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解説記事2023年05月22日 税務マエストロ インボイスQ&A~令和5年4月改訂を検証する!(2)(2023年5月22日号・№979)

税務マエストロ
インボイスQ&A~令和5年4月改訂を検証する!(2)
#287
 税理士 熊王征秀

追加されたQ&Aの解説とコメント(1)−令和5年度改正に関するもの

1 適格返還請求書の交付義務免除
○少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位

問29 売上げに係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、当該対価返還等に関し適格返還請求書を交付する義務が免除されるとのことですが、1万円未満の対価返還等とは、どのような単位となりますか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者改訂)
 1万円判定は、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額により判定する。よって、値引き等の金額に軽減税率と標準税率が適用されるものがある場合でも、適用税率ごとではなく、値引き等の合計金額で判定することになる。

○売手が負担する振込手数料相当額

問30 売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が負担する商慣行があります。この売手が負担する振込手数料相当額について、適格請求書等保存方式の開始後、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合に、必要となる対応を教えてください。【令和5年4月追加】

【答】(筆者改訂)

○売手が負担する振込手数料相当額に係る経理処理の変更

問31 売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が当該振込手数料相当額を負担する場合について、当社は、当該負担額を支払手数料として経理処理していましたが、適格請求書等保存方式の開始後においては、売上げに係る対価の返還等として経理処理することを考えています。この場合、どのような対応が必要となりますか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者改訂)
 売手負担の振込手数料を支払手数料として処理した場合であっても、消費税法上は「対価の返還等」として取り扱うことが認められる。この場合、帳簿に法定事項を記載して保存する必要があるとともに、その支払手数料として処理した振込手数料を消費税のコード表や消費税申告の際に作成する帳票等により明らかにしておくなどの対応が必要になる。
 なお、振込手数料相当額の値引きであっても、軽減率適用対象取引の適用税率は8%となる。

○買手側の処理(疑問点)
 適格返還請求書の交付を受けない買手サイドでは、売手が負担した振込手数料は、下記のいずれかの方法により処理することになる。なお、立替金として処理する場合には、取引先に対し、立替金精算書と振込手数料のインボイスのコピーを交付する必要がある。

 インボイスQ&Aの問30と問31の【答】では、振込手数料相当額の値引きであっても、軽減税率適用対象取引の適用税率は8%となることを繰り返し説明している。では、軽減税率適用対象取引がある場合の買手側の処理はどうなるのであろうか?
 上記の※のような処理をした場合には、10%税率の課税仕入高との8%税率の仕入値引高が相殺されてしまうため、会計処理により仕入控除税額が異なってくることになる。インボイスQ&Aでは買手側の取扱いには触れていないようであるが、実際問題としてどの程度まで(丁寧に)処理するべきなのか……実務家として実に悩ましいところである。

2 少額特例

○一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置

問108 一定規模以下の事業者は、1万円未満の課税仕入れについて、一定期間、適格請求書の保存を要しないとのことですが、その内容について教えてください。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
1 概要

 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間中の課税売上高が5,000万円以下である事業者が国内において行う課税仕入れについては、その税込課税仕入高が1万円未満である場合、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除を認めることとした(少額特例)。
 よって、インボイスのない免税事業者や消費者からの仕入れであっても、少額特例の適用を受けることにより、その全額を仕入控除税額の計算対象とすることができる。
 この制度は、固定資産の譲渡など、臨時の課税売上高が発生したことにより一時的に基準期間における課税売上高が増加した場合に備え、特定期間における課税売上高により判定することを認めたものと思われる。よって、基準期間における課税売上高が1億円を超えていても、特定期間における課税売上高が5,000万円以下であれば適用することができる。ただし、特定期間における課税売上高に代えて給与等の支払額を用いることはできない。
 新設された法人の第2期は、たとえ特定期間中の課税売上高が5,000万円を超えたとしても、基準期間となる前々事業年度がないことから少額特例の適用を受けることができる。
2 適用期間
 少額特例は課税期間単位ではなく、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて適用することができる。
 よって、個人事業者の令和11年の取引であれば、1月1日から9月30日までの間は少額特例が適用できるのに対し、10月1日以降の取引については、たとえ1万円未満の経費でも原則としてインボイスの保存が必要となる。

○一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置における1万円未満の判定単位

問109 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)については、1万円未満の課税仕入れが対象とのことですが、どのような単位となりますか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者改訂)
 「課税仕入れに係る支払対価の額」とは税込みの課税仕入高のことなので、支払金額に100/110(100/108)を乗じた金額で比較することはできない。
 また、1万円と比較する課税仕入高(税込)は、一商品ごとの仕入金額ではなく、取引ごとに発行される納品書や請求書の単位で判定することとされている。
 月まとめ請求書のように、複数の取引をまとめた単位により判定することはできないことに留意する必要がある。

3 2割特例

○小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置<2割特例>

問111 適格請求書等保存方式の開始後一定期間は、適格請求書発行事業者の登録により課税事業者となった免税事業者については、消費税の申告について簡易に計算できる経過措置(2割特例)があるそうですが、その内容について教えてください。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
1 税額計算

 「2割特例」とは、小規模事業者がインボイスの登録をした場合には、仕入税額を売上税額の8割とする制度である。
 結果、納税額は課税標準額に対する消費税額の2割となるので、簡易課税制度の適用を受け、第2種事業として申告する場合と納税額は同額になる。

(注)小規模事業者は一般的に貸倒回収に係る税額や返還等対価に係る税額がない場合がほとんどであろうから、納税額は課税標準額に対する消費税額の2割と考えて問題ないものと思われるが、特別控除税額(仕入控除税額)の正しい算式は上記のように定められている。
2 適用対象期間
 「2割特例」は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用することができる。「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間」という期間限定ではないので注意する必要がある。
 よって、個人事業者であれば令和8年まで、3月決算法人であれば令和9年3月決算期まで「2割特例」が適用できることになる。

3 適用対象事業者
 「2割特例」は、インボイスの登録をしなければ免税事業者となるような小規模事業者を対象とするものである。よって、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるような事業者がインボイスの登録をし、その後に基準期間における課税売上高が1,000万円以下となったような場合でも適用を受けることができる。その一方で、「2割特例」の適用を受けていた登録事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなった場合には、「2割特例」の適用を受けることはできないこととなる。
 「課税事業者選択届出書」を提出している事業者がインボイスの登録をしている場合には、次の①と②のいずれの要件も満たす場合について、「2割特例」の適用が認められる。
① インボイスの登録をしなければ免税事業者となれる課税期間であること
② 「課税事業者選択届出書」を提出しなければ免税事業者となれる課税期間であること
<具体例>
 個人事業者の各年における課税売上高が下表のように推移した場合、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間については「2割特例」を適用することができない。

(注)令和9年の基準期間(令和7年)における課税売上高は1,000万円以下であるが、令和9年は「2割特例」の適用対象期間ではない。
4 適用要件
 「2割特例」には、簡易課税制度のような届出書の提出や継続適用義務はない。
 「2割特例」の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨付記するとともに、「付表6」の添付が義務付けられている(22頁参照)。

○2割特例の適用ができない課税期間①

問112 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)は、基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間などについては適用できないとのことですが、具体的に教えてください。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
1 適用除外となる課税期間

 「2割特例」は、インボイスの登録をしなければ免税事業者となるような小規模事業者を対象とするものなので、適用対象期間中であっても、下記の事由が生じた場合には「2割特例」の適用を受けることはできない。
【過去の売上が一定金額以上ある場合】
① 基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる場合
② 特定期間中の課税売上高(給与等の支払額)による納税義務の免除の特例により課税事業者となる場合
③ 相続・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例により課税事業者となる場合
 ※ 相続人がインボイスの登録をした後で相続が発生した場合には、被相続人の基準期間中の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、相続があった年についてだけは「2割特例」を適用することができる。

【新たに設立された法人が一定規模以上の法人である場合】
④ 新設法人・特定新規設立法人の納税義務の免除の特例により課税事業者となる場合
【高額な資産を仕入れた場合】
⑤ 「課税事業者選択届出書」を提出し、強制適用期間中に調整対象固定資産を取得したことにより3年縛りの適用を受ける場合
 ※ 経過措置の適用を受け、登録申請書の提出により登録事業者となった場合には、「課税事業者選択届出書」を提出していないことから3年縛りの適用はない
⑥ 新設法人又は特定新規設立法人が基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産を取得したことにより3年縛りの適用を受ける場合
⑦ 高額特定資産を取得したことにより3年縛りの適用を受ける場合
【課税期間を短縮している場合】
⑧ 一月・三月の課税期間とみなし課税期間
2 相続があった年における2割特例の適用関係
 納税義務免除の特例規定が適用され、相続人が課税事業者に取り込まれるようなケースでは、相続人は原則として「2割特例」の適用を受けることはできない。
 ただし、相続人がすでに登録を済ませているようなケースでは、「相続」という予測不可能な事態に巻き込まれた場合でも、事前登録を条件に、相続があった年についてだけは「2割特例」の適用を認めることとしている。

※ 登録事業者には、相続により事業を承継した相続人(みなし登録事業者)が含まれる。
  また、被相続人の基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の場合には、そもそも「相続があった場合の納税義務免除の特例規定」の適用はないので、相続発生日に関係なく、相続人はインボイスの登録を条件に「2割特例」の適用を受けることができる。

 登録開始日(5.10.1)の前日までに相続が発生しているので「2割特例」の適用はできない。この場合において、被相続人が簡易課税制度の適用を受けている場合には、相続人は、令和5年12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、「(A)+(B)」の期間中の申告について、簡易課税によることができる(消法37①、消令56①二)。
(注)令和5年10月1日から登録する場合には、登録通知日に関係なく、登録開始日は令和5年10月1日になる。

 登録開始日(5.10.1)以後に相続が発生しているので、相続人は(C)の期間中の申告について「2割特例」の適用を受けることができる。

○2割特例の適用ができない課税期間②

問113 消費税課税事業者選択届出書の提出により納税義務の免除が制限されている場合であっても小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けられない場合があるとのことですが教えてください。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
 「課税事業者選択届出書」を提出している事業者がインボイスの登録をしている場合には、次の①と②のいずれの要件も満たす場合について、「2割特例」の適用が認められる。
① インボイスの登録をしなければ免税事業者となれる課税期間であること
② 「課税事業者選択届出書」を提出しなければ免税事業者となれる課税期間であること
 ただし、「課税事業者選択届出書」の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている事業者は、令和5年10月1日の属する課税期間について「2割特例」を適用することはできない。
<具体例1>
 令和3年中に「課税事業者選択届出書」を提出した個人事業者が、令和4年分の申告で消費税の還付を受けるケース


 上記の<具体例1>では、「課税事業者選択届出書」の提出により、令和5年10月1日前から引き続き課税事業者となっている。よって、令和5年分の申告で「2割特例」の適用を受けることはできない。
 なお、「課税事業者選択届出書」の提出により「2割特例」の適用が制限されるのは、令和5年10月1日にまたがる課税期間に限定されている。よって、下記<具体例2>のケースでは、令和5年中に調整対象固定資産を取得しない限り、令和6年分の申告で「2割特例」を適用することができる。
(注)令和5年中に調整対象固定資産を取得した場合には、令和6年と令和7年は「2割特例」の適用を受けることができない。
<具体例2>
 令和4年中に「課税事業者選択届出書」を提出した個人事業者が、令和5年分の申告で商品の仕入れなどについて消費税の還付を受けるケース

 また、「課税事業者選択届出書」の提出により、令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる事業者は、その令和5年10月1日の属する課税期間中に「課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、提出日の属する課税期間(令和5年10月1日の属する課税期間)から「課税事業者選択届出書」の効力を失効させることが認められている。
<具体例3>
 令和4年中に「課税事業者選択届出書」を提出し、令和5年から課税事業者になる個人事業者が、令和5年中に「課税事業者選択不適用届出書」を提出して「課税事業者選択届出書」の効力を失効させるケース

 上記の<具体例3>では、「課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となったのは令和5年10月1日の属する課税期間(令和5年)であることから、令和5年中に「課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより「課税事業者選択届出書」の効力を失効させ、「2割特例」の適用を受けることができる。

〇2割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択

問114 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けていましたが、翌課税期間から2割特例が適用できなくなるため、簡易課税制度の適用を受けたいのですが、いつまでに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すればよいですか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
1 「2割特例」との有利選択はできるか?

 簡易課税制度選択届出書が提出済であったとしても、申告時に簡易課税によるか2割特例によるかを選択することができる。
 また、「簡易課税制度選択届出書」を提出していない場合には、申告時に本則課税によるか2割特例によるかを選択することができる。

2「簡易課税制度選択届出書」の提出期限
 「2割特例」の適用を受けた登録事業者が、その翌課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その提出日の属する課税期間から簡易課税により申告することができる。

3 「簡易課税制度選択届出書」の取り下げ
 免税事業者は登録日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができる。そこで、登録日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、その課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」の取下書を提出することにより簡易課税の効力を失効させ、本則課税に変更することが認められている(インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答 財務省(令和5年3月31日時点)問7)。
(注)「取下書」には、提出日、届出書の様式名(表題)、提出方法(書面又はe-Tax)、届出者の氏名・名称、納税地、届出書を取り下げる旨の記載をし、署名をして所轄税務署に提出することとされているが、「取下書」の書式は定められていない。


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