税務ニュース2022年10月07日 税理士法人への不法行為を認めず(2022年10月10日号・№949) 東京地裁、税理士の行為は税理士法人との業務関連性はなし

  • 脱税を助長したなどとする税理士が所属する税理士法人(被告)に対して、クライアントの法人(原告)が損害賠償を請求した事件。
  • 東京地裁(菊地拓也裁判官)は令和4年3月8日、原告代表者が指摘する税理士の行為は業務と関連性はなく、被告が税理士に対して処分しなかったことが原告代表者に対する不法行為にはならないと判断。

 本件は、税理士法人である被告と税務に関する業務委託契約をしていた原告法人が、被告に所属する税理士が原告法人の代表取締役に対して脱税を助長するような発言をするなど、忠実義務等に違反する行為を行い、被告は税理士を監督する義務に違反したことから債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事件である。
 原告法人の代表者は、原告法人の設立に関する税務業務等の相談をした際に、被告に所属する税理士に「父親から生前贈与と思われる金銭を一回に月数十万単位で複数回受け取った」と話し、税務申告が必要かどうかを尋ねたところ、「口座に入れなければ大丈夫」と回答した税理士の行為は、忠実義務に違反するなどと主張した。
 裁判所は、原告法人の主張するような回答を行ったことを裏付ける的確な証拠はないとしたほか、原告代表者による税理士への相談は業務委託契約の締結前になされたものであった上、相談の内容が原告代表者個人の生前贈与に関するものであったことからすれば、原告が主張する税理士の行為が原告法人に対する債務不履行を構成するものとはいえないと指摘。また、原告代表者は、被告に対して個人の税務相談も行っていたほか、平成30年分について個人事業主としての確定申告も被告に委託していたのであるから、被告は原告代表者に対しても税理士の行為に関して債務不履行責任を負うとしたが、原告代表者と被告との間の契約関係としては平成30年分の原告代表者の確定申告業務の委託に関する契約が存在するのみであり、原告代表者が指摘する税理士の行為は、仮にそのような行為の存在が認められたとしても、その内容や行為がなされた時期等に照らし、いずれも確定申告業務とは無関係になされたものであり、それらの行為が被告による原告代表者に対し債務不履行を構成するものとはいえないとした。
 したがって裁判所は、被告の税理士法人において原告代表者から苦情を受けた後に税理士に対する処分等の措置を取らなかったことが原告代表者に対する債務不履行や不法行為を構成するとはいえないとし、原告の請求を棄却した。

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