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解説記事2023年05月01日 新会計基準解説 実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」の概要(2023年5月1日号・№977)

新会計基準解説
実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」の概要
 企業会計基準委員会 専門研究員 花澤徳裕

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2023年3月31日に、実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表(脚注1)した。本稿では、本実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 本実務対応報告公表の経緯

 令和5年度税制改正において、グローバル・ミニマム課税に対応する法人税が創設され、それに係る規定(以下「グローバル・ミニマム課税制度」という。)を含めた税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号))(以下「改正法人税法」という。)が2023年3月28日に成立している(以下、改正法人税法が成立した2023年3月28日を「改正法人税法の成立日」という。)。これにより、グローバル・ミニマム課税制度の施行日以後においてその適用が見込まれる企業は、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)において、グローバル・ミニマム課税制度を前提として税効果会計を適用するか否かを検討する必要があるが、その対応については実務上困難であるとの意見が聞かれたことから、ASBJにおいて、必要と考えられる取扱いについて検討を行い、本実務対応報告の公表に至ったものである。

Ⅲ 本実務対応報告の概要

1.本実務対応報告の範囲
 本実務対応報告は、その対象とする範囲を、決算日においてグローバル・ミニマム課税制度の施行日以後その適用が見込まれる企業とすることも考えられた。しかしながら、審議の過程において、グローバル・ミニマム課税制度の施行日以後その適用が見込まれるか否かの判断について、企業が適時にかつ適切に行えるか懸念があるとの意見が聞かれたことを踏まえ、範囲を一律に、企業会計審議会が1998年10月に公表した「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という。)が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表に適用することとし、以下の特例的な取扱いを定めている。
2.会計処理
 本実務対応報告は、当面の間、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)における税効果会計の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする特例的な取扱いを定めている。以下では、我が国の会計基準における定めを踏まえ、当該特例的な取扱いを定めた理由とその内容について記載する。
(1)我が国の会計基準における定め
 税効果適用指針第44項では、「繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法(以下、法人税等の納付税額の計算方法が規定されている我が国の法律を総称して『税法』という。)に規定されている方法に基づき第8項に定める将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算する。なお、決算日において国会で成立している税法とは、決算日以前に成立した税法を改正するための法律を反映した後の税法をいう。」としている。そのため、グローバル・ミニマム課税制度の対象となることが見込まれる企業においては、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)において、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計を適用すべきか否かを検討する必要がある。
(2)特例的な取扱いを定めることを提案する理由
 税効果会計基準第一においては、「税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下『法人税等』という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。」とされており、税効果会計は、利益に関連する金額を課税標準とする税金を対象として認識するものとされている。
 ここで、グローバル・ミニマム課税制度に基づいた基準税率(15%)までの上乗せ税額(以下「上乗せ税額」という。)は、多国籍企業グループ等を構成する事業体等について国別に算定された実効税率が基準税率を下回る場合、国別に集計された純所得に対する基準税率に至るまでの税額を、親会社等がその所在地国の税務当局に支払うものである。そのため、上乗せ税額の課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と、納税義務が生じる企業が相違することとなり、このような場合、現行の枠組みにおいて税効果会計を適用すべきか否かが、税効果会計基準及び税効果適用指針等において明らかではないと考えられる。
 また、仮に税効果会計を適用する場合、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の会計処理については、次の点が明らかではないと考えられる。
① グローバル・ミニマム課税制度の適用によって、企業が、既存の税法の下で認識した繰延税金資産及び繰延税金負債を見直す必要があるかどうか
② 上乗せ税額を加味すると、税効果会計に使用する税率がどのような影響を受けるか
③ グローバル・ミニマム課税制度に基づき、追加的な一時差異を認識すべきかどうか
 このように、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の取扱いについては、その考え方が必ずしも明らかではないことに加え、実務上の負担も想定されることから、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)において、グローバル・ミニマム課税制度の適用を前提とした税効果会計を適用することは困難であると考えられることから、本実務対応報告は、特例的な取扱いを定めている。
(3)特例的な取扱いの内容
 本実務対応報告では、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)における税効果会計については、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする特例的な取扱いを定めている。特例的な取扱いを定めるにあたっては、原則的な取扱いの適用が困難であると考えられることを踏まえて当該取扱いを定めるものであり、原則的な取扱いの適用を妨げるものではないこととし、特例的な取扱いを選択適用とすることも考えられた。しかしながら、審議の過程において上記Ⅲ2.(2)に記載のとおり、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、現行の枠組みにおいて適用すべきか否かが明らかではないと考えられること、また、仮に税効果会計を適用する場合、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の会計処理については明らかではないと考えられる点があることを踏まえると、原則的な取扱いの適用を認めることについて懸念があるとの意見が聞かれた。こうした意見を踏まえ、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、税効果適用指針の定めにかかわらず、特例的な取扱いを一律に適用することとしている。
3.開 示
 本実務対応報告は、主として2023年3月期決算に向けた短期的な対応をその目的としていることから、開示については求めないこととしている。
 この点、グローバル・ミニマム課税制度の影響が見込まれる企業において本実務対応報告を適用した旨を注記することも考えられるが、Ⅲ1.に記載のとおり、企業がグローバル・ミニマム課税制度の施行日以後その適用が見込まれるか否かの判断を適時にかつ適切に行うことについて懸念があるとの意見が聞かれたため、本実務対応報告はこれを求めないこととしている。
4.適用時期
 本実務対応報告は、公表日以後適用することとしている。

Ⅳ おわりに

 本実務対応報告は、2023年2月8日に公表した実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」に対して寄せられたご意見を踏まえて、ASBJにおいて検討を行い、公表するに至ったものである。寄せられたご意見は、概ね提案を支持するものであり、公開草案からの変更を行わずに最終化を行った。本稿が、本実務対応報告の概要やその趣旨をご理解いただくための一助となれば幸いである。

脚注
1 本実務対応報告の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2023/2023-0331.html)を参照のこと。

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