カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年09月25日 ニュース特集 電子帳簿等保存制度、通達から読む留意点(2023年9月25日号・№996)

ニュース特集
検索機能の確保の要件では運用上の緩和策も
電子帳簿等保存制度、通達から読む留意点


 令和5年度税制改正では、電子帳簿等保存制度についての更なる見直しが行われた(令和6年1月1日以後から適用)。その最たるものが新たな猶予措置であり、システム対応を「相当の理由」により行うことができなかった事業者については、現行の出力書面の保存に加え、電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、検索機能の確保の要件等を不要としてそのデータ保存が可能になる。ただ、新たな猶予措置以外でも、①優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象帳簿の範囲の見直し、②国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し、③検索機能の確保の要件の緩和といった見直しも行われている。
 本特集では、6月30日に公表された「電子帳簿保存法取扱通達」(以下「改正通達」)などを踏まえ、改正後の電子帳簿等保存制度における実務上の留意点について解説することとする。

優良な電子帳簿、一部手書きでも過少申告加算税の軽減措置あり

 1点目の改正は、優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象帳簿の範囲の見直しだ。令和3年度税制改正で導入された優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置とは、記帳水準の向上に資する観点から、事後検証可能性の高い電子帳簿保存法の要件を満たす電子帳簿はあらかじめ届出書を所轄税務署長に提出することで、優良な電子帳簿に記載された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税を5%軽減するというもの。令和5年度税制改正では、さらにこの優良な電子帳簿の範囲の合理化・明確化が行われている。
 従来は、「仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿(すべて)」とされていたが、「その他必要な帳簿」については、例えば、「受取手形記入帳、支払手形記入帳」「売掛帳」「買掛帳」「有価証券受払い簿(法人税の場合のみ)」「固定資産台帳」「繰延資産台帳」「売上帳」「仕入帳、経費帳(法人税の場合は賃金台帳を除く)」などと明確化される。特に賃金台帳が不要となった点が大きな改正といえる。
 ところで、実務上、優良な電子帳簿については、優良な電子帳簿としての機能を備えた会計ソフトを用いて記録・保存することとしている場合も多いものと想定されるが、業務上の必要性から一部の記載事項については手書きのノートや表計算ソフト等において補助的に記録していることもあろう。このような場合、ノートなどが優良な電子帳簿としての要件を備えていないことから過少申告加算税の軽減措置の適用を受けることができないのではないかといった疑問が生じるところだ。
 この点、青色申告関係帳簿等のすべてが優良な電子帳簿としての要件を満たしている限りにおいては、その記載事項と同内容を記載した補助資料にすぎないことから優良な電子帳簿に加えて補助的に作成しているノート等が優良な電子帳簿の要件を満たして保存等されていないことを理由に優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置が受けられなくなることはないとしている(「電子帳簿保存法一問一答」電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係問42)。
課税期間終了後に作成した場合は適用対象外
 なお、補助的に作成しているノート等をもとに課税期間終了後に別途、青色申告関係帳簿等を作成した場合は、優良な電子帳簿としての機能を備えた状態で保存等されていたとしても、課税期間の初日から青色申告関係帳簿等を優良な電子帳簿の要件を満たして備付けをしていたことにはならない。したがって、この場合は過少申告加算税の軽減措置の適用を受けることはできないことになる。

税務調査の際にはスキャニング時の解像度等の説明を

 2点目は、国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直しだ。令和3年度税制改正で大幅な見直しが行われたが、令和5年度税制改正では、制度の利用促進を図る観点から、更なる要件緩和措置が講じられることになった。現行のスキャナ保存制度のうち、「入力者等情報の確認」及び「スキャナで読み取った際の情報(解像度・階調・大きさ)の保存」が不要となっている。
 ただし、改正後についても、引き続き「スキャニング時の解像度である25.4ミリメートル当たり200ドット以上」の要件を満たす必要がある(電子帳簿保存法規則2条6項2号イ(1))。このため、税務調査の場面などにおいて、改正後の水準等に疑義がある場合については、一定の確認・説明が求められることも想定される。この点については、実際に税務調査等の際に税務職員から解像度の確認があった場合には、プロパティ情報を提示するなど、適宜、スキャニング時の解像度等を説明することが求められるので留意したい(「電子帳簿保存法一問一答」(スキャナ保存関係問26))。

一般書類も帳簿との相互関連性確保の確認ができることがベター

 また、現行ではすべての保存書類と帳簿との相互関連性が必要とされているが、相互関連性を求める書類が「重要書類」に限定される。重要書類とは、資金や物の移動に直結・連動する書類のこと。具体的には、契約書、領収書、納品書、請求書などが該当し、見積書、注文書、検収書などは該当しない。資金や物の流れに直結・連動しない一般書類については、相互関連性を確認することができるようにしておくことまでをスキャナ保存の要件として求めなかったとしても、適正課税への影響は限定的であるといった理由から改正が行われるものだ。
 しかし、帳簿と書類の関係性については、スキャナ保存できる国税関係書類は、取引に基づいて作成又は受領した書類であることから、帳簿のいずれかの記載事項と関連性を持っていると考えられる。紙の書類における保存においても、例えば、見積書は帳簿と直接には関連はないが、見積番号などによって帳簿上のどの取引に係る見積書なのか関連を確認できるようにしていることが一般的だ。このため、今回の改正により、一般書類については、帳簿との相互関連性の確保が電子帳簿保存法上求められないことになったが、改正後においても、取引案件番号等を付し抽出できるようにするなど、税務調査の際に何らかの方法で帳簿との関係を確認・説明することができるようにしておくことがベターといえそうだ(改正通達4−27)。

資金的事情を含めシステムが間に合わない場合等が「相当の理由」に該当

 令和5年度税制改正では、令和4年度税制改正による宥恕措置(「やむを得ない事情」があれば、従前と同様、出力書面による保存を可能とする)が廃止された後の恒久化された新たな猶予措置が講じられる。システム対応等を「相当の理由」により行うことができなかった事業者は、出力書面の保存に加え、データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、検索機能の確保の要件等を不要としてそのデータの保存を可能とするというものだ(参照)。

 この新たな猶予措置を適用することができる「相当の理由」とは、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等が該当する(改正通達7−12)。電磁的記録そのものの保存は可能であるが、保存要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わないといった、自己の責めに帰さないとはいえない事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされるとしている(本誌986号参照)。
 そのほか、新たな猶予措置は、現行の宥恕措置とは異なり、適用を受けるには電磁的記録自体を保存するとともに、電子的記録及びその出力書面について提示又は提出の求めに応じることができるようにしている必要がある(改正通達7−13)。このため、税務調査の際に一部分しかダウンロードに応じないような場合には、電子的記録及びその出力書面について提示又は提出の求めに応じることができることにはならない(改正通達7−14)。

検索機能の確保の要件、取引先の書面ごとに整理することも可

 税務手続の電子化を進める上では、他者から受領した電子データとの同一性を確保する観点から、引き続き真実性の確保の要件を満たす必要があるが、その一方で、検索機能の確保の要件については、大幅な緩和が行われる(参照)。
 具体的には、ダウンロードの求めへの対応を前提にすべての検索機能の確保の要件が不要となる判定期間に係る基準期間における売上高を現行の「1,000万円以下」から「5,000万円以下」に大幅に引き上げる。なお、売上高については、消費税法の課税売上高とは必ずしも一致するわけではない(「電子帳簿保存法一問一答」(電子取引関係問45)。個人事業者の場合は「商品製品等の売上高、役務提供に係る売上高、農産物の売上高、賃貸料又は山林の伐採又は譲渡による売上高」をいい、家事消費高及びその他の収入は含まれない。法人の場合は、「一般的に売上高、売上収入、営業収入等として計上される営業活動から生ずる収益」をいい、営業外収益や特別利益は含まれないとされている。
 また、データを出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る)の提示・提出の求め及びそのデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしているときは、検索機能の確保の要件を充足しているものとされることになる。
 電子データを出力することにより作成した書面の整理については、検索機能の確保の要件を代替するものであり、①課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法、②課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法に加え、所得税法・法人税法の規定に基づき書面で保存する国税関係書類の管理の実務と同様、出力書面をその種類ごとに区分した上で、その区分ごとに前記①又は②の方法で整理することも認められている(改正通達7−3)。
受領年月日でも代替可能
 また、検索機能の確保の要件の「取引年月日その他の日付」の記録項目について、「受領年月日」とすることも可能とする運用上の対応のほか(改正通達4−30)、フォルダ名の入力により検索要件を満たそうとする場合は、「取引先」ごとにフォルダを区分して保存しており、その区分したフォルダに保存している取引データのファイル名を「取引年月日その他の日付」及び「取引金額」を入力して管理しておくことでも、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができるときは、検索機能の確保の要件を満たすことになるとしている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索