税務ニュース2022年09月30日 贈与契約に顕名なしも、代理行為は有効(2022年10月3日号・№948) 審判所、贈与手続は請求人に包括委任と判断し原処分を全部取消し
本件は、原処分庁が請求人らの一部を契約者とする各生命保険契約に関する権利は被相続人から遺贈により取得したものとみなされるとして、請求人らに対し相続税に係る各更正処分等を行ったが、請求人らは、生命保険料に係る各保険料は被相続人から遺贈された現金により支払っていたものであるとしてその全部の取消しを求めた事案である。請求人らは、被相続人は請求人らに対し、自身のすべての財産について贈与手続の代理権を授与していたことを理由に、請求人が被相続人の代理として行った各贈与契約は有効に成立しているため、被相続人が各保険料を負担していたとは認められないと主張。一方、原処分庁は、各贈与契約書には顕名がないことから、被相続人が各保険料を負担していたとした。
審判所は、有効な代理行為と認められるためには代理人に代理権があり、かつその行為が代理権の範囲内でなされなければならず、また、代理人が本人のためにすることを示すこと(顕名)が必要とされているとした。この点、代理人の氏名を示さずに直接本人の名で契約を締結するという代理行為であっても、相手方としては、契約の相手について正しく情報を得ている場合には基本的に顕名主義に抵触せず、代理行為は有効とされている。
本件については、各贈与契約書には被相続人の氏名等の記載はあるものの、請求人が被相続人の代理人である旨の記載はない。しかし、平成5年以降、被相続人所有の土地及び株式が、贈与税の負担も考慮しながら請求人ら及びその家族らに対し贈与されていることなどからすると、審判所は、顕名の観点からは各贈与契約における請求人の代理行為は無効なものとは認められないとした。また、被相続人から請求人に対して代理権を授与したとする客観的な証拠はないが、これまで被相続人が贈与の取消しや異議を申し立てたといった事実はないと指摘。審判所は、被相続人は自身に帰属する全財産を相続人らに対し贈与するという自らの意思に基づいて、請求人らに対し贈与に必要な手続を包括的に委任したものと考えるのが自然かつ合理的であるとし、原処分の全部を取り消した。
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