税務ニュース2023年06月09日 土地建物一括譲渡、契約書価額比を否認(2023年6月12日号・№982) 地裁、建物に係るリフォーム分の反映がなく消費税額が過少と判断
 本件は、土地及び建物の一括譲渡に係る売買契約書に土地の代価及び建物の代価が区分されている場合であっても、合理的に区分されていないとして建物及び土地の時価の比で按分すべきか(消費税法施行令45条3項が適用されるか)どうかが争われた事案である。
 本件の原告は、中古住宅買取再販事業を営み、主に築年数の経過した物件を仕入れて、当該物件に必要な修繕等(リフォーム)を施し当該物件の価値を増加させた上で、顧客に対して販売するというビジネスモデルを採用していた。
 原告は、物件販売時の消費税額を、戸建住宅の場合には売買代金総額に2.7%、集合住宅の場合には売買代金総額に5.4%を乗じた金額(1万円未満切捨て)としていた。2.7%という数字は、原告が過去に仕入れた個々の戸建住宅物件の固定資産税評価額等の合計額のうち建物の固定資産税評価額等が占める割合の平均値が34%であったことから、これに消費税率8%を乗じて算出したもの。集合住宅の場合の5.4%は、2.7%の2倍として計算していた。
 原告は「収受すべき」(消法28①)の解釈について、「当該課税資産等の価額をいうものではなく、その譲渡等に係る当事者間で授受することとした対価の額をいう」とされていること(消基通10−1−1)を根拠として、売買契約書により、当事者間で課税資産の譲渡の対価の額を非課税資産の譲渡の対価の額と区分して合意しているのだから、当該合意した額が「課税資産の譲渡等の対価の額」であり、消費税法28条5項及びその委任を受けた消費税法施行令45条3項が適用される余地はないと主張していた。
 これに対し東京地裁は、「原告が指摘する上記通達の定めは、その課税標準は、課税資産等の価額(時価)ではなく、当事者間で授受することとした対価の額をいうという原則的な考え方を示すものにすぎず、一括譲渡の場合の課税標準の算定についてまで、当事者間で合意した対価の額の区分に常に従わなければならないという解釈を示したものとは解することができない。現に、消費税法基本通達10−1−5は、一括譲渡の場合について、課税資産と非課税資産の各譲渡の対価については合理的に区分しなければならず、合理的に区分されていない場合には、消費税法施行令45条3項に従って区分する旨を定めている」などと指摘した。
 そして、「一括譲渡の場合において、当該譲渡の当事者間で、課税資産の対価の金額と非課税資産の対価の金額を区分して合意していたときに、消費税法施行令45条3項所定の『課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき』に該当するか否かを判断するに当たっては、同項が『合理的に区分されていないとき』としている趣旨が、事業者が恣意的に課税資産の譲渡の対価の金額を設定して納税義務を免れようとする事態を防止するところにもあることに鑑みれば、原告が指摘するような合意の形成過程に合理性があるかどうかに限られず、当該課税資産及び非課税資産のそれぞれの本来的な価額の比率や、これらを仕入れた際のそれぞれの対価の額の比率との比較において、課税資産の対価の額の割合が過少になっていないかどうかなどの事情をも考慮すべきものと解するのが相当である」との考えを示した。
 その上で、原告は、リフォームによって建物を中心にその交換価値を高めていたにもかかわらず、本件原告算出方法は、リフォームにより高めた本件各物件の交換価値を建物の対価の額に適切に反映したものということはできず、その結果として原告が高額の消費税の還付を受けることになっていることも踏まえると、売買代金総額に占める課税資産である建物対価の額が、非課税資産である土地の対価の額に比して著しく過少に区分されていたものといわざるを得ないと指摘。消費税法施行令45条3項の趣旨に照らしても、不合理なものであることは明らかであり、原告による本件各物件の譲渡は、同項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するものと言うべきであるから、本件各物件の譲渡に係る消費税の課税標準は、同項所定の方法によって算定されるべきとの判断を下した。
 そして、国の算出方法について検討した結果、本件各物件の建物と土地の価額について、建物と土地の各仕入れ時の支払代金額(仕入れ時の固定資産税評価額等の比率に応じたもの)を基礎とし、これらに、原告が行ったリフォーム等の費用のうち建物に係るものは建物の価額として、土地に係るものは土地の価額として、両者に共通するものは仕入れ時の支払代金額の比率で按分したものをそれぞれの価額として付加することにより算出した額をもって消費税法施行令45条3項の「価額」とした本件各更正処分等は適法と結論づけた。
 なお、本誌前号(981号)で紹介した公表裁決(令和4年9月9日裁決)は、本事例と異なり、売買契約書に記載された建物の価額比率が固定資産税評価額の価額比に比べて高すぎるとして否認された事案ではあるが、売買契約書に記載された比率が認められなかった点では同じといえる。当事者間で合意された比率であれば、即「是認」とはならないことに留意が必要だ。
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