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解説記事2022年11月14日 SCOPE 被相続人と配偶者財産が混在、収入比率按分法に一定の合理性(2022年11月14日号・№954)

名義預金を巡る全部取消し裁決
被相続人と配偶者財産が混在、収入比率按分法に一定の合理性


 相続後、被相続人あるいは配偶者のどちらの財産に帰属することになるのか、名義預金の判定を巡っては、税務当局と間で争いが生じることも少なくない。この論点について、国税不服審判所が、被相続人と配偶者との収入比率を用いて按分する方法で、いずれに帰属するものであるかを推認することにも一定の合理性が認められるとの判断を示していたことが明らかとなった。
 ただし、本件については、被相続人及び配偶者の収入の額を確認することができず、按分計算することはできないとしたが、被相続人及び配偶者の金融資産への貢献度を考慮した按分方法や、これに基づき算出された申告計上現預金は必ずしも客観的合理性が担保されるものではないとしつつ、不合理なものとまではいえないとして、原処分の全部を取り消している(令和4年2月15日裁決、裁決事例集No.126)。注目すべき裁決の1つといえそうだ。

出金した現金が不明、過去の収入等を考慮して申告

 本件は、原処分庁が相続税の申告において課税価格に算入されていた被相続人及びその家族名義の各預貯金の口座から出金された現金並びに課税価格に算入されていなかった家族名義の預貯金は相続財産であるとして更正処分等を行ったことに対し、請求人らが現金及び預貯金は被相続人の配偶者の財産であるとしてその全部の取消しを求めた事案である。
 被相続人の長男である税理士(請求人)は、出金により引き出された多額の現金の行方が不明であったことから、被相続人及び配偶者の過去の収入等を考慮し、両者の資産形成への貢献度を検討した上、口座名義にかかわらず、被相続人名義の預貯金の残高47,529,896円に名義預貯金141,540,195円及び申告計上現金6,000,000円を加算した金額(195,070,091円)で申告を行っていた。

名義財産の判定、経緯等を総合的に判断

 審判所は、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、①当該財産又はその原資の出えん者、②当該財産の管理及び運用の状況、③当該財産から生ずる利益の帰属者、④被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、⑤当該財産の名義人がその名義を有することとなった経緯等を総合勘案して判断するのが相当であるとの見解を示した。
 その上で審判所は、申告計上預貯金口座から出金された現金は、被相続人及び配偶者が得た各収入が混在したものであることが否定できないとした上で、このような場合には、現金を被相続人と配偶者との収入比率を用いて按分する方法で、いずれに帰属するものであるかを推認することにも一定の合理性が認められるとした。

具体的な収入額は確認できず

 本件については、被相続人が地方公務員として勤務していた当時の正確な収入の額や、配偶者の具体的な勤務状況や収入の額を確認することはできなかったことから、客観的合理性を有する按分計算の方法により現金の帰属を決定することはできないとしたが、請求人らは、申告計上現預金について、被相続人に係る遺産分割の対象として分割を行い、かつ、申告納税制度の下で相続税の課税対象となる財産として申告を行ったのであり、申告計上現預金を被相続人の相続財産として認識していたことがうかがわれると指摘。必ずしも客観的合理性が担保されるものではないが、当該按分方法やこれにより算出された申告計上現預金を積極的に否定する証拠関係は認められず、不合理なものとまではいえないとし、原処分の全部を取り消した。

審判所、被相続人に帰属すべき金額の推計による算定は相当と判断
 審判所は、今回、現金を被相続人と配偶者との収入比率を用いて按分する方法で、いずれに帰属するものであるかを推認することにも一定の合理性が認められるとの見解を示しているが、過去にも無記名定期預金について、原処分庁が被相続人に帰属すべき金額を推計により算定したことは相当であるとの判断を示した裁決事例がある(昭和62年7月6日裁決)。
 本件は、原処分庁が相続人の1人であるAが管理・運用を行っていた無記名定期預金のうちの一部は被相続人の遺産であるとして更正処分を行ったもの。請求人らは、無記名定期預金は被相続人及び相続人らが所有する不動産の賃貸料等の一部をAが管理運用等の目的で預け入れたものであるが、被相続人は長い間市会議員であった関係から交際費等の支出が多く、かつ、賃貸料等の収入のない固定資産税の負担も多額であったことから、被相続人に帰属すべき不動産の賃貸料収入等はこれらの支出のために費消したので、本件無記名定期預金のうちに被相続人に帰属すべき金額は含まれていないなどと主張した。
 審判所は、無記名定期預金は被相続人の一族に帰属することは明らかであるが、Aは、無記名定期預金の被相続の一族のそれぞれへの帰属金額を明らかにせず、その帰属すべき金額の記録等も行っていなかったのであるから、原処分庁が被相続人に帰属すべき金額を推計により算定したのは相当であると判断。推計の基礎とする収入金額は、昭和48年から昭和57年までの10年間における各人の確定申告書に記載された各種所得金額のうち、被相続人一族の不動産の賃貸料収入等の金額及び譲渡収入金額の合計額によるべきであるとしている(なお、収入金額からは、昭和48年から昭和57年までの10年間における各人の所得税、住民税及び固定資産税のうちAが被相続人一族の不動産の賃貸料収入等から支出したと認められる金額及び譲渡収入金額から支出した買換資産等の取得価額等を控除)。

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