解説記事2022年09月05日 ニュース特集 国際徴収Q&A 徴収共助要請へのプロセス(2022年9月5日号・№945)
ニュース特集
海外関連事案の把握・調査手法etc.
国際徴収Q&A 徴収共助要請へのプロセス
国際徴収に係る海外関連事案の把握・管理、所在・財産調査等の概要が明らかになった。海外関連事案の把握では、申告書等の課税資料のチェックや徴収システム・資料調査システムによる国外送金等調書、CRS情報、国外財産調書等の確認が行われる。海外関連事案の調査では、官公庁調査、金融機関調査、インターネット調査、長期海外出張者への調査依頼等が実施されるようだ。
本特集では、海外関連事案の把握から徴収共助要請への流れを国税当局の資料に基づき確認する。
Q
国際徴収の事務処理はどのように行われますか。
A
国税当局における国際徴収の事務処理は、①海外関連事案の把握、②事案管理・国内徴収、③徴収共助の要請可否の検討、④徴収共助要請という流れとなるようです。
また、徴収共助の要請に向け、必要に応じて外国税務当局への情報提供要請による国外財産等の調査も実施されます(図参照)。
なお、海外関連事案は、概ね以下に掲げているような一定の具体性がある情報を把握した事案とされているようです。
① 外国に不動産、預金、株式(証券投資を含む)、売掛金等の財産を有していること
② 国外送金事績(国外からの送金等の受領を含む)があること又は外国の事業者との継続的な取引があること
③ 外国に生活の拠点又は支店、工場、営業所等の事業拠点があること
④ 外国に居住(所在)する親族その他特殊関係人に対する財産の贈与等があったこと
⑤ 外国籍を有する者であること
(注1)②については、送金事績が、仕入や経費の支払等といった通常の商取引に係る代金決済であると認められる場合であり、かつ、送金先が親族その他特殊関係人ではない者に対するものである場合は、対象外として差し支えない。
(注2)④及び上記(注1)の「親族その他特殊関係人」とは、徴収令14条2項各号に規定する親族その他滞納者と特殊な関係のある個人又は同族会社に該当する者のほか、滞納者が法人である場合における代表者及びその親族、資本関係にかかわらず実質的に支配関係があると認められる法人等を含む。
Q
どのようなきっかけで海外関連事案が把握されますか。
A
図のとおり、海外関連事案を把握する端緒として、①滞納者との面接時等に聴取(滞納者から国外に拠点や財産を保有している等の発言がある場合)、②申告書等の課税資料(申告書等の課税資料に国外の拠点や財産の保有の事実が記載されている場合)、③賦課部門からの情報(賦課部門から調査により把握した国外財産などの情報提供がある場合)、④各種資料情報(各種資料情報に国外の拠点や財産の保有の事実が記載されている場合)、⑤国内における財産調査(金融機関調査、勤務先調査など、国内の滞納整理の過程で国外送金等の事実を把握する場合)が挙げられています。
Q
海外関連資産の把握の端緒となる申告書情報を教えてください。
A
海外関連事案発見の端緒となる申告書等の課税資料として、以下が掲げられています。
(1)所得税の確定申告書:確定申告書(第一表)、確定申告書(第二表)、青色決算書・収支内訳書、国外財産調書、財産債務調書(財産及び債務の明細書)、外国税額控除に関する明細書、居住形態等に関する確認書、所得・消費税の納税管理人の届出書
(2)法人税の確定申告書:法人事業概況説明書、別表一(一)各事業年度の所得に係る申告書、別表二 同族会社等の判定に関する明細書、別表六(外国税額控除関係)、別表八(二)(外国子会社からの配当)、別表十七(四)(外国子会社の明細等)、勘定科目明細等
(3)相続税の申告書の添付書類:外国税額控除額の計算書(第8表)、生命保険金などの明細書(第9表)、相続税がかかる財産の明細書(第11表)
(4)贈与税の申告書の添付資料:申告書第一表、申告書第二表(相続時精算課税の計算明細書)
Q
海外関連事案を把握するための各種資料情報とは?
A
国外送金等調書、CRS情報及び従来から受領している自動的情報交換資料(CRS情報等)、国外財産調書などが海外関連事案を把握する資料情報に該当します。
徴収担当者は、「徴収システム」(徴収関係のOAシステム機能を統合した徴収事務の基幹システム)で国外送金等調書、CRS情報等、国外財産調書などの有無を確認し、「資料調査システム」(資料情報に関するKSKシステム)等でこれらの資料情報の内容確認・出力を行うようです。
なお、海外資産情報であるCRS情報は、国際徴収(情報提供要請や徴収共助要請)のほか、滞納者との納付折衝(自主的な納付のしょうよう)など国内徴収にも活用されます。
また、CRS情報の活用を端緒に滞納整理(納付しょうようを含む)、情報提供要請、徴収共助要請等を行った場合、収納済額又は差押処分等による収納見込額にかかわらず、活用事績が登録されます。
Q
海外関連事案の管理はどのように行われますか。
A
海外関連事案を把握した場合、徴収共助要請の可否の判断等に役立てるため、徴収システムに国名、財産の概要、外国の住所等を入力するようです。
また、「海外関連事案管理表」による滞納整理の進捗管理、国内財産の適切な滞納処分の実施により、国内での徴収不足見込みを的確に把握するとしています。
Q
海外関連事案の調査手法について教えてください。
A
徴収不足見込事案について、国外財産等の調査(具体的な国外財産の特定及び外国の住所(居所)の把握のための調査)が実施されます。
海外関連事案の調査手法として、①官公庁調査、②金融機関調査、③インターネットによる情報収集、④民間情報機関を活用した情報収集、⑤長期海外出張者への情報収集依頼、⑥租税条約等に基づく情報提供要請などが挙げられています。
例えば、官公庁調査では、東京出入国在留管理局への照会(出入(帰)国記録、外国人登録記録等、在留カード記録の照会)や外務省への調査依頼、住民票の写しの取得が行われるようです。金融機関調査では外国送金依頼書・スイフト指示書の照会、インターネットによる情報収集では、外国の商業登記簿や不動産登記簿、外国企業の財務諸表等の公開情報の入手のほか、滞納者のウェブサイト(ホームページ)、その他の滞納者の情報の閲覧も行われるもようです。
また、長期海外出張者からは各種登記情報、固定資産評価額、公開されている財務諸表等の情報が入手可能とされています。
上記①〜⑤の調査によっても、相手国における滞納者等及び財産の特定に資する情報が入手できない場合に条約相手国等への情報提供要請が検討されます。
なお、情報提供要請は、滞納処分等の手続のために外国の住所、親族関係等を把握する必要がある場合(例えば、催告書送付のために外国の住所を把握したいとき、納税義務承継のために相続人を確認したいとき)等にも検討されます。
Q
長期海外出張者が派遣されている国・地域はわかりますか。
A
国税当局の昨年の資料には、長期海外出張者(調査官)の派遣地域として、北米:アメリカ(サンフランシスコ)、欧州:イギリス(ロンドン)、ドイツ(ボン)、フランス(パリ)、オランダ(アムステルダム)、アジア:韓国(ソウル)、タイ(バンコク)、中国(北京、上海)、インドネシア(ジャカルタ)、香港、フィリピン(マニラ)、シンガポール(シンガポール)、マレーシア(クアラルンプール)、ベトナム(ハノイ)、オセアニア:オーストラリア(シドニー)が記載されています。
なお、近年、カナダ(オタワ)、スイス(ベルン)への派遣が廃止され、オランダ(アムステルダム)、ベトナム(ハノイ)が追加されたもようです。
Q
徴収共助要請の可否の検討はどのように行われますか。
A
「徴収共助要請検討表」(次頁参照)を使用し、徴収共助要請の可否の判断が行われます。具体的には、「徴収共助の国別要件一覧」に基づき共助要請が可能な国か、税目は共助対象か、課税期間は共助対象か、国内徴収は尽くしているかなどが確認されます。
なお、「徴収共助の国別要件一覧」には、国別の対象税目、課税期間のほか、最低額(一部の国が設定)も記載されているようです。
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