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解説記事2023年08月28日 ニュース特集 インボイス制度開始前後における実務上の留意点(2023年8月28日号・№992)

ニュース特集
一定の場合には登録番号がなくても仕入税額控除が可能
インボイス制度開始前後における実務上の留意点


 インボイス制度がいよいよ令和5年10月1日から開始されるが、国税庁は8月21日に10月1日前後に想定される実務上の対応についてまとめた「制度開始に向けて特にご留意いただきたい事項」をホームページ上に公表した。9月末間際に登録申請書を提出するような場合には、10月1日時点では登録通知が届いていない状況となる。売手については、登録番号の通知後にインボイスを交付するなどの対応を示したほか、インボイスの事後交付が困難な小売店については、事前にインボイスの交付が遅れる旨をホームページや店頭で示した上で、事業者のホームページ等で登録番号を示す方法などを明らかにしている。また、買手については、申告期限までに登録番号の通知がなかったとしても、売手に登録を受ける旨を確認した上で仕入税額控除を行うことができるとの柔軟な取扱いを認めるとしている。

登録番号通知後にインボイス交付などの対応が必要

 インボイス制度開始まで残り1か月となったが、令和5年7月末日現在の登録申請書の提出件数は約370万件であり、このうち登録件数は342万17件にのぼっている。すでに課税事業者の9割超が申請済みとなっており、順調に登録件数が増加している。
 登録申請については、令和4年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」により、事業者が4月以降に登録申請書を提出する場合であっても、登録申請書に「困難な事情」を記載せずに令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けることが可能となっている。したがって、最終的に令和5年9月30日までに登録申請書を提出すれば、10月1日より登録することができる。
 具体的に、10月1日から登録を受けるための登録申請期限は下記のとおりとなる。9月30日は土曜日だが、登録申請期限については国税通則法の期限の特例はなく、10月2日(月)まで申請期限は延びない点、留意したい。

・e-Taxの場合、9月30日(土)の23:59:59までの受付
・郵送の場合、 9月30日(土)の通信日付印のあるものまで
・窓口提出の場合、9月29日(金)の閉庁時間(17:00)まで

 なお、郵送により登録申請書を提出する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターとなる。所轄税務署ではない点、留意したい。
通知がなければ登録番号の記載は不可
 注意しなければならないのは、登録を申請してから登録番号が通知されるまでには一定の時間を要することになる点だ。8月上旬の時点では、登録通知までの目安の期間はe-Taxの場合で約1か月、書面の場合で約2か月半となっている。すでに書面での提出では10月1日までに登録番号の通知を受けることはほぼできない状況だ。
 登録番号が令和5年10月1日までに通知されていなければ、仮に法人で登録番号が明らかであっても請求書等に登録番号を記載することはできない。通知がなければ、登録番号が通知された時点で改めて相手先にインボイスを交付するなどの対応が必要となる。
 具体的に売手としては、買手に対して、①事前にインボイスの交付が遅れる旨を伝え、通知後にインボイスを交付する、②通知を受けるまでは登録番号のない請求書等を交付し、通知後に改めてインボイスを交付し直す、③通知後にすでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で、インボイスに不足する登録番号を書類やメール等で知らせるなどのいずれかの対応が必要になる。

インボイスの事後交付が難しい場合は?

 インボイスを事後交付できる事業者であればよいが、小売店など、事後交付が難しい事業者も少なからずいる。国税庁が今回明らかにしたところでは、例えば、事前にインボイスの交付が遅れる旨を事業者のホームページや店頭において相手に知らせた上で、事業者のホームページ等において、「弊社の登録番号は『T1234……』となります。令和5年10月1日から令和5年〇月〇日(通知を受けた日)までの間のレシートをお持ちの方で仕入税額控除を行う方におきましては、当ページを印刷するなどの方法により、レシートを併せて保存してください」と掲示するといった対応が示されている。また、ホームページがない事業者の場合には、買手側からの電話等に応じ、登録番号を知らせ、相手方にその記録をレシートと併せて保存してもらうことで仕入税額控除を可能にするなど、柔軟な対応を明らかにしている。
 前述した登録通知までの期間はあくまでも目安であるため、事業者側で通知が10月1日以降になると判断すれば、事前の対応を行うべく準備しておく必要がありそうだ。
 なお、インボイスの事後交付が難しい場合の取扱いは、登録申請を令和5年9月末までに行ったが、10月1日までに登録番号の通知が間に合わなかったケースに対応したもの。当然のことながら、登録番号の通知を受けた場合には登録番号等を記載したインボイスを交付する必要がある点、留意したい。

登録番号の通知がないまま申告期限を迎えた場合は?

 一方、買手が売手から登録番号のない請求書等を受領したものの、申告期限までに登録番号が通知されなかった場合、果たして仕入税額控除ができるか疑問に思うところだが、この点について国税庁は、事前にインボイス発行事業者の登録を受けるかどうかを売手に問い合わせしたり、ホームページなどで確認できれば、受領した登録番号のない請求書等に記載された金額を基礎として、仕入税額控除を行ってもよいとの取扱いを明らかにしている。この場合は、事後的に交付されたインボイスや登録番号のお知らせを保存しておけばよいとしている(下記コラム参照)。
翌課税期間に仕入税額控除の調整が可能
 しかし、その後、取引先(売手)が実際に登録を受けていなかったケースもあるだろう。このようなインボイス等を保存できなかった場合には、翌課税期間において仕入税額控除を調整することで差し支えないとしている。
 なお、基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者における1万円未満の課税仕入れについては、令和11年9月30日までの間は帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能であるため、上記対応は不要となる。

登録番号の追記は認められず
 申告期限までに登録番号の通知がなかった場合については、売手に登録を受ける旨が確認できれば、仕入税額控除をすることができるとの取扱いが示されたが、この場合には事後的に交付されたインボイスや登録番号のお知らせを保存することが必要になる。
 この場合、現行の区分記載請求書等保存方式では、「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額」の記載漏れがあった場合には、買手側で追記することが認められているが、インボイス制度においては、請求書等に登録番号を後から追記するような取扱いは認められていないので注意したい。

インボイス、必ずしも10月1日以降の請求書から対象とならず

 そのほか、インボイスの交付義務については、令和5年10月1日(日)以降の取引から生じることになるが、必ずしも同日以降に交付する請求書等から対応しなければならないわけではない。
 例えば、令和5年9月中の取引について令和5年10月に請求を行う場合はインボイスを交付する必要はない。逆に令和5年9月中に請求書を出し令和5年10月に納品を行う場合にはインボイスを交付する必要がある。この場合、納品のタイミングでインボイスを交付するか、登録番号を通知し請求書と併せて保存してもらうなどの対応が求められる。
インボイスの適正性の確認は?
 インボイスの発行事業者であるか否かは、事業者において適宜確認する必要があるが、すべての取引の都度、確認が必要になるわけではない。取引先の規模や関係性、取引の継続性などを踏まえ、事業者においてその頻度等を判断することになる。
 例えば、新規取引先であれば、当然、登録番号の確認が必要になろう。逆に継続的に取引がある企業との取引であれば、頻繁に確認が必要になるわけではない。登録の取消しは課税期間(原則1年)単位となるため、これらの期間等を踏まえて確認することも1つの方法であるとしている。
 なお、少額特例の適用を受ける場合や、簡易課税や2割特例を選択する場合には、仕入税額控除にインボイスの保存は不要となっているため、インボイスの適正性の確認は不要となる。

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