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解説記事2023年03月06日 SCOPE 取得した不動産の名義を巡り税理士に損害賠償請求も棄却(2023年3月6日号・№969)

節税か否かは年齢や保有目的等を総合的に検討
取得した不動産の名義を巡り税理士に損害賠償請求も棄却


 不動産を被相続人の個人名義で購入しなかったことで、過大な相続税の納税義務を負ったとして被告税理士に対して約1,861万円の損害賠償請求を行った事件で、東京地方裁判所(藤澤裕介裁判長)は令和4年4月19日、節税としてより有効かは年齢や保有目的などを総合的に検討する必要がある上、実際の相続税額は相続の発生時期により異なることから、被相続人の年齢を考慮して被相続人の個人名義で物件を購入するよう積極的に勧めなかったことをもって税理士としての注意義務に反するということはできないとし、原告の請求を棄却した(令和2年(ワ)第10197号)。

原告、被相続人名義での不動産購入の方が相続税対策になることは明らか

 本件は、被相続人の相続人である原告が、被相続人の生前に、被告の税理士法人の税理士(被告)に対し、相続税対策として不動産を購入する際の購入名義について税務上の助言を求めたところ、被告税理士から誤った教示をされ、これに従ったために被相続人の死後、不測の過大な相続税の納税義務を負ったとして、被告らに対して約1,861万円の損害賠償請求を行った事案である。
 原告は、被告税理士法人との間で、税務顧問契約を締結しているため、同法人は、契約に基づき、原告から税務の質問があれば税務の専門家として回答すべき義務があるとした上で、当時において被相続人が88歳という高齢であったことを考慮すれば、不動産購入時点で、被相続人名義で買うことが(被相続人が代表取締役を務める)会社で買うよりも有効な相続税対策になることは税務の専門家である税理士には明らかであったなどと主張した。事案の経緯はの通りとなっている。

個人的な税務顧問契約はなく一般的な税務相談にとどまる

 裁判所は、会社と被告税理士法人との間に、前税理士と同様の条件で、被告税理士法人が平成27年1月期の決算及び法人税の確定申告業務を行うという内容の委任契約が成立したことは明らかであるとしたが、被相続人が被告税理士法人に対し、個人の所得税確定申告を委任した事実はないと指摘。また、原告は、仮に税務顧問契約が認められなかったとしても、原告が被告税理士に質問をし、これに回答した時点で、原告と被告税理士法人との間に相続税対策を内容とする質問に関する税務相談契約が成立したと主張したが、裁判所は、被相続人及び原告と被告税理士法人との間には個人資産に関する税務顧問契約が存在しないことに加え、①原告は、被告税理士に対し、会社が所有する不動産Bに替わる収益物件を購入する場合、法人名義で購入すべきか、被相続人名義で購入すべきかという相談を持ち掛け、被告税理士から収益物件を個人名義で購入した場合のメリットとデメリットの説明を受けていたこと、②その上で、原告が、不動産Bを売却すると会社の保有物件がなくなるから、新規物件を法人名義で購入する方針で考えていると知らせたことなどの事実が認められることからすると、原告が被告税理士に対し、収益物件の購入を法人名義とするか、個人名義とするか相談したことは一般的な税務相談にとどまるもので、相続税対策を内容とする質問に関する税務相談であると認めることはできないとの判断を示した。
相手方に有利な税務知識の教示までは求めず
 原告は、被相続人の年齢などを考慮すれば、被相続人の個人名義で不動産を購入する方が有効な相続税対策となることが明らかであったにもかかわらず、法人名義で購入してよい旨の誤った回答をしたことが、税理士としての高度な注意義務に違反し、原告に対する不法行為を構成すると主張したが、裁判所は、税理士は積極的に誤った課税知識を教示するなどして、これを信頼した相手方に不測の税務上の損害を生じさせない注意義務を職務上負う余地があるとしても、相手方に有利なあらゆる方法を想定した税務知識を教示しなければならない義務まで負うものではないとの判断を示した。
 その上で、収益物件の取得に際しては、法人名義で購入する場合と、個人名義で購入する場合とで、いずれが節税としてより有効かは、年齢、保有目的(転売、超長期など)、小規模宅地の評価減の適用の有無、家賃収入の多寡、税率、貸付債権等の問題といった要素を総合的に検討する必要がある上、実際の相続税額は、相続の発生時期によって異なることから、傾向的な把握が可能であるにとどまり、一義的に定まるものではないと指摘。裁判所は、被告税理士が法人名義で物件を購入することを肯定し、被相続人の年齢を考慮して被相続人の個人名義で物件を購入するよう積極的に勧めなかったことをもって税理士としての注意義務に反するということはできないとし、原告の請求を棄却した。

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