会社法ニュース2023年08月04日 多角化に伴う株価低迷にスピンオフIPO(2023年8月7日号・№990) スピンオフした事業の分、親会社の株価は下落する可能性も
事業の多角化を図った結果、コングロマリット・ディスカウントを抱えることとなった上場企業は少なくない。コングロマリット・ディスカウントとは、業績の良い事業と悪い事業を抱える企業の株価が、業績の悪い事業に足を引っ張られる形で企業としての株価が低迷してしている状況を指す。
コングロマリット・ディスカウントを解消する策としてまず不振事業の売却が考えられるが、事業売却益には課税が伴うという問題がある。また、不振事業を税制適格再編により分社化して100%子会社とすることも考えられるが、この場合、不振事業を独立した法人として経営責任の明確化等を図ることはできても、上場しているのは従来どおり親会社だけであるため、コングロマリット・ディスカウントは解消されない。
そこで、次のステップとして考えられるのが、子会社をスピンオフしてIPO(株式上場)させることだ。実際、東証プライム市場に上場するHamee社は、スピンオフする子会社NE社の2025年中の上場申請を目標とする旨のリリースを7月14日付で公表している。具体的には、NE社の全株式を現物配当により同社株主に分配(スピンオフ)し、NE社株式を上場させる(スピンオフIPO)というプランであり、2025年中には東証にNE社の上場申請を行い、NE社が東証から上場承認が得られることを条件にスピンオフを実施(スピンオフ税制を利用)するとしている。これが実現すれば、両社の資本関係はなくなり、コングロマリット・ディスカウントは解消する。なお、Hamee社の株主は同社株式とNE社の株式という2つの上場企業の株式を保有することになる。スピンオフIPOは2019年にコシダカHD(東証プライム)の事例があり、今回が2例目となる。
ただし、注意しなければならないのは、スピンオフIPOにより、スピンオフした事業の分だけ親会社の株価が下がる可能性もあるという点だ。プライム市場への上場を維持するためには流通株式時価総額基準(100億円)を達成する必要があるが、Hamee社は現在の株価を踏まえてプライム市場への上場維持を諦め、プライム市場上場企業にのみ適用される市場区分の再選択の特例を利用してスタンダード基準に上場申請を行うとしている。
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