税務ニュース2023年04月28日 居住者の親族である非居住者がリスクに(2023年5月1日号・№977) 居住者との交流ない非居住者も親族なら「特殊関係非居住者」に該当
本誌973号でお伝えした通り、東京地裁は3月16日、内国法人(原告)が50%の株式を保有するシンガポール法人が特定外国子会社等に該当するとして同社にCFC税制を適用した原処分を支持する判決を下したが、この種の事案で悩ましいのは、非居住者であっても「居住者の親族」である場合、特殊関係非居住者に該当し、当該非居住者の保有する株式が「50%超」か否かの判定上カウントされてしまうということだ。現地のパートナーとの50:50の海外JVであっても、当該パートナーの「親族」がたまたま日本に居住していれば、当該パートナーが特殊関係非居住者に該当し、「50%超」を満たしてしまう。
「親族」の定義は租税特別措置法にはないため民法を参照することになり、本人から見て①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族の範囲の個人が「親族」に該当する(民法725条)。例えば非居住者が居住者から見て「いとこ(四親等の血族)」、「またいとこ(六親等の血族)」、「配偶者の姪や甥(三親等の姻族)」に該当する場合、たとえ居住者と全く交流がなくても「特殊関係非居住者」となる。このほか、①非居住者が日本で生まれ育ったものの、何年も前に日本から現地に移住し、専ら現地で生活している場合、②本人やその家族は日本と縁もゆかりもないが、縁遠い親族がたまたま日本に居住していた場合、③結婚したところ、配偶者側に日本に居住している個人がいた場合などにも、理論的にはCFC税制が適用される。
CFC税制の適用リスクのある日本企業側は、JVの相手方の現地パートナーに、同人が特殊関係非居住者でないか確認を求める必要があるが、正確な情報の入手は困難だろう。さらに言えば、JV組成後に親族が日本に居住するようになり、同税制が適用されてしまう可能性すらある。また、「日本側49:現地51」のように日本側がマイノリティになる場合でも同様の問題が生じ得る。
居住者の親族であれば特殊関係非居住者に該当するのは現行法の解釈上やむを得ない。本件や同種事例で、法令改正なしで納税者が勝訴できるとすれば、みずほCFC事件・高裁判決(42頁参照)のようなケースしか考えにくく、今後も同様の事案が発生する可能性は否定できないだろう。
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