、処分行政庁から当該借入れを含む一連の組織再編等が不自然、不合理であるとして、法人税法132条に基づき更正処分等を受けたことから訴訟に至った事件である。
 最高裁は、法人税法132条1項の判断枠組みについて、のとおり、高裁判決とほぼ同様の解釈を示した上で、本件借入れが経済的合理性を欠くものか否かの検討を行った。

【表】最高裁が示した判断枠組み

 法人税法132 条1 項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認
められるもの」とは、同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合
理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう
と解するのが相当である。
 (中略)そして、当該一連の取引全体が経済的合理性を欠くものか否かの検討に当たっては、①当該一
連の取引が、通常は想定されない手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするな
ど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような組織再編成を行うことの合理的な理
由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮するのが相当である。

 最高裁は、本件組織再編取引等の目的には「多額の利益を生じていたUMKKの事業を承継した被上告人に対して多額の利息債務を負担させることにより、被上告人の税負担の減少をもたらすことが含まれていたといわざるを得ない。」と指摘しながらも、高裁判決と同様に、本件組織再編取引等には、税負担の減少以外に以下の目的があり、これらは本件組織再編取引等を行う合理的な理由となるものと評価することができるとした。

 本件財務関連取引を含む本件組織再編取引等には、日本の関連会社の資本関係及びこれに対する事業遂行上の指揮監督関係を整理して法人の数を減らす目的、機動的な事業運営の観点から本件音楽部門において日本を統括する会社を合同会社とする目的、本件音楽部門のオランダ法人全体の負債を軽減するための弁済資金を調達する目的、日本の関連会社やUMO(CMHLの親会社が間接的に持分の100%を保有する英法人)が保有する資金の余剰を解消し、ヴィヴェンディによる為替に関するリスクヘッジを不要とする目的等があったということができ、本件組織再編取引等は、これらの目的を同時に達成する取引として通常は想定されないものとはいい難い上、本件財務関連取引の実態が存在しなかったことをうかがわせる事情も見当たらない。

独立当事者間取引とは異なる点もあり
 高裁判決に対しては、専門家から、本件借入れの個別の条件の経済的合理性について、IBM事件のような独立当事者間取引との比較があっても良かったのではないかとの意見が聞かれたが、この点最高裁は、「本件借入れは無担保で行われ、被上告人は本件借入れが一因となって最終的に貸借対照表上は債務超過となっていることがうかがわれるなど、本件借入れには独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引とは異なる点もある」と指摘した。しかし、借入金額が使途との関係で不当に高額とはいえないことや、利息及び返済期間が、被上告人の予想される利益に基づいて決定され、現に利息の支払が困難になった事情はうかがわれないことなどから、「上記の点があることをもって、本件借入れが不自然、不合理なものとまでは言い難い」との判断を下した。
 そして、以上の諸事情を総合的に考慮し、「本件借入れは、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものとはいえない」と結論付けている。

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