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解説記事2022年10月31日 SCOPE 特定・一般口座まとめた取得費計算、控訴審でも認められず(2022年10月31日号・№952)

一般口座のみ譲渡の場合でも区分計算必要
特定・一般口座まとめた取得費計算、控訴審でも認められず


 特定口座と特定口座以外の口座(以下、「一般口座」)の双方において同一銘柄の株式を保有していた個人が、「一般口座で保有していた株式を譲渡した際の取得費の計算は、特定口座・一般口座を含めた保有株式で算出すべき」と主張していた事案で、東京高裁は令和4年9月1日、納税者の控訴を棄却した。
 納税者の主張のポイントは、区分計算を定めた措置法37条の11の3第1項の規定の文言が「当該特定口座内保管上場株式等の譲渡をした場合には」となっていることから、文理によれば、区分計算は、特定口座内保管上場株式等の譲渡をした場合にのみ適用があり、一般口座内の上場株式等を譲渡した場合には適用されないという点にある。
 これに対し東京高裁は、一審同様、「少なくとも文理上はそのように解することが可能であるようにも思われる」としながらも、制度の趣旨等から、特定口座内保管上場株式等の取得価額を含めずに計算すべきとして、納税者の主張を斥けた。

納税者は文理解釈主張するも、制度創設趣旨等から別銘柄として扱うべき

 周知のとおり、特定口座制度とは、特定口座内における上場株式等の譲渡所得等の金額を、特定口座外で譲渡した他の株式等の譲渡所得と区分して計算することができる制度。個人投資家の申告事務の負担(取得価額の管理)の軽減を目的として創設された。特定口座を選択した場合、金融商品取引業者等から送られる特定口座年間取引報告書により簡便に申告を行うことができる。また、源泉徴収口座を選択した場合には、原則として確定申告は不要になる。ただし、他の口座の譲渡損益と相殺する場合や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用を受ける場合には、確定申告をする必要がある(参照)。

 納税者は、同一銘柄の上場株式を、特定口座と一般口座の双方において保有していたが、そのうち一般口座において保有する株式のみを譲渡した。そして、その譲渡に係る譲渡所得の計算上控除する取得費の金額を、一般口座において保有する当該上場株式の取得価額だけでなく、特定口座において保有する当該上場株式の取得価額も含めて総平均法に準ずる方法により計算して確定申告を行ったところ、処分行政庁から、特定口座において保有する当該上場株式の取得価額を含めずに算定すべきである(区分計算)として更正処分等を受けたことから、その取消しを求めて訴訟を提起した。
趣旨や目的等を勘案した解釈許容される
 控訴人(納税者)は、措置法37条の11の3第1項は、「居住者……が……特定口座内保管上場株式等……の譲渡をした場合」には、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算は、これと当該特定口座内保管上場株式等以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して行うことを定め、措置法施行令25条の10の2第1項は「法第37条の11の3第1項に規定する特定口座内保管上場株式等……の譲渡……による……譲渡所得の金額……の計算は」と定めていることからすれば、区分計算を定めたこれらの規定は、一般口座内に保管されている上場株式等が譲渡された場合には適用がないと一審と同様の主張を繰り返した。
 この点について東京高裁は、一審と同様に、「少なくとも文理上は、本件各規定が適用されるのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡の場合のみであると解することが可能であるようにも思われる」としながらも、「しかし、租税法規は、みだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないとしても、租税法規についても、規定の趣旨や目的等を勘案して解釈することが許容されるものというべき」との考えを示した。
 その上で、「措置法及び措置法施行令は、個人投資家である居住者等の申告事務の負担を軽減することを目的として、特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る区分計算を定めたこと(本件各規定)、既に開設された特定口座に新たに受け入れることのできる上場株式等は原則としてその特定口座において行われた取引により取得した上場株式等に限られるものとされ、居住者等が特定口座外で保管している株式を特定口座へ受け入れることができるとする経過措置が廃止されたこと、特定口座内保管上場株式等が一般口座に払い出された場合において一般口座に引き継がれる取得費の計算方法を定め、上記計算方法に従って算出された当該払出しに係る上場株式等の取得費の額を居住者等に通知するものとしていることなど、本件各規定の内容や経過措置の廃止の経緯等に照らせば、措置法及び措置法施行令は、特定口座内保管上場株式等と一般口座において保管されている同一銘柄の上場株式等とを、譲渡、払出しの各処理において区分して取り扱うことを前提としている」との解釈を示した。
 そして、一般口座内に保管されている同一銘柄の上場株式等を譲渡した場合についても、特定口座内保管上場株式等とは銘柄が異なるものとして、その取得価額を含めずに取得費の計算をすべきと結論づけている。

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