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解説記事2022年07月18日 税制改正解説 令和4年度における納税環境整備に関する改正について(3・了)(2022年7月18日号・№939)

税制改正解説
令和4年度における納税環境整備に関する改正について(3・了)
 畑尾傑人

四 その他納税環境整備関係の改正

1 修正申告書等の記載事項の整備
(1)改正前の制度の概要

① 修正申告書の記載事項
  納税申告書を提出した者は、その納税申告書の提出により納付すべきものとして記載した税額に不足額があるとき等の一定の場合には、その申告について更正があるまでは、その申告に係る課税標準等又は税額等を修正する納税申告書(以下「修正申告書」という。)を税務署長に提出することができることとされている(通法19①)。
  修正申告書には、次に掲げる事項を記載し、その申告に係る国税の期限内申告書に添付すべきものとされている書類があるときはその書類に記載すべき事項のうちその申告に係るものを記載した書類を添付しなければならないこととされていた(旧通法19④)。
イ その申告前の課税標準等及び税額等
ロ その申告後の課税標準等及び税額等
ハ その申告に係る次に掲げる金額
(イ)その申告前の納付すべき税額がその申告により増加するときは、その増加する部分の税額
(ロ)その申告前の還付金の額に相当する税額がその申告により減少するときは、その減少する部分の税額
(ハ)純損失の繰戻し等による還付金額に係る還付加算金があるときは、その還付加算金のうち上記(ロ)に掲げる税額に対応する部分の金額
ニ 上記イからハまでに掲げるもののほか、その期限内申告書に記載すべきものとされている事項でその申告に係るものその他参考となるべき事項
② 更正請求書の記載事項
  納税申告書を提出した者は、その申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又はその計算に誤りがあったことにより、その申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき等の一定の場合には、その申告書に係る国税の法定申告期限から5年(法人税の純損失等の金額に係る場合については、10年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができることとされている(通法23①)。
  更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、その更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、その請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならないこととされていた(旧通法23③)。
(2)改正の内容
 ワンスオンリーの原則を徹底する観点から、先の納税申告書の提出により税務当局が既に情報として保有している上記(1)①イの「申告前の課税標準等」及び上記(1)②の「更正前の課税標準等」については、修正申告書又は更正請求書への記載を要しないこととされた(通法19④、23③、令和2年改正前通法19④、23③)。
 また、上記(1)①イの「申告前の税額等」及び上記(1)②の「更正前の税額等」についても、先の納税申告書の提出により税務当局が既に情報として保有しているものである。そのため、これらの税額等のうち「源泉徴収税額等」については、修正申告書又は更正請求書への記載を要しないこととされたが、最終的な納付税額又は還付税額を算出する過程において必要な情報である「納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額」については、引き続き、修正申告書又は更正請求書に記載すべきこととされている(通法19④三、23③、令和2年改正前通法19④三、23③)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年12月31日以後に課税期間が終了する国税(課税期間のない国税については、同日後にその納税義務が成立する当該国税)に係る修正申告書又は更正請求書について適用し、同日前に課税期間が終了した国税(課税期間のない国税については、同日以前にその納税義務が成立した当該国税)に係る修正申告書又は更正請求書については、従前どおりとされている(改正法附則20①、21)。したがって、例えば、所得税については令和4年分から、法人税については令和4年12月31日以後に終了する事業年度分から、相続税については令和5年1月1日以後に納税義務が成立(相続開始)するものから、それぞれ適用される。

2 個人番号カードを利用したe-Taxの利便性の向上
(1)改正前の制度の概要

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う者は、その申請等につき規定した法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項(以下「申請書面等記載事項」という。)並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)(以下「e-Tax用ID・PW」という。)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書(署名用電子証明書)と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされている(旧国税オンライン化省令5①)。ただし、その電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に個人番号カードを用いて電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書(利用者証明用電子証明書)と併せてこれらを送信する場合には、e-Tax用ID・PWの入力は要しないこととされている(旧国税オンライン化省令5①ただし書、①一)。
(2)改正の内容
 上記(1)のとおり、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う際に、個人番号カードを用いて電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に電子署名等を行う場合(電子情報処理組織(e-Tax)にログインする場合)には、e-Tax用ID・PWの入力は要しないこととされているところであるが、個人番号カードの読込みや申請等の情報に電子署名等を行う際には、個人番号カードに記録された利用者証明用電子証明書の暗証符号(パスワード)及び署名用電子証明書の暗証符号(パスワード)をそれぞれ入力する必要があり、暗証符号(パスワード)を複数回入力することが求められる状況となっていた。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、納税者利便の向上を図る観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う際に、個人番号カードを用いて電子情報処理組織(e-Tax)にログインする場合において、あらかじめその申請等を行う者が本人であることを確認するための措置として国税庁長官が定める措置がとられているときは、e-Tax用ID・PWを入力すること並びにその申請等の情報に電子署名を行うこと及びその電子署名に係る電子証明書(署名用電子証明書)を送信することを要しないこととされた(国税オンライン化省令5①一)。
 上記の「国税庁長官が定める措置」は、その申請等に係る税務署長等が、その申請等を行う者の個人番号カードに記録された利用者証明用電子証明書及び署名用電子証明書の送信を受けることとされている(令和4年国税庁告示第23号)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和5年1月1日から施行される(改正国税オンライン化省令附則1)。

3 添付書面等記載事項の提供方法の見直し
(1)改正前の制度の概要

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合には、その申請等を行う者は、その申請等につき規定した法令の規定に基づき添付すべきこととされている書面等(以下「添付書面等」という。)に記載されている事項又は記載すべき事項(以下「添付書面等記載事項」という。)を次に掲げる方法により送信し、又は提出することをもって、その添付書面等の提出に代えることができることとされている(旧国税オンライン化省令5③、旧平成31年国税庁告示第7号)。
① 添付書面等記載事項をその申請等に併せて入力して送信する方法
② 添付書面等記載事項をスキャナにより読み取る方法等により作成した電磁的記録(以下「イメージデータ」という。)をその申請等と併せて送信する方法(上記①に掲げる方法につき国税庁の使用に係る電子計算機において用いることができない場合に限る。)
③ 添付書面等記載事項が記録された電磁的記録であって、添付書面等を交付すべき者から提供を受けたものをその申請等と併せて送信する方法
④ 添付書面等記載事項(国税庁長官が定める添付書面等に係るものに限る。)の電磁的記録を記録した光ディスク、磁気テープ又は磁気ディスクを提出する方法
(2)改正の内容
① 相続税の申告書の添付書面等記載事項の提供方法の見直し
  電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により相続税の申告を行う場合には、添付書面等記載事項に係るイメージデータを送信することにより、その添付書面等の提出に代えることができることとされている(国税オンライン化省令5③二)。
  他方で、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法によるイメージデータの送信については、1回当たりの送信可能容量及び送信可能回数に上限があるため、添付書類が多数となる相続税の申告においては、添付書面等記載事項のデータ容量が大きくなりやすく、イメージデータを複数のファイルに分割した上で複数回に分けて送信し、又は添付書類を書面で別途送付する必要があった。
  今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、納税者利便の向上を図る観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により相続税の申告を行う場合の添付書面等記載事項の提供方法に、添付書面等記載事項の電磁的記録を記録した光ディスク又は磁気ディスクを提出する方法が追加された。
  具体的には、添付書面等記載事項を上記(1)④に掲げる方法により提出することをもって、その添付書面等の提出に代えることができる添付書面等の範囲に、申請書面等記載事項を入力して送信する方法により相続税法に規定する相続税の期限内申告書、期限後申告書若しくは相続時精算課税の適用者が還付を受けるために提出することができる申告書又はこれらの申告書に係る修正申告書の提出をする場合におけるその提出に係る添付書面等が追加された(令和4年国税庁告示第17号)。
② 国税庁長官が定める添付書面等に係る添付書面等記載事項の提供方法の見直し
  上記(1)④の添付書面等記載事項の提供方法のうち添付書面等記載事項の電磁的記録を記録した磁気テープを提出する方法については、近年、その提出の実績がなく、今後もその提出は見込まれないことから、上記(1)④の添付書面等記載事項の提供方法から除外された(国税オンライン化省令5③四)。
(3)適用関係
① 上記(2)①の改正は、令和4年4月1日以後に行う申請等について適用される(令和4年国税庁告示第17号附則③)。
② 上記(2)②の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正国税オンライン化省令附則1ただし書)。

4 特定納付手続に使用する識別符号を通知する手続等の廃止
(1)改正前の制度の概要

① 電子情報処理組織を使用する方法による国税の納付手続に係る事前届出
  電子情報処理組織を使用する方法により国税の納付を行おうとする者は、次に掲げる事項をあらかじめ税務署長に届け出なければならないこととされている(国税オンライン化省令4①)。
イ 氏名又は名称、住所又は居所及び法人番号(法人番号を有しない者等については、氏名又は名称及び住所又は居所)
ロ 対象とする手続の範囲
ハ その他参考となるべき事項
② 識別符号(ID)の通知
  税務署長は上記①の事前届出を受理したときは、その事前届出をした者に対し、識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を通知し、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる入出力用プログラムを提供することとされている(旧国税オンライン化省令4②)。
  また、税務署長は、上記①の事前届出が国税の納付手続に利用できるものとして金融機関が提供するプログラムのみを使用して行う国税の納付手続(以下「特定納付手続」という。)のみに係るものであるときは、その事前届出をした者に対し、特定納付手続のみに利用することができる識別符号(以下「特定納付手続専用ID」という。)を通知することとされていた(旧国税オンライン化省令4④)。
③ 特定納付手続に係る変更届出をした場合の入出力用プログラムの提供
  税務署長は、既に上記②により識別符号(ID)の通知を受けている者が、上記①ロに掲げる事項(対象とする手続の範囲)に変更が生ずることとなったことにより変更届出をした場合には、その変更届出をした者に対し、暗証符号(パスワード)を通知し、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる入出力用プログラムを提供することとされていた(旧国税オンライン化省令4⑦、⑧)。
(2)改正の内容
 上記(1)②のとおり、電子情報処理組織を使用する方法により申請等又は国税の納付手続を行おうとする者(特定納付手続のみを行おうとする者を除く。)が事前届出をした場合には、「電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる識別符号(以下「e-Tax用ID」という。)」が、電子情報処理組織を使用する方法により特定納付手続のみを行おうとする者が事前届出をした場合には、「特定納付手続専用ID」が、それぞれ通知される。
 e-Tax用IDは、特定納付手続にも利用することができることから、今回の改正においては、上記(1)①から③までの手続のうち特定納付手続のみに係るものが廃止され、一般的なe-Tax用ID及び暗証符号(パスワード)を通知する手続に統合された。
(3)適用関係
① 上記(2)の改正は、令和5年1月1日から施行される(改正国税オンライン化省令附則1)。
② 令和4年12月31日以前に上記(1)①の事前届出(特定納付手続のみに係るものに限る。)をした者に対する上記(1)②の特定納付手続専用IDの通知については、従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則2①)。
③ 令和4年12月31日以前に上記(1)③の変更届出をした者に対する上記(1)③の暗証符号(パスワード)の通知及び電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる入出力用プログラムの提供については、従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則2②)。
④ 税務署長は、令和5年1月1日において既に特定納付手続専用IDの通知を受けている者(同日において既に上記(1)③の暗証符号(パスワード)の通知及び、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる入出力用プログラムの提供を受けている者を除く。)及び同日以後に上記②により特定納付手続専用IDの通知を受けた者に対し、暗証符号(パスワード)を通知し、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等又は国税の納付手続に利用することができる入出力用プログラムを提供するものとされている(改正国税オンライン化省令附則2③)。

5 公売における入札手続の電子化
(1)改正前の制度の概要

 差押財産の公売は、入札又は競り売りの方法により行わなければならないこととされている(徴法94②)。入札の方法により公売を行う場合には、入札をしようとする者は、入札価額その他必要な事項を記載した入札書に封をして、これを徴収職員に差し出さなければならない(提出しなければならない)こととされている(徴法101①前段)。このように入札書に封をすることとしているのは、公売の適正を担保する観点から、開札時まで、公売担当職員を含め、誰にも見られたり、書き換えられることなく保管する必要があることによるものである。
 この入札書の提出については、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。具体的には、入札をしようとする者は、その入札書に記載すべきこととされている事項並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請等(入札)の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等(入札)を行わなければならないこととされている(国税オンライン化省令5①)。ただし、国税庁長官が定める一定の者については、電子署名及びその電子署名に係る電子証明書(以下「電子署名等」という。)の送信は要しないこととされている(国税オンライン化省令5①ただし書、旧平成18年国税庁告示第32号)。
 なお、入札書の提出を電子情報処理組織を使用する方法により行う場合においても、開札時まで、誰も電磁的記録の内容を知り得ないようにし、かつ、改ざん等がされないようにするための措置が必要であることから、別途、入札書に封をすることに相当する措置であって財務省令で定めるものをもって、その入札書に封をすることに代えるものとされている(徴法101①後段)。
 このように、公売における入札手続を電子的に行うための制度上の枠組みは整備されていたが、他方で、国税の滞納処分による差押財産の公売については、競り売りの方法によるインターネット公売が一般に普及しており、公売における入札手続を電子的に行う必要性が限定的であったこと等から、入札書の提出を電子情報処理組織を使用する方法により行うことを可能とするためのシステム整備は行われておらず、上記の「入札書に封をすることに相当する措置」は定められていなかった。そのため、実際には、公売における入札手続は電子的に行うことができなかった。
(2)改正の内容
 令和3年度税制改正では、行政手続における書面主義・押印原則・対面主義の抜本的な見直しに向けた政府全体の方針、政府税制調査会・同調査会の下に設置された納税環境整備に関する専門家会合における議論等を踏まえ、納税者利便の向上を図る観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等の方法の拡充が行われたが、今回の改正においては、こうした背景や財産の多様化に伴い、その公売財産の特性に応じた公売手段の確保の必要性が高まっている滞納整理の状況を踏まえ、公売における入札手続を電子的に行うための整備が行われた。
 具体的には、入札をしようとする者から電子情報処理組織を使用して送信がされた入札書に記載すべきこととされている事項が入力されたその入札の情報を、その送信がされた時から開札の時までの間、何人も閲覧することができないこととする措置(例えば入札情報の暗号化やアクセス制御)を上記(1)の「入札書に封をすることに相当する措置」として定め(徴規1の4)、この措置を講じている場合には、入札書の提出を電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされた。
 また、電子情報処理組織を使用する方法による入札書の提出の運用が開始されることに伴い、納税者利便の向上を図る観点から、入札をしようとする者から委任を受けた者の電子署名等を送信する場合には、その入札をしようとする者の電子署名等の送信を要しないこととされた。
 具体的には、上記(1)の電子情報処理組織を使用して申請等を行う場合において電子署名等の送信を要しないこととされる国税庁長官が定める者の範囲に、入札をしようとする者のうちその入札の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する者(以下「申請等入札者」という。)以外の者が、これらの行為を委任した場合において、これらの行為の委任を受けた者が電子情報処理組織を使用する方法により当該入札を行うときにおける当該申請等入札者以外の者が加えられた(令和4年国税庁告示第16号)。
 なお、上記のように電子情報処理組織を使用する方法により入札を行う場合には、運用の適正性を確保する観点から、電子委任状の送信が必要となる(令和4年国税庁告示第16号)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和5年4月1日以後に行う公告に係る公売について適用される(改正徴規附則②)。

6 スマートフォンを使用した決済サービスによる税関長が課する国税の納付手続等の整備
(1)改正前の制度の概要

 国税を納付しようとする者は、その税額が一定の金額以下である場合であって、電子情報処理組織(インターネット)を使用して行う納付受託者に対する通知に基づき納付しようとするときは、納付受託者に納付を委託することができることとされている(通法34の3①二)。
 この「一定の金額以下である場合」とは、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める場合とされている(旧通規2①二・三)。
① クレジットカードを使用する方法により国税を納付する場合……国税を納付しようとする金額が1,000万円未満であり、かつ、その国税を納付しようとする者のクレジットカードによって決済することができる金額以下である場合
② 第三者型前払式支払手段による取引等により国税を納付(スマホアプリ納付)する場合……国税を納付しようとする金額が30万円以下であり、かつ、第三者型前払式支払手段による取引等によって決済することができる金額以下である場合
 なお、「納付受託者」とは、納付事務を適正かつ確実に実施することができると認められる者であり、かつ、一定の要件に該当する者として国税庁長官が指定するものをいうこととされている(通法34の4①)。
(2)改正の内容
① スマートフォンを使用した決済サービスによる税関長が課する国税の納付上限額の整備
  令和3年度の関税改正により、関税についても上記(1)①及び②と同様の納付手続が導入されているが、このうち②のスマートフォンを使用した決済サービスを利用した納付手続(第三者型前払式支払手段による取引等により納付する手続)における納付上限額は100万円とされている(関税法9の5①、関税規1の8①二)。
  今回の改正においては、こうした関税の納付手続の取扱いを踏まえ、税関長が課する保税地域からの引取りに係る消費税等の国税についても同様に、上記(1)②の第三者型前払式支払手段による取引等により納付(スマホアプリ納付)する場合における納付上限額が100万円に引き上げられた。
  具体的には、税関長が課する国税を納付しようとする者は、その国税を納付しようとする金額が100万円以下であり、かつ、その国税を納付しようとする者が使用する第三者型前払式支払手段による取引等によって決済することができる金額以下である場合であって、電子情報処理組織(インターネット)を使用して行う納付受託者に対する通知に基づき納付しようとするときは、納付受託者に納付を委託することができることとされた(通法34の3①二、通規2①三)。
② 税関長が国税の徴収の所轄庁となる場合の納付受託者に対する納付の委託の手続の整備
  上記①の見直しを契機として、関税を納付しようとする者の委託を受けて納付事務を行うことができる納付受託者の指定手続を一元化し、指定事務の効率化を図る観点から、税関長が国税の徴収の所轄庁となる場合の納付受託者について、税関長の上級行政庁である財務大臣が指定することとされた。
  具体的には、税関長が国税の徴収の所轄庁となる場合の納付受託者については、納付事務を適正かつ確実に実施することができると認められる者であり、かつ、一定の要件に該当する者として財務大臣が指定するものとされた(通法45①による読替後の通法34の4①、令和4年財務省告示第101号)。
  また、上記と併せて、税関長が国税の徴収の所轄庁となる場合の納付受託者の報告先や届出先についても、財務大臣とする等の所要の規定の整備が行われた(通法45①、通令12、通規4〜6、8〜10)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1、改正通令等附則①、改正通規等附則)。

7 税関長が行う賦課決定の手続の整備
(1)改正前の制度の概要

 保税地域からの引取りに係る消費税等(消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税をいう。以下同じ。)で賦課課税方式によるものその他税関長が徴収すべき消費税等又は特別徴収方式の国際観光旅客税の加算税(以下「輸入品に係る消費税等」という。)についての賦課決定は、関税との関係等から、税関官署において取り扱うことが便宜であることから、これらの国税の納税地を所轄する税関長が行うこととされている(通法33③)。
 また、税関長は、輸入品に係る消費税等を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならないこととされている(旧通法45①による読替後の通法36①)。
 この税関長が行う賦課決定及び納税の告知の手続については、次のとおりとされていた。
① 税関長が行う賦課決定の手続
  税関長は、賦課課税方式による国税については、その調査により、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める事項を賦課決定することとされている(通法33③による読替後の通法32①)。なお、その賦課決定は、税関長がその賦課決定に係る課税標準及び税額等を記載した賦課決定通知書(イに掲げる場合には、納税告知書)を送達して行うこととされている(通法33③による読替後の通法32③)。
イ 課税標準申告書の提出があった場合において、その申告書に記載された課税標準が税関長の調査したところと同じであるとき……納付すべき税額
ロ 課税標準申告書を提出すべきものとされている国税につきその申告書の提出がないとき、又はその申告書の提出があった場合において、その申告書に記載された課税標準が税関長の調査したところと異なるとき……課税標準及び税額等
ハ 課税標準申告書の提出を要しないとき……課税標準(加算税及び過怠税については、その計算の基礎となる税額)及び税額等
  また、税関長は、その賦課決定をした課税標準(上記イに掲げる場合にあっては、課税標準申告書に記載された課税標準)又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは、その調査により、その賦課決定に係る課税標準及び税額等を変更する賦課決定(再賦課決定)をすることとされている(通法33③による読替後の通法32②)。なお、その賦課決定についても、賦課決定通知書を送達して行うこととされている(通法33③による読替後の通法32④)。
② 税関長が行う納税の告知の手続
  納税の告知は、税関長が、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行うこととされている(旧通法45①による読替後の通法36②)。ただし、担保として提供された金銭をもって消費税等を納付させる場合、本邦に入国する者が入国の際に携帯して輸入する物品につき課する消費税等を税関の当該職員に即納させる場合その他特別の必要に基づき国税を当該職員に即納させる場合には、納税告知書の送達に代えて、税関の当該職員に口頭でその告知をさせることができることとされている(旧通法45①による読替後の通法36②ただし書、通令8②)。また、当該職員が口頭で納税の告知をする場合には、他の当該職員の立会いを受けなければならないこととされている(通令8③)。
  なお、税務署その他の行政機関の職員は、交付送達を行った場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名(記名を含む。以下同じ。)を求めなければならないこととされており、この場合において、その者が署名の求めに応じないときは、交付送達を行う職員は、その理由を付記しなければならないこととされているが(通規1①)、税関の当該職員が納税告知書(本邦に入国する者が、入国の際に携帯し、又は別送して輸入する物品につき課する消費税等に係るものに限る。)を送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。以下同じ。)以外の場所において交付送達を行った場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名を求めることを要しないこととされていた(旧通規1③)。
(2)改正の内容
① 税関の当該職員の口頭による賦課決定の手続の整備
  賦課課税方式が適用される貨物について関税を賦課しようとする場合の賦課決定は、税関長がその賦課決定に係る課税標準及び納付すべき税額その他一定の事項を記載した賦課決定通知書(輸入申告に係る課税標準が税関長の調査したところと同じである場合には、納税告知書)を送達して行うこととされている(関税法8④)。ただし、本邦に入国する者がその入国の際に携帯して輸入する貨物等に課される関税の賦課決定については、賦課決定通知書又は納税告知書の送達に代えて、税関の当該職員に口頭でその賦課決定の通知をさせることができることとされている(関税法8④ただし書)。この税関の当該職員の口頭による関税の賦課決定の手続については、その賦課決定が入国等の際に行われ、迅速かつ円滑に手続を行う必要性が高いため、その税関事務の効率化を図る観点から設けられているものである。
  また、引取りに係る課税物品の内国消費税(消費税法等の規定により課される消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税又は石油石炭税をいう。以下同じ。)についても、賦課課税方式による関税と同一の課税物件について課されるものであるため、その賦課決定の手続について、関税との納税手続の一元化を図る観点から、賦課課税方式による関税の賦課決定の手続と同様に、税関の当該職員に口頭で賦課決定の通知をさせることができることとされている(旧輸徴法6⑥)。
  今回の改正においては、こうした賦課課税方式による関税及び引取りに係る課税物品の内国消費税の取扱いや輸入品に係る消費税等についての徴収手続である納税の告知については、既に税関の当該職員の口頭による手続が整備されていること等を踏まえ、税関長が輸入品に係る消費税等について行う賦課決定のうち迅速かつ円滑に手続を行う必要性が高い一定のものについて、税関の当該職員の口頭による賦課決定の手続が整備された。
  具体的には、税関長が輸入品に係る消費税等について賦課決定を行う場合において、その賦課決定が消費税法の規定により直ちに徴収する一定の消費税に係るものであるとき、本邦に入国する者が入国の際に携帯して輸入する物品につき徴収すべき消費税等を税関の当該職員に即納させるときその他特別の必要に基づき国税を当該職員に即納させるときは、賦課決定通知書又は納税告知書の送達に代えて、税関の当該職員に口頭でその賦課決定の通知をさせることができることとされた(通法33④、通令6の2①)。また、税関の当該職員が口頭で賦課決定の通知をする場合には、他の当該職員の立会いを受けなければならないこととされた(通令6の2②)。
② 税関の当該職員の賦課決定通知書の交付送達の手続の整備
  上記①の税関の当該職員の口頭による賦課決定の手続の整備により、税関長が輸入品に係る消費税等について賦課決定を行う場合の多くが賦課決定通知書の送達を要せず、税関の当該職員に口頭でその賦課決定の通知をさせることにより手続を完結させることが可能となるが、税関長が直ちに徴収する一定の消費税の徴収額が高額となる場合や、納税者との紛争が見込まれる場合など、引き続き賦課決定通知書の交付送達により賦課決定を行う場面が想定される。
  今回の改正においては、上記(1)②の輸入品に係る消費税等についての徴収手続の一環として税関の当該職員が納税告知書を交付送達した場合の手続の取扱いを踏まえ、上記のように賦課決定通知書の交付送達により賦課決定を行う場面においても、その賦課決定の手続を迅速かつ円滑に行うことを可能とする観点から、税関の当該職員が一定の賦課決定通知書の交付送達を行った場合には、その手続を簡素化する整備が行われるとともに、それに伴い手続が簡素化される上記(1)②の納税告知書の対象範囲についても所要の規定の整備が行われた。
  具体的には、税関の当該職員が次に掲げる場合において、それぞれ次に定める書類を送達を受けるべき者の住所又は居所以外の場所において交付送達を行ったときは、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名を求めることを要しないこととされた(通規1③)。
イ 税関長が賦課決定を行う場合において、その賦課決定が消費税法の規定により直ちに徴収する一定の消費税又は本邦に入国する者が、入国の際に携帯し、若しくは別送して輸入する物品につき徴収すべき消費税等に係るものであるときその他特別の必要に基づき国税を税関の当該職員に即納させるとき……賦課決定通知書(上記(1)①イに掲げる場合には、納税告知書)
ロ 税関長が納税の告知を行う場合において、その納税の告知が本邦に入国する者が、入国の際に携帯し、又は別送して輸入する物品につき課する消費税等に係るものであるときその他特別の必要に基づき国税を税関の当該職員に即納させるとき……納税告知書
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1、改正通令等附則①、改正通規等附則)。

8 タイムスタンプの国による認定制度の創設に伴うスキャナ保存制度等の整備
(1)改正前の制度の概要

① 国税関係書類に係るスキャナ保存制度
  国税関係書類(決算関係書類を除く。)に係るスキャナ保存を行う場合には、その国税関係書類に係る記録事項の入力に当たって、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用することとされていた(電子帳簿保存法4③、電子帳簿保存法規則2⑥二)。
(注)上記の「決算関係書類」とは、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類をいう(電子帳簿保存法規則2④)。
イ 一定水準以上の解像度及びカラー画像による読み取り
(イ)解像度が、日本産業規格Z6016附属書AのA・1・2に規定する「一般文書のスキャニング時の解像度」である25.4mm当たり200ドット(200dpi)以上で読み取るものであること(電子帳簿保存法規則2⑥二イ(1))。
(ロ)赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調(約1,677万色)以上で読み取るものであること(電子帳簿保存法規則2⑥二イ(2))。
ロ タイムスタンプの付与
  次のいずれかの方法により一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(以下(1)において「タイムスタンプ」という。)を付すこと(旧電子帳簿保存法規則2⑥二ロ)。
(イ)国税関係書類の作成又は受領後、速やかにタイムスタンプを付すこと。
(ロ)その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付すこと(国税関係書類の作成又は受領からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
  なお、保存義務者が上記のいずれかの方法によりその国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、このタイムスタンプの付与の要件は不要とされている(電子帳簿保存法規則2⑥二柱書)。
ハ 読み取った際の解像度等の情報の保存
  国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び国税関係書類の大きさに関する情報を保存すること(電子帳簿保存法規則2⑥二ハ)。
(注)国税関係書類の受領者等が読み取りを行う場合において、その書類の大きさがA4サイズ以下であるときは、大きさに関する情報の保存は必要ない。
ニ ヴァージョン管理
  国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について、次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムであること(電子帳簿保存法規則2⑥二ニ)。
(イ)その国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(ロ)その国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
② 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度
  電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存を行う場合には、次に掲げるいずれかの措置を講ずることとされていた(電子帳簿保存法7、電子帳簿保存法規則4①)。
イ その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、その取引情報の授受を行うこと(電子帳簿保存法規則4①一)。
ロ 次に掲げる方法のいずれかにより、その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、その電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと(電子帳簿保存法規則4①二)。
(イ)その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその取引情報の授受後、速やかに行うこと。
(ロ)その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(その取引情報の授受からその記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
ハ 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用してその取引情報の授受及びその電磁的記録の保存を行うこと(電子帳簿保存法規則4①三)。
(イ)その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(ロ)その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
ニ その電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿った運用を行い、その電磁的記録の保存に併せてその規程の備付けを行うこと(電子帳簿保存法規則4①四)。
(2)改正の内容
 タイムスタンプは、電子データがある時点に存在したこと及びそのデータがその時点から改ざんされていないことを証明するものであるが、平成17年からタイムビジネスに係る指針(平成16年11月 総務省)に基づき、民間(一般財団法人日本データ通信協会)の認定制度が運用されてきた。
 他方、民間の認定制度については、国による信頼性の裏付けがないことや国際的な通用性への懸念等の声が強く、国としての認定制度の創設の必要性が指摘されていたこと等を踏まえ、令和3年4月1日からタイムスタンプの国(総務大臣)による認定制度の適用が開始され、同年7月30日からその認定申請の受付が開始されている(時刻認証業務の認定に関する規程(令和3年総務省告示第146号))。
 今回の改正においては、こうしたタイムスタンプの国(総務大臣)による認定制度が創設されたことを踏まえ、この国(総務大臣)により認定されたタイムスタンプを国税関係書類に係るスキャナ保存の要件及び電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の要件に位置付けるための規定の整備が行われた。
 具体的には、上記(1)①ロの国税関係書類に係るスキャナ保存のタイムスタンプ付与の要件並びに上記(1)②イ及びロの電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の措置におけるタイムスタンプについて、総務大臣が認定する時刻認証業務(電磁的記録に記録された情報にタイムスタンプを付与する役務を提供する業務をいう。)に係るものとされた(電子帳簿保存法規則2⑥二ロ)。
(3)適用関係
① 上記(2)の改正は、令和4年4月1日以後に保存が行われる国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用し、同日前に保存が行われた国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録については従前どおりとされている(改正電子帳簿保存法規則附則2①)。
② 国によるタイムスタンプ認定制度への移行を円滑に実施する観点から、令和4年4月1日から令和5年7月29日までの間に国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存が行われる場合におけるその国税関係書類に係るスキャナ保存のタイムスタンプ付与の要件及び電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の措置におけるタイムスタンプについて、従前どおり一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るものとすることを可能とする経過措置が設けられている(改正電子帳簿保存法規則附則2②)。

9 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
(1)改正前の制度の概要

 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度については、令和3年度税制改正においてその見直しが行われ、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者(以下「保存義務者」という。)について、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面又はCOM(以下「出力書面等」という。)の保存をもって、その電磁的記録の保存に代えることができる措置が廃止されたところである。
 したがって、令和3年度税制改正後においては、保存義務者は、電子取引を行った場合には、次の要件に従って、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないこととされている(電子帳簿保存法7、電子帳簿保存法規則4①)。
① 次に掲げるいずれかの措置を講ずること。
イ その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、その取引情報の授受を行うこと(電子帳簿保存法規則4①一)。
ロ 次に掲げる方法のいずれかにより、その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、その電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと(電子帳簿保存法規則4①二)。
(イ)その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその取引情報の授受後、速やかに行うこと。
(ロ)その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(その取引情報の授受からその記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
ハ 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用してその取引情報の授受及びその電磁的記録の保存を行うこと(電子帳簿保存法規則4①三)。
(イ)その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(ロ)その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
ニ その電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿った運用を行い、その電磁的記録の保存に併せてその規程の備付けを行うこと(電子帳簿保存法規則4①四)。
② その電磁的記録を保存する場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと(電子帳簿保存法規則2②二、4①)。
③ その電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと(電子帳簿保存法規則2⑥六、4①)。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
④ 自社開発のプログラムを使用する場合には、電磁的記録の保存に併せて、その電磁的記録に係る電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付けを行うこと(電子帳簿保存法規則2②一イ、2⑥七、4①)。
 また、令和3年度税制改正においては、上記の出力書面等の保存措置の廃止と併せて、災害その他やむを得ない事情に係る宥恕措置の整備も行われている。
 具体的には、その保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により、上記①から④までの保存要件に従って電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したときは、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとされている(電子帳簿保存法規則4③)。ただし、その事情が生じなかったとした場合において、その保存要件に従ってその電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでないこととされている(電子帳簿保存法規則4③ただし書)。
(注)上記の「災害その他やむを得ない事情」の意義は、次に掲げるところによるものとされている(電子帳簿保存法取扱通達4−37、7−9)。
① 「災害」とは、震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災又は火災その他の人為的災害で自己の責任によらないものに基因する災害をいう。
② 「やむを得ない事情」とは、前号(上記①)に規定する災害に準ずるような状況又は当該事業者の責めに帰することができない状況にある事態をいう。
(2)改正の内容
 上記(1)で述べたとおり、令和3年度税制改正における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直しにより、従前、認められていた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等の保存をもって、その電磁的記録の保存に代えることができる措置が廃止されたが、今回の改正においては、その電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、その出力書面等の保存措置の廃止を事実上延長するための措置(上記(1)の災害その他やむを得ない事情に係る宥恕措置の拡充)が講じられた。
 具体的には、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に電子取引を行う場合において、納税地等の所轄税務署長がその電子取引の取引情報に係る電磁的記録を一定の要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、保存義務者が国税に関する法律の規定によるその電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置が講じられた(令和3年改正電子帳簿保存法規則附則2③)。
 なお、この宥恕措置が適用されることにより、上記(1)①から④までの保存要件は不要とされるため、例えば、受領した電磁的記録を単にパソコンに保存しておけば、適正な保存として扱われることとなるが、引き続き電磁的記録の保存は必要となる。一方で、この宥恕措置が適用された場合の電磁的記録の取扱いを踏まえ、その電磁的記録を既に書面等に出力し、その出力書面等をもって上記の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは、その電磁的記録の保存を行っているものとして取り扱われることとされているので、事実上、引き続き、その電磁的記録の出力書面等により保存することもできることとなる。
(注)上記の「やむを得ない事情」とは、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に係るシステム等や社内でのワークフローの整備未済等、保存要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難であることをいうものと取り扱われている(電子帳簿保存法取扱通達7−10)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年1月1日から施行され(令和3年12月改正電子帳簿保存法規則附則)、令和3年度税制改正における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等による保存措置の廃止にあわせて適用されている。

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