税務ニュース2023年05月26日 出資した医療法人の持分算定で争い(2023年5月29日号・№980) 審判所、持分払戻請求権がなくても経済的価値は零円とならず
本件は、請求人らが、相続により取得した有限会社(出資法人)の株式の価額を純資産価額方式により評価するに当たり、出資法人が所有する医療法人の持分の価額は零円であるから、当該株式の価額も零円になるとして相続税の申告をしたところ、原処分庁が、医療法人の持分の価額は財産評価基本通達194−2の定めにより評価すべきとして算出した株式の価額を、取得財産の価額に加算して相続税の更正処分等を行ったことから、請求人らが原処分の全部の取消しを求めた事案である。なお、出資法人である有限会社は、被相続人及び相続人Aの2人がそれぞれ30口を出資して設立した不動産貸付業務等を行うことを目的とした法人。平成18年5月1日施行の改正会社法により株式会社として存続する特例有限会社であり、その持分は株式、出資1口は1株、社員は株主とみなされている。
審判所は、医療法人は定款において①退社した社員はその出資額の払戻しを請求することができる旨、②医療法人が解散した場合の残余財産は振込出資額に応じて分配する旨定めていることからすると、医療法人の出資者は、退社時又は残余財産分配時に医療法人の財産から総出資額中に出資者の出資額が占める割合に応じた額の分配を受ける権利を有していると認められ、出資口数に応じた財産の分配が認められている本件出資法人は、医療法人の財産を出資法人が所有する持分の口数において共同所有しているということができるのであるから、持分の経済的価値は、医療法人の財産のうち総出資額中に出資者の出資額が占める割合を乗じた金額になるとした。
この点、請求人らは、出資法人は社員ではなく持分払戻請求権は有していないから評価額は零円になると主張したが、審判所は、出資法人が持分払戻請求権を有していなくとも、医療法人の財産を出資法人が所有する持分の口数で共同所有していることに変わりはなく、持分の経済的価値が零円になることはないとした。加えて、相続税法の「財産」とは、いまだ明確な権利といえない財産法上の法的地位を含む金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものとされており、出資法人が有する残余財産分配請求権は、相続開始時に行使できなくても金銭に見積り可能な経済的価値を有するとして、請求人の主張を斥けた。
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