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解説記事2023年09月11日 SCOPE 土地の固定資産登録価格を巡り、パレスホテルが再び勝訴(2023年9月11日号・№994)

東京都、敗訴受け修正した価格も認められず
土地の固定資産登録価格を巡り、パレスホテルが再び勝訴


 東京都知事が決定した、土地の固定資産課税台帳への登録価格が争われていた事案で、東京地裁民事2部(品田幸男裁判長)は令和5年8月31日、納税者主張額を適正な時価と認め、それを超える部分を取り消す判決を下した。
 東京地裁は、東京都知事による評価方法について、特例容積率の限度指定による差異の調整は、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価を通じて具体的に行われるべきであって、東京都土地価格比準表に基づく格差率90%を形式的に当てはめて行われるべきではなかったとの考えを示した。

特例容積率の限度指定による差異の調整は固定資産評価基準に従っておらず

 東京丸の内の(株)パレスホテル(原告)は、所有する各土地につき、東京都知事が行った平成24年度の固定資産価格決定に際して特例容積率の限度指定が減価要因とされなかったことを不服として、平成24年に東京都固定資産評価審査委員会(本件委員会)に審査申出をしたが棄却されたため、平成27年に当該決定の取消しを求める訴訟を提起した。
 本件各土地は、建築基準法52条に規定される容積率が1300%で、かつ、都市計画法8条1項2号の3所定の特例容積率適用地区に指定されており、平成20年に本件各土地の特例容積率の限度が1140.2%に指定されていた。
 上記訴訟につき、地裁ではパレスホテル側の主張が認められ、本件委員会の決定を全部取り消す判決が下された。さらに同判決に対する控訴は棄却され、平成30年には最高裁が上告不受理を決定した。
 最高裁の決定を踏まえ、本件委員会は改めて平成24年度の固定資産価格について審査決定を行い、東京都知事は、同様に特例容積率の限度指定を減価要因とせずに決定した平成27年度及び平成30年度の固定資産価格を、表2の本件評価方法により修正した。
 パレスホテル側は当該修正後の登録価格をなお不服として審査申出をしたが、平成27年度については棄却、平成30年度については却下されたため、原告主張額を超える部分の取消しを求めて訴訟を提起した(平成30年度については無効確認)。
不動産鑑定士の評価を通じて補正すべき
 東京地裁は、表2の本件評価方法が、表1の評価基準の定める評価方法に従ったものであるか検討したところ、まず、本件評価方法は、標準宅地である本件敷地部分の単位地積当たりの適正な時価に基づいて路線価を付設したものではないから、表1の①の評価方法に従ったものではないとした。

【表1】評価基準第1章第3節二(一)3(1)主要な街路について付設する路線価

① 当該主要な街路に沿接する標準宅地の単位地積当たりの適正な時価に基づいて付設する。
② 標準宅地が「画地計算法」を適用すべきものであるときは、当該標準宅地の適正な時価に基づき、仮に 当該標準宅地の位置に「画地計算法」を適用する必要がない宅地があるものとした場合における当該宅地 の単位地積当たりの適正な時価を算出し、これに基づいて付設する。

【表2】東京都の修正価格決定における価格の算出方法(本件評価方法)

① 標準宅地(本件敷地部分)を対象とする本件鑑定評価書(特例容積率の限度指定が考慮されていないも の)の「1 平方メートル当たり標準価格」欄に記載された価格に基づいて北側路線の路線価(沿接する宅 地に適用されるもの)を付設し、
② 特例容積率の限度指定による差異(沿接する宅地の容積率が1300% であるのに対し、本件敷地部分の容 積率が特例容積率の限度指定により1140% であるという差異)を行政的条件の格差に置換し、東京都土地 価格比準表に基づいて格差率90%を算出し、
③ この格差率90% を北側路線の路線価(沿接する宅地に適用されるもの)に乗じることで、北側路線の路 線価(本件敷地部分に適用されるもの)を求める。

 続いて、表1の②の評価方法に従ったものか検討を行ったところ、本件鑑定評価書の「1平方メートル当たり標準価格」欄に記載された価格は、特例容積率の限度指定を考慮しない容積率1300%の「標準的画地」の価格ということになると指摘。その上で、「画地計算法」は容積率を調整するものではないため、容積率1140%とする特例容積率の限度指定がある標準宅地(本件敷地部分)につき、画地計算法を適用する必要がない宅地として、容積率1300%とする特例容積率の限度指定がない宅地を想定することはできないとして、本件鑑定評価書の「1平方メートル当たり標準価格」欄に記載された価格は、標準宅地の位置に「画地計算法」を適用する必要がない宅地があるものとした場合における当該宅地の単位地積当たりの適正な時価を表すものとはいえないとした。
 さらに、本件鑑定評価書の「1平方メートル当たり標準価格」欄に記載された価格は、不動産鑑定士によって、標準宅地(本件敷地部分)に固有の補正をする必要があるか否か、固有の補正をする場合には、その補正率をどのように決定するかにつき評価されることなく算出されたものであるため、この点からも、当該宅地の単位地積当たりの適正な時価を表すものとはいえないとした。
 以上の結果、東京地裁は、特例容積率の限度指定による差異を、路線価を付設する段階で東京都土地価格比準法に基づいて格差率90%を算出することで調整していることをもっては、評価基準の定めと計算の順序が異なるだけで実質において異なることがないとはいえず、本件評価方法が評価基準に適合するということはできないと判断した。その上で、平成27年度については、本件各土地のそれぞれの適正な時価は原告主張額のとおりとして、それを超える部分を違法とした。
 一方、平成30年度については、原告は平成30年度修正価格決定が誤っていることを示す具体的主張をしておらず、本件委員会が、審査申出に係る不服は平成30年度修正価格決定により消滅したものと解して審査申出を却下したことが明らかに不合理であったということはできないとして、無効確認を求める原告の訴えを斥けた。

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