税務ニュース2022年06月24日 医師の健康診断業務が給与所得に該当(2022年6月27日号・№936) 審判所、空間的・時間的拘束を受けて行った労務提供等の対価と認定
国税不服審判所は令和4年6月21日、令和3年10月から12月分の裁決事例のうち4件をHP上で公表したが、そのうちの1件である本件では、医師の健康診断業務に係る報酬の所得区分が争われた。
審判所は、これまで事業所得と給与所得のいずれに該当するかが争われた事例は多数あるものの、医師の診断業務について、どのような具体的事実に基づき、社会的通念に照らして給与所得であると判断されたのかを公表することは実務の参考になるとして公表を決めたと説明した。
裁決によれば、審判所はまず、当該所得区分の法令解釈として、昭和56年4月24日最高裁判決に加えて昭和57年11月18日大阪高裁判決を引用した。
その上で、請求人が従事していた7つの医療機関の健康診断業務について、ほぼ同様の事実を認定した。
具体的には、報酬及び費用の負担については、業務の対価が時間単位で定められ、健康診断の受診者数の増減や業務内容に応じて金額が変動する報酬体系になっておらず、業務に必要な器具や備品が支給等されており、交通費も支払われていたことを指摘。また、各医療機関から、業務内容、従事時間及び場所の指定を受け、出勤簿等によって業務への従事状況が管理されていたことなども認定した。
そして、これらを総合して判断した結果、「請求人が支払を受けた報酬は、自己の計算と危険において独立して営まれる業務から生じたものということはできず、請求人が医療機関の指揮命令に服し、医療機関による空間的、時間的拘束を受けて行った業務ないし労務提供の対価として得たものであるから、給与所得に該当する」との判断を下した。
なお、請求人は、別の医療機関に対し、労働契約上の地位の確認等を求める訴えを提起し、裁判所から労働者性が認められないとの棄却判決(本件判決)を受けたという経緯があった。そのため、本件判決を援用して所得区分を事業所得とすべきと主張していたが、審判所は、「税法上における給与所得者と労働基準法上の労働者の判断は関連する部分もあるが、完全に一致するというものではない」「本件と本件判決は、当事者及び審理の対象を異にするものであるから、本件判決の効力が本件に及ばないことは当然である」として、請求人の主張を斥けている。
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