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解説記事2022年06月20日 税制改正解説 令和4年度における所得税関係の改正について(2022年6月20日号・№935)

税制改正解説
令和4年度における所得税関係の改正について
 佐藤亮也


 成長と分配の好循環の実現に向けて、積極的な賃上げ等を促す観点からの給与等の支給額が増加した場合の特別税額控除制度の拡充等及び特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例の拡充等を行うとともに、脱炭素社会を実現する等の観点から住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の見直しを行うほか、納税環境の整備、租税特別措置の見直し等所要の措置を講ずることを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は、国会における審議を経て令和4年3月22日参議院本会議で可決・成立し、同月31日に関係政省令とともに公布され、原則として4月1日から施行されている。
 以下これらの改正内容について概要を説明する。

所得税法等の改正

1 納税地の特例等の改正(所法16等関係)
(1)改正の内容

 ワンスオンリー(一度提出した情報は、二度提出することは不要とする。)を徹底する観点から、申請や届出については、その要否を不断に見直すことが必要である。変更後及び異動後の納税地については、提出された確定申告書等に記載された内容や住民基本台帳ネットワークシステムを通じて入手した納税義務者の住民票情報から課税当局において把握することが可能なことから、「所得税の納税地の変更に関する届出書」及び「所得税の納税地の異動に関する届出書」について、その提出が不要とされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年1月1日前の所得税の納税地の変更及び異動については従前どおりとされている。

2 所有株式に対応する資本金等の額の計算方法等の整備(所令61等関係)
(1)改正の内容

① 資本の払戻しによりその株主等である個人が金銭等の交付を受ける場合におけるみなし配当の額の計算の基礎となる資本の払戻しを行った法人のその資本の払戻しの直前の払戻等対応資本金額等は、その資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額を上限とすることとされた。
② 資本の払戻しを行った法人が2以上の種類の株式を発行していた法人である場合のみなし配当の額の計算の基礎となる所有株式に対応する資本金等の額は、その資本の払戻しに係るその種類の株式の種類資本金額を基礎として計算することとされた。
③ 上記②の整備に伴い、資本の払戻しを行った法人がその資本の払戻しに係る種類の株式を所有する個人及びその株式を保管する特定口座が開設されている金融商品取引業者等に対して通知すべき事項について、所要の整備が行われた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和4年4月1日から施行されている。
② 上記(1)②及び③の改正は、令和4年4月1日以後に行われる払戻し等について適用される。

3 配当所得とされる分配金の範囲の改正(所令62関係)
(1)改正の内容

 その額が配当等の収入金額とされる分配金の範囲に、労働者協同組合の組合員がその労働者協同組合の事業に従事した程度に応じて受けるものが追加された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)の施行の日(令和4年10月1日)から施行される。
 
4 国庫補助金等の総収入金額不算入制度の改正(所法42等関係)
(1)改正の内容

① 国庫補助金等の範囲の見直し
  国庫補助金等に特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律第29条第1号に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金が追加された。
② 国庫補助金等の交付前に固定資産の取得又は改良をした場合における適用の明確化
  本制度は、国庫補助金等の交付を受け、それによりその交付の目的に適合した資産を取得することを前提としているが、従前より固定資産の取得又は改良の後に国庫補助金等の交付を受けた場合にも本制度の適用が認められていること(平成22年2月9日東京国税局審理課長宛の事前照会「個人事業者が、固定資産を取得した後に国庫補助金等の交付を受ける場合の課税上の取扱いについて」に対する文書回答)等を踏まえ、国庫補助金等の交付を受けた年の前年以前にその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合について本制度の適用があることが明確化された。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、個人が令和4年4月1日以後に交付を受ける上記(1)①の助成金について適用される。
② 上記(1)②の改正は、個人が令和4年4月1日以後に交付を受ける国庫補助金等について適用し、個人が同日前に交付を受けた国庫補助金等については従前どおりとされている。

5 家事関連費等の必要経費不算入等の改正(所法45関係)
(1)改正の内容

 隠蔽仮装行為に基づき確定申告書を提出し、又は確定申告書を提出していなかった場合には、これらの確定申告書に係る年分の不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得の総収入金額に係る売上原価の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額は、その保存する帳簿書類等によりこれらの額の基因となる取引が行われたこと及びその額が明らかである場合等に該当するその売上原価の額又は費用の額を除き、その者の各年分のこれらの所得の金額の計算上、必要経費に算入しないこととされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年分以後の所得税について適用される。

6 減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法の改正(所令138等関係)
(1)改正の内容

① 少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入制度の改正
対象となる資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものが除外された。
② 一括償却資産の必要経費算入制度の改正
対象となる資産から、貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供した減価償却資産が除外された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする減価償却資産について適用し、個人が同日前に取得又は製作若しくは建設をした減価償却資産については従前どおりとされている。

7 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例の創設(所法177等関係)
(1)改正の内容

① 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例の創設
  一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さないこととされた。
イ 完全子法人株式等に該当する株式等(その内国法人が自己の名義をもって有するものに限る。下記ロにおいて同じ。)に係る配当等
ロ 基準日等においてその内国法人が保有する他の内国法人(一般社団法人等を除く。)の株式等の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等
  上記のイは「完全子法人株式等」に相当するものであるが、法人税とは異なり、自己の名義をもって有するもの(つまり、組合や信託経由で所有するもの以外のもの。)に限られている。
  また、上記ロは「関連法人株式等」に相当するものであるが、こちらについても法人税とは異なり、自己の名義をもって有するものに限られるほか、その保有割合の判定をその配当等に係る基準日等の一時点で行うこととされている。
  これは、源泉徴収段階で源泉徴収義務者がその判断を行う必要があるためである。
② 源泉徴収義務の改正
  上記①イ及びロに掲げる配当等が所得税の源泉徴収義務の対象から除外された。
③ その他所要の措置
イ 上記①イ及びロに掲げる配当等が次に掲げる制度の対象から除外された。
(イ)利子・配当等の受領者の告知制度
(ロ)無記名株式等の配当等に係る告知制度
(ハ)国外株式等の配当等の源泉徴収の特例
(ニ)上場株式等の配当等の源泉徴収の特例
ロ また、上記イ(ニ)の改正に伴い、支払の取扱者において上記①イ及びロに掲げる配当等を把握する必要があることから、支払者から支払の取扱者への通知義務が設けられた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、上記(1)①の一定の内国法人が令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用される。
② 上記(1)②の改正は、内国法人に対し令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用し、内国法人に対し同日前に支払うべき配当等については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③イ(イ)の改正は、令和5年10月1日以後に支払の確定する配当等について適用し、同日前に支払の確定した配当等については従前どおりとされている。
④ 上記(1)③イ(ロ)の改正は、令和5年10月1日以後に支払を受ける配当等について適用し、同日前に支払を受けた配当等については従前どおりとされている。
⑤ 上記(1)③イ(ハ)の改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき国外株式の配当等について適用し、同日前に支払を受けるべき国外株式の配当等については従前どおりとされている。
⑥ 上記(1)③イ(ニ)の改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等について適用し、同日前に支払を受けるべき上場株式等の配当等については従前どおりとされている。
⑦ 上記(1)③ロの改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等について適用される。

8 確定申告書の添付書類等に関する改正(所法198等関係)
(1)改正の内容

① 所得税の確定申告書に添付すべき書類の拡充
  確定申告の際に社会保険料控除等(社会保険料控除又は小規模企業共済等掛金控除をいう。以下同じ。)の適用を受ける場合に、確定申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示することとされているものの範囲に、その社会保険料の金額等(社会保険料の金額又は小規模企業共済等掛金の額をいう。以下同じ。)を証する書類に記載すべき事項を記録した電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面が追加された。
② 給与所得者の保険料控除申告書の添付書類の電磁的方法による提供(電子提出)
  給与等の支払を受ける居住者は、給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、社会保険料の金額等を証する書類の書面による提出又は提示に代えて、その給与等の支払者に対し、これらの書類に記載されるべき事項を電磁的方法により提供することができることとされた。この場合において、その給与等の支払を受ける居住者は、これらの書類を提出し、又は提示したものとみなされる。
  また、これらの書類を電磁的方法により提供する際には、これらの書類に記載されるべき事項が記録された電子証明書等を給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項と併せて提供しなければならないこととされている。
③ 社会保険料控除等の適用を受ける際の給与所得者の保険料控除申告書に添付すべき書類の拡充
  給与所得者が年末調整の際に給与所得控除後の給与等の金額からその年中に支払った社会保険料の金額等につき控除の適用を受ける場合に、給与所得者の保険料控除申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示することとされているものの範囲に、その社会保険料の金額等を証する書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録を記録した電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面が追加された。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和4年4月1日以後に令和4年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用し、同日前に確定申告書を提出した場合及び同日以後に令和3年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②及び③の改正は、令和4年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書について適用し、同日前に提出した給与所得者の保険料控除申告書については従前どおりとされている。

9 償還金等の支払調書の改正(所法225関係)
(1)改正の内容

 交付を受ける償還金等が支払調書制度の対象となる内国法人の範囲に、労働者協同組合が追加された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)の施行の日(令和4年10月1日)から施行される。

10 支払調書等の提出の特例の改正(所法228の4等関係)
(1)改正の内容

 調書等を提出する方法から、磁気テープを提出する方法が除外された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和4年4月1日から施行されている。
 
11 確定拠出年金制度の拡充に伴う改正(所規18の3関係)
(1)改正の内容

 令和2年6月5日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年法律第40号)」により、確定給付企業年金制度の終了時に分配される残余財産(以下「残余財産」という。)の個人型確定拠出年金制度への移換ができることとされたことに伴い、「組合員等であった期間(退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間)」に、その者の老齢給付金の支払金額のうちに残余財産が含まれている場合における次に掲げる期間を含めることとされた。
① その残余財産の算定の基礎となった期間のうちその者が60歳に達した日の前日が属する月の翌月以後の期間
② その残余財産の算定の基礎となった確定拠出年金法施行規則第30条第2項各号に定める期間のうち、企業型年金運用指図者期間又は個人型年金運用指図者期間と重複している期間
③ 適用関係
  上記(1)の改正は、令和4年5月1日から施行されている。

12 障害者等の少額預金の利子所得等の非課税措置の非課税貯蓄申告書等の電子情報処理組織による申請等の方法の改正(平30.4国税庁告14関係)
(1)改正の内容

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により税務署長等に対して提出する障害者等の少額預金の利子所得等の非課税措置の次に掲げる書類のファイル形式(改正前:PDF形式)が、XML形式又はCSV形式とされた。
① 非課税貯蓄申告書
② 非課税貯蓄限度額変更申告書
③ 非課税貯蓄に関する異動申告書
④ 金融機関等において事業譲渡等があった場合の申告書
⑤ 非課税貯蓄廃止申告書
⑥ 非課税貯蓄みなし廃止通知書
⑦ 非課税貯蓄者死亡通知書
⑧ 金融機関の営業所等の届出書
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和6年1月1日から施行される。

租税特別措置法等(所得税関係)の改正

第一 住宅・土地税制の改正

1 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度(住宅ローン税額控除)等の改正(措法41等関係)
(1)改正の内容

① 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の改正
  適用期限が令和7年12月31日まで4年延長されるとともに、次の措置が講じられた。
イ 住宅の取得等をして令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間が次のとおりとされた。

ロ 適用対象者の所得要件が2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げられた。
ハ 個人が取得等をした住宅の用に供する家屋のうち小規模なものとして一定のものの新築又は当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得についても、この制度の適用ができることとされた。ただし、その者の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用しないこととされた。
ニ 個人が令和6年1月1日以後にその居住の用に供する家屋のうち、エネルギー消費性能向上住宅に該当するもの以外のものとして一定のものの新築又は当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得については、この制度の適用ができないこととされた。
ホ 適用対象となる既存住宅の要件について、経過年数基準に適合するものであることを廃止し、耐震基準に適合するものであることに一本化された。
ヘ 二以上の住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の調整措置等について、所要の措置が講じられた。
② 東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の改正
  適用期限が令和7年12月31日まで4年延長されるとともに、次の措置が講じられた。
イ 住宅の再取得等をして令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した場合の再建住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間が次のとおりとされた。

ロ 住宅被災者のうち警戒区域設定指示等の対象区域内に従前住宅が所在していなかったものが、住宅の再取得等をして令和7年1月1日以後に居住の用に供する場合については、本特例の適用ができないこととされた。
ハ 上記①ロからホまでと同様の措置を講ずることとされた。
③ 住宅ローン税額控除の適用に係る手続の改正
イ 令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン税額控除に関する証明書等の改正
(イ)住宅借入金等に係る債権者は、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の交付を要しないこととされた。これに伴い、確定申告書及び給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書に添付すべき書類から「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が除かれている。
(ロ)年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書の記載事項に、その年の12月31日における住宅借入金等の金額を加えることとされた。
(ハ)下記ロ(イ)の適用申請書の提出をした個人は、その旨を「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に記載することにより請負契約書等の写しの確定申告書への添付に代えることができることとされた。この場合において、税務署長は、必要があると認めるときは、その確定申告書を提出した者(以下「控除適用者」という。)に対し、その確定申告書に係る確定申告期限等の翌日から起算して5年を経過する日までの間、その写しの提示又は提出を求めることができることとされ、この求めがあったときは、その控除適用者は、その写しを提示し、又は提出しなければならないこととされた。
ロ 住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度の創設
(イ)令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋について、住宅ローン税額控除の適用を受けようとする個人は、住宅借入金等に係る一定の債権者に対して、当該個人の氏名及び住所、個人番号その他の一定の事項(以下「申請事項」という。)を記載した申請書(以下「適用申請書」という。)の提出(その適用申請書の提出に代えて行う電磁的方法によるその適用申請書に記載すべき事項の提供を含む。)をしなければならないこととされた。
(ロ)適用申請書の提出を受けた債権者は、その適用申請書の提出を受けた日の属する年以後10年内の各年の10月31日(その適用申請書の提出を受けた日の属する年にあっては、その翌年1月31日)までに、申請事項及びその適用申請書の提出をした個人のその年の12月31日(その者が死亡した日の属する年にあっては、同日)における住宅借入金等の金額等を記載した「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書」を作成し、その債権者の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされた。この場合において、その債権者は、その適用申請書につき帳簿を備え、その適用申請書の提出をした個人の各人別に、申請事項を記載し、又は記録しなければならないこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、個人が令和4年1月1日以後に居住用家屋等をその者の居住の用に供する場合について適用し、個人が同日前に居住用家屋等をその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、住宅被災者が令和4年1月1日以後に居住用家屋等をその者の居住の用に供する場合について適用し、住宅被災者が同日前に居住用家屋等をその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③(イ(ハ)を除く。)の改正は、個人が令和5年1月1日以後に居住用家屋等をその者の居住の用に供する場合について適用する。
④ 上記(1)③イ(ハ)の改正は、令和6年1月1日以後に令和5年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用し、同日前に確定申告書を提出した場合及び同日以後に令和4年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については従前どおりとされている。

2 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正(措法36の2等関係)
(1)改正の内容

 買換資産が建築後使用されたことのない家屋で、その家屋を令和6年1月1日以後にその者の居住の用に供した場合又は供する見込みである場合の要件に、その家屋が特定居住用家屋に該当するもの以外のものであることが加えられた上で、その適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡に係る買換資産について適用し、個人が同日前に行った譲渡資産の譲渡に係る買換資産については従前どおりとされている。

3 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5関係)
改正の内容

 適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。

4 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5の2関係)
改正の内容

 適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。

5 既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の改正(措法41の19の2関係)
(1)改正の内容

 次の見直しが行われた上で、その適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。
① 耐震改修工事限度額が一律250万円とされた。
② 税額控除額の計算要素である「耐震改修標準的費用額」の基礎となる工事内容に応じた単位当たりの標準的な費用の額について、近年の工事の実績等を踏まえた見直しを行うこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、個人が令和4年1月1日以後に住宅耐震改修をする場合について適用し、個人が同日前に住宅耐震改修をした場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、個人が令和5年1月1日以後に住宅耐震改修をする場合について適用し、個人が同日前に住宅耐震改修をした場合については従前どおりとされている。

6 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の改正(措法41の19の3関係)
(1)改正の内容

 次の見直しが行われた上で、その適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。
① 高齢者等居住改修工事等に係る税額控除の控除対象限度額が一律200万円と、一般断熱改修工事等に係る税額控除の控除対象限度額が一律250万円とされた。
② 個人が、その所有する居住用の家屋について上記5の税額控除又は本特例による税額控除の対象となる改修工事(以下「対象改修工事」という。)をして、その家屋を令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、上記5の税額控除又は本特例による税額控除の適用を受ける場合に限り、その個人の居住の用に供した日の属する年分の所得税の額から次に掲げる金額の合計額(対象改修工事に係る標準的な費用の額の合計額と1,000万円から当該金額(当該金額が控除対象限度額を超える場合には、当該控除対象限度額)を控除した金額のいずれか低い金額を限度)の5%相当額を控除することができる「その他工事等特別税額控除制度」が設けられた。
イ その対象改修工事に係る標準的な費用の額(控除対象限度額を超える部分に限る。)の合計額
ロ その対象改修工事と併せて行うその他工事に要した費用の額(補助金等の交付がある場合には当該補助金等の額を控除した後の金額)の合計額
③ 一般断熱改修工事等に係る税額控除の対象となる省エネ改修工事が「窓の断熱改修工事又は窓の断熱改修工事と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事」(改正前:「全ての居室の全ての窓の断熱改修工事又は全ての居室の全ての窓の断熱改修工事と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事」)とされた。
④ 税額控除額の計算要素である「標準的費用額」の基礎となる工事内容に応じた単位当たりの標準的な費用の額について、近年の工事の実績等を踏まえた見直しを行うこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①及び③の改正は、対象高齢者等居住改修工事等、対象一般断熱改修工事等、対象多世帯同居改修工事等又は対象住宅耐震改修若しくは対象耐久性向上改修工事等をした家屋を令和4年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、これらの改修工事をした家屋を同日前にその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、対象改修工事をした家屋を令和4年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用される。
③ 上記(1)④の改正は、特定の改修工事をした居住用の家屋を、令和5年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、同日前にその者の居住の用に供した場合については、従前どおりとされている。

7 認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の改正(改正後:認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除)(措法41の19の4関係)
(1)改正の内容

 次の見直しが行われた上で、その適用期限が令和5年12月31日まで2年延長された。
① 認定住宅限度額が一律650万円とされた。
② 適用対象となる住宅の範囲に、特定エネルギー消費性能向上住宅が追加された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が、認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得をして、その認定住宅等を令和4年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、個人が、認定住宅の新築又は認定住宅で建築後使用されたことのないものの取得をして、その認定住宅を同日前にその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。

8 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等の改正(措法33等関係)
(1)改正の内容

 収用等のあった日の属する年の前年以前に取得した資産について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等の適用があることが明確化された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後にされる収用等に係る代替資産となるべき資産について適用される。

9 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の改正(措法34等関係)
(1)改正の内容

① 適用対象となる農業経営基盤強化促進法の農用地利用規程の特例に係る措置について、同法の地域計画の特例に係る区域内にある農用地がその農用地の所有者等の申出に基づき農地中間管理機構(一定のものに限る。)に買い取られる場合の措置に改組された。
② 適用対象となる重要文化財、史跡、名勝又は天然記念物として指定された土地が地方独立行政法人に買い取られる場合におけるその地方独立行政法人の範囲が、博物館法に規定する公立博物館又は指定施設に該当する博物館又は植物園の設置及び管理を行うことを主たる目的とする地方独立行政法人とされた。
(2)適用関係
① 上記(1) ①の改正は、個人の有する土地等が農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)の施行の日以後に買い取られる場合について適用し、個人の有する土地等が同日前に買い取られた場合については従前どおりとされている。
② 上記(1) ②の改正は、博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)の施行の日(令和5年4月1日)から施行される。

10 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の改正(措法34の2関係)
(1)改正の内容

 適用対象となる農用地区域内にある農用地が農業経営基盤強化促進法の協議に基づき農地中間管理機構(一定のものに限る。)に買い取られる場合について、その農用地が同法に規定する地域計画の区域内にある場合に限定された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人の有する土地等が農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)の施行の日以後に買い取られる場合について適用し、個人の有する土地等が同日前に買い取られた場合については従前どおりとされている。

11 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の改正(措法34の3等関係)
(1)改正の内容

① 農業経営基盤強化促進法の農用地利用集積計画に係る措置について、農用地区域内にある土地等を農地中間管理事業の推進に関する法律の規定による公告があった同法の農用地利用集積等促進計画の定めるところにより譲渡した場合の措置に改組された。
② 適用対象となる農地中間管理機構(一定のものに限る。)に対し農用地区域内にある農地等を譲渡した場合から、上記①の農用地区域内にある土地等を農地中間管理事業の推進に関する法律の規定による公告があった同法の農用地利用集積等促進計画の定めるところにより譲渡した場合に該当する場合が除外された。
③ 適用対象から、次に掲げる場合が除外された。
イ 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律の規定による公告があった同法の所有権移転等促進計画の定めるところにより土地等の譲渡をした場合
ロ 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法の規定による都道府県知事のあっせんにより、同法の認定を受けた者に山林に係る土地の譲渡をした場合
ハ 土地等につき集落地域整備法の事業が施行された場合において清算金を取得するとき
(2)適用関係
① 上記(1)①及び②の改正は、個人が農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)の施行の日以後に行う土地等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った土地等の譲渡については従前どおりとされている。
② 上記(1)③の改正は、個人が令和4年4月1日前に行った土地等の譲渡については従前どおりとされている。

12 特定の交換分合により土地等を取得した場合の課税の特例の改正(措法37の6等関係)
(1)改正の内容

 適用対象から、集落地域整備法の規定による交換分合により土地等の譲渡をし、かつ、その交換分合により土地等の取得をした場合が除外された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日前に行った交換分合による土地等の譲渡については、従前どおりとされている。

13 平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の課税の特例の廃止(措法37の9等関係)
(1)改正の内容

 この制度は廃止された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、その取得をした日の属する年の12月31日後10年以内に行った事業用土地等の譲渡については、従前どおりとされている。

14 被災居住用財産に係る譲渡期限の延長等の特例の改正(措法31の3等関係)
改正の内容

 本特例における譲渡期限(改正前:10年)が5年延長され、15年とされた。

第二 金融・証券税制の改正

1 上場株式等に係る配当所得等の課税の特例の改正(措法8の4関係)
(1)改正の内容

① 内国法人から支払を受ける上場株式等の配当等で、その配当等の支払に係る基準日においてその支払を受ける居住者等とその者を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当する法人が保有する株式等を合算してその発行済株式等の総数等に占める割合(下記②において「株式等保有割合」という。)が100分の3以上となるときにおけるその居住者等が支払を受けるものが、総合課税の対象とされた。
② 上場株式等の配当等の支払をする内国法人は、その配当等の支払に係る基準日においてその株式等保有割合が100分の1以上となるその支払を受ける居住者等の氏名、個人番号その他の事項を記載した「上場株式等の配当等の支払を受ける大口の個人株主に関する報告書」を、その支払の確定した日から1月以内に、その内国法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、居住者等が令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用し、居住者等が同日前に支払を受けるべき配当等については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、内国法人が令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用される。

2 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等の改正(措法37の13等関係)
(1)改正の内容

① 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等その他の特例の改正
イ 適用対象となる沖縄振興特別措置法に規定する指定会社の申請手続において必要な添付書類が一部削減された。
ロ 上記イの指定会社について、沖縄振興特別措置法の規定に基づく指定期限が令和7年3月31日まで3年延長された。
② 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の改正
イ 適用対象となる小規模企業者の要件に、認定区域計画に係る国家戦略特別区域外に有する事業所において業務に従事する従業員の数の合計が常時雇用する従業員の数の10分の2に相当する数以下であることが加えられた。
ロ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
ハ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和4年4月1日から施行されている。

3 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置等の改正(措法37の14等関係)
(1)改正の内容

 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)における特定非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等から除外される特定非課税管理勘定に上場株式等を受け入れようとする日以前6月以内にその者のその年分の特定累積投資勘定において特定累積投資上場株式等を受け入れていない場合に取得をしたものについて、同日以前6月以内にその者の特定累積投資勘定において特定累積投資上場株式等を受け入れていない場合に取得をしたものとすることとされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和4年4月1日から施行されている。

4 割引債の差益金額に係る源泉徴収等の特例の改正(措法41の12の2関係)
(1)改正の内容

 特例の適用対象となる内国法人の範囲に、労働者協同組合が追加された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)の施行の日(令和4年10月1日)から施行される。

5 障害者等の少額公債の利子の非課税措置の特別非課税貯蓄申告書等の電子情報処理組織による申請等の方法の改正(平30.4国税庁告14関係)
(1)改正の内容

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により税務署長に対して提出する障害者等の少額公債の利子の非課税措置、金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用及び公募株式等証券投資信託の受益権を買い取った金融商品取引業者等が支払を受ける収益の分配に係る源泉徴収の特例の次に掲げる書類のファイル形式(改正前:PDF形式)が、XML形式又はCSV形式とされた。
イ 特別非課税貯蓄申告書
ロ 特別非課税貯蓄限度額変更申告書
ハ 特別非課税貯蓄に関する異動申告書
ニ 金融機関等において事業譲渡等があった場合の申告書
ホ 特別非課税貯蓄廃止申告書
ヘ 特別非課税貯蓄みなし廃止通知書
ト 特別非課税貯蓄者死亡通知書
チ 販売機関の営業所等の届出書
リ 金融機関が支払を受ける収益の分配に対する源泉徴収不適用に係る明細書
ヌ 公募株式等証券投資信託の受益権を買い取った金融商品取引業者等が支払を受ける収益の分配に係る源泉徴収不適用申告書
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和6年1月1日から施行される。

第三 事業所得等に係る税制の改正

1 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の4の2等関係)
(1)改正の内容

 次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
① 取得又は建設をした特定建物等を事業の用に供する期限が、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた日の翌日以後3年(改正前:2年)を経過する日とされた。
② 中小事業者以外の個人の適用対象となる特定建物等の取得価額に係る要件が、2,500万円以上(改正前:2,000万円以上)に引き上げられた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和2年3月31日以後に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた個人が令和4年4月1日以後に取得又は建設をするその認定に係る特定建物等について適用し、次の特定建物等については従前どおりとされている。
イ 令和2年3月31日以後に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた個人が令和4年4月1日前に取得又は建設をしたその認定に係る特定建物等
ロ 令和2年3月31日前に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた個人が取得又は建設をしたその認定に係る特定建物等
② 上記(1)②の改正は、個人が令和4年4月1日以後に取得又は建設をする特定建物等について適用し、個人が同日前に取得又は建設をした特定建物等については従前どおりとされている。

2 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5等関係)
(1)改正の内容

 地方事業所基準雇用者数に係る措置について、次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
① 適用要件のうち「その個人の適用年の特定新規雇用者等数が2人以上であること」との要件が廃止された。
② 特定新規雇用者数、移転型特定新規雇用者数、新規雇用者総数及び移転型新規雇用者総数について、他の事業所において新たに雇用された者でその雇用された年の12月31日において適用対象特定業務施設に勤務する者の数を含むこととされた。
③ 税額控除限度額の計算の基礎となる非新規基準雇用者数が、無期雇用かつフルタイムの雇用者の数に限ることとされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年分以後の所得税について適用し、令和4年分以前の所得税については従前どおりとされている。

3 給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5の4等関係)
(1)改正の内容

① 個人の新規雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置が改組され、青色申告書を提出する個人が、令和5年及び令和6年の各年において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その年において継続雇用者給与等支給増加割合が3%以上であるときは、その個人のその年の控除対象雇用者給与等支給増加額(その年において、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の適用を受ける場合には、その適用による控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除した残額)に15%(その年において次の要件を満たす場合にはそれぞれ次の割合を加算した割合とし、その年において次の要件の全てを満たす場合には次の割合を合計した割合を加算した割合とする。)を乗じて計算した金額の税額控除ができることとされた。
イ 継続雇用者給与等支給増加割合が4%以上であること……10%
ロ その個人のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される教育訓練費の額からその比較教育訓練費の額を控除した金額のその比較教育訓練費の額に対する割合が20%以上であること……5%
② 中小事業者の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置について、次の見直しが行われた上、その適用期限が令和6年まで1年延長された。
イ 税額控除割合の上乗せ措置について、適用年において次の要件を満たす場合には、15%にそれぞれ次の割合を加算した割合を税額控除割合とし、その適用年において次の要件の全てを満たす場合には、15%に次の割合を合計した割合を加算した割合(すなわち40%)を税額控除割合とする措置とされた。
(イ)雇用者給与等支給増加割合が2.5%以上であること……15%
(ロ)その中小事業者のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される教育訓練費の額からその比較教育訓練費の額を控除した金額のその比較教育訓練費の額に対する割合が10%以上であること……10%
ロ 上記イ(ロ)の税額控除割合の上乗せの適用を受ける場合には、教育訓練費の明細を記載した書類の保存(改正前:確定申告書への添付)をしなければならないこととされた。
ハ 上記2(1)②及び③の見直しに伴い、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の適用を受ける場合の控除対象雇用者給与等支給増加額の調整計算の見直しが行われた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年分以後の所得税について適用し、令和4年分以前の所得税については従前どおりとされている。

4 認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5の5等関係)
(1)改正の内容

 次の見直しが行われた上、その適用期限が令和7年3月31日まで3年延長された。
① 税額控除割合について、次のとおり見直された。
イ 令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に事業の用に供した認定特定高度情報通信技術活用設備……15%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局用認定設備については、9%)
ロ 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に事業の用に供した認定特定高度情報通信技術活用設備……9%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局用認定設備については、5%)
ハ 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に事業の用に供した認定特定高度情報通信技術活用設備……3%
② 対象となる無線設備の要件の見直しが行われた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後に事業の用に供する認定特定高度情報通信技術活用設備について適用し、個人が同日前に事業の用に供した認定特定高度情報通信技術活用設備については従前どおりとされている。

5 環境負荷低減事業活動用資産等の特別償却制度の創設(措法11の4関係)
(1)改正の内容

① 青色申告書を提出する個人で環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の環境負荷低減事業活動実施計画又は特定環境負荷低減事業活動実施計画について同法の認定を受けた農林漁業者等であるものが、同法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、その認定に係る認定環境負荷低減事業活動実施計画又は認定特定環境負荷低減事業活動実施計画に記載された設備等を構成する機械その他の減価償却資産のうち環境負荷の低減に著しく資する一定の規模のものの取得等をして、これをその個人の環境負荷低減事業活動又は特定環境負荷低減事業活動の用に供した場合には、その用に供した日の属する年において、その取得価額の32%(建物等及び構築物については、16%)相当額の特別償却ができることとされた。
② 青色申告書を提出する個人で環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の基盤確立事業実施計画について同法の認定を受けたものが、同法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、その認定に係る認定基盤確立事業実施計画に記載された設備等を構成する機械その他の減価償却資産のうち環境負荷の低減を図るために行う取組の効果を著しく高める一定のものの取得等をして、これをその個人の一定の基盤確立事業の用に供した場合には、その用に供した日の属する年において、その取得価額の32%(建物等及び構築物については、16%)相当額の特別償却ができることとされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37号)の施行の日から施行することとされている。

6 特定地域における工業用機械等の特別償却制度の改正(措法12等関係)
(1)改正の内容

① 産業高度化・事業革新促進地域に係る措置について、次の見直しが行われた。
イ 適用対象者が、沖縄振興特別措置法の産業高度化・事業革新措置実施計画の認定を受けた事業者で主務大臣の確認を受けたものに該当する個人とされた。
ロ 適用期間が、沖縄振興特別措置法の規定により沖縄県知事が産業イノベーション促進計画を主務大臣に提出した日から令和7年3月31日までの期間とされた。
ハ 適用対象区域が、提出産業イノベーション促進計画に定められた産業イノベーション促進地域の区域とされた。
ニ 適用対象事業について、ガス供給業が追加され、計量証明業が除外された。
ホ 適用対象資産が対象減価償却資産のうち沖縄の振興に資する一定のものとされたほか、対象減価償却資産に一定の構築物が追加された。
② 国際物流拠点産業集積地域に係る措置について、次の見直しが行われた。
イ 適用対象者が、沖縄振興特別措置法の国際物流拠点産業集積措置実施計画の認定を受けた事業者で主務大臣の確認を受けたものに該当する個人とされた。
ロ 適用期間が、沖縄振興特別措置法の規定により沖縄県知事が国際物流拠点産業集積計画を主務大臣に提出した日から令和7年3月31日までの期間とされた。
ハ 適用対象資産が、対象減価償却資産のうち沖縄の振興に資する一定のものとされた。
③ 経済金融活性化特別地区に係る措置について、次の見直しが行われた。
イ 適用対象者が、沖縄振興特別措置法の経済金融活性化措置実施計画の認定を受けた事業者に該当する個人とされた。
ロ 適用期間が、沖縄振興特別措置法の規定により内閣総理大臣が経済金融活性化計画の認定をした日から令和7年3月31日までの期間とされた。
ハ 適用対象資産が対象減価償却資産のうち沖縄の振興に資する一定のものとされたほか、一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の下限額が引き下げられた。
④ 沖縄の離島の地域に係る措置について、次の見直しが行われた上、その適用期限が令和7年3月31日まで3年延長された。
イ 適用対象資産に個人が取得等をする新設又は増設に係る設備以外の設備並びに改修(増築、改築、修繕又は模様替をいう。)のための工事により取得又は建設をする建物等が追加されたほか、一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の下限額の見直しが行われた。
ロ 本措置の適用については、離島の地域の振興に資する一定の場合に限ることとされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする工業用機械等について適用し、個人が同日前に取得又は製作若しくは建設をした工業用機械等については従前どおりとされている。

7 障害者を雇用する場合の特定機械装置の割増償却制度の廃止(措法13等関係)
(1)改正の内容

 この制度は、適用期限(令和4年3月31日)の到来をもって廃止された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年以前の各年において障害者を雇用しており、かつ、一定の要件のいずれかを満たす場合におけるその年12月31日において有する特定機械装置については従前どおりとされている。

8 輸出事業用資産の割増償却制度の創設(措法13の2関係)
(1)改正の内容

 青色申告書を提出する個人で農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の認定輸出事業者であるものが、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日から令和6年3月31日までの間に、その個人の認定輸出事業計画に記載された施設に該当する機械装置、建物等及び構築物のうち、農林水産物又は食品の生産、製造、加工又は流通の合理化、高度化その他の改善に資する一定のもの(以下「輸出事業用資産」という。)の取得等をして、これをその個人の輸出事業の用に供した場合には、その用に供した日以後5年以内の日の属する各年分(その輸出事業用資産を輸出事業の用に供していることにつき証明がされた年分に限る。)において、その輸出事業用資産の普通償却額の30%(建物等及び構築物については、35%)相当額の割増償却ができることとされた。
(2)適用関係
 上記(1)の制度は、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第49号)の施行の日から施行することとされている。

9 倉庫用建物等の割増償却制度の改正(措法15関係)
(1)改正の内容

 割増償却割合が8%(改正前:10%)に引き下げられた上、その適用期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後に取得又は建設をする倉庫用建物等について適用し、個人が同日前に取得又は建設をした倉庫用建物等については従前どおりとされている。

10 特定災害防止準備金制度の廃止(措法20関係)
(1)改正の内容

 適用期限(令和4年3月31日)の到来をもって、制度が廃止された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人の令和4年分以前の所得税については、従前どおりとされている。また、令和4年12月31日において設置許可(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条第1項又は第15条第1項の許可をいう。)を受けている個人の令和5年分以後の各年分の事業所得の金額の計算については、従来どおり適用できることとされている。

11 探鉱準備金制度の改正(措法22等関係)
(1)改正の内容

 対象となる鉱物から国外にある石炭、亜炭及びアスファルトが除外された上、制度の適用期限が令和7年3月31日まで3年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年分以後の所得税について適用し、令和4年分以前の所得税については従前どおりとされている。

12 農業経営基盤強化準備金制度の改正(措法24の2関係)
(1)改正の内容

 対象となる個人が、認定農業者等のうち農業経営基盤強化促進法の地域計画の区域において農業を担う一定の者とされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)の施行の日から施行することとされている。

13 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の改正(措法28の2等関係)
(1)改正の内容

 対象資産から貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供した減価償却資産が除外された上、その適用期限が令和6年3月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、中小事業者が令和4年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする少額減価償却資産について適用し、中小事業者が同日前に取得又は製作若しくは建設をした少額減価償却資産については従前どおりとされている。

第四 その他の改正

1 山林所得に係る森林計画特別控除制度の改正(措法30の2関係)
改正の内容

 適用期限が令和6年まで2年延長された。

2 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の譲渡所得の非課税の改正(措令25の17の2関係)
(1)改正の内容

 適用対象となる地方独立行政法人に重要文化財を譲渡した場合におけるその地方独立行政法人の範囲が博物館法に規定する公立博物館又は指定施設に該当する博物館、美術館、植物園、動物園又は水族館の設置及び管理を行うことを主たる目的とする地方独立行政法人とされた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)の施行の日(令和5年4月1日)から施行される。

3 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例の改正(措法40の3の2関係)
(1)改正の内容

 債務処理計画が平成28年4月1日以後に策定されたものである場合において同日前に株式会社地域経済活性化支援機構法の再生支援決定等の対象となった法人に該当しないものであることとの要件に、債務処理計画が同日以後に策定されたものである場合において同日前に産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人に該当しないものであることが追加された上、その適用期限が3年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、個人が令和4年4月1日以後に行う贈与について適用し、個人が同日前に行った贈与については従前どおりとされている。

4 給付金等の非課税等の改正(措法41の8等関係)
(1)改正の内容

① 児童扶養手当受給者等の自立を支援することを目的としてその児童扶養手当受給者等の居住の用に供する賃貸住宅の家賃を援助するために都道府県等が行うひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付けによる金銭の貸付けにつきその貸付けに係る債務の免除を受けた場合には、その免除により受ける経済的な利益の価額については、所得税を課さないこととされた。
② 都道府県社会福祉協議会が行う生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金の特例貸付事業又は総合支援資金の特例貸付事業による金銭の貸付けにつきその貸付けに係る債務の免除を受けた場合には、その免除により受ける経済的な利益の価額については、所得税を課さないこととされた。
③ 都道府県、市町村又は特別区から給付される給付金で次に掲げるものについては所得税を課さないこととし、その給付金の給付を受ける権利は国税の滞納処分により差し押さえることができないこととされた。
イ 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響に鑑み、家計への支援の観点から子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金(住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金)
ロ 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置による児童の属する世帯への経済的な影響の緩和の観点から子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金(子育て世帯への臨時特別給付)
ハ 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響に鑑み、家計への支援の観点から新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金を財源として給付される給付金(新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金)
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和4年分以後の所得税について適用し、令和3年分以前の所得税については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、令和4年4月1日から施行されている。
③ 上記(1)③の改正は、令和3年分以後の所得税について適用し、令和2年分以前の所得税については従前どおりとされている。

5 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除制度の改正(措令26の28の2関係)
(1)改正の内容

 特定学校等の範囲について、児童福祉法の改正に伴う所要の整備が行われた。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、一定の要件に係る児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の施行の日(令和6年4月1日)以後に終了する各事業年度における判定基準寄附者の数について適用し、これらの法人の一定の要件に係る同日前に終了した事業年度における判定基準寄附者の数については従前どおりとされている。

6 被災した法人について債務処理計画が策定された場合の課税の特例の改正(措法40の3の2等関係)
(1)改正の内容

 適用対象に、東日本大震災によって被害を受けたことにより過大な債務を負っている内国法人(中小企業者に該当するものに限る。)で産業復興機構の組合財産である債権の債務者であるものについて、債務処理計画で一般に公表された債務処理を行うための手続に関する準則に基づき策定されていることその他の一定の要件を満たすものが策定された場合が追加された上、その適用期限が3年延長された。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和4年4月1日以後に債務処理に関する計画に基づき内国法人に資産を贈与する場合について適用し、同日前に債務処理に関する計画に基づき内国法人に資産を贈与した場合については従前どおりとされている。

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