解説記事2022年12月05日 未公開判決事例紹介 倒産手続前における債権額での按分弁済の義務なし(2022年12月5日号・№957)
未公開判決事例紹介
倒産手続前における債権額での按分弁済の義務なし
東京地裁、債務の弁済は取締役の裁量的判断事項
本誌953号16頁で紹介した損害賠償請求事件の判決について、一部仮名処理した上で紹介する。
○元従業員の原告が、会社の代表取締役(被告)が全債権者に対して債権額に応じた按分弁済をすべき義務があったなどとして、取締役らに対して損害賠償請求等を行った事件。東京地方裁判所(片山健裁判官)は令和4年4月15日、倒産手続の開始前において、債務者に対して、債権者への債権額に応じた按分弁済を義務付けるものではないとし、原告の請求を棄却した(令和2年(ワ)第20488号)。
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは、原告に対し、連帯して、2606万5590円並びにうち2310万円に対する被告Aについては令和2年11月20日から、被告Bについては令和3年1月10日から、被告Cについては令和2年12月6日から、被告Dについては同月3日から及び被告Eについては同年11月13日から各支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、原告が、株式会社Tホールディングス(なお、平成28年4月1日付けで「Tメディカルサイエンス」に商号を変更した。以下、商号変更の前後を問わず「T社」という。)に対して2100万円の貸付金等の債権を有していたところ、①T社の代表取締役であった被告Aにおいて、全債権者に対して債権額に応じた按分弁済をすべき義務や、T社をして詐害行為をさせない義務があったにもかかわらず、これを怠り、原告に対する弁済をせず他の債権者に対する弁済等を行い、②T社の取締役であったその余の被告において、被告Aの業務執行の監視義務を怠り、上記弁済等を放任したとし、これら被告らの行為が著しく不合理な業務執行であり、役員の任務懈怠に該当すると主張して、被告らに対し、会社法429条1項に基づき、連帯して、2606万5590円(貸付金等の元本2100万円、弁護士費用210万円の計2310万円の損害金及び上記元本に対する令和2年8月14日までの確定遅延損害金296万5590円の合計額)並びにうち損害金2310万円に対する各被告らへの訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実
(1)当事者等
ア T社は、医療用機器の製造販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
T社は、東京証券取引所のJASDAQ市場に上場していたが、平成29年3月に上場廃止になった。(以上につき、甲10、11、弁論の全趣旨)
イ 原告は、平成8年頃まで××證券株式会社に勤務し、その後、資産運用会社を設立して、証券取引に関する業務を行っていた。また、原告は、平成26年12月から平成27年5月までの間、T社の従業員としてIR業務を担当し、退社後もT社の資金調達について助言等を行っていた。(甲4〔速記録1〜2頁〕、乙1の2、弁論の全趣旨)。
ウ 被告Aは、遅くとも平成26年2月から現在まで、T社の代表取締役を務めている。
被告Bは遅くとも平成26年2月から現在まで、被告C、被告D及び被告Eは平成28年2月26日から現在まで、いずれもT社の取締役を務めている。(以上につき、甲3の1、11、弁論の全趣旨)
(2)原告のT社に対する貸付金等
ア 原告は、平成28年2月26日頃、T社に対し、返済日を同年3月10日として2000万円を貸し付けた。(甲1、2)
イ 原告及びT社は、平成28年12月9日、上記貸付金2000万円について、手数料100万円を加算して返済するとの合意をした。(甲2)
ウ 原告は、平成29年1月24日、T社に対し、上記イの貸付金2000万円及び手数料100万円の合計2100万円並びにこれに対する訴状送達日の翌日(同年2月21日)から支払済みまで年6%の割合による遅延損害金の支払を求める訴えを東京地方裁判所に提起した。
東京地方裁判所は、同年10月26日、原告の上記請求を全部認容する判決(以下、この判決で認容された原告のT社に対する貸付金等に係る債務を「本件債務」という。)をし、その後、同判決は確定した。(以上につき、甲1、弁論の全趣旨)
2 争点
(1)T社が本件債務に対する弁済をせずに、他の債権者に対する弁済等を行ったことについて、被告らに任務懈怠責任があるか(争点(1))。
(2)損害の内容及び損害額がいくらか(争点(2))。
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)について
(原告の主張)
ア 債務超過に陥った会社は、債権者平等原則に従って、全債権者に対して債権額に応じた按分弁済をすべき義務、又は詐害行為をさせない義務(特に、特定の債権者の利益を犠牲にして、会社関係者の利益を図ってはならない義務)を負っており、会社の代表取締役がこの各義務に違反して特定の債権者への弁済を行わなかった場合には、著しく不合理な業務執行として、任務懈怠責任を負うというべきである。
イ T社は、本件債務の弁済期が到来した平成28年3月時点で、著しい債務超過が継続してその解消の見込みもなく、既に支払不能の状態に陥っており、被告Aは、T社の代表取締役として、T社の債務の弁済に当たり、上記アのとおり全債権者に対して債権額に応じた按分弁済を行う義務及び詐害行為をさせない義務があった。
T社は、平成28年3月から平成29年1月までの間に合計10億円余りの資金調達を実施しており、本件債務への弁済が十分可能であった。しかるに、被告Aは、本件債務の弁済をせず、①訴訟上の和解に基づく和解金として、平成30年7月頃にK(以下「K」という。)に対して2160万円、平成29年1月頃にM不動産株式会社(以下「M不動産」という。)に対して3633万2336円の計5793万2336円、②平成27年12月から平成30年11月までの3年間の被告らへの役員報酬として計3171万円、③平成28年12月から平成29年11月までの間に被告Dに対して借入金債務500万円のうち165万円、④平成27年12月から平成28年11月までの間に被告Aに対して債権譲渡代金1億9900万円、⑤平成28年12月から平成29年11月までの間に被告Dに対して損失填補として2000万円をそれぞれ支払っており、また、⑥T社が平成28年6月に実施したデッド・エクイティ・スワップ(以下「DES」と略称する。)としての新株発行において、原告を割当先とせず、その後の株式の値上がり益をもって本件債務の回収をさせる機会を奪った。
このように、本件債務に対する弁済がされない中で、他の債権者に対する弁済等がされたことは、上記各義務に反する著しく不合理な業務執行であり、悪意又は重大な過失もあると認められ、被告Aは、会社法429条1項に基づく任務懈怠責任を負う。
ウ 被告B、被告C、被告D及び被告Eは、T社の取締役として、代表取締役である被告Aの業務執行を監視すべき義務があったが、これを怠り、上記イの被告Aの義務違反を放任し、他の債権者に対する弁済等をさせており、悪意又は重大な過失もあると認められ、上記被告らは、会社法429条1項に基づく任務懈怠責任を負う。
(被告らの主張)
ア 原告の主張は、否認ないし争う。そもそも、債務超過の会社であっても、債務者が全債権者に対して債権額に応じた按分弁済をすべき法的義務はない。
また、会社の債務の弁済は、会社の存続や利益の観点から優先順位が付けられるのが通常で、いかなる債務の弁済を行うかは取締役の経営判断の範疇であって、会社に対する任務懈怠になることはない。さらに、T社の行った資金調達は、大半が資金使途を限定されており、本件債務の弁済に充てることはできなかった。また、T社は、法的整理を行う段階には至っておらず、各種の事業を継続しており、T社の有する資金は、事業の継続に必要な支出に充てられている。T社の被告らに対する貸金債務や役員報酬債務等も、全部又は一部が未払の状態であって、T社の有する資金をもって本件債務に対する弁済がされず、他の債務の弁済がされたことが詐害行為に該当し、被告Aの業務執行が著しく不合理なものをいうことはできない。さらに、原告の指摘するDESとしての新株発行は、原告が自ら割当てを断っている上、原告に対して新株を割り当てなかったことが不合理な業務執行に当たるともいえない。
したがって、本件債務に対する弁済がされない中で、他の債権者に対する弁済等がされたことについて、被告Aに任務懈怠責任が生じることはない。
イ 被告Aに任務懈怠責任が生じない以上、その余の被告らが取締役としての監視義務を怠ったことによる任務懈怠責任が生じることもない。
(2)争点(2)について
(原告の主張)
ア 原告は、被告らの役員としての任務懈怠により、本件債務の弁済を受けることができなくなり、2396万5590円(貸付金元本2000万円、手数料100万円及び令和2年8月14日までの確定遅延損害金296万5590円の合計額)相当の損害を被った。
イ 原告は、被告らに対する訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人弁護士らに委任しており、その弁護士費用相当額の損害は、210万円である。
ウ 合計 2606万5590円
(被告らの主張)
原告の主張は、否認ないし争う。なお、原告の主張を前提とするならば、原告に生じ得る損害額は、本件債務の全額ではなく、T社の全債権者の債権額に応じた按分額にとどまるはずである。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前記前提事実のほか、当該認定箇所に掲げる証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
(1)T社の事業の推移等
ア T社は、医療関連事業を中核ビジネスとして展開していた株式会社であるが、平成24年11月期末に債務超過に陥ったことから、平成25年9月にDESを実施して一部の債務を株式化し、また、別途約2億2700万円の資金調達をした。これにより、T社は、債務超過を解消するとともに、この資金を、子会社である株式会社F(以下「F社」という。)を通じた医療機器の製造販売、先端医療機器の輸入販売、投資顧問業務等の資金に充てて事業を展開し、更にはクリニックの業務委託契約の受注等の業務を進めていった。(甲3の4、10)
イ T社は、平成27年3月に被告A、被告D及び株主であるUから計3億円を上限とする借入れをし、同年11月に子会社に対する貸付金のうち約1億円を回収し、平成28年4月に海外ファンドから2000万円の借入れをした。(甲3の1〜4、4、10、弁論の全趣旨)
ウ T社は、平成27年11月期末の決算において、提携先に対する貸付金につき貸倒損失金を計上する必要が生じたこと等から、再び債務超過に陥った。(甲3の4、乙27)
エ T社は、平成28年春頃から、新たに弁当販売事業の展開を検討し、同年7月以降、弁当販売業者である有限会社Y(以下「Y社」という。)等との間で弁当の販売・製造等の委託契約を締結した。また、T社は、平成28年中に、F社の医療機器の販売促進のためコンサルタント契約を締結したり、再生医療の実用化に向けて医師との間で顧問契約等を締結したりした。(甲3の4、乙16ないし22の各枝番)
オ T社は、平成28年6月に、再びDESを実施して、上記イの被告A、被告D、U及び海外ファンドからの借入金債務を株式化したほか、新株予約権の第三者割当により発行時に627万8151円、行使時に1億9999万6500円、転換社債型新株予約権付社債の第三者割当による1億9999万6500円の合計4億0627万1151円から発行諸経費を除いた約3億7800万円を調達することとした。
もっとも、T社が平成28年9月までに上記第三者割当により実際に調達できた資金は、新株予約権発行時の627万8151円、同行使時の1億0959万5000円及び転換社債型新株予約権付社債発行時の1億9999万6500円の合計3億1586万9651円から発行諸経費を控除した2億8701万1534円にとどまった。
T社は、この調達資金2億8701万1534円について、平成29年1月頃までに、先端医療機器の仕入れに約3510万円、ヘルスケア商品の仕入れに約2445万円、自動培養装置の購入に約1117万円、Y社に対する出資に約2198万円、その他子会社や弁当事業に対する支出、事務所家賃、弁護士等の専門家報酬、公租公課等の各種支払に約1億9457万円を充てた。(甲3の4、3の6〜9、乙31ないし62、弁論の全趣旨)
カ T社は、平成28年12月以降の決算監査における監査法人との協議を経て決算を行った結果、債務超過を解消できず、平成24年から平成28年までの各11月期の5期連続で営業利益及び営業活動によるキャッシュフローがマイナスになり、かつ、同年11月期末に債務超過に陥ったことから上場廃止基準に抵触し、平成29年3月に上場廃止になった。
その後も、T社は、金融アドバイザリー事業、医療関連事業及び食品関連事業を進めて、それぞれ売上げを計上したが、販売費及び一般管理費を控除すると営業損失となる状態が続き、平成31年11月期の決算は作成できていない。(甲10、乙24ないし26、弁論の全趣旨)
(2)T社の財務状況
T社の平成27年ないし平成30年の各11月末の決算期における財務状況は、別表のとおりである。(乙27ないし29)
2 争点(1)について
(1)按分弁済義務に関する原告の主張について
ア 原告は、T社について、債務超過が継続して支払不能の状態に陥っていたのであるから、T社の代表取締役であった被告Aにおいて、債権者平等原則に従って、全債権者に対して債権額に応じた按分弁済をすべき義務があったが、この義務に違反したと主張する。
イ しかしながら、債権者平等原則は、各種の倒産手続において、公平の理念に基づき、同一の性質を有する債権者間では、限られた債務者の財産から債権額に応じて平等に弁済を受けるべきであるとするもので、倒産手続での分配の場面における原則であって、倒産手続の開始前の段階において、債務者に対して、債権者への債権額に応じた按分弁済を義務付けるものではない。
確かに、前記1認定事実によれば、T社は、少なくとも平成27年11月期から平成30年11月期までの各決算期において債務超過の状態であったとは認められるが、事業は継続しており、破産手続等の倒産手続が開始されたわけではないから(弁論の全趣旨)、債務者であるT社において、債権者である原告に対して債権額に応じた按分弁済をすべき義務が生じていたとは認められず、他に原告の主張するような按分弁済をすべき義務が生じるとする法的根拠も見当たらない。
ウ したがって、按分弁済をすべき義務に違反したことを理由として被告Aの任務懈怠責任をいう原告の主張は、理由がない。
(2)詐害行為に関する原告の主張について
ア 原告は、T社の代表取締役であった被告Aにおいて、T社の債権者に対する詐害行為をしない義務を負っていたが、この義務に違反した弁済等を行ったと主張する。
イ まず、原告の主張する原告以外の者に対する弁済等の存否について検討する。
(ア)証拠(甲5の3、6の5)及び弁論の全趣旨によれば、T社は、Kから投資の際の虚偽説明を理由とする損害賠償請求訴訟を提起され、平成29年10月に1946万2500円及びこれに対する平成17年6月13日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命ずる第一審判決がされたこと、控訴審において訴訟上の和解をして、同人に対して和解金として2160万円を支払ったこと、これに伴い第一審判決後に計上した損失補償引当金3160万1000円を2160万円に減額したことが認められる。
また、証拠(甲3の16)及び弁論の全趣旨によれば、T社は、M不動産から貸室の未払賃料の支払等を求める訴訟を提起され、賃料等として1億7500万円を未払金として計上し、原状回復費用として3800万円を見込んでいたこと、平成29年1月に訴訟上の和解をして、同社に対して未払金1億1176万7552円を支払い、原状回復義務の免除を受けたことが認められる。
(イ)原告は、T社において、平成27年12月から平成30年11月までの間に被告らへの役員報酬として計3171万円の支払がされたと主張する。
しかし、証拠(乙2ないし4)によれば、上記期間における役員報酬は未払金として計上されていることが認められ、他に上記支払がされたことを認めるに足りる証拠はない。
(ウ)T社が被告Dに対し、平成28年12月1日から平成29年11月30日までの間に借入金債務500万円のうち165万円を返済したことは、当事者間に争いがない。
(エ)証拠(乙10ないし12)及び弁論の全趣旨によれば、T社は、香港企業である××××××× International Ltd.(以下「W社」という。)及び日本企業であるG株式会社(以下「G社」という。)との間で、炭素系新素材の開発プロジェクトを進めていたこと、W社の日本法人の拠出した資金を原資として、被告AからG社に対して1億9800万円の貸付けを行ったこと、この貸付金債権について、被告AからT社に対して代金1億9900万円で債権譲渡がされ、T社が被告Aに対して同額を振り込んで送金したこと、被告Aは、T社から振込みを受けた1億9900万円をH社に対して貸し付けたことが認められる。
(オ)原告は、T社が被告Dに対する損失填補として2000万円を支払ったと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
(カ)以上によれば、本件において検討すべきT社からの支払は、①Kに対する2160万円及びM不動産に対する1億1176万7552円の各和解金の支払、②被告Dに対する165万円の借入金債務の支払、③被告Aに対する債権譲渡代金1億9900万円の支払である。
ウ ところで、会社の取締役において、いつ、いかなる会社債務について、いくらの弁済を行うかは、その債務の内容・性質や、会社の経営・財務状態に与える影響等を踏まえた裁量的判断に属する事項というべきであり、債務の内容や弁済時期等に照らして不必要又は著しく不合理な弁済がされ、これにより他の債権者に対する弁済が不可能になったというような場合でない限り、他の債権者との関係において、会社の取締役の任務懈怠が認められることはないというべきである。
前記イ(ア)によれば、K及びM不動産との間の訴訟上の和解は、いずれも和解によってK及びM不動産のT社に対する請求額を減ずる内容を含んでおり、また、和解金の支払により引当金の計上が不要になったものと認められ、T社にとっては、訴訟上の和解をせず、和解金の支払をしなかった場合と比較して、明らかに有利な内容であって、これらの和解金の支払が、T社にとって不必要又は著しく不合理な弁済であるとは認められない。
前記イ(ウ)によれば、被告Dに対する借入金債務165万円の支払は、平成28年12月1日から平成29年11月30日までの間にされたものであるところ、この支払は、当時のT社の事業規模に照らして多額ではないし、T社は、当時事業を継続しており、被告Dに対する支払によって、原告に対する本件債務の支払が不可能になったとも認められない。
前記イ(エ)によれば、被告Aに対する債権譲渡代金の支払は、T社が進めていた炭素系新素材の開発プロジェクトの一環としてされたこと、被告Aに支払われた債権譲渡代金は、更に被告AからT社の子会社であるH社に対して貸し付けられたことを指摘でき、このような一連のスキームに照らすと、上記債権譲渡代金の支払は、T社にとって不必要又は著しく不合理な弁済であるとは認められない。
エ さらに、原告は、T社が平成28年6月に実施したDESとしての新株発行において原告を割当先としなかったことを、被告Aの任務懈怠として主張する。
しかしながら、DESとしての新株発行において、特定の者を割当先としなければならない法的義務はなく、原告の主張は、その前提を欠くというべきである。
オ したがって、詐害行為を理由として被告Aの任務懈怠責任をいう原告の主張は、理由がない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件において、被告Aが会社法429条1項に基づく任務懈怠責任を負うとは認められない。また、その余の被告についても、被告Aが任務懈怠責任を負うとは認められない以上、被告Aに対する監視義務違反を理由とする任務懈怠責任を負うこともないというべきである。
第4 結論
よって、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
裁判官 片山 健
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.