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解説記事2023年03月13日 税務マエストロ 「2割特例」の研究(2023年3月13日号・№970)

税務マエストロ
「2割特例」の研究
#284
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 令和5年2月3日、「所得税法等の一部を改正する法律の一部改正」が国会に上程されたことにより、いわゆる「2割特例」に関する本法の全容が把握できることとなった。本稿では、いささか大袈裟ではあるが「2割特例の研究」と題してその内容を分析する。
 平成28年改正法附則第51条の2(適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)のなかでも、相続があった場合の取扱いは非常に難解な条文構成となっている。本稿に掲載した記事の内容は、令和5年3月31日に官報で公布される政省令並びにその後国税庁から公表される基本通達によりその解釈が変わる可能性もあることをあらかじめご承知おき戴きたい。
 なお、相続があった場合のインボイス制度に関する取扱いについては、本誌No.959(2022(令和4)年12月19日号)の18頁~28頁を参照されたい。

Ⅰ 平成28年改正法附則第51条の2第1項

1 条文構成

2 簡易(本則)課税との有利選択ができる(下線①の箇所)

 第1項には、「……課税標準額に対する消費税額から控除することができる消費税法第30条第2項に規定する課税仕入れ等の税額の合計額は、新消費税法第30条から第37条までの規定にかかわらず……」と書かれている。よって、「2割特例」は、消費税法第38条(売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除)及び第39条(貸倒れに係る消費税額の控除等)の適用がないことを前提に命名したものと推察することができる。もっとも、売上規模が1,000万円以下の事業者で売上返還や貸倒れが発生することはほとんどないであろうから、「2割の納税でOK」という意味において、「2割特例」という名称は適切であると思われる。
 また、「……第37条までの規定にかかわらず、……できる。」と書かれているので、たとえ簡易課税制度選択届出書が提出されている場合であっても、簡易課税と「2割特例」とを比較していずれか有利な方法を採用することができる。簡易課税制度選択届出書が提出されていない場合には、本則課税と「2割特例」との有利選択もできることになる。

3 適用対象事業者(下線②の箇所)

 「2割特例」の適用を受けることができるのは適格請求書発行事業者(登録事業者)に限定されている。また、登録事業者には、相続により被相続人の事業を承継した相続人(みなし登録事業者)も含まれる。
(注)被相続人が登録事業者の場合には、事業を承継した相続人は、登録の意思に関係なく、少なくとも4か月間は登録事業者として申告義務を承継することになる(消法57の3③)。

4 適用対象期間(下線③の箇所)

 5年施行日(令和5年10月1日)から5年施行日以後3年を経過する日(令和8年9月30日)までの日の属する課税期間が対象となることから、個人事業者であれば令和5年分~令和8年分まで、3月決算法人であれば、令和6年3月31日決算期~令和9年3月31日決算期までが対象となる。
 また、下記(1)(3)の課税期間に限り、「2割特例」の適用が認められていることから、合併や分割などによる納税義務免除の特例規定、調整対象固定資産(高額特定資産)を取得した場合の3年縛りの適用がある課税期間などについては「2割特例」を適用することができない。
(1)登録しなければ免税事業者となれる課税期間であること
<具体例>

 個人事業者の各年における課税売上高が下表のように推移した場合、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間については「2割特例」を適用することができない。

(2)課税事業者選択届出書を提出しなければ免税事業者となれる課税期間であること
(3)相続があった年において、「相続があった場合の納税義務免除の特例規定」の適用がなければ相続人が免税事業者となれる課税期間であること

5 適用除外となる課税期間(下線④の箇所)

 4で説明したように、「2割特例」が適用されるのは、上記4(1)(3)に列挙した課税期間に限定されているのであるが、この(1)(3)の課税期間であっても、下記(イ)(ニ)の課税期間については「2割特例」を適用することはできないこととされている。
(イ)課税事業者選択届出書の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている事業者の令和5年10月1日の属する課税期間
<具体例1>

 令和3年中に「課税事業者選択届出書」を提出した個人事業者が、令和4年分の申告で消費税の還付を受けるケース

 上記の<具体例1>では、課税事業者選択届出書の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている。よって、インボイス制度が始まる前の期間が含まれていることから、令和5年分の申告で「2割特例」の適用を受けることはできない。
 なお、課税事業者選択届出書の提出により「2割特例」の適用が制限される課税期間は、<具体例1>のように令和5年10月1日にまたがる課税期間に限定されている。よって、<具体例2>の場合には、令和5年中に調整対象固定資産を取得しない限り、令和6年分の申告で「2割特例」を適用することができる。
<具体例2>
 令和4年中に「課税事業者選択届出書」を提出した個人事業者が、令和5年分の申告で商品の仕入れなどについて消費税の還付を受けるケース

(ロ)課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者としての強制適用期間中に調整対象固定資産を取得した場合の3年縛りの課税期間中
 課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者としての強制適用期間中に調整対象固定資産を取得した場合の3年縛りの適用期間中については「2割特例」の適用は認められない。よって、上記<具体例2>において、令和5年中に調整対象固定資産を取得した場合には、令和6年と令和7年は「2割特例」の適用を受けることができないことになる。
(ハ)相続があった年において、登録開始日の前日までに、基準期間中の課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したことにより、相続人が課税事業者となる場合のその課税期間
 相続があった年において、相続があった場合の納税義務免除の特例規定が適用され、相続人が課税事業者に取り込まれるような場合には、相続人は原則として「2割特例」の適用はできないことになる。
 一方で、上記4(3)のとおり、相続があった年において、「相続があった場合の納税義務免除の特例規定」の適用がなければ相続人が免税事業者となれる課税期間は「2割特例」の適用対象期間に含まれている。これは、登録事業者(相続人)が「相続」という予測不可能な事態に巻き込まれた場合でも、事前登録を条件に、相続があった年についてだけは「2割特例」の適用を認めるという趣旨であるものと思われる。
 よって、相続発生後(相続があった場合の納税義務免除の特例規定が適用された後)の登録については救済しないということなのであろう。
 また、被相続人の基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の場合には、そもそも「相続があった場合の納税義務免除の特例規定」の適用はないのであるから、相続発生日に関係なく、相続人はインボイスの登録を条件に「2割特例」の適用を受けることができることになる。

 登録開始日(5.10.1)の前日までに相続が発生しているので「2割特例」の適用はない。この場合において、被相続人が簡易課税制度の適用を受けている場合には、相続人は、令和5年12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、「(A)+(B)」の期間中の申告について、簡易課税によることができる(消法37①、消令56①二)。

 登録開始日(5.10.1)以後に相続が発生しているので、相続人は(C)の期間中の申告について「2割特例」の適用を受けることができる。
(ニ)課税期間を短縮した場合の3か月(1か月)ごとの課税期間とみなし課税期間
 「2割特例」は、小規模事業者の計算の簡便化のために創設された制度なので、課税期間を短縮している場合については適用を受けることができない。よって、個人事業者が10月1日から課税期間を3か月に短縮し、1月1日~9月30日課税期間は簡易課税で申告し、10月1日~12月31日課税期間は「2割特例」の適用を受けるようなことはできない。

Ⅱ 相続があった場合の「2割特例」の適用関係

 で確認したように、相続があった年において、「相続があった場合の納税義務免除の特例規定」の適用がなければ相続人が免税事業者となれる課税期間は、「2割特例」が適用できる課税期間として規定されている(Ⅰ4(3))。その一方で、相続があった年において、登録開始日の前日までに、基準期間中の課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したことにより、相続人が課税事業者となる場合のその課税期間については、「2割特例」が適用できないこととされている(Ⅰ5(ハ))。

 改正法附則第51条の2第1項の前文では、登録事業者には、相続により被相続人の事業を承継した相続人(みなし登録事業者)も含まれることを明記するとともに、「登録」には、このみなし登録事業者の登録を含むことも明記している。よって、みなし登録期間の初日である「相続があった日の翌日」が「登録開始日」になるものと思われる。
 結果、相続があった場合で2割特例が適用できるのは、インボイスの登録をした相続人の、下記①~③のいずれかに該当する年(課税期間)ということになりそうだ。

① 基準期間中の課税売上高が1,000万円以下である被相続人の事業を承継した場合の相続があった日の属する年
② 登録後に基準期間中の課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継した場合の相続があった日の属する年
③ 相続があった年の翌年と翌々年については、相続人と被相続人の基準期間中の課税売上高の合計額が1,000万円以下となる年

(x1年)
 x1年10月2日(みなし登録期間の初日)が登録開始日となり、改正法附則第51条の2第1項第3号によりx1年は「2割特例」の適用はできない。
 課税期間単位での申告なので、x1年中に登録したとしても登録日で計算方法が区分されることはない。
※消費税法第10条(相続があった場合の納税義務の免除の特例)では、同条の特例が適用される場合、「……第9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)第1項本文の規定は、適用しない。」と定めている。一方で、適格請求書発行事業者は、第9条第1項本文からは括弧書きで除かれて適用除外とされている。登録事業者(適格請求書発行事業者)は売上規模に関係なく課税事業者となることから、法律の重複適用を避けるために第9条第1項から括弧書きで除いているということである。
  相続の特例が適用されるのは、相続があった日の翌日であるx1年10月2日(みなし登録期間の初日)からである。そうすると、みなし登録期間の初日であるx1年10月2日を登録開始日とすると、消費税法第9条第1項から登録事業者が括弧書きにより除かれていることから、消費税法第10条第1項の適用はなく、改正法附則第51条の2第1項第3号には該当しないものと解釈することもできそうである。
  ただ、上記のような解釈をした場合あっても、登録がなかったとしたならば免税事業者となる課税期間ではない(登録がなかったとしたならば消費税法第10条第1項が適用されて課税事業者となる)ので「2割特例」の適用はできないことになる。
(x2年)
 x1年中に登録した場合、消費税法第9条第1項から登録事業者が括弧書きにより除かれていることから、x2年については消費税法第10条第2項(前年に相続があった場合の納税義務の免除の特例)の適用はない。ただし、登録がなかったとしたならば免税事業者となる課税期間ではない(登録がなかったとしたならば消費税法第10条第2項が適用されて課税事業者となる)ので「2割特例」の適用はできないことになる。
 x2年になってから登録した場合にも、登録がなかったとしたならば免税事業者となる課税期間ではない(登録がなかったとしたならば消費税法第10条第2項が適用されて課税事業者となる)ので「2割特例」の適用はできない。

Ⅲ 平成28年改正法附則第51条の2第2項~第7項

1 条文構成

2 前項に規定する特別控除税額とは、当該適格請求書発行事業者の当該課税期間の課税資産の譲渡等(消費税法第7条第1項若しくは第8条第1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から当該課税期間における新消費税法第38条第1項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額をいう。
3 第1項の規定の適用を受けようとする適格請求書発行事業者は、新消費税法第45条第1項の規定による申告書(当該申告書に係る国税通則法第18条第2項に規定する期限後申告書を含む。)にその旨を付記するものとする。
第4項……省略
5 新消費税法第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者が消費税法第9条第4項の規定による届出書の提出により5年施行日の属する課税期間の初日から消費税を納める義務が免除されないこととなる場合において、当該事業者が附則第44条第1項の規定により新消費税法第57条の2第2項の規定による申請書を提出しているときは、当該事業者の当該課税期間に係る消費税法第9条第5項の規定による届出書の提出については、同条第6項の規定は、適用しない。この場合において、当該課税期間中に当該課税期間について同条第4項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した当該届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を当該課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同条第8項の規定を適用する。
6 第1項の規定の適用を受けた適格請求書発行事業者が、消費税法第37条第1項の規定による届出書を当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中にその納税地を所轄する税務署長に提出した場合において、当該届出書に当該届出書を提出した日の属する課税期間について同項の規定の適用を受ける旨を記載したときは、当該届出書を当該課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。
第7項……省略

2 特別控除税額(第2項)

 「2割特例」の適用を受ける場合であっても「返還等対価に係る税額」と「貸倒れに係る税額」は別枠で税額控除の対象とすることができる。

3 適用要件(第3項)

 「2割特例」については届出書の提出義務はないが、適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記することが義務付けられている。
 簡易課税用の申告書を使用する場合には、申告書右下の空欄に2割特例の適用「有」と記載しておけばよいのではないだろうか?

4 課税事業者選択不適用届出書の効力(第5項)

 5(イ)で説明したように、課税事業者選択届出書の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている事業者の令和5年10月1日の属する課税期間については「2割特例」を適用することはできない。
 そこで、課税事業者選択届出書の提出により、令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる事業者は、その令和5年10月1日の属する課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出することにより、提出日の属する課税期間(令和5年10月1日の属する課税期間)から「課税事業者選択届出書」の効力を失効させることが認められている。
<具体例>
 令和4年中に課税事業者選択届出書を提出し、令和5年から課税事業者になる個人事業者が、令和5年中に課税事業者選択不適用届出書を提出して課税事業者選択届出書の効力を失効させるケース


 上記の<具体例>では、課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となったのは令和5年10月1日の属する課税期間(令和5年)であることから、令和5年中に課税事業者選択不適用届出書を提出することにより課税事業者選択届出書の効力を失効させ、「2割特例」の適用を受けることができる。

5 簡易課税制度選択届出書の効力(第6項)

 「2割特例」の適用を受けた登録事業者が、その翌課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その提出日の属する課税期間から簡易課税により申告することが認められている。

※免税事業者は登録日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができる。そこで、登録日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、その課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」の取下書を提出することにより簡易課税の効力を失効させ、本則課税に変更することが認められているようである(インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答 財務省(令和5年1月20日時点)問7)。
  なお、「取下書」には、提出日、届出書の様式名(表題)、提出方法(書面又はe-Tax)、届出者の氏名・名称、納税地、届出書を取り下げる旨の記載をし、署名をして所轄税務署に提出することとされているが、「取下書」の書式は定められていない。

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